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冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました  作者: 富士山のぼり


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異世界っぽいイベントだこと

 最近は学園でもいい意味で干渉を受けずに普通に学校生活を送れている。

妹関係に関しては嫌がらせをリオの協力で事前回避出来ている事が大きく無視を決め込んでいられる様になった。

そしてようやく私の外見も生来のモノに戻ってきた。

まだ痩せ気味だけどどこから見ても気品ある美しい貴族令嬢だ。中身はともかく。


 更に教会併設の医療院に行く事で学園の外にも自分の居場所を見つけた。

大人数の人がいる限り病人も同様であるからある意味顧客は絶えないともいえる。

いずれ私が医療所でも開設した時は対応さえ悪くなければ患者は絶え無さそうだ。

病院が繁盛するのはどうかと思わないでもないけど。


 この調子で技術?と人脈を築いて貴族社会からフェードアウトもいいかもしれない。

そしていつか市井に出て異世界知識で無双ライフを送るんだ……。


 そう。そんな風に思っていた時が私にもありました。

つい最近、殿下に生徒会へ誘われるまでは。


 折角殿下のおかげで安定したと思われた生活は殿下によって見事に破壊された。

案の定、学園では生徒達からの嫉妬の目。代わってあげていいんだよ?

医療院に行く時間も取り上げられて、再び別の形の暗黒生活が始まりそうだった。

やりたくない事をする人生は最悪だ。



「やあ。早いね、ディーツェ嬢」


「はい。今日からよろしくお願いいたします」



 表面上は完璧に淑女としての礼を尽くす。

社会人時代の二面性が非常に役に立つ。嫌な立ち方だが。



「全員居るね。それでは早速始めよう。今日の議題は例の件だね」


「はい。狩猟祭です」



 殿下の言葉に副会長のヴォルフ様が答える。

はて、しゅりょうさい? 何の事やら。そう思ったが話を聞いていて理解した。

フリーダの記憶にもよるとどうやら王立学園で行う有名なイベントの一つらしい。


 近郊の森を締め切ってチーム対抗で狩猟を行って数を競う様だ。

一応平民を含めた学園在籍生全員が参加して狩る獲物は魔獣である。

何とも異世界っぽいイベントだこと。

 

 男性だけでなく女性も参加は可能だけれど腕に覚えのない者達は回復要員になる。

警備に関しては別に手配されているが全員参加の目的があるからだ。

もちろん私の希望は後方の回復要員である。




「前回と違ってレッドボアが増えている様だから警備を増やす必要が……」


「あそこの木は火災で消失して見通しが良くなったから……」


「回復要員の方々の待機場所をあと一つ増やす必要も……」


「組割りを考えると配置はここの方が……」



 新入りの私を置き去りにして議論は進む。その方がありがたい。

私はこの会議で大体下っ端の役割となる書記を仰せつかっていた。


 何回も行っているイベントにしては会議は意外と長引く。

学園の敷地で催すイベントではなく、自然のフィールドでの事だからだ。

会場と警備の手配と配置場所。参加人数と組み分け。現地環境の変化。

行う場所は毎年同じでも諸条件が変わってきている。


 日本の学校の催し物の場合、通常は学校側が前面に来るはずだがここでは違う。

催し事に関しては細かい予算組みから手配まで全て生徒会がやるらしい。

成程、ここの教師の方達は全く関与しないのか。

特にイベント担当職員が居る様子も無いしこれじゃ人手が足りなくなるわね。

学園は文字通り一つの小さい社会らしい。



「すると今回の予算は昨年より多くなるな」



 殿下の言葉が聞こえる。



「ええ。大体160万ゴルドくらいでしょうか。ではディーツェ嬢」



 予算の議論を纏めたヴォルフ様が会議内容を筆記している私に話を振った。

数字を聞かれたと思って顔を上げて返事を返す。



「はい、1,596,413ゴルドですね。但しB案の場合は1,568,538ゴルドです。

そしてC案の場合は1,591,226ゴルドと上がります。

予備分を除いて想定した金額ですと……」


 

 ヴォルフ様の奇妙な表情に戸惑う。

ん? あ、話を遮っちゃったのか。まずかった。

そう思っているとヴォルフ様が言葉を続けた。



「いや……計算して仮記録しろと言おうと思ったのだが、随分計算が早いのだな」


「そろばんを」



 子供の時にやってましたから。

言いかけて気づき、続く言葉を呑み込む。



「ソロバン?」


「いえ、あの、そろそろ晩ご飯の時間だなぁ、と思いまして」


「「「「「……」」」」」



 今度は静寂に変わって何とも微妙な空気が流れる。

するとヴァルター様が笑い出した。



「ははっ! おいおいディーツェ嬢、夕食には早すぎるぞ!」


「くくっ……」


「ぷっ……い、嫌ですわ、フリーダ様」



 マルセル様とクラーラ様も腹を抱える。

どうやら冗談と思われたみたいだ。私の変人伝説がまた一つ出来てしまったらしい。

殿下は笑っていない。

あれ? 笑い成分が足りない王家にしてはおかしいわね?

まあ笑われるよりはマシか。



「す、すみません、私ったら。恥ずかしいですわ。おほほ」



 危ない、セーフ。心の中で両手を広げる。何でこう抜けているんだろ、私は。

しかし最悪の誤魔化し方だったなぁ。

食に執着するイメージが助けてくれたわ。嬉しくないけど。

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