2.ノンとミユ
トントントントンッ
いい匂いがする…大好きな舞人の背中、
キッチンで何か作ってくれてるみたい…
『ん?、ミユ起きたの?出来るまで時間かかるからまだ寝てていいよ』笑
いつもの優しい舞人。朝が苦手な私の為に朝食を作ってくれている…
『おはよぉー。マイトありがと。』
後ろから軽く彼をハグして朝の挨拶をする。
『おはよ。ちゃんと顔洗ってきなぁ。今日から調査に行くんだし荷物の確認とかしっかりしなよ。』
先日、私達の住んでいる地下シェルターは過去に無い大地震に見舞われた。どうも、地上で何かが起きたらしい…。
私と彼は研究者でして…同じ研究チームに所属している。地上で何が起きたのかを調査する為、今日から他の調査隊メンバーと共に遠征へと出掛けるのだ。
私達の住んでいる地下シェルターは人口10万人程の大型シェルター。私の生まれるよりずーっと昔…500年くらい前から地球は氷河期に入ったんだって。
氷河期に入って沢山のヒトや動物が死んじゃって…地表では生活できなくなった人々は地下深くに大型のシェルターをいくつも作って移り住んだの。だから昔の資料にあるような景色なんて見たこと無いし、太陽だって見たことない。小さい頃、栽培用のプラントに社会見学で行って…植物や動物に興味を持って…資料なんかを読みあさっていくうちに、世界が見たいって思ったの‼︎
で、気が付いたら研究者になってました笑
今の仕事が本当に好き。そして、初めて地上調査の選抜メンバーに選ばれた‼︎やっとこの目で地上を見る事が出来る。やっとこの足で地上に立つ事が出来る。
期待と不安でいっぱいだけど…舞人も一緒だから。
『ご飯できたぞー』
………。
っは‼︎夢?と言うかこないだの記憶…。
目が覚め、知らぬ木目調の天井。
硬い寝床から起き上がる。
『○☆◇□▽○◇』
『○?☆◇□▽○?』
『☆〜○』
そこにはまたあの灰色の毛をした生物が居た。
分からない…私が今まで見てきた資料では見た事がない…姿形は人間のようだが…強いて言えば昔みた古書に載っていた猫に近いようにも見える。
兎に角よく分からないが、知らない言語で話しかけているようだ。
『は、はじめまして。』
……。
『ナ、ナイストゥーミートュー』
……。
だ、だめだ…伝わってない。
首を傾げられた…。……。
ぐぅぅうう
私のお腹が鳴った…
目の前の生物はにこりと微笑みかけて部屋の外へと出て行った。
戸惑いつつも…とても恥ずかしい////
ガチャっ
しばらくすると例の生物が、肉と野菜の入ったスープを持ってきてくれた。
ジェスチャーで、食べろと言っている気がする…。
『ありがとぅ…』
一応、例を言い。恐る恐る口へとスープを運んだ。おいしい。おいしく、温かい食べ物は不思議だ…こんな訳もわからない状況だと言うのに、自然と顔が綻んでしまう。
それを見たか、目の前の生物も笑顔で返し、
『☆○、ノルン。□▽○ノンっ※☆◇』
相変わらず、言葉は分からないが…ジェスチャーから自己紹介だと分かった。
『ノルン?ノン?』
ノルンは自分を指差して、『ノン』と答えた。
私は自分を指差しながら、『ミユ』と返答した。
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『ただいまーー』
家に帰り、母に事の成り行きを話した。
毛のない生き物を自室に持っていき、母が服を脱がせて身体を拭く…。
驚く事に全身に毛が無い‼︎母も驚いていた…しかし、牙も無ければ爪も鋭く無い。危なくは無さそうだ。
狩ってきた兎1羽を母に渡して、僕は村の集会場へひとまず兎2羽を納めに行った。
村長にもその事を話した。
村長も森の外までは出た事がないらしく、詳しい事は分からないようだった。祭りの前には行商人の人が村に来るからその時に聞こうと言う流れになり、夕方家に帰ってからは毛のない生き物を観察していた。暫くすると瞼を開けて毛のない生き物が起き上がった。
『やっと起きたか』
『ん?寝ぼけてる?』
『お〜い』
声を掛けた。目の前で手を振ってみた。反応が無く、どうやら少し考え込んでいるみたいだ…言葉が分からないのかもしれない。
『¥、$¥€$¥€。』
お?わからんぞ?なんて?
『$、$€¥$¥¥$€ー』
だめだ、全然わかんない…
やはり言葉が分からないのだと理解した。
頭を傾げながらどうしようかと悩んでいると、毛のない生き物は腹の虫を鳴らした。
丁度、母が夕飯を作っていたから何か食べ物を持ってきてあげる事にした。
とりあえず、お腹空いてるんだな笑
台所に向かい、母に先程の生きものが起きた事、どうも腹を空かせている事を話して今日捕まえてきた兎のスープを貰って部屋へと戻った。
多分言葉は通じていないので食べる振りを見せてから例の生き物に与えた。
『¥$€$…』
また、わからない言葉を発したがなんだか温かい言葉な気がした。一口目は、ゆっくりだったが…二口目からはもしゃもしゃと頬張り嬉しそうな顔をしている。
見ていてなんだか可愛らしくなり、僕も勝手に笑顔が溢れる。
食事をして安心したようだ。
『僕は、ノルン。皆んなはノンって呼んでる』
理解してくれたようだ。
『ノルン?ノン?』
どうも名前と愛称を言ったせいで困っているようなので、自分を指差して『ノン』ともう一度言った。
そしたら、毛のない生き物も指差しながら『ミユ』と答えた。これが、僕とユミの最初のコミュニケーション。