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出会いの謝罪

物語の始まり始まり。

主人公はメッツェン。

 ナーロッパのどこかの国の貴族の屋敷。

玄関から二階へ上がる階段の途中、前方を歩く女性の体が傾き、思わず体を寄せる。

触れて分かるのは驚くほどの体の細さと軽さ。

それでも両者とも崩れたバランスを制御出来ず、階下へ転げ落ちた。


「怪我はございません・・・か・・・」

 私は背中を打ち付けたけれど、幸いな事に抱きかかえられたため、女性に怪我はなさそうだ。

体を起した女性への声掛けが終わらないうちに、周囲が暗転する。


************


「どうしよう・・・物語は始まってしまった」

 熱に浮かされたような悪夢から目覚めて、使用人にあてがわれた大部屋で、文字通り頭を抱えている。

私はメッツェンという名前で、ほぼ平民の身でありながら、メイドとしてランゲンベック公爵家に勤めている。

準男爵として辺境伯に仕える父を持ち、紹介状を胸に王都で働き口を探してここに流れ着いた。


 そのランゲンベック家の長男、スタンツェ様に急な結婚話が持ち上がり、若奥様となられるラスパトリウム様が到着されたのが、階段から落下する少し前の事。


 階段から落ちそうになったラスパトリウム様を支えようと、共に落下し意識を失ったという流れは覚えている。

意識を失った間に見た悪夢の中で、私は違う世界で生きていたこと、こちらの世界は読み物の中で起きていることだと知った。

本来の作品の流れでは、若奥様を階段の低いところで前方に転ばせるのが私の役目だったらしい。

 そして、それがバレずに済んで、味をしめ若奥様をいじめ抜き、次期公爵家当主夫人のための費用を横領するという役柄だ。


「そんなことをしたら、稼げる働き口を失うなんて分っているでしょうに・・・」

 作品の中では、結婚から一年と経たずに若奥様は心と体を病み、逝去される。

結婚一年以内で、夫婦らしい生活をしていなかった場合は、「白い結婚」として離婚が認められ、結婚自体無かったことになるというシステムで、スタンツェ様の物語はどんどん進んでいくようだ。

 数年後、新しい出会いにより、劇的にスタンツェ様の人生は輝きを増すことになるのだけれど・・・それにしたって夢見が悪い。


 地方のほぼ平民という環境で育ったせいで、私は酷く守銭奴になっている。

安定した高収入の仕事を夫人の逝去により失うくらいであれば、若奥様を守り、育てて、信頼される立場を得る方が良い。

そのうちお金ががっぽり貯まれば、この職場をお暇して、違う世界の知識で何か稼げるようなことをしてみても良いかもしれないとは思うのだ。


「さっきは私が突き飛ばした訳ではないけれど・・・若奥様は不安だろうなぁ・・・でも謝罪だけはしておこう」

 貴族の中でも身分が高くないという若奥様が、身近に感じられるような人間がいた方が良いということで、メイドから侍女に格上げされた私を、あんなことが合った後に近くに置いてくださるかどうかは分らない。

かといって、謝罪の一つもしないのは、使用人として対応がなっていない。


使用人用の部屋の姿見で紺色の侍女服を整え、深呼吸をしてから部屋を出た。


彼女の趣味はお金を数えることです。

でも、貯蓄だけではなく、楽しいことにお金を使うのも好きです。

高収入を得て、ちょっとした楽しみを持つことが出来る、公爵家の仕事にやりがいを感じていますね。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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