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 威 Prestige


 春が訪れ、桜の花が散り始める頃、俺は中学生となった。


 今日は入学式。クラス表の張り紙を見る新入生ども。まあ、俺もその一人だけど。

 一応、同じクラスに知っている奴がいるかを一通り見る。

 祐一ゆういちは別のクラスのようだ。幸か不幸か本田は同じクラス。

 付属で一軍女子の江川も同じだ。

 最悪な1年間になりそうだ。きっと、()()()()という事で俺と本田のことを皆に言いふらす事だろう。

 マジで悪いことをした、ゴメンな本田…。



 入学式が始まり、校長やPTA会長のありがたいお話が長々と続く。

 これは俺の考えだが、こいつらの話は子供に聞かせる事ではなく、来賓に対し、「あの人のスピーチは最高だった。」と思わせるためなのでは? と考えてしまう。

 だってさぁ。小学校の卒業式で校長が言っていたけど、切磋琢磨なんて言葉知らねえし!

 そして今回もそうだ。訳のわからない4文字熟語をたくさん綴っている。しかも、ろれつがカミカミですよぉ。


 そして入学式は滞りなく進行する。

 在校生、新入生。挙げ句の果てには会場全員での起立と着席の繰り返し。

 日本人は軍隊のような一致団結が好きな民族なのであろう。

 最後に校歌を熱唱する。

「大きな声でお願いします。」

 と言われるが、俺はこの中学のマニアじゃ無いので、校歌の熱唱は避ける事にした。てか、初めて聞くしね。



 入学式が終わり、教室へと戻ると、早くも一軍女子がグループを確立させていた。

 男子もなんとなく、グループができているようだ。

 楽しい学校生活を送るためにはグループを作るのは必然だが、あいにく俺には興味がない。

 好きなゲームもないし、好きなテレビ番組もない。グループに入っても話すことが無いわけだ。

 そんな事を考えていると、早速、江川のオンステージが始まった。


「成瀬ってさ、六年の時に本田にラブレターを渡したんだよ」

 一瞬、静まり返る取り巻きたち。

「へぇー」


 江川の取り巻きはあまり興味がないようだ。


「それよりさ、昨日の〇〇見た?」

「見たー! ちょーカッコよすぎ!」


 どうやら俺の恋バナなど、皆には興味がなかったようだな。ははは! ざまあねえな。


「そうなの?」

 名札に中山なかやま 夏菜なつなと書かれた、隣の席の女子が話しかけてきた。

「うん。まあ…」

「勇気あるね。私にはできないよ。成瀬はすごいね」


 あれ? なんだかホッとするな。

 ラブレターを渡すことって馬鹿がやることだと思い込んでいた。

 別に俺を誉めている訳では無いだろうけど、ものすごく救われた気がするな…。


「ははは…。ありがとう」

「付き合っているの?」

 小声で聞いてくる中山。

「付き合っていたら、馬鹿にされないでしょ?」

「そっか、ごめん」 


 中山との会話はその後、一度も無かった。




   ・*・*・*・ 




 そして、あっという間に一年が過ぎた。


 昇降口に張り出されるクラス表。俺はまたもや六組。

 クラスカラーは同じなので、ハチマキやリストバンドを買う必要はない。助かったな。

 今度は祐一と同じクラスだ。ちなみに本田も同じだ。もちろん江川も付属品なだけあって同じクラス。

 今度は二年間、同じクラスか…。

 憂鬱だ…。


 教室に入り席に着くと、早くもグループは出来上がっている。

 俺は相変わらず、どこにも所属はしない。

 そして、お決まりのように一軍女子、江川は俺の黒歴史の発表をする。


「成瀬ってさ、小六の時に本田にラブレターを渡したんだぜ!」


 江川の発表に皆は無関心だ。そりゃそうだろう。二年前の話だからな。しかも小学生の時の話だし。


「成瀬、また同じクラスだね」

 話しかけてきたのは中山 夏菜。

「そうだね」

「しかも、またまた最初が隣だね」

「出席番号順だからね。ナ行だし」

「そっか! だからか!」


 気がつけよ…。

 そんな中、祐一が話しかけてきた。


ひろし、久しぶりだな。て言うか、未だに本田のこと言われているのか?」

「さすがに今は本田も気にしていないだろ?」

「浩も気にしていないのか?」

「中学を卒業したら、リベンジかな」

「すげーな。一途だな」


「え? 成瀬は今でも好きなの?」

 俺と祐一の会話に入ってくる中山。しかも小声だ。こいつ、良い奴だな。

「手紙まで出したんだぜ。しかも江川に邪魔されて。諦められるわけないだろ?」

「そうだったんだ…。一軍女子、恐るべしだね…」


 あれ? 中山と話すのって一年ぶりだな…。




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