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緊急指令

急転直下

四回目の報告と共に齎された知らせに、流石のメッツェンも動きが止まる。

「三ヶ月後の夜会に、夫婦でご出席される、と」

「書類だけでも夫婦になったのがバレた。というよりも、妻の実家がうちとの縁続きになったことを吹聴して、各地でトラブルを起している」

「なるほど。ご夫婦での夜会の参加に、好き勝手盛り上がる外野の煩わしさがあるということですね」

「メッツェン、言葉を慎みなさい」

「失礼いたしました」

なぜか入室時に、ソファに着席するよう指示をされたのだが、込み入った話になるのが予想されていたのだろうと合点がいく。


メッツェンは小さく右手を上げ、スタンツェが小さく頷く。

会話の許可が下りた。

「ラス様は前回の庭の散歩の時に、張り切り過ぎてしまったようで、その後一日寝込みました」

「・・・そこまで体力がないと?」

「いえ、心が疲れたようです。本人も驚いていました。楽しい時間を過ごしただけなのに、起き上がれなかったと」

メッツェンは彼女に喜んで貰いたかったが、喜びすぎても疲れるということを知らず、悔やんでいる。


「庭の散歩で一日寝込むとなると、夜会は途中でダウンするんじゃないか?」

スタンツェの左隣に座るアドソンは疑問を呈する。

小さく唸るスタンツェが呟く。

「途中で帰ってもらっても良いが・・・」

「初めての夫婦での参加で途中で帰ってみろよ、好き勝手言われるぞ」

「・・・本来の意味での夫婦ではないからな」

誰も何も発言出来ないまま、静寂が場を支配する。


「・・・んじゃ、メッツェンに変装してもらったら?」

「なっ・・・」

スティーブンが驚きのあまり、声を出す。

「なるほど、その場合、容姿を似せられますか?」

メッツェンが落ち着いて質問出来たのは、作品の後半に似たような表現が出てきたからだ。


「存在を隠している部門の者達は、他人にそっくりに変装出来る知識と技術がありますよ」

「ラス様とご相談の上ですが、もしどうしても夫婦同伴で無ければいけないのであれば、公爵家に捧げたこの身を使っていただければと思います」

「だが・・・」

なおも言いよどむスティーブンにアドソンは問う。

「スティーブンの心配は、ダンス?マナー?」

「いや、そうではなくて」

「なるほど、注目されているならば、公爵家次期当主夫人として完璧でないといけないですよね」

「それはそうですが・・・」


メッツェンは容姿を真似たところで、所作が身につかないだろうと考える。

三ヶ月でどこまでマスター出来るのか、少し楽しみでもある。

――――ラス様と三ヶ月集中的に学んで、自信がつけばラス様が本当の若奥様として表舞台に立てば良いのよ


メッツェンが考え事から現実に意識を向けると、苦虫をかみつぶしたような顔でこちらを睨むスタンツェがいる。

「あの・・・スタンツェ様はどうされました?」

「・・・最初の話に戻るが、彼女の実家がトラブルを起している。その矢面に立たされる可能性もあるんだ」

「そこは、私ならば他人の話なので、受け流せます。私はラス様ではないですし、その家族でもありませんので」

「・・・そうか」

――――ラス様のご実家への対応は、オプションで報酬が貰える案件だわ。

ラス様は弱い人ではない。準備さえ整っていれば、社交の場でも立ち振る舞いは可能だと思う。

けれど、ご実家が絡んでくると・・・予測が出来ないな。

心を守れる手段が私との入れ替わりならば、演じきるのみ。


「私の心配は、私が粗相することでラス様と公爵家に損害を与えるかもしれないことです」

眉尻を下げ、ラスパトリウムの心配を口にするメッツェン。

――――ラス様自身は外からの評判を気にしないと思う。

元より家の外に出ていないのだから、誰も注目していないと言うだろうなぁ。

公爵家の新しい家族として紹介されてしまうから、一挙手一投足を見られるのだろう。

好意的に見られることはほぼないはずだけど、大きな粗相なく過ごせれば、次の機会に繋げることが出来るだろうな。

本当にラス様が表舞台に立つときには、しっかりサポートが出来るじゃない!



「それであれば、俺が全力でサポートしよう。君一人だけの問題ではない。あぁ、あと今回の件はいくつか報酬を用意しておく」

「ありがとうございます!謹んで拝命を承ります」

礼を述べたメッツェンは、スタンツェの表情が少し綻んだことに気づいた。


「・・・そうと決まれば、少しずつお互い慣れていかなければならない。まずは俺のことを名前で呼ぶように」

「えぇっ、首が飛びます」

「いや、飛ばないよ?」

驚くメッツェンに、即座に突っ込みを入れるアドソン。


「うちの使用人たちにはしっかりと通達するさ。問題ない。さあ呼んでみたまえ」

「・・・えっと、スタンツェ様」

「・・・分かった。では段々慣れて行くとしよう」

「畏まりました」

耳元まで真っ赤になったスタンツェは窓の方を見ており、不思議そうにメッツェンはその横顔を見ていた。

「あぁそうだ、五日毎の報告に加えて、夜会に必要な準備を進めていくから、三日に一度集まることとしよう」

「はぁっ?仕事どうするんだよ」

「どうとでもするさ。ではまた三日後に。退室して良い」

「はい。ありがとうございました」

一礼して、扉を開けると背後から声がかかる。


「あぁ、そうだ。・・・ラス、おやすみなさい」

「おやすみなさいませ、スタンツェ様」

満足げに微笑む雇い主に対して、解せぬ気持ちでいっぱいのメッツェンは、ラス様にどう説明したものかと悩みながら自室に戻っていった。



某従者『ご機嫌だねぇ』

男『問題事がすぐに片付きそうなんだ、気分は良いだろう?』

某従者『はいはい。楽しいのが一番だわ~』


毎日投稿を心がけています。

読んでいただけるだけでも嬉しいですが、良いね、ブクマ、感想などは非常にモチベが上がりますので、どうぞ宜しくお願いします。

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