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王女、兄の作戦を実行する

 兄が予約してくれたお店は王都で人気の高級店だった。本来なら男性が女性を迎えに行くものなのだが、マレーナは王女なので、王族が乗っているとわかる馬車を使った方が店も直ぐにわかって良いだろうとコンラードを迎えに行く為馬車に乗り込んだ。もちろん王家の紋章入りの馬車だ。

 マレーナは晩餐用に紺色の生地に黒い糸で全面刺繍されたドレスを選んだ。コンラードは黒髪だ。密かに黒を入れてみたが、誰もコンラードの色とは思わないだろうと半年ほど前に作ったものだ。

 ドレスは地味だが、首に付けている金のチェーンに付けられたペンダントトップには、ダイヤを中心にアメジストで花を描くような意匠のものが付いている。同じ意匠の耳飾りと指輪を付ければ、反転華やかさが出る。これでドレスがオレンジ色や黄色では折角のペンダントたちの良さをかき消してしまう。

 そしてさすがにサファイアは付けられなかった。コンラードが水色の目だからだ。如何にもで恥ずかしいのもあるが、いつからか付けることができなくなった。付けてしまえば思いが漏れだしそうで。

 今はいつかつけることが出来る日がくればいいなと思っている。

 マレーナは髪をハーフアップにし金のコームで留めてもらった。流れる銀色の髪は何よりもマレーナを美しく彩るのでシンプルな髪飾りの方が引き立つなのだ。

 マレーナはコンラードの邸に近づくにつれて心拍数が上がるのを感じていた。

 何故なら初めてなのだ。男性と二人きりで食事に行くのは。当たり前だがマレーナは王女の為、家族でもない男性と二人きりでどこかに行くなどこれまで一度もしたことがなかった。国内外でおかしな噂が立たないようにと気を付けていたというのもあるが、そもそも国内にマレーナを誘う男性などいないし、誘うこともなかった。

 だがもうそれも終わり。国内で婿を迎えるのが発表されれば次々誘いの手紙が来るようになるだろう。その前にコンラードとの関係を進めたい。コンラードなら申し分のない相手だ。

 公爵家の次男。王太子の友人兼補佐。マレーナの婿になる要素が揃っている。そしてマレーナ自身が望んでいるのだ。どうにかしてコンラードにマレーナを選んでもらいたい。マレーナは意気込んだ。


 バックリーン公爵邸でコンラードを乗せると馬車は店へと走り出した。

「コンラード。無理してない?急に誘ったから」

「いや、大丈夫。マレーナ王女殿下のお誘いだからな。光栄でございます」

 少しふざけた風に向かいの席のコンラードが言う。

「それなら良いけど。今朝はごめんなさい。驚かせてしまって」

「いや、それはまあ。そんなこともあるかもしれないが、頼むから気を付けるように」

「うん。コンラードしかいないから油断したんだと思う。知らない人だったら気を付けると思うもの」

「それは喜んで良いのかどうなのか・・・・」

「え?何か言った?」

 コンラードのつぶやきが聞こえずにマレーナが聞き返すと慌てて手を振っている。

「何でもない。さあ、そろそろ着くぞ」

 馬車が店の前に着き、先に降りたコンラードのエスコートでマレーナは馬車から降りた。支配人が出迎えに出ていて、マレーナは軽く挨拶をすると店内へと入った。

 そして一斉に注目を浴びたのを感じながら、何でもないことのようにコンラードの腕に腕を絡ませ歩く。案内されたのは奥の個室だった。広い個室で家族で来る時もここだ。

「今日のオススメはある?」

 マレーナは支配人に尋ねた。

「良い平目が入っております」

「じゃあそれを。コンラードは好きな物ある?」

「僕は肉はラムが良いな」

「じゃあそれにしましょう。魚は平目。肉はラムでお願いします。あとはお任せします」

「飲み物はワインを料理に合わせたものを任せるよ」

 コンラードはそう言ってワインのリストを閉じた。

「コンラードはラムが好きなのね。私も好きよ」

「ん?そうだな。今日はラムの気分だったんだ」

 たわいもない話をしながら前菜を食べていると何か外で揉めている声が聞こえた。

「何かしら?」

「気にするな。護衛がいるし、入って来たら僕がいるから」

「ありがとう」

 マレーナがそう言ってほほ笑んだ時だった。護衛の一人が中に入って来た。

「殿下。ご挨拶したいというご令嬢が来ております」

「こんな時に?フェリシアとかではないのよね?名前は聞いたの?」

「いいえ。その方はご学友だとおっしゃっています。それだけです」

「悪いけど、食事中だからと断ってくれる?話なら後日面会申請をを出してくれれば聞くからって」

「かしこまりました」

 そう言って護衛は去って行った。外で揉めている声がしたが、しばらくしたら静かになった。

「何だったのかしら?私に会いたいなら面会を申請して欲しいわ。まあそう簡単に申請は通らないけど。一々全部会っていたら寝ることもできないわ。学友なんて言われても、全部名前と顔は一致しても、親しくなければ私には個人的に用はないし。しかも名乗らないなんて」

「名乗らないのはおかしいよな。本当に学友かも怪しい」

「そうね。まあ、王女が店にいれば会いたいと言う人も出てくるかもしれないけど、それをしないのがマナーなんだけどなあ。どう考えても仕事中ではないもの。王族にだってプレイべートはあるのよ。邪魔しないで欲しいわ」

「ところでこのワインいつ飲んでも美味しいよな」

 コンラードが話題を変えてくれたことに嬉しさを感じ、マレーナはそれに乗った。

「本当ね。って。テオお兄様のとこのワインね。今度お願いしてまた王宮に仕入れてもらおうっと」

「マレーナ王女殿下。気になっていたんだが、何故テオだけお兄様がつくんだ?」

「さあ?どうしてかしら?いつの間にかコンラードからは消えていたわね。コンラードが何故か考えてみてね」

「何でだよ。僕が聞いているのに」

 マレーナはふふふと笑った。何故か考えて欲しい。マレーナに言われれば考えるかもしれない。そうするとマレーナといなくてもマレーナのことを考えてくれるだろうとそんな想像をしてみる。なんて幸せ!とマレーナは興奮しそうになるのを抑えた。

「マレーナ王女殿下。顔が赤い。大丈夫か?酔ったのなら水をもらうか?」

 こんな風に心配してくれるだけでも幸せを感じる。

「大丈夫よ。平気。この前フェリシアたちと湖のある領地にいったんだけど、昔はコンラードたちともよく行ったわね」

「子どもの頃な。いつもマレーナ王女殿下が遅れるから、振り返りながら走っていた記憶があるな」

「そうそう。そしていつも背負ってくれるのよね」

「そうだったな」

「ありがとう。今更だけど」

 マレーナの言葉にコンラードが驚いている。

「それから今は誰もいないし、堅苦しいから前みたいにマレーナで良いわよ。私もコンラードって呼んでるし」

 マレーナがそう言うと難しそうな顔をした。

「うーん。昔とは違うからなあ。立場的にどうかな?」

「そっか。仕方ないよね」

 マレーナは寂しさを笑顔で飲み込んだ。

「しょうがないな。二人だけの時だけだぞ」

「え!良いの?」

「そんな顔されたらなあ」

 どんな顔だった?気にしていないと笑ったつもりだったが失敗してしまったのだろうか?

「気にするな。マレーナ」

 そう呼びかけられて幸せに満ち足りていくのを感じた。

「うん。わかったわ」

「ほら、平目が来たぞ」

 コンラードに言われて気持ちを切り替えると、楽しい食事を再開した。

 久しぶりにゆっくりとコンラードと話せたことに浮かれてしまい、そのせいで予定より長く店にいてしまった。

 コンラードも楽しかったなら嬉しいのだがと思いながら最後のデザートを食べる。

「コンラード。今夜は付き合ってくれてありがとう。とても楽しかったわ」

「ああ。僕も楽しかった。マレーナはやっぱり話しやすいな。マレーナの話も面白いし、僕の話も聞いてくれるし」

 思わぬ形で褒められて嬉しくなる。ちゃんと今の気持ちを伝えたい。

「私もコンラードと話すのは好きだわ」

「そ、そうか。さて、帰るか」

「そうね」

 マレーナは立ち上がった。兄に感謝である。お店の予約をしてくれたのも食事に行くように言ってくれたのも兄。そして、兄からはいつも通りコンラードと話せと助言された。特に何か特別な話題はしなくて良い。マレーナが楽しそうにしていれば自ずとコンラードも楽しくなるだろうと。

 確かにガチガチに緊張した相手と食事をするのは気まずいかもしれない。そう思っていつも通りを心がけた。おかげで楽しい時間が過ごせた。なんやかんや言いながらも良い兄なのだ。


 個室を出てコンラードのエスコートで店内を歩いている時だった。突然二人の前に女性が現れた。

「お久しぶりです。コンラード様」

 そう言ってきた顔には見覚えがあった。ハーバラ侯爵家のイルマだ。マレーナと同じ学年だがこれといって特別な交流はない。同じクラスになったこともないし、マレーナが開くサロンにもお茶会にも来たことがない。同年代の令嬢全てに招待状を出すような大規模なものでも出席が絶対ではないので欠席する者もいる。その一人がイルマだ。仲が悪いとかでもなく、とにかく関係を持ったことがない。

 マレーナはそもそも合わないだろうと思っていた。

 イルマの家は領地で農作物を主に作っている。その農作物を二次加工した商品も卸していて、扱っている商会がいくつもある人気商品の為、領地経営が上手く行っている裕福な家だ。

 しかし、一人娘の為婿をもらわねば爵位を継続できないので、学園時代から良家の次男三男と知ればとにかく声をかけていた。相手に婚約者がいようとも。それで婚約解消をした人もいると聞いている。

 金色のふわふわとした柔らかな髪に緑の目の可憐な容姿。愛らしい顔。艶やかな唇から紡がれる言葉に惹き付けられて浮気に走る学園生が何人もいた。結局手に入れてみたもののその後にやっぱり違ったと捨てるのだ。その繰り返しなのか今も結婚していないはず。

 それでもイルマの婿になりたい男性は大勢いる。選り取り見取り故、未だに決まっていないのかもしれない。好条件を望めばキリがない。捕まえてみたがまだ上のより良い人がいると思うのだろう。

 学園時代は女子学生の友人はおらず、いつも数人の男子学生に囲まれていた。そんな印象だ。

 そして、今の狙いがコンラードなのかもしれない。こんな風に話しかけてくるのだから。

「イルマ嬢」

「最近どこの夜会にも出席されていないからどうされているのかと思っておりましたの。お会いできなくて寂しかったですわ」

 そう言って両手を組み合わせコンラードを目をうるうるさせながら見上げている。横にいるマレーナなど眼中にはないといったところか。だが、自国の王族を前にこの振る舞いでは爵位を継いでから不安が残ると思いながらマレーナは見ていた。

「マレーナ王女殿下。こちらはハーバラ侯爵家のイルマ嬢だ」

「ええ、知っているわ。同じ学年でしたもの」

「あら、マレーナ王女殿下。ごめんなさい。気付かなくて」

 キョトンとした顔で言って来るが気付かない理由はない。

「良いのよ。きっと視界が狭いのでしょうから」

 マレーナは笑顔で答えた。連れがいる相手に話しかける際に、その連れに名乗らない、挨拶しないなどマナー違反だ。マレーナが伯爵家の令嬢であっても失礼な行為を王族のマレーナにするとは臣下としていかがなものか?侮られるわけにはいかないので無礼な態度には堂々と嫌味で答える。寛大さを見せる場面ではない。イルマはそんなマレーナに反応もせず、直ぐに微笑みを浮かべコンラードに話しかけた。

「もしかしてマレーナ王女殿下のお相手をする為にお忙しいのですか?」

 どういう意味だ。それではコンラードを日々マレーナが拘束しているようではないか。周囲もこちらを気にし始めている。

「今日は王太子殿下に勧められた店に行く為にマレーナ王女殿下に付き合ってもらったんだ。一人で行くのは寂しいからね。話し相手をお願いしたんだ。

 夜会に最近行っていないのは少し仕事が忙しいからでマレーナ王女殿下は関係ない」

 コンラードがマレーナを誘ったと言ったことでイルマはマレーナを一瞬睨んで来た。本当は違うのをそう言ってくれたのだろう。イルマのあからさま過ぎる反応に逆にどうしたら良いのかとマレーナは迷ったが負けるわけにはいかない。

「ええ。とても美味しかったですわ。それにたくさんお話もできたし楽しかったわね」

 マレーナはコンラードを見上げた。コンラードもそんなマレーナを見てくる。

「ああ楽しかったな」

「コンラードは夜会によく行くの?」

 マレーナはコンラードに問いかけた。

「たまにだな。招待状が家にはたくさん来るからね。その中で予定が合って利点がありそうなら出席するけどそんな多くは行かないな。時間は有限だからね。

 今はやらないといけないことがたくさんあるから。マレーナ王女殿下もお忙しい身だからね。たまにはこうして息抜きも必要だと思ってお誘いしたんだけど、僕の方が楽しい時間を過ごせましたよ」

「ありがとう。私も楽しかったわ。忙しかったのが落ち着いてきたところだったからちょうど良かったわ」

 マレーナは軽く微笑みを浮かべた。それだけで周囲からほうっと感嘆の声が聞こえる。

「マレーナ王女殿下は臣下の者と軽々しく食事に行くのですか?」

「軽々しくだなんて。今回はちょうどお互い時間が空いていただけよ。それに、臣下と言ってもコンラードは兄の友人だし側近でもあるわ。誘われれば誰とでも行くと言うわけではないの。私には立場があるから。

 それにお誘い全てに応えていたら1日も休みがないわ。それくらいお誘いが来るから基本的には極親しい人としか出かけないようにしているの」

 暗に誰でも声をかけて出かけているあなたと違うのだと伝えた。

「マレーナ王女殿下はお忙しいとのことですから、コンラード様、次回は私を誘ってくださいませ」

 本当に大胆なんだなとある意味マレーナは感心した。女性から婚約者でも恋人でも友人でもない、顔見知り程度の男性に食事の誘いをねだるなど、はしたないとされるのが我が国だ。お近づきになりたい男性がいれば声をかけ誘ってもらえるように会話を重ねる。同じく男性も意中の相手には誘っても断られないように会話を重ねてから誘う。マレーナだって兄の助言があったからコンラードと食事に来ることができたのだ。マレーナから誘ってもおかしくない関係性ではあるがやはり躊躇われる。

 実際、周囲に眉を顰めている人がちらほら見えるのも仕方のないことだろう。それでも可憐な容姿のイルマに鼻の下を伸ばしている男性がいて、連れの女性が怒っている姿も見えた。

「僕からイルマ嬢を誘うことはないかな。前にも言ったはずだけど」

「そんなつれないことをおっしゃらないでください。コンラード様は普段から王族に縛られているのですから、恋愛は自由になさった方が良いですわ」

 どういう意味だ。兄の補佐をしていることを縛られていると言っているのだろうか?ある意味不敬罪だ。

「縛られてないよ。王太子殿下の補佐をするのは楽しいし、自ら選んだ仕事だからね。恋愛もイルマ嬢に何か言われる覚えはないかな。もう良いかな?そろそろ帰りたいんだ」

 コンラードがこんな風に言う相手も珍しい。人当たりが良く友人が多いコンラードが、こんなはっきりと拒否する発言をするのを見たのは初めてだ。

「マレーナ王女殿下の前だからそういうことをおっしゃるのですね。わかっておりますわ。私がコンラード様を癒して差し上げたいわ。きっと今日もお疲れでしょうに」

 そう言ってマレーナを見てくる。マレーナの相手で疲れただろうと言うことか。

「あなたはお一人で来られたの?それともご家族と?」

「え?」

 マレーナが割って入るとイルマは不思議綜な顔をした。

「もし、お一人でもご家族でもご友人でもない方と来られてるなら、今のあなたを見てどう思うかしら?まだ学園生時代と同じことを繰り返してらっしゃるの?」

 心底不思議だという顔でマレーナは言った。

「そうだね。一人ってことはないだろう。お連れの方がお待ちではないかな?僕たちは失礼するよ」

 コンラードの断りの言葉にイルマが悲しそうにコンラードを見上げる。

「仕方ありませんわ。また次回お会いできる日を楽しみにしています。絶対お誘いくださいね」

 顔を引きつらせながらそう言ってイルマは去って行った。そして離れた場所のテーブルに座るのが見えた。前には男性が座っている。どう見ても家族や親族ではなさそうだ。今狙っている中の一人なのだろう。それよりもコンラードが良いからこうやってわざわざ来たのだ。さっきの学友というのもイルマのことかもしれないと護衛に目をやると察したのか頷いてくれた。

 なるほど、と思いながら何もなかったかのようにコンラードと歩くと店を出て馬車に乗った。

「イルマさんとは知り合いなの?」 

 乗った早々聞いてしまった。

「知り合いって程の関係なんてないよ。夜会で数回会ったことがあるって程度。会話も覚えてないくらい少しだけだな。

 ああやって僕を見かけると声をかけてくるんだよ」

「そうなの?イルマさんは親しそうにしてたけど?」

「全く親しくない。誤解しないでくれよ。どちらかと言えばちょっと正直困ってるかな」

「困ってる?」

「そう。会う度に声をかけてくるって言っただろ?その時って毎回別の男を連れているんだ。イルマ嬢は婿を欲しいから色々探しているようでその候補たちだな。連れているのは。だから嫌がられるんだよ。立場的に僕も候補に入れるからね。そうすると公爵家の僕は位的に一番上になるからさ。

 自分の立場を脅かす存在として認識されてしまう。しかも王太子殿下の補佐という側近だからね」

「確かに。でもコンラードなら、お兄様が王位継承したら、叙爵される可能性はあるわよね」

「まあどうだかなあ。何も言われてないし。僕はフレデリクの補佐で充分かな。兄上が家にいて良いって言ってくれてるし」

「結婚はしないの?」

「え?うーん、どうかな。わからない」

「そう。じゃあ特定の相手はいないのね」

「そうだな。作る予定もないし。またマレーナと食事にいくくらいかな」

「行ってくれるの?!」

 マレーナは嬉しいとばかりに両手を叩いた。

「今日楽しかったしな。たまには息抜きにでかけるか?」

「うん!楽しみだわ!」

「それならまた出かけるか。連絡するよ」

「待ってるわ」

 嬉しさのあまりマレーナは終始にこやかにコンラードに話しかけコンラードを邸に送り届けた。

 その帰りの馬車の中。マレーナは今日を振り返り緊張と不安と幸せの忙しい一日だったと振り返った。

 でも、コンラードがまた食事に誘ってくれる。そう言ってくれたことが何より得難いものを得たと思った。自分から誘って王女に言われたからと取られるのはいやだ。ましてやマレーナの我儘というのも嫌だから、どう話したら誘ってくれるか考えていたのだ。

 それがコンラードから誘ってくれると言うのだ。幸せな気持ちで満たされていく。

「こんなに幸せで良いのかしら?」

 マレーナは王宮まで今日の幸せを思い返していた。

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