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冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました  作者: 富士山のぼり


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12/27

勉強不足だった様です

 狩猟祭は盛大に始まった。初めて見るけど規模が凄い。

何せ学園の全員の生徒が参加するからだ。

この世界では狩猟も重要な貴族の嗜みという事で大方はやる気に満ちている。

平民は平民で名をあげるチャンスらしい。

成績いかんでは騎士団の目に留まる事もあるそうだ。


 狩猟祭当日は王都近郊の山に現地集合となっている。

王都近郊の山だから大型魔獣などの危険な存在は出現しない。

そして当日そこに行く足が無い者は一度学園に集合して学園所有の馬車で向かう。

利用するのは要するに私の様な訳あり貴族の一部と平民達である。


 狩猟と言っても魔獣を相手にするからそれなりの護衛は存在する。

前もってこの日から学園が雇った冒険者達が早朝から狩猟場と定めた場所を囲う様に守る形で配置されている。

万が一にでも外部から危険な魔獣が来ない様に安全な狩猟場を設定する為であった。


 そして、王都の警備団はというと最低限必要な人数しか動員されていない。

王都警備団は組織上は王国騎士団の一部であり国軍である。

常に何か有事に備えている訳であるから、王立とはいえどたかが学園の一行事に一々軍など動かす訳がない。

派遣されている少数は要するに殿下をはじめとする一部のVIPの護衛の為だった。


 学生達の到着時間は違っていても始まる時間は同じだ。

学園生徒全員の集合を確認後、殿下の訓示を森の手前で全員整列して聞く。

その後、生徒達は事前に決められた組に分かれてそれぞれ森へ散っていった。

時間が来たら一斉にスタートという訳だった。



「おや、ディーツェ嬢はやはり後方で回復要員をするのかい?」


「もちろんですわ、殿下。私は回復魔法しか使えないのですから」



 殿下は生徒達への挨拶が終わると私達と共に一旦後方の待機場所にやって来た。

私にもしきりに狩猟に参加させようとしていたがなぜなのだろう。

この世界にパワハラというワードはまだ生まれていないからしょうがない。



「いや、それでも問題ないだろう?

強力な回復魔法は過剰回復を使って攻撃手段とする事が出来るから」


「……そうなのですか?」


「……知らなかったみたいだね。回復魔法の使い手は初めに習う事なんだが」


 

 知らなかった。

そもそも初めてリオを治した時からしていきなりだったから。

その後治療をする時もいつもただ何となく治れと念じていただけだ。

 


「どうも勉強不足だった様です」


「どんな勉強をしたのか興味が湧いて来たよ。良ければ後で教授してくれ。では」 



 殿下は国軍の少数のお供を連れて狩猟に参加する為に戻って行った。

殿下の参加は特別参加の様なもので順位はつかないらしい。

周囲に人が居ないのを確認してから私は魔法迷彩(?)して肩に居るリオに質問した。



『聞いてたわよね? そういうものなの?』


『当たり前だ。常識だろ、常識』


『……非常識で悪かったわね。過剰回復ってどう使うの?』


『どうも何も、必要以上の回復魔法をかけるだけだ。

要するに体の自然回復力を過剰にさせてしまうんだな。

その結果、肉体に負荷がかかって逆に別の形で破壊が進んでしまうんだ』



 へー、そうだったのね……全く知らなかったわ。

薬も飲みすぎれば毒と同じような物か。気を付けよう。



『お前いつも普通に治してるからそこの所の見切りが上手いんだと思ってたぞ』



 そんな事を言われたら急に使うのが怖くなってきたわね。

今まで漠然と治れと思って使ってただけだから。

もしかして治り過ぎろとでも思って使った場合にそうなるのかしら。

まあ、どのみちそんな機会はないからいいか。


 その後私は回復要員として後方で待機していた。

といっても、待機所でクラーラ様と共に紅茶を飲んでお菓子を食べているだけだ。


(……これは単なる野外でのお茶会では?)


 そんな事を思いつつクラーラ様に紹介された令嬢達とのんべんだらりと過ごした。

貴族令嬢達にとって狩猟祭とはピクニックのようなものらしい。

こうしている間に殿方は必死に狩猟に明け暮れているのねぇ。いいのかしら。


 それはともかく貴族令嬢はほぼ回復要員であって狩猟に参加している女子はほぼ平民だ。

殿下もそれを承知で私に狩猟に参加せよとは人が悪い。


 私も中身が平民女子であるからには狩猟に積極的に参加すべきなのかもしれない。

しかし、わざわざ異世界に来てまで血なまぐさい事はしたくない。

元格闘女子ではあっても狩猟女子になった覚えはない。なるべく平穏に生きたい。

そんな気持ちで紅茶を啜っていると突然森の奥から大きな声が聞こえた。

歓声や雄たけびでもない。悲鳴だ。

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