還 guardare indietro
摂食障害:メンタルヘルスによる、過度な摂食。または拒食となる事。
拒食の場合、体型維持によるストレスにより、この症状に見舞われる場合が多い。
近年では 1,000人に1人の割合で、この症状になる状況があるようだ。
◇
日曜日の午後。
俺は今日も麻ちゃんのお見舞いに来ていた。
いろいろな検査をした結果、麻ちゃんの病名は摂食障害からくる合併症で、内臓器官に障害をもたらしているらしい。
今の俺は病院の中庭のベンチに座り、面会時間の午後2時まで時間を持て余している状態だ。
「よぉ、浩」
まったりと流れる一時、そんな俺に誰かが声をかけてきた。
俺の名前を呼ぶ方へ振り返ると驚いたことに、そこにいるのは親父ではないか!?
「なっ? どした親父!?」
「どうしたもこうしたもねえ。最近のヒロは目もあてらんねえからな」
なんだ?
前回の親父は入退院を繰り返す、土気色の顔色だったクセに…。今は明るい太陽のもとで見ると、健康的な容姿の細マッチョなイケオジだな…。
「俺ってそんな状態に見えたか?」
「寝言で、麻ちゃん大チュキー! って大声で言っていたぞ?」
「言うか!」
「あはは! 確かに、言っていたらドン引きだな」
親父は嘲笑い、俺の隣に座る。
「タバコを吸いたいから、外に行くぞ。着いて来い」
「俺は吸わねえ。話があるならここで言ってくれないか?」
「お前、生意気なこと言ってんじゃねぇ! ついてこいやコラ!」
親父は俺の襟元を掴み、無理やり病院の外へと連れ出した。
病院の外にあるコンビニの前には麻ちゃんの両親と母親もいる。
俺は親父に、うなじ当たりを掴まれ麻ちゃんの両親の前まで連れて行かれた。
「初めまして、浩の父です。今回の麻子さんの病状から言って、うちの美梨や浩にも少なからず責任があると思いまして…」
麻ちゃんのご両親は少し呆気に取られているようだ。
「とんでもないです。麻子は美梨さんに憧れて新体操を始めたんです。それに浩くんも麻子にいつも寄り添ってくれているんですよ」
麻ちゃんのお父さんは心を込めて言ってくれている。
今の一言は嬉しいな…。
「え? 浩がですか? お前にそんな甲斐性があったのか?」
「失礼だぞ親父! 俺に謝れ!」
「誰がお前に謝るか! お前に謝るぐらいなら、トイレに落ちたマックフライ◯テトを食った方が、まだマシってもんだ!」
「もう、いい加減にしな! 毎日毎日くだらない言い争いをして! 本当に騒がしくてすみません…。」
母さんが麻ちゃんの両親に頭を下げている。
そんな場面から、いつの間にか時間が進んだようだ。
今は麻ちゃんが座る車椅子を押し、屋上に来ていた。
「寒くない?」
俺は麻ちゃんの前に行き、目線を合わせ話しかけた。
麻ちゃんは 俺の両側の頬を触りながら俺を見つめる。
そして遠い目をしながら話し始めた。
「一番最初はトラックに轢かれたの…」
「え? 何? 轢かれたって何が? 」
どうしたんだ?
「次はね…」
麻ちゃんは両目に涙を浮かべている。
「次は体育館で、水銀燈の電気が落ちてきたの…」
「麻ちゃん? どうしたの?」
「いいから聞いて!」
麻ちゃんが俺の頬を押さえる両手に力が入ってきた。
「公園で木が倒れてきたの…。胸を潰されて苦しかったの…」
「どうしたの? いつの話?」
麻ちゃんは俺を見つめながら、大きく深呼吸をした。
「私、ヒーロ君と恋人同士になっちゃダメなの?」
「そんなこと言わないで。俺は麻ちゃんのことが大好きだよ」
麻ちゃんが俺の頬を押さえる両手が震え出した。
「だって…。前回は◯国神社の鳥居の下で…。刺されたんだよ…。すごく痛っかたんだよぉ!!」
麻ちゃんが大声で泣き始めた。
どういうことだよ…。
○国神社って、俺の目の前で刺された時じゃねえか…。




