11.七五三
8月に誕生日を迎えた葵さんは3歳になった。11月15日は七五三。葵さんも今年は七五三のお祝いをする。
「パパ、10月26日は仕事を休める?」
葵さんの母親である菫さんにそう尋ねられる。まだ9月の中頃だと言うのに、ずいぶん先の予定を聞いてくるものだ。
「まあ、先のことだし都合は付けられるけど」
「葵の七五三やるから」
なるほどそう言うことか。カレンダーに目をやると、既に予定が書き込まれている。そして、ちょうどその日は大安だった。
10月26日。快晴。天気にも恵まれて絶好のお祝い日和となった。娘夫婦は7葵さんの着替えがあるからと、先に家を出る。その後で地元の天神様で待ち合わせをすることになっている。僕たちが着くと菫さんの旦那である勇太君の家族は既に来て待っていた。
みんなでお辞儀をして天神様の鳥居をくぐる。太鼓橋を登ると見降ろす池にはたくさんの亀が。しばらく立ち止まって亀を眺める葵さん。それから藤棚の回廊を進んで本殿前へ。
藤は時期ではないのだけれどゴールデンウィークの頃は見頃で藤祭りも開催される。今はちょうど菊祭りが開催されている。
みんなでお参りをして写真を撮る。それから天神様の敷地内にある料亭で食事をとることになっていたのだけれど…。
「あれ? 営業は夜からになってるけど? ちゃんと予約したの?」
「してない…。普通にやってると思った」
菫さんに窘められてバツの悪そうな勇太君。すぐさまスマートフォンで近くの良さげな店を検索。すぐそばのショッピングモールに入っているしゃぶしゃぶの店を見つけた。そして、菫さんが即予約した。幸い人数分の席が空いていたようだ。
店に着いて葵さんを着物から普段着に着替えさせる。レンタルの着物を汚したら大変だ。席に着くとすぐに料理を注文。間もなくメインのお肉が運ばれてくる。野菜やその他は自分たちで好きなだけ取りに行くスタイル。食べ放題メニューだ。
「いただきます!」
僕はひたすら食べ進め一足先に腹を満たす。妻は久し振りに会った先方の家族と話が盛り上がっている。葵さんもたくさん食べた。お腹一杯になると、じっと席に座ってはいられない。
「お散歩しようか」
僕は葵さんを連れてショッピングモールを散歩することにした。
「甘いのが食べたい」
葵さんが言う。確かにポップコーンの甘い香りが漂ってくる。そこはこのショッピングモールに入っているシネコンの前。
「じゃあ、ポップコーンを買いますか?」
「うん!」
お腹一杯のはずなのに、こういうものが別腹なのはみんな同じだ。キャラメルポップコーンを買って席に戻った葵さんはご満悦の表情でポップコーンを頬張った。




