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同居人  作者: JUN
7/20

いつも一緒

 朝起きたとき、一番最初に目に入るのは覗き込むようにして俺を見ている霊田さんの顔だ。そして寝る前には、霊田さんに見送られて布団に入る。家に居るときは、常に霊田さんが隣にいる。

 そして、霊田さんは俺の行動全てを見守り、夜中には犬と見つめ合っている。

 あんまり見つめられるのも、心地悪い。

「行ってきます」

 家を出て、初めてほっとしたと感じ、霊田さんと犬に罪悪感を抱いた。

 会社へ着き、机について今日の仕事の下準備を確認していると、同僚が声をかけてきた。

「おはよう。何か影谷、痩せた?」

「ああ、ちょっと締まったんですわ」

 俺は笑って、自慢げに腹を叩いた。

 同僚は何か言いかけたのを引っ込めてから、笑顔を浮かべ、

「困ったことがあれば何でも相談に乗るからな」

と肩を叩いた。

「おおきに」

 俺は答えて、

「じゃあ、行ってきます」

と立ち上がった。

 一人ずつに割り振られた営業車に乗り、発進前にミラーを確認し、飛び上がるほど驚いた。

「うわっ、霊田さん!?」

 助手席に霊田さんがいた。カバンを乗せていたが、幽霊なのでそんなものは些細な問題らしい。

「びっくりしたぁ。

 あ、そうか。霊田さんもたまには散歩とかしたいん?」

 霊田さんは俺を見つめながら、はい、と頷く。

 まあ、永遠にあの部屋の中ってのも気の毒だと思わなくもない。

「相手には見えへんの?」

 はい。

「じゃあええか」

 俺は車を発進させた。

 こうしてこの日から、俺と霊田さんは一日中、トイレと風呂以外は一緒に行動することになったのだった。


 食い入るように俺を見ている霊田さんの視線も、段々と慣れてきた。

 霊田さんは俺をよく見て、家で過ごす時に色々と代わりに家事をしたり先回りして物を取ってくれたりして助けてくれるし、喋れるようになって、セールスを俺の声音で断ってくれるようになった。これらはとてもありがたい。

 実家では家事を母にしてもらっていたのを、転勤以来自分でしなければいけなくなって大変だったのだが、気付くと、霊田さんがしてくれて実家にいた時以上に楽になっているような気がした。

「何か、至れり尽くせりやなあ。悪いなあ」

 霊田さんは、気にするなと言うように首と手を振った。

「お礼いうても、食べられへんし……線香とかお礼になるん?」

 いいえと首を振り、霊田さんは、俺の声で、

「気にせんといて」

と言った。

 それを聞いた時の気持ちは、何とも言い難い物だった。「これで会話できる」「おもしろい」という肯定の気持ちと、「何となく気持ち悪い」という否定の気持ちが同時に沸き起こり、とっさに、

「おお、これで会話したら、延々と独り言を言う人みたいやな」

と言って笑った。





お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

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