第四話 出会い
ちょっと希望が見えます。
踏切の音が歪んで聞こえる。
原因は恐らく疲労だ。
気がつくと俺は変わり果てた姿になっていた。
カーブミラーに映った俺の姿がそれを証明している。
ここんとこ、雑草しか食べていない。
飲み物もエナジードリンクだけだ。
俺って生きている意味があるのか?
仲間もなにもかも失って誰からも嫌われて、
俺が死んでも誰も悲しまないと思う。
「ふぅ…」
出来るなら元の世界に帰りたい。
あの出来事をなかったことにしたい。
なんであんなことをしてしまったんだろう。
…生きる為だ。
生きる為に俺は人間達を虐殺したのだろうか?
今思うとそんなことしなくても普通に稼いで普通に生活していけばよかったと思う。
あぁ、馬鹿だ。俺は大馬鹿だ。
俺のせいで仲間が死んだんだ。
罪悪感に押し潰されそうになる。
もう限界だ。
気がつくと俺は会社の屋上にいた。
ここから飛び降りたら仲間の元に逝けるのか?
ここから飛び降りたら楽になれるのか?
金属フェンスに手をかける。
足でよじ登り金属フェンスの上に立つ。
不思議と怖くはない。
そよ風が気持ちいい。
下からは車の音が聞こえる。
俺はこのほうがお似合いだ。
もう、終わりにしよう。
「…最期くらいはいいもの食いたかったな。」
そう呟き、飛ぼうとした。
その瞬間だった。
「おい、死ぬのか?」
「え?」
誰かに後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには
オークがいた。
「なんで…お前が…ここに…?」
「気づいたらこの世界にいた。」
「話しかけないでくれ…もう限界なんだ。」
「本当にそれでいいのか?」
「…?」
「死んで償うのか?」
「だって…俺のせいで仲間が…」
「それは違う。死んで償うなんて。」
「じゃぁ…どう償えばいいんだよ?」
「生きて償え。」
「…は?」
「生きることが償いだ。生きて、努力して生きろ。そうすればいずれは人間達にも認められる。」
「…綺麗事ばっかだな。」
「綺麗事ではない。それと、お前顔ヤバいぞ?」
「ライバルに助けられるとはな…」
「取り敢えず、そこから降りろ。」
「…分かったよ。」
床に足をつける。
「にしても、お前には群れとかはいないのか?」
「俺は一匹だけでこの世界に転移した。でも、お前みたいにこの国を支配しようなんて思わなかった。大人しくしたんだ。その結果、俺は国から見逃された。人間からは歓迎を受けた。」
「ちょっと待て。なんで俺がこの国を支配しようとしたのを知っているんだ?」
「噂だよ。噂。」
「成程…」
「あと、その顔から察するにお前最近まともな飯食ってないな?」
「そうだな。雑草しか食ってない。」
「これ、やるよ。」
そこには懐かしの唐揚げがあった。
「…!」
「懐かしいだろ?よく味わえよ。あとこのことは秘密にしてくれ。」
「…いただきます。」
美味しい。あの味が再び口の中に広がる。
「美味いだろ?」
「ありがとう…」
「お前…泣いてんのか?」
「え?」
いつの間にか俺の目は涙で溢れていた。
「まぁ、仕方ねぇよな。しばらくまともな食事とれてなかったんだもんな。」
「…」
「…どうしたんだ?何か言いたそうだが…」
オークに抱きつく。
「…?!ちょっ、おい!こんな所誰かに見られたら…!」
「寂しかった…悲しかった…」
寂しさと悲しさが爆発する。
やっと友達が出来た。
嬉しい。とても嬉しい。
「寂しかったんだな…よしよし。」
「ずっと…側にいて。」
「はは…それは無理だよ。」
「うぅ…ひっく…びぇ…」
そして、しばらくして俺とオークは別れた。
そして、いつもの会社に行く。
第五話へ続く。
よかったね!ゴブリンくん!