表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストアンガー  作者: さら更紗
5 罰
24/25

5 罰 -5

 

「キャハハハハハハハ」

 けたたましい金属のような笑い声が響いた。同時に、つぶされたような声。

 クラッシュ!

「アキラ!」

 部屋に飛び込むと、涙を流したアキラが振り向いた。その腕には父親らしい半裸の男。頭がつぶれて、血糊が付いている。

 俺はアキラの腕から父親をはがし、床に転がした。母親は部屋の隅に横たわっていた。ピクリとも動かない。

 頭上に重たい影を感じて、アキラを抱えて横に転がる。間近に振り下ろされたのは金属バットだった。

「キャハハハハ」

 冴子は笑顔でそれを振り回していた。とても女性が振り回せるスピードではない。クラッシュの時は、常人の何倍もの力が出るという。

 父親に殴られたのか顔は腫れあがり、服はほとんど着ていなかった。股の間から血が流れ、太ももから伝って血だまりをつくっていた。

 腫れた瞼の下から覗く目は、焦点を失っていた。それでも笑顔なのが禍々しい。

 俺は一瞬目を閉じた。それから心を決めると、冴子の顔を真っすぐ見た。

「もう、罪を重ねるな」

 俺は腰から銃を引き抜くと、まっすぐ彼女の眉間を狙った。

 パスッ

 銃弾は野島紗英子の眉間に吸い込まれていった。

 紗英子がゆっくり倒れていった。腕が伸ばされ、何かを掴もうとするように宙を掻いたが、そのまま身体の横に落ちた。

「……」

 静かになった室内では、アキラのすすり泣きだけが響いていた。

「アキラ、もうこの仕事辞めろ」

 俺が何度も繰り返してきたセリフを言うと、アキラはぼんやりした顔で俺を見上げた。

「……赤ちゃん」

 俺は紗英子の亡骸から隠すように、アキラを抱きしめた。

「あの出血じゃ、もうだめだ。死んでる」

 アキラは何も言わなかった。

 俺はそのまま、スマホをポケットから出した。

「あ、店長?浄化終了。後始末を頼みます」

 スマホからは、ご苦労様という店長のねぎらいと、アキラを気遣う声が聞こえてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ