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脳筋魔法使いとしての人生。  作者: トミーじょん
〜 プロローグ 〜
2/3

飛び出す13の夜。

 一息ついた後、しゃがれた声で話し始める老師。

 今までに見たことのないくらい真面目な表情でこちらを向いた。


「あやつは人としてだめな部分が多すぎるからあまり人に紹介したくなかったのじゃが、主はもしかしたらあやつと同じ素質があるやもしれん。一度話してみるだけの価値はあるじゃろう・・・。」


「それってどんな人なんですか? 僕でも魔法を扱えるようになって、立派なハンターになれるならどんな人にでもついていきますよ!」


「あんた・・・。ハンターはよしときなていってるのに。まだ諦められないのかい。」


 だってカッコイイじゃん。ハンター。前の世界でも子供の頃は冒険者とかに憧れてそこら辺に落ちてる木の棒なんか拾ったりしてさ。『この俺様は最強の勇者なり!! 行くぞ! エクスカリバー!!』なんて言ってたな~。


 その後魔王名乗る友達にボコボコにされて泣いて帰ってたなぁ・・・。恥ずかしい。


「あやつはなんというか、わしの弟じゃ。若い頃からいつも飲んだくれておってな・・・。手がつけられんので、酔ってる間にこの村の北端にあるブリーズファブ山脈に放り込んできたんじゃが二日で帰ってきよった。」


 白くて長い髭を触りながら、落ち着いた中にも何故か少し自慢げに語る老師。


「あの山脈にかい!? 五体満足じゃ帰ってこれなかったんじゃないの?」


 目を点にして驚き、心配する母。

 ブリーズファブ山脈と言ったらこの国でも有数の立入禁止区域であり、レベル40位上の魔獣がわんさかいるらしい泣く子も黙る山脈なのである。

 僕もこっちの世界で子供の頃絶対行くなときつく言われていた。

 

 レベルと言うのはこの世界での魔獣や悪魔などの危険度を表す数値で、高レベル=強いと言うわけではない。

 というのもものすごく強くても知性があり、あまりこちらに危害を加えてこないようなものはレベルが低く設定される。

 それでも高レベルは大概恐ろしい強さを持っている。


「それがの・・・。デコにかすり傷一つだけであとは綺麗サッパリ無傷じゃった。酒さえなければあやつは国家ハンターにもなれただろう。」


 何故か自分の功績かのように自慢げに言う老師。どこか嬉しそうである。


「す、すげー!! それも物理魔法・・・ってやつを使ってのことですか?」


「おそらくな・・・。まぁとにかく明日12時にここで待っておってくれ。あやつを行かせるよう言っておく。」


 物理魔法というのがどういうものか気になってしょうがない。

 先程の母の魔法も水を操るという意味では物理なのではないか?

 そうだとするとほとんどの魔法は物理魔法何じゃないか?

 と、疑問に思いつつも二つ返事で了承した。


「わかりました! 明日12時にこの場所ですね。」


 それから解散し、母とうちへ帰る。

 道中、隣に目をやるとどこか不安さを醸し出す母の顔がそこにある。

 

 自分の母親なのだが彼女は結構美人である。

 前の世界であっていたら・・・いかんいかん。

 一応こちらでは血のつながった家族なんだから。

 

 ただ黙々と帰路についていた中思い切ったように母が喋りだす。


「あんた、本気なのかい? ハンターになりたいだなんて。」


「本気だよ。僕はこの世界が好きなんだ。だから世の役に立てるために強くなって大切な人たちを守りたいんだ。」


 前の世界ではどこにでもいるようなサラリーマン。

 むしろ周りの足を引っ張ってばっかの人生だった。

 

 せっかく異世界に生まれついたのだから今度こそは夢を叶えたい・・・。


「お父さんみたいに魔法学者じゃダメなのかい? あんな人でも一応人様の役にはたってるよ?」


「父さんは頭がいいからね。尊敬してるし憧れるけど、僕は頭も平々凡々だからさ・・・。それにやっぱり漢ならかっこよく戦いたいじゃん!」


 冗談半分に返したが、憧れているのは本当である。

 父さんは一見厳しいけどそこには愛がある。

 それは僕でも感じられるし感謝してる。


「もう・・・。誰に似たんだか・・・。」


 少し心配そうだが、あきれた笑顔を浮かべそうつぶやいた。その後気のせいかもしれないが、一瞬申し訳無さそうな表情が見えた。


 夕ご飯を済ませ、ベッドに寝転び想像する。

 今までろくに魔法も発動できなかった自分がやっと使い物になるレベルの魔法を扱えるようになるかもしれない。

 

「どうしよう、魔獣を一撃でぶっ倒せるものすんごい炎とか打てるようになったら!」

 

 そう思うと胸の奥が熱くなり、遠足前日の小学生のように眠れなかった。

 

「おかしい・・・。何だこの熱さは。これは錯覚ではなくほんとに熱さを感じる。さっき食べたクリームシチューで胸焼けでも起こしたかな・・・。まぁいいか。今は明日に備えて眠るとしよう・・・。」


 やはり錯覚だったかのようにすぐに胸の奥の熱が引いていきそのまま眠りに落ちる――。


「あんた! いつまで寝てるのさ! もうすぐ約束の時間だよー!」


 そんな母の声が聞こえ、窓から庭の日時計を見る。11時30分――


「やべ!!」


 非常にまずい。このうちから約束の場所まで走っても40分以上かかるだろう。

 こんなときに魔法を使えればその時間を縮めることができるのだろうが、僕は魔法使いのくせに魔法が苦手でせいぜい瞬足を履いた程度にしか変わらない。

 

 前の世界で一斉を風靡した靴とはいえコーナーがなければ差をつけることもできない。

 そんな冗談を言ってる暇もなく、すぐさま家を飛び出した。


「うおーーー!! 目覚めろ僕の中のボルト!!」


 気休め程度にもならないだろうが必死で自己暗示をかけて死に物狂いで走りはじめた。

 体力には自信があったので勢いを止めず目的地に行くのは可能だ。


「どこいくの? アール。ていうかボルトって何・・・?」


 家を出てすぐのところに少女が立っていた。


「リン! 今急いでるんだよ・・・ってついてこないでよ!!」


 金髪のショート、ハチというべきか前髪の両サイドからは垂れるように髪が流れている。

 背は160センチジャスト程だろうか、でかいケツの割に出るところはで出ないボイン好きからしたらいささか不満があるであろう体つき。

 

 彼女はリン。リン・ダージュ。僕の幼馴染である。

 とんでもないおてんば娘で、同い年なのによくいじめられてた・・・。

 

 僕が並の魔法使いならやり返せたんだけど・・・。


 彼女の足元を見ると、片足が地面に着くや否や、つむじ風のようなものが現れて音も立てずに地面を蹴る。

 まるで足に羽でもついているかのようにチョン、チョン、と足を運ばせ一切汗をかくこともなくついてくる。


「くそ・・・風の加護を使われたら巻けない。」


リンは見習い弓使い。弓使いとは生まれつき何かしらの加護が付いてるらしく彼女の場合は風である。


「あたしから逃げようなんて十年早いわよ! 落ちこぼれ魔法使いくん!」


 クッ、こいつ・・・。あ、そうだ。


「なあリン、今日もくまさんワッペンのパンツか? 見えてるぞー!」


「なっ!! もーぉっ! アールのアホぉーー!!」


 そんな断末魔を上げながら両手でスカートを抑え動きを止める。パンツなんて見えてないが、あいつは4割方、動物さんパンツを履いている。

 

 その中でも彼女のお気に入りのくまさんを言ってみたが、今回はたまたま当たったようだ。


 この歳でそんなものを履いているなんて性格に合わず可愛らしいじゃないか。


 邪魔者も巻け、そのまま勢いを止めずにひた走り続ける。


「ん? なんだあれ・・・? カカシ・・・ではなさそうだな」


 かのメロスのような疾走をしつつ横目をやると、遠くの方でカカシのような人のようなものが木にぶら下がっている。

 

 よく見てみると顔を真赤にしたオヤジが木に引っかかりながら見事に爆睡している。

 

 普段なら様子を見に行ったが、今はとにかく時間がない。ごめんよ、見知らぬオジサン。


「ハァ・・ハァ・・。とりあえず約束の場所についた・・・。」


 あたりを見渡すが、誰もいないやはり遅刻してしまい、呆れてもう帰ってしまったのだろうか。

 

 時間を確認すべく、腕につけている魔道具に魔力を流す。

 

 ゴムバンドのような腕輪から空中に時計が空中に描き出された。魔素時計である。

 

 魔素というのは時間帯によって量や質が少しだけ変化するもので、魔力の素のこと。

 魔獣が夜に活発になる理由もそれが関係しているらしい。


 へへーん、こんな僕でもこれくらいの魔法は使えるのだ。まぁこの世界では子供でも使ってる魔道具なんだけど・・・。


 浮かび上がった時計を見ると、なんと家を出てから15分ほどしか立っていなかった。


「おかしい・・・。いくらボルトでも30分はかかると思うんだけど・・・。ていうかボルトって長距離はどうなんだろうか?」


 どうでもいい疑問はおいておいて、ひとまず間に合ったようである。


「とりあえず間に合ったかみたいだし。疲れたー!」


 少し寝転ぶだけのつもりで地面に横になる。


「なんかランナーズハイというか、体がポカポカする・・・。というか暑い・・・。」


 昨夜の感覚に近いものが次第に強くなってきて視界がどんどん白くなってくる。

 だんだん意識が遠くなり目も開かなくなっていった――。

 

 「は!! やべ! 今何時だ!?」


 目をさますと、あたりはキレイな桃色混じりの赤みを帯びた夕焼けが空一面に広がっていた。

 確実に約束の時間を過ぎている。


「あ~、やらかした~。でもこの場所に誰かが来たような形跡がないな・・・。仕方ない明日老師に謝ろう。」


 いろんな言い訳を頭の中に駆け巡らせつつうちへ向かう。


「そういえばここらへんだよな・・・。あのカカシみたいなオジサン大丈夫だったかな?」


 行きしなに通りがかった眠れる森のオヤジを探してみるが、どうやら目が冷めて自力で脱出したらしく、そこにはもうオジサンの姿はなかった。


「ただいま・・・。ん? なんだかいい匂いがする。」


 家の扉を開けると空きっ腹には少し刺激の強い、ごちそうの香り。


「これは、僕の大好物七面鳥の丸焼きかな!?」


 我慢できず一目散にダイニングへ向かった。


「あら、おかえりなさい。今日はごちそうよ~」


「お、アール。おかえり。新しい師匠はどうだったんだ? そのなんとか魔法ってやつ使えそうなのか?」


 まずい。途中で寝てしまって会えなかったなんて言えないし、同説明しようか・・・。


「お父さんね、あんたがちゃんとした魔法使えるかもしれないって言うと、今夜はお祝いだ―!って。ふふ。」


「ラーン! 何を言ってるんだ。 たまたまごちそうを食べたい気分だったんだ・・・」


 顔を赤くしながら横目でこちらの様子を伺う父。

 やはりこの人は良い父親である。


「実は・・・そのことなんだけど・・・」


 だめだ、嬉しそうに夫婦二人でじゃれ合って聞いちゃいない。

 まだ夕飯の支度が終わるまでに時間がかかりそうだ。

 とりあえず、今のうちに老師の家に謝りに行こう。


「そういえば、ニルに本借りてたままだったからちょっと返してくるねー!!」

 

 ニルとは僕のもうひとりの幼馴染で聖職者のニル・ギリーマンという。

 ちっちゃい頃から一緒にバカをやれるマブダチってやつだ。

 聖職者のくせにちょっとばかしガサツで乱暴だが、憎めない男である。


「もう、すぐに夕飯だぞ?」


「大丈夫! すぐ戻るから!! 遅かったら先食べててー!」


 そう言い残してなにか言いたげな両親をおいて家を出て、老師の家に向かう。


「アールったら肝心の本持ってたのかしら?」


 

「ふぅ・・・ついた。なんて謝ろうかな・・・ってあれは!?」


 グルッタ老師の家の前にお昼に見かけた眠れる森のオヤジが横たわっていた。


「おーい。大丈夫ですかー?」


 顔に男梅のような無数のシワを寄せ、ひと伸びしながらムクムクと起き上がる。


「あ゛~。よく寝たぁ~。ん? 何だてめぇ?」


「ウッ! 臭い・・・」


 大きなあくびからは芋焼酎に似たアルコール類の似をいをおびただしく放ちながら、ズボンに手を突っ込みボリボリと尻を掻く。


「あの・・・グルッタ・ヨーデン老師にお話があるのですが、失礼ながらどちら様ですか?」


「あー、兄貴にね。まぁ上がんなよ。」


「兄貴・・・?」


 眠れる森のオヤジはそう言い老師の家の扉を開け、中に入っていく。

 早く来いよと手でこまねいて奥へ消えていった。


「失礼します!」


 中へ入ると、奥の方で老師の喝を入れる声。

 その後玄関へ二人でやってきた。


「すまんかったの。アール。コヤツが約束の場所にいかんくて。」


「え・・・?」


「今日誰もこんじゃったろ? こやつまた飲んだくれよって向かう最中に酔っ払って寝てしまったらしい・・・」


「と、いいますと。そちらの方が弟さんですか?」


「おう! グルッペンだ。お前さんが俺と話がしたいというガキか。ガハハハ!」


 なんだこいつ・・・。こんなのが老師の弟?

 飲んだくれとは聞いていたが、思った以上だ。

 先が思いやられる・・・。


 というか弟にしては若すぎないか?

 老師は確か85歳。この人はどう見ても40半ばぐらいだ。


「あの、失礼ですが・・・グルッペンさんっておいくつなんですか?」


 そう尋ねるとグルッペンは腕を胸の高さまで上げ、指を4本立てた。


「40歳ですか・・・。結構年の差があるご兄弟で。」


「ちげーよ、兄貴の4つ下だ。」


「4つ下・・・。えーと老師が85歳だから、81・・・って、えッ!?」


「まぁふたりとも。奥で話しでもしよう。」


 老師にそう言われ奥の部屋へと向かった――

脳筋要素まだ出てこなくてすみません。

次回出てくるので読んでくれる方はしばしお待ちを・・・。

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