9話 それはまるっと投げるとも言うのですよ
カノアリィはくるくる回る。姿見の前で。
見る。とりあえず気の済むまで見る。どこかおかしなところはないか。学院の制服に初めて袖を通し、入念にチェックするも
おかしい。どこにも隙がない。他国のことまでは知らないけれどマラストーリスの王立学院は定期的に制服のデザインが変わる。主な理由が特定の人物が入学したとき。そうつまり今回変わったのは私が入学するからなのです。これまでの紺と白を主としたブレザータイプから焦げ茶と白を基調としたものに。前の直線が多いお真面目な雰囲気から、曲線で丸みのあるかわいらしいものに。スカートもプリーツに白ラインのチェック柄からフレアで裾に細い白ラインが2本で交差。もうね、かつてここまで変わったことがあったのだろうかと思うレベルで別物になった。
全体のバランスでは誰にでも合うようデザインされているので問題ないといえばそうだけど。前のダッシュたちの着ていたものを着ると思ってただけにすこぉし複雑なのですよ。次は髪型どうしましょうか。定番の三つ編みか、軽くまとめてサイドに流すか。うーん、迷います
「「はぁ」」
ん?
だれかのため息と被りました。しかも悩みを含んだもの。何事かしらとふり返り彼女、アリサを見つめる。どうやら心ここにあらずといった顔でぼんやりしてる。真面目な彼女がほんの数秒とはいえ珍しいことね。
「どうかしましたの?」
「あ、いえ・・・髪型はサイドを編みこんで後ろに流しましょう」
手早くきれいに仕上がったのでそれ以上話は進まなかったけど、昨日までのアリサにはなかった憂いが残ってます。さわりだけでも聞き出さないとです。
「ありがとう。ねぇ、アリサ今日は始業式だから授業はないけれど、学院内を案内してもらった後で『学生会』に行くことになってるの。」
それだけ伝えれば彼女にも通じます。『学生会』とは学院内外で学生主体で活動する会のことで、内容は色々ですね。表立ったものでは『学生会会報』の発行とか。将来王宮に勤めたい子たちはここで初歩を学べますからね。それ以外だと学生の相談事などです。親や教師に言えないこともあるでしょうし。今回もそんな気がしたのです。じっとアリサの目を見つめて返答を待ってると
「・・・カノ様。私のことではないのです。妹エリサのことなのです」
そこは年中通常営業だった。学院内に一室与えられた『学生会』本部は10名ほどが作業している。代表は会長で副会長が数名、各自が指名制になっている。人手が必要なときはさらに助っ人が入るが、今がその時でとても忙しそうだ。
「おもてなし準備終りました」
「了解。後はご到着待ちだな。そもそも王室の季刊誌がカノ様の特集組んでも送られてくる写真が全部公のアップだろ。実質これがお披露目だもんなぁ」
「いいじゃないか。そのほうがやりがいもさらに上がるし。歴代発行部数トップ狙うからね。みんな頼りにしてるよ」
会長のセオシールは副会長3名の仕事ぶりに満足そうに頷く。13才のレイフは几帳面で立ち回りは書記兼総務。14才のリドルトはアイデアや発想力がよく企画を任せている。ナグトは自分と同じ16才で華やかで話術も豊富で人をまとめるのがうまい。だから前会長もナグトを会長に指名すると思ってただけに私を選んだ基準が今でもわからない。
そこにノックの音が響く。室内は静かになり誰もが緊張した様子だ。ゆっくり扉が開き少女が入ってくる。彼女のためにデザインされた真新しい制服は誰の目にもよく似合い、当人ともう一人以外が密かなため息を堪えた。
「初めまして、会長のセオシールと申します。我々の取材を受けていただきありがとうございます」
「こちらこそよろしくお願いします。カノと呼んでくださいね。」
カノアリィの6才という年齢なんて頭から抜けてしまう所作と優雅な微笑みで撃沈した周囲は、
((((さすが会長です))))
知らぬは本人だけというらしい。前会長はみんなに言っていたのだ。
『セオ君に任せておけば大丈夫。ここぞという時に一番頼りになるから』
カノにもその人となりは理解できてる。なので取材後に
「みなさまにお願いがありますの。」
ええ、まるっと投げてしまいますわね。
『王伝編集官』とちがう視点でと思ってますが、長編になるかほどほどで終るのかわからないです。なので気長にお待ちくださいませ。




