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「じゃあ今日はもう帰りましょう。買わないのにいつまでもここにいたら、お店の邪魔になるわ」
「そうだね。マカ、可愛いの作ってね♪」
「もちろん!」
2人は会計を邪魔しないように、こっそり店を出た。
しかし店を出る瞬間、赤眼のマカと意味ありげに微笑むカガミの視線は、確かに絡み合った。
店を出てしばらくしてから、マカは口を開いた。
「…ねぇ、ミナ」
「なにぃ?」
「あのお店、行くのやめない?」
「えっ! 何で?」
「だって高そうな商品ばかり置いてるし、お金持ちの人しかお客さんになれないんでしょ? 私達みたいな女子高校生が行っても、お店の邪魔になるだけよ」
「それはそうかもしれないけど…」
「店長のご好意に甘えちゃダメよ。もう十八になるんだから」
「…分かったぁ。マカがそう言うなら」
「ありがと、ミナ」
駅でミナと別れ、マカは従兄の経営するアンティークショップを訪れた。
「…相変わらずここは客がいなくて落ち着くな」
「ヒドイ言い様ですね。マカ」
苦笑する店主ことソウマに、マカはため息をついて見せる。
「ライバル店が出ているんだから、少し経営方法考えたらどうだ?」
「ああ、あの街外れの…。でもあっちとこっちでは取り揃えているモノが違いますしねぇ」
そう言って苦笑するソウマ。
マカは肩を竦め、思い出していた。
あの人形と家具のことを。
「そうだな。ここの商品はあくまでも成分は物からできているが…」
カガミの姿を思い浮かべ、マカは険しい表情になった。
「あの店の商品の材料は、全て人間だからな」
【終わり】