表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストアンガー  作者: さら更紗
エピローグ
25/25

エピローグ

「何考えてんですか」

 報告書を読んでいた店長は、怪訝そうに顔をあげた。

「何が?」

 スッとぼけた物言いに、俺は堪忍袋の緒が切れた。

「何がって、アキラですよ。アキラはただの十九歳の女の子ですよ。あんな目にあって、ダメージ食らわない方がおかしいでしょ」

 あれからアキラは「なかよしマート」御用達の、怪し気な病院に入院させられている。

 アキラは、クラッシュした紗英子に、紗英子の父親と母親が殴り殺されるのを、その目で見ている。

 浄化は、対象が実際にクラッシュしないと、許されない。そして、クラッシュすると、その常軌を逸した破壊力に、周りに犠牲者が出るのが常だ。

 つまり、本人が自殺の場合を除いて、クラッシュしたら、浄化する前に一人や二人は死んでいる。この仕事をしている限り、その場面に遭遇することが多いのは当たり前だし、自分が撒き込まれて死んでしまう可能性だって高い。

 これで何度目だ?

「あんた、アキラが可愛くないのかよ?」

 上司である白井に敬語も忘れて、俺は詰め寄った。アキラは白井の親戚らしい。詳しいことは訊かなかったが、アキラに引き合わされた時に、そう言われた。俺の娘みたいなもんだから、大事にしろよ、と。

「可愛いよ?」

 白井は涼しい顔でそう答えた。

「だから、アキラが望むことに応えている」

 この仕事をアキラがしているのは、本人の希望らしい。それは聞いた。だが……

「死んじまうか、壊れちまうか、どっちかだぞ?」

 すごんでやると、白井は鼻先で笑った。

「それをさせないのが、お前の仕事だろう?」

「それに」と、俺が何か言う前に、白井は続けた。

「お前の相棒は、アキラじゃないと務まらん」

「は?」

 意味が分からない。

 俺が誰だったか、知っているくせに。

 俺が睨みつけると、白井は平然とその視線を受け流した。

「アキラがまだ十九歳だとか言っているが、お前の初仕事は何歳の時だ?」

「……」

 黙り込んだ俺に、店長は部屋を出るように手を振った。

「大丈夫だよ、お前となら」

 いいセリフを言っているように聞こえるが、要するに丸投げだ。だが、どうしようもない。

 俺には何の権限もない。

 俺は黙って、部屋を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ