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冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました  作者: 富士山のぼり


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他人同士で生まれましょう

「別に話す事……?」


「ああ。本来こちらが今日君に来てもらった件なんだ。

君のご両親の事と、ディーツェ領に関する事だ」



 そう言われて思い出した。

酷い話だが殿下の告白?で慌ててしまって完全に忘れていた。

それにしても二人の存在が私の中でどれほど軽いのかが改めて分かる。

先程の会話からするといい話ではないだろう。



「イェレナの出身は記録ではディーツェ領だ。

調べるうちに彼女の履歴に色々齟齬があるのが分かってね」



 殿下はイェレナの背後を調べた件を私に語った。

そこで聞かされた話は身内とはいえ全く擁護出来るものでは無かった。


 貴族は自分の領地をそれぞれ治めている。

通常、社交シーズン以外は自領に居て領地経営に努めている事が多い。

ところが父や義母はいつも王都の侯爵邸に居たままで気ままな生活をしていた。

王都の学園に通う私達姉妹ならいざしらず、普通ならまずありえない事だ。

つまりそれは自領の経営を完全に人任せにしていたという事である。


 

「君のご両親が領地を任せていたのは領都に居る侯爵邸の家令だ。

要するに彼が今回の件の元凶なんだが」


「はい……」


「彼はその立場を利用して帝国と結びついていた。

賄賂を貰う見返りに不届き者達に自領の領民としての籍を与えていた」



 私は眉をひそめて項垂れた。

生活費と遊興費だけ送ってもらって仕事に関しては送られてくる書類に云われるがままサインだけしていた結果だ。

とても責任ある領主の行いではない。



「王家に仇なす人物に領籍を与えた罪は重い。領主の責任を果たさずに放置していたという事もね」


「……」


「そんな人間に王国の大事な領地を任せる訳にはいかない。

ディーツェ領は王家預かりとさせてもらう事になったよ。

君のご両親は気の毒だが貴族籍剥奪だ」


「そうですか……」



 一応身内とはいえ援護のしようがない。

侯爵家の行く末がどうなるかは国王陛下の判断次第という訳だろう。



「しかし、侯爵領にとっては幸いな事に君がいる。

この度の不祥事に責任が無い、正当な侯爵家の血を受け継ぐ後継者がね」


「え……?」


「ディーツェ領を治めるのは君だ、ディーツェ嬢。

……いや、フリーダ・フォン・ディーツェ次期侯爵か」


「!?」


「卒業してからの事だが我が国最年少の侯爵閣下の誕生だね。

おめでとう。もちろんわが王家も侯爵領の統治に協力するよ」



 いやいや、どういう事!?

領地取りつぶしにならないのはありがたいけど私が侯爵って!

放課後にいきなり聞く話じゃないでしょ!



「驚いただろうけどこれが最善なんだ」


「そ、そうかもしれませんが、何と言うか、その、急な話で……」



 驚くのは当たり前ですと叫びたかった。

しかし小娘の私にこんな大きな話の行く末を決定出来る事でも無い。

それに時間を掛けようが掛けまいが王命で決まった事は決定事項だ。

従うしかない。



「ではそう云う事で、早速書面を確認してくれ。

君が学園を卒業した時点で爵位授与と侯爵領を返還するという内容だ」



 殿下が呼び鈴を鳴らすと貴族院所属の法務官と書記官が入室して来た。

前もって準備していたらしい。

私は書面についての説明を受けてはひたすらサインをするという事を繰り返した。

 

 これで愚かな両親と妹はまともな人生を断たれて私の人生と道を完全に違えた訳だ。

あわただしく手を動かす一方でその重い事実を私は漠然と認識していた。

三人とも自らの行いで自滅した様なモノだ。

しかし亡き本当のフリーダの溜飲も下がったのかもしれないと。



「じゃあ、お披露目は後日だけど先に父に挨拶しておこうか」


「えっ」



 そんな簡単にいきなり!? 殿下の父って国王陛下でしょう!?

心も頭も話の展開の早さに追い付かない。



「あ、あの、殿下……」


「さぁ、こっちに来て」



 結局、あっという間に謁見の間に連れてこられた。

心を整える暇もなく国王陛下にいきなり対面をする。

混乱した頭のまま膝をつき臣下の礼を執ると国王陛下の重々しい声が聞こえた。



「面を上げよ」



 私は顔を上げて陛下のご尊顔を見据えた。

どことなく殿下の面影があった。



「ディーツェ次期侯爵。これから色々わが王国の臣として頼む。……色々とな」


「……王国の繁栄に微力を尽くします」



 何も考えて無かったがどうにか言葉を絞り出した。

最後に国王陛下が殿下の方を見た気がする。そういう事なのだろうか。



「では今日の用事は終わった。残ったのは家族とのお別れだね」


 

 殿下がそう言うのと同じタイミングで父と義母が連行されてきた。

縛られてはいないものの衛兵に連れられている事が今の状態を示していた。



「君の口からちゃんと別れの挨拶をしたいだろうと思ってね」



 そう言う殿下の方を一度見て、私は二人に向き直った。



「フ、フリーダ! 頼む! お前からも陛下にとりなしてくれ」


「お願い、フリーダ! 私達を助けて!」


「……お父様、お義母様」 


「「フリーダ……」」


「庇い様もありません。大人しくご自分の立場を受け入れてください」


「「!」」



 私は元のフリーダに成り代わって言った。



「親に子を捨てる権利があると言うなら子にだって親を捨てる権利があるんですよ。

私はそこまで思わないけど、あなた方流で言ったらね……。

来世があるなら今度こそ他人同士で生まれましょう。お互いの為に」


「ま、待て、フリーダ! 誤解がある様だ! 聞いてくれ!」


「フリーダ! この人でなし!」


「永久に、さようなら」



 そう言った私の目から涙が勝手に出てきた。私自身の感情では出る筈も無いのに。

先程、フリーダの溜飲が下がったのではと思ったが違った。

これが本当の優しい淑女、今は亡き本物のフリーダの家族への思いなのだと知った。

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