62 勉強合宿
勉強合宿スタート、の前に。
お茶となにか食べるものを探し求めて食堂を探し当てた私達。偶然そこで居残り作業中だった若き料理人・タマラさんに王女様権限をちらつかせてオーダー!
「あたし、見習いでして偉いお方のお口に入るものなんて作れません!」
「いいから。私、曖昧な身分があるだけで権力とか無いから。パンとスープと、あと腸詰めとかあったら上等かな。アガータちゃんはどう?」
「あ、自分もそれで。あ、ミルクかチーズもよろしく。ヤルちゃんはそれじゃ足りないよね?」
「あうぅ、我慢しまっする…」
「いいよ、ハナ様じゃないんだから。5人前用意してもらえば、自分が1.5、ヤルが2.5人ぶんで足りるでしょ?」
「姫ちゃん様の2.5人分?……足りなさそう…」
「じゃあ7人前。料理人、頼むよ。」
「は、ははっ!」
(料理人タマラの腕前 1d6️⃣)5️⃣
「お料理の手際は、ずいぶんよろしいようですね。」
「あたくしも、タマラちゃんの料理を見るのは初めてでっする。」
「こういう職場ですから、出世には腕前より家柄が大事だったりもしますが。」
「え!アガータちゃん、料理人にお料理の腕前以外の何が必要なの?」
「殿下、料理人の世界でも上に立って下っ端料理人に言うことを聞かせるには説得力が必要なものです。礼法のズラトゥシェ先生でさえも庶民出身でご苦労なさいましたしね。いや、あの料理人さんがどうかは存じませんけど。」
「…あのぅ、お食事はこちらでお召し上がりに? お部屋までお持ちしましょうか?」
「あ、お邪魔してしまいましたね。ありがとう存じますわ。私達で持っていきましょう。帰り道も曖昧ですけれど。」
「そっちこそ、あたくしにお任せを!タマラちゃん、ありがとね!」
持ち運ぶべき料理は①スープの鍋、②皿と腸詰め他の料理、③パン。私は…(1d6️⃣÷2)2️⃣ 【お鍋を運びたい!】
「殿下、できることを仰ってください。重いですよ、途中で落として転がしますって。それはヤルに任せて、ジブンは皿とかを運びますから、殿下はパンの籠をお願いしますよ。」
「食事の準備がやってみたいの! お鍋のほうがそれっぽいじゃない。」
「じゃあ、出来るとこまでやってみましょうか。ヤルちゃん、フォローお願い。」
「アイサー!」
(ちゃんと運べた? 破滅<1d6️⃣<完璧)
6️⃣【ホラ、ちゃんと運べた! 私だってちゃんと出来るのですよ。むふん!】
「殿下、ご立派です。」
「姫ちゃん様カッコいい!」
いや、結局、私の両手とヤルミラさんの右手で1つのお鍋を運んで、ヤルミラさんの左手はパン籠を抱えていたので実態は足を引っ張っただけなんだけれど。一度、やってみたかったのよ。ああ、重かった。
「殿下。夜食のつもりでもらってきた食べ物ですけど、冷たくならないうちに食べちゃいます?」
「そうですね、部屋を使いこなせてたら鍋を温めなおすとかできたはずだけどね。ごめんね。」
「まぁ、いいじゃん☆ いただきましょ!」
★
食事は想像以上に美味しく、かの見習い料理人さんが幸の薄い感じの扱いを受けているのは社会正義的になんだかよろしくない気がした。
(正義の燃える心 1d6️⃣)2️⃣ 【まぁ、料理界については詳しくないからせめて彼女のことは、折を見て気にかけていくことにしよう】。
私の身分で軽輩の生活に口を挟むのは混乱しか産まないから慎むべきだ。と、アガータちゃんに言われてしまっては言い返しようもない。難しい問題だね。
食べ終わったら、いよいよお勉強の時間だ。アガータちゃん監督のもとでのヤルミラさん学習の進行度は(1d6️⃣)5️⃣【一通り暗記はできているけれども意味を理解できていないので応用が効かない】感じ。
なんだ。アロイス先生、優秀じゃないですか。これなら、一夜漬けでも試験はしのげそう。
(勉強会での進行 1d6️⃣+5)6️⃣+5
【むしろ、今まで何がわからなかったの?】
「そんな……自分が見ていたときは、ヤルちゃん全体的にもっとしどろもどろな感じだったのに…。」
「えっー、と、あの…」
「アガータちゃんが怖かったから?」
「そう☆ じゃなくて! えー、えーっ…と、」
そう、アガータちゃんはルックスこそ お人形のように可愛らしいのに、どことなく対面する人に緊張を強いるオーラがある。
言われている本人はいかにも心外そうにむくれているけれども、これは自分自身じゃ判断できないからね。
「アガータちゃんの教育方針って、どんな感じで?」
「めっちゃ叩かれたら〝負けないぞ〟ってなるので、強くなります。みんな、そうですよね!?」
「え、私、そんなの無理。」
「あたくしも、普通がいいです……」
「なんですって、そんなのじゃ強くなれませんよ!?」
うぅむ、必死だね、アガータちゃん。でも、彼女がそう言うのなら一理あるのかも?
「あたくしは、べつに強くなんなくても…」
ヤルミラさんはそんなだし、先日までの私でもきっとそう思ったんだろうけれど。
世の中には、背が低いみたいなハンデをものともせず頑張っている人と、私みたいに頑張っていない人がいる。私が否定してもいいような問題じゃないわね。実際、私のお勉強は実際の事件の役に立ってない。
さて、この場をどう言って収めよう。上手くできたら、私のお勉強でも役に立てた一例にできるのだけれど!