ありがとうございました変格活用
コンビニでアルバイトをしているので何度も言っているこの言葉。最初の内はちゃんと発音をしていたけれど、徐々にそれが面倒くさくなってきていた。しかし「あざー」と言うのもさすがにないので、どこまでならありとうございましたを崩せるかを試してみることにした。
まず始めに「ありがとう」の「が」がを削ることにした。濁音の発音をするときの口の動かすのが億劫になってきたのだ。だがそのまま発音すると「ありとうございました」。これでは少し違和感がある。なので「が」の部分に「っ」を入れると「ありっとうございました」。
数日これで発音し、問題無さそうだと思った所で今度はございましたの「ご」と「ざ」を削ることにした。具体的には「ご」を「ぉ」に、「ざ」を「あ」にした。前述の通り濁音は撥音の労力が他より高いので、なるべく動かさずにすむようにしたい。「ありっとうぉあいました」
ポイントとしては「ありっとう」の「とう」を「to」と発音し「ぉ」に繋げやすくする。また「あ」もそのまま「あ」と言うのではなく、ほんの少しだけ「ざ」の雰囲気漂うように発音すると良い。
ありっとうぉあいました。ありっとうぉあいました。ありっとうぉあいました。ふむふむ誰も気にしてない。他の店員にも特に何も言われないので更なる簡略化を図ることにした。
次に目をつけたのは「ま」である。破裂音であるため一度口を閉じなければならず、その前の「い」の口の形とは相性が最悪である。ということで「ま」を「や」と発音することにした。「ありっとうぉあいやした」。いや「とう」は「to」と発音するから「ありっtoぉあいやした」が正しい表記だ。
文字に起こすと中々に文字化けの様相を呈してきたが、言葉にすると意外と人というのは気がつかないもので、皆レジでの精算をすませてしまえば、物を入れた袋をつかんでそそくさと店の外に出ていく。いい忘れていたが私が働いてる時間帯は早朝だ。たまに昼に働くこともあるが、基本は眠い目をこすっては起きて、ささっと準備を済ませて働きに行く。
私が眠いのだから、店に来る客も眠いに決まっている。しかも店のある場所はたくさんの会社が近くにあり、加えてちょうど駅との間にある。通勤まえに大量のスーツが店に押し寄せてくるのだから、必然列が出来る。皆急いでいるので、私が「ありっtoぉあいやした」と発音したところでそれを訂正するものなどいない。
ここで私は更なる段階へと入ることにした。今までは言葉を言い換え言いやすくしただけだが、今度は文字数を少なくして発音にかかるコストもっと減らして行こうと思った。
まずは「toぉ」を「とぅ」に、「あいやした」を「あいした」に。「ありっとぅあいした」ポイントとしては「あいした」の「あ」をほんの少しだけ伸ばすとそれほど違和感はない。
それと、この段階に入ると、いつも来る客というのがわかるようになるのだ。別段わかった所で何かあるわけでもないが、本当に初めての客を相手にするよりかは幾分か気が楽になるのだ。それとだいたい買うものや支払い方法は同じなので、速く終わりやすい。
まぁ見知った客でもそうでないやつでも「ありっとぅあいした」を言うのはかわりないのだが。それと他の言葉も変化を遂げていたりする。例えばいらっしゃいませは「ぃらっっしゃせー」。またお越しくださいませは「また¥+し/_△\.せー」。最早何を言っているか自分でもわからないが、「また、し、せ」さえ言っておけば意外と違和感はないのである。
話を戻して「ありっとぅあいした」だが、まだまだ削れる余地はあるだろう。「あざー」程の楽さは求めてないが、多少砕けてる、で受け止められるほどの雑さで「ありとうございました」をこなしていきたい。
次に削るのは「あり」の「り」と「あいした」の「い」にした。「あっとぅあした」。あしたのあを少しだけ伸ばせばそれっぽく聞こえる。
誰も気にしない。こいつらに耳はあるのかと思うほどに誰も無反応だ。店員の言うことって案外聞いてないもんだな。まぁ、だいたいこっちから何か聞くと、「ん?」って反応帰ってくるからな。イヤホンで耳ふさいでそもそも対話を拒絶してるやつもいる。あげくの果てに暖めたものと分けるか聞いて特に反応ないから一緒に入れたら急に止めてくるやつ。なんだあれ。素直にタヒね。
コンビニの店員をやっていくと色々な所が雑になっていくんだなーと実感する。基本休憩以外は何かしらやってるからか。レジはもちろん、揚げ物、検品、品だし、フェイスアップ、発注、補充、掃除。細かく上げればもっとある。あれを最低賃金付近でやれと言うのだからたまったものではない。変なクレーマーもたまに来るし。まぁでも、廃棄をもらえるのは悪くない。食費浮くからね。
まぁ、今はありとうございましたを削っていこう。「あっとぅあした」。いっそ最も大胆に削っていこう。「とぅ」を「だ」に、「あした」を「た」に。「あっだーた」。赤ちゃんの喃語のようなものだが、果たしてこれでいけるか。
通じた。客の耳は節穴なのだろうか。あっだーた、だぞ、あっだーた。若干気づいてほしいと思っていたところだけど、いや気づいた所で気まずくなりそうだしやっぱりいいや。でも疑問に思う素振りぐらいは見せて欲しかった。
こんなことをやっているうちにもう年も明けそうである。まぁ私は今週でバイトを辞めるのであっだーたを言う機会はもうなくなるが。ちなみに今は「あざーた」と言っている。ピザーラと似ていると思うがどうだろう。
あざー、と、あざーた。たがついてるだけで雑なのは一緒である。あざーはさすがにと思っていたが五十歩百歩だろう。
ここまで書いたが特にオチは用意してない。辞める理由だが、受験まで一ヶ月になるので流石に集中せねばと言うことでやめる。受験が終わったら復帰すると言ったがぶっちゃけもうめんどくさいのでまたやるかは不透明である。
それでは、読んでくれてピザーラ。
後十年ぐらいモラトリアム欲しいです