閑話:小さなプレゼント
心ばかりの贈り物
「なぁ、まだ箱開けないのか?」
「仕事が終わったら開けるさ。まだ書類が残っているだろう」
「えー、じゃぁ、俺が先に開けておくよ!」
「三ヶ月くらい先に戻って来られるような出張を命じようか」
「結構です!なんだよ、ケチぃ」
王城での祝賀会に向けて、ドレスの採寸とデザインの注文を終えた日の夜、定期報告会があった。
メーとラスの教育の進捗、ダンス講師が明日来ることなど多岐に渡る話のあとに、二人からだと言って、商人から購入したものを手渡してきた。
公爵家の離れに割り当てられているの予算から、自分たちの好きなものを購入していいと渡した金だがが、使用人それぞれに贈り物を用意したのだという。
ここにはいない他の使用人たちには差し入れの菓子を購入した様子だった。
ケリーには火の魔力を持つ魔羊から作ったストールで、エルガーには小さな火の魔石を取り替えて使えるカイロで、どちらもこれから冬に向かうため使う頻度が多いものだ。
スティーブンには土の魔力をたっぷり含んだ薬草から作った入浴用オイルで、数滴をバスタブに入れると疲労回復に効果があるそうだ。
アドソンは細身でありながらインクが中々無くならない万年筆だそうで、スティーブンも欲しがっていた品のようだ。
何となくおもしろくない気持ちになり、プレゼントを開けた四人と送り主の二人が話している間に、俺は部屋に戻った。
ラスの心のうちは相変わらず正直で、言葉と心の内がほぼ同等だ。
メーの心のうちは思いの外騒がしく、上下が激しい。
もう少し落ち着けば良いだろうと思うが、ラス曰く感情を押し込めてきた人間が感情豊かになるには一度騒がしいくらいになる必要があるそうだ。
よく分からないが、メーの心の内が教えてくれたのは、俺の箱の中身はペーパーウエイトらしい。
なんだそんなものかと落胆する気持ちと、なぜそんなものを贈ろうと思ったのかという興味はある。
それに、何を贈られたら満足したのかと聞かれたら正解が分からず、眉間に皺が寄ってしまう。
そんな自分の感情の波を人に見られたくなくて、執務室に戻ったのだが、アドソンが未開封の贈り物を開けようとして軽い言い合いをしてしまった。
仕事を終え、就寝前に箱を開ける。
説明の紙によると、ガラスで出来たペーパーウエイトの下に機械がついており、小さな魔石が入っているそうだ。
魔力を込めると、しばらく光って消えると説明の用紙に書いてあった。
執務机に置き、光らせてみるがガラスの中の粒がキラキラとしながら、横に回転するだけのことだ。
「子ども扱いか?」
特別な機械ではないとわかり、いったい何歳に見えているのかと鼻で笑ってしまう。
無駄な時間を過ごしたと寝室に向かうため消灯するが、機械の光が残っており、ふと振り返る。
「あぁ、これを見せたかったのか?」
ペーパーウエイトではあるが、夜には部屋に夜空を映し出す機械となるようだ。
王都ではあまり星が見えないから、これは物珍しさに購入する者が現れるだろうな。
ただ、贈るタイミングを間違えれば、一緒に夜空を見たいと誘っているようにも捉えられるため、注意をしたほうが良いだろう。
決して他の誰かに贈って誤解されないように、ラスに注意しておいた方が良い。
もう眠ってしまったかも知れないけれど、今日も解散前に話をするのを忘れてしまったから、少しだけ会いに行っても許されるだろうかと考える。
三回小さくノックして返事が無ければ部屋に戻って、明日改めて執務室に来て貰えば良いと思い直し、自室を出る。
「眠っているならそれで良いんだ・・・」
扉を開けて対応したラスが、寝ぼけ眼でポヤポヤしており、話を聞かずにスタンツェに抱きついてしまう。
胸元で頭をすりすりと擦られ、硬直するスタンツェの頭を撫でて、ラスはへにゃりとした笑顔で就寝の挨拶をする。
「なんっ・・・」
ラスがさらっと爆弾を落として扉を閉めてしまい、スタンツェは感情に名前を付けられず悶絶しながら朝を迎えるのだった。
そっと見守っている影がありました。
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