尋問
鉄男は床に突っ伏した島川を顎でこなしー。
「こいつだな?」
勇次に聞いた。
だが、勇次は首を横に振る。
鉄男と直也が怪訝な表情を浮かべる。
「でも、俺に電話して指示したのはこいつです」
裏口でさっきまでのやり取りを聞いていた。
間違える筈はなかった。あの印象的な”透き通る声”を。
顔を腫らし、鼻口から血を流した島川が壁に
凭れ掛かっている。
その傍ら、カウンターに
腰掛けた鉄男が
おしぼりで拳の血を拭った。
「あ~あ。色男が台無しだな」
鉄男の隣でハイネケンをラッパ飲みしながら直也が言った。
「金はどこだ?」
鉄男が聞いた。
「こ、ここにはねえ・・・・」
「じゃあ相棒が持ってんだな?どこにいる?」
「・・・・し、知らねえよ」
「相棒とツルんで、このガキに身代金を奪わせたな?」
鉄男は自分の傍らに立つ勇次を顎でこなし言った。
「けっ。証拠は?そのガキとお前らが喚いたところで、
どうにもなんねえだろが」
直也が奪った財布に入っていた島川の免許証に目を通す。
「島川潔。俺らと同じムジナか?」
島川は鼻で笑う。
「お前らみてえなセコい犯罪者と一緒にすんな」
直也は有無を言わさず、島川の顎をつま先で蹴り上げた。
「ぶはあぁっ!」
「誰がセコいって?」
直也は何事も無かった様にハイネケンを呷った。
「無駄口たたくな。こいつにやらせたな?」
改めて勇次をこなし、虫の息の島川に鉄男が聞いた。
「だ、誰が言うかよ・・・・」
「なら、お前の相棒に聞くとしよう」
ため息と共に鉄男が言う。
「喋らせる前に殺しちまうかもだけどな」
直也はケラケラ無慈悲に笑う。
「・・・・あいつだけは見逃してくれよ」
島川は初めて身体を震わせ、兄弟に懇願した。
「はあ?セコい横取り野郎にしちゃ、随分友情に厚い
じゃねえか」
直也がからかう様に言う。
「友情?そんなんじゃねえっ」
鉄男と直也、勇次は互いに見合わせた。
「まさか愛してるとか言わねえよな?」
「・・・・悪いかよ」
「別に悪かねえよ」
「俺がヨシを愛して何が悪いってんだ!?」
「だから悪いって言ってねえだろが。イキんじゃねえよ」
直也は島川とのやり取りがバカらしく、ハイネケンを飲み干した。
「恋人はヨシってんだな?本名は?」
鉄男が聞いた。
「・・・・あいつだけは、頼むよ」
島川の懇願を無視した鉄男が勇次に目をやる。
「ヨシってのと取引する。お前1人でやれ」
「え!?」
勇次は驚きの表情で鉄男を見た。
「お前とこのイケメンを餌に、取っ捕まえてボコる。
倍返しだ!」
鉄男は力強く言った。
「・・・・それ、古いって」
直也の言葉に鉄男は顔を赤らめた。




