呪 maleficio
会場内に入る俺たち3人。
俺とマリーさんとマリーさんの恋人のキアーラさん。
今回は中学と高校が合同となっているため、お客さんが非常に多い。
お客のほとんどが出場する選手の身内だが、たまにマスコミのふりをした、盗撮目的の一般人もいる。
その人たちを見つけるのも、俺たち係の仕事だ。
「すみません、先に向かってください。」
俺はマリーさん達にそう言い、1人の男性に近づく。
黒いジャケットを着た男性。
茶色いハンチングを被り、腕章を付けている。腕章には『ビタミン社』と書かれているが…。
なんだよ ビタミン社!
体に良さそうな週刊誌だな!
「ビタミン社さん、お疲れ様です。どちらのご紹介でしょうか?」
俺の質問に対し、眉間にシワを寄せる男性。
「子供に言ってもわからん! 向こうへ行け!」
「それがわかるんですよ。ホラ、雑誌社や協賛会社。各大学や高校のリストがありますので」
俺がそう言って来客者リストを見せると、その男性は走り去った。
俺はインカムを使い、すぐに入り口に連絡を入れる。
「黒いジャケットに茶色い帽子を被った中年男性が出口に向かいます。顔を覚えて、再度入場はさせないでください。腕章にはビタミン社と明記です」
「了解です。…ビタミン社って…」
不審者の報告をし、俺も会場に向かうと、マリーさんが会場の入り口から俺を見ている。
そんなマリーさん達に近づくと失礼なことを言い出した。
「ヘイ、フィーロ。お前は本当に14歳かい? シルビーよりも落ち着いているな」
不思議そうな顔をしながら俺を見るマリーさんとキアーラさん。
そんな2人に、俺はレッグバッグから学生証を見せ、ニィっと笑う。
「sono bambino.」
(お子様ですよ。)
◇
館内の中心から中学生と高校生とで別れる会場。
タイミングよく麻ちゃんとシルビーさんが左右で練習をしていた。
中山が俺に気付き、麻ちゃんの肩をたたいている。
俺に手を振る麻ちゃん。
一歩下がり、中山も俺に手を振っている。
「フィーロは恋人が2人もいるの?」
キアーラさんが俺を蔑んだ目で見ている。
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ん?
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どこだ?
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病院?
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目の前にいるのは麻ちゃんのお母さんとお兄さん。
隣には顧問の先生と山岡さん。
は? 山岡さんがなんで?
美梨ネエは?
あぁ、会社に行くって言っていたな…。
ん? 会社?
あぁ! わかんね!
「ヒーロはどうする?」
お兄さんが俺に聞いている。
どうする?
なんだ?
俺の記憶が繫がりだす…。
麻ちゃんのステージが終わり、サイドに行った瞬間に倒れた麻ちゃん。
なぜか心肺停止に陥った状態からの、AEDを使い蘇生。
今は救急車で会場近くの総合病院に検査入院をしている。
「ヒーロ?」
心配そうに俺を見るお兄さん。
「自力で帰れますので、もう少しご一緒してもよろしいでしょうか?」
「自力でって…。もう21時を過ぎているよ」
「はい。大丈夫です」
今回の時間の歪みはなんだ?
付けいる隙も無かったな…。
そんな中、看護師が身内を呼びにきた。
どうやら麻ちゃんが目覚めたらしい。
記憶障害もなく、口調もしっかりとしているとの事だ。
命に別状はないが、一応、明朝に検査をするらしい。
よかった…。
「成瀬君、今日は帰りましょう。家まで送りますよ」
新体操部顧問の先生が俺に言う。
「いいよ先生、私が送っていくよ。昨晩は美梨の家に泊まって、忘れ物をしちゃったから」
山岡さんが笑顔で顧問の先生に言っている。
え?
山岡さんがかよ…。
なんか嫌だな…。




