13.葵ちゃん、いろいろ気になる!?
最近、ばぁさんがネットフリックスで韓国ドラマを見るために居間のテレビを独占している。おかげで僕は自室で見たいテレビ番組を見る。すると、葵さんはタブレットを持って僕の部屋にやって来る。そして、おもむろにベッドに寝転がるとタブレットを操作してユーチューブを見始める。頬杖をついて。その姿を見ながら僕はテレビのボリュームを少し下げる。
「葵ちゃん、これが気になる」
そう言って葵さんが指さした先には僕が買い置きしているお菓子がある。
「これ、食べたいの?」
「これ、食べたい!」
一箱手に取り。個別包装されているお菓子を取り出しパッケージを開けて葵さんに手渡す。嬉しそうに受け取り、それをタブレットの横に置くと、一つつまんで口に運ぶ。そして何事もなかったように再びタブレットの画面を見る。
「ご飯もちゃんと食べないとママに怒られるよ」
夕飯前のこの時間にお菓子を食べることを母親の菫さんは良く思わない。だから、葵さんはこっそり僕の部屋に来てお菓子を食べるのだ。
「うん…」
ちゃんと聞いているのかどうだか判らないような返事をして、また一つ口に運ぶ。そこに菫さんが様子を見に僕の部屋へやって来た。
「あー! 葵ちゃんお菓子食べてるの?」
「じぃたんがくれた」
まあ、確かにそうではあるのだけれど…。菫さんの視線が痛い。
公園で遊んでいる時。
「葵ちゃん、あれが気になる」
その言い回しが何とも可愛い。どこでこんな言葉使いを覚えたのだろう…。
「どれ?」
すると、すべり台へ登って行く。普通の階段ではなくてボルダリングの壁を。僕はてっきりすべり台を滑って降りて来るのかと思い、その下で待つ。
「じぃたん、こっち!」
葵さんが呼んだ先はすべり台ではなくて、ポールに使って降りられるようになっている場所だった。当然一人で降りられるわけもなく、僕に手助けをして欲しいのだろう。僕がそちらへ移動すると待ってましたとばかりに床から少し距離のあるそのポールに飛びついた。
「うわあ!」
咄嗟に受け止め、ゆっくりポールの下まで降ろしてやる。
「葵ちゃん、消防士だよ」
なるほど、消防士の出動シーンがやりたかったらしい。それにしても無鉄砲というかなんというか。僕が受け止めてくれる前提での行動なのだろうが、還暦を超えた僕をそんなに信用するのは少しばかりギャンブルが過ぎる。
雑貨屋に買い物に行くといったら葵さんも行きたいと言う。散歩がてら一緒に連れて行く。僕が用事を済ませると、葵さんは玩具コーナーへ走って行く。
「葵ちゃん、これが気になる」
おもちゃを手に取り上目遣いに僕を見る。
「じゃあ、ちょうだいなしに行こう」
レジで精算が終わると、そのおもちゃを嬉しそうに抱きしめる。店を出ると葵さんは立ち止まったまま動かない。
「抱っこする?」
そう尋ねると「うん」と頷く。僕は葵さんを抱きかかえて帰る。ずいぶん重たくなった。僕が衰えるのと反比例して葵さんは成長していく。嬉しいことではあるのだけれど、いつまでこうして抱っこしてあげられるのか…。まあ、いい。出来る間はいくらでもやってやろう。




