4.遺跡
コンコンッ
『こんばんは』『クロです。遅くなりました。』
『はーーい。待ってましたー。』
ガチャッ
ノルンくんが元気良くドアを開けて出てきた。
玄関を開けた目の前に大きな机があり、家族全員で食事をしている様子だ。その中に件の毛のない生き物もいた。
確かに、毛、鱗、羽もなく…見た事がない。
今日の商売中にも記憶を辿り、何か該当するものは無いかと考えていた。思考を走らせた結果、記憶の片隅で思い出した事があった。
『おじゃまします』
『わざわざ、すみません。息子が無理を言ったようで』
『いえいえ、私の方が興味を持ってお願いしたんですよ。良かったら熊人の村で買い付けたリンゴです。どうぞ』
『ありがとう御座います。クロさんも良かったらご飯食べて行ってください』
『クロさん、この子がいってた子。ミユ!』
ノルンくんが座っているその生き物の肩を両手で掴みながら紹介してくれた。
『はじめまして、私はクロと申します』
『ハジメマシテ』
ミユと言う子は拙い感じで返事を返してきた。
私はとても興味を惹かれた。目の前の見た事もない外見をしている少女は言葉を理解している。ノルンくんが昼間話していた様に言葉が分かっていない筈だ…にも関わらず3日の内に少なからず言葉を会得しつつあるのだ。
『君は』『何処から』『来た?』
『………。』
言葉を区切り、ジェスチャーを交えながら問いかけたが少し難しかった様だ、考える様子で黙ってしまった。
暫くすると彼女の瞳が潤いだし…泣きはじめてしまった。
涙を見ると共に私の中で思い出していた記憶のモノとは違うのだろうと冷静に判断していた。
知らない環境に置かれ、不安の中我慢していたミユに限界がきてしまったのだ。
ノルンくんが慌てて慰めつつ、別の部屋へと連れて行った。
その場にいた全員が困った顔となった。
少ししてノルンくんは元の部屋へと戻ってきたため私は口を開いた
『ノルンくんごめんね、やはり私にも分からない。見た事も聞いた事もない』
『そっかぁ』
『ただ、一つね思い当たるモノがあったんだけど…どうもソレも違ったみたいなんだ』
『思い当たるモノって?』
『私の行商人仲間に聞いた話だから定かではないけれども、この森からずっと東に行ったところに住んでいるモノの外見にとても近いと思う。まぁ、話に聞いただけだから本当に分からないがね』
『東に行ったところ……』
『彼女はとても賢いようだね。3日前は全く言葉がわからなかったのだろ?』
『ええ』
『1度彼女が倒れていたと言う所まで連れて行ってみてはどいだい?何か分かるかもしれないよ』
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研究者としての興味心があった。弱い部分をあまり見せてはいけないとも思っていた…だからこそ恐怖と不安を押し殺して過ごした…何故だろう、急に心が耐えきれなくなり勝手に涙が零れ出してきて止まらなくなってしまった…
まぃとぉ、。。
舞人に会いたい…帰りたい…悪い夢なら覚めてほしい…どうしてこうなったんだろう…暫く泣き続けている内に気が付いたら寝てしまっていた
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我々、調査隊がシェルターを出て5日。
観測していた震源地に到着した…
先発させていた探査機によって既に分かっていた事ではあったがそこには大きなクレーターがある。実際にはこのクレーターに降り積もった雪を除ければもっと深いのであろう。
クレーターの中心部には何やら小さな山が出来ている。
ここ数日、このクレーターに近づくにつれ探査機の通信にノイズが酷くなっていた。これより先は我々自身の目で、足で確認しなければならない。
その様な状況にも関わらず研究者として心が躍っている。不安よりも好奇心の方が勝るのだ、どうやらそれは私だけでは無い。一緒に来ていたミユ、タスク、チヒロも皆目を輝かしている。
我々4人は雪を除きながら先へと進んだ。雪を除けた大地から見える氷床は異質で、1度溶けてから固まったのであろうか?中心部の山に向かって波紋のような波をたてて固まっていた。
また、普通の氷とは違い虹色にキラリと光っているのだ。サンプルとして回収の必要有。更に中心へ向かって移動。山の正体が見える。
何かの鉱石の様だ…我々4人はそれぞれ別の分野の研究者だが誰一人としてソレが何の鉱石なのか判らなかった。
周りの状態から察するにこの鉱石の塊は空から降ってきた?つまり、隕石というやつである…
それを理解したと同時に、ゾッと背筋が凍る…
もし、万が一にも、この塊の落下点がズレて我々のシェルターにぶつかっていたのであれば…今、ここには立って居なかったであろう。そう思い、俺はミユと視線を合わせ彼女の手をギュッと握った。
我々は目の前のソレを掘削し持ち帰られるだけ持ち帰る事にした。掘削を終え、帰路に着こう言う時であった…
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