彼女のお土産
どうも初めましての方も久し振りの方も最近振りの方も、作者のFALSEです(^-^)
今回の作品はTwitterグル「小説家の集い」で発表された「春のキーワード恋愛小説」という企画の作品になっています。
キーワードは「百合」「麦ジュース」「Twitter」の三つ。
……これで恋愛小説書けと?Σ(・□・;)
と、まぁ何とか頑張って書いてみましたが……これ恋愛小説か?
取り敢えず、一読お願いしますm(__)m
大学生になってあっという間に一年が経つ。
商学部だった俺はバイトか同学科の奴らと遊ぶかの二択だったが、ついに三択目が舞い降りて来た。
「……あ、そろそろアメリカに着くか」
時計の針に目をやり、少し震えてしまっている手でスマホを操作する。
今や世界中の誰もがアカウントを持っている、青い背景に白い鳥が目印のSNSアプリ『Twitter』。言いたい事を文字で打って呟くという万人が気軽に出来るアプリで、当然の様に俺も持っている。何ならそのアイコンに触れない日は無い程だ。
「おっ、奈津美の奴もう呟いてやがる」
奈津美、と言うのは俺に春をもたらしてくれた彼女の名前で、本名は唐綿奈津美と言う。
俺が言うのも何だが、奈津美は贔屓目抜きで見ても出来た彼女だ。見た目は勿論の事、料理上手で気が利くし、何より人に愛されやすい、社交的な性格をしていた。
「何々……『思っていたより早く空港に着きました~って数時間以上も飛行機で顔酷いからタオルで隠しちゃうっ!!』ってどんな呟きだよ……」
本当にタオルで自身の顔を覆い隠した写真をご丁寧にも添付して、奈津美はそんな事を呟いていた。
申し分のない彼女ではあるが、人間である以上奈津美にも幾つか欠点がある。変にドジっ子だったり、寝相が悪かったり、何より押しに弱い性格だったりする。
「……あ、この人がナトラさんか」
彼女がアップした写真の端に、一人の女性が映り込んでいるのが見えた。
ナトラさんと言う女性は、一回生の時からの奈津美の学友でアメリカ生まれ・アメリカ育ちの留学生。俺は直接会った事は無いのだが、奈津美が言うには少し大人しい感じの黒人らしい。
「しっかし、アイツ本当に面倒見良いよなぁ……わざわざアメリカついて行くか?」
二ヶ月という膨大な春休みの中、奈津美は里帰りするというナトラさんについて行ったのだ。
奈津美から聞いた話では、ナトラさんが親に紹介したいと誘ってきたらしく、彼女からすれば大人しい性格の彼女から誘われた事が嬉しかったのだろう、気付いたら二つ返事で承諾していたようだ。
「俺も行きたかったけど、まぁ偶には女同士水入らずって感じかな」
俺は奈津美にはついて行かなかった。流石にナトラさんに申し訳無いというものだ。
ふと、時計に目を向ける。針は日付が変わる辺りを指していた。
「あっちは漸く昼、って感じなのか……もう寝るか」
これと言ってする事も無いのと、明日は昼からバイトがある事を考えて、俺はいつもより少し早く寝る事にした。
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次の日の朝、眠気覚ましにスマホを触っていると奈津美の呟きが気になり、少し彼女のアカウントを探ってみた。
「おっ、けっこう呟いてるな。
『こっちのステーキの大きさが化け物級!!』『KFCの本場、ケンタッキー州にやって来ました~!!』って食べてばっかりかよ……
おっ、『どうよ私のテニス姿っ』……似合ってるなぁ」
どうやらナトラさんが組んだ里帰りプランでは、まず先に観光で満喫してから、実家に帰るらしい。それにしても奈津美の奴、いきなり満喫し過ぎじゃないか?
「『実家に到着!! 寝室にオルゴール置いてるって洒落てるぅ~っ』ってあぁ、もうあっちでは夜になってるのか」
「オルゴールぐらいではしゃぐなよ」などと言いつつもつい笑ってしまう辺り、俺は奈津美の事が相当好きなのだろう。友人に言うと絶対馬鹿にされるのが目に見えているが。
奈津美がアメリカに滞在するのは六泊七日なのであと一週間ほど。ナトラさんと空港で待ち合わせていたらしく、そこまで見送りに行けなかったが、空港近くまで車で送っていった時に六泊七日の事を聞かされた。
「アイツが楽しそうで何より、か……ってやべっ、バイトの時間が迫ってるし!!」
スマホの上端に表示される時刻に驚き焦った俺は慌ててアプリを閉じ、布団の中から飛び起き支度を急いだ。
朝食、昼食は移動中に兼用して食べる事に決め、スマホ片手に家を飛び出していく事になってしまった。
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「あ˝あ˝~疲れたぁ……」
日がとっくに沈んだ頃、漸く帰宅できた俺は真っ先に布団へとダイブした。
腹は減っていた、だがそれより動く気力が殆ど残っていなかった。
「……奈津美、何してるかな」
ポケットからスマホを取り出し、例の白い鳥に触る。
「ええと……『見て!! ソイソースって書いてる!! 凄くない!?』って醤油で驚くなよ……」
奈津美の異様な盛り上がりに、スマホに向かってつい嘆いてしまう。
他には『野生のワニを見かけた!! わ、私なんて食べても美味しくないからね?』と呟いていた。確かに野生でワニがいる事には驚きだが、誰もお前を食べはしねーよ。
「……ま、楽しそうで何よりだわ。後で欲しいお土産でも言っとくか」
少し気力の戻って来た俺は、まだ力の入り切らない身体で台所に立ち、さっさと夕食を作る事にした。
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奈津美の様子がおかしい、そう感じ始めたのは彼女が帰ってくる予定日の前日だった。明らかに、呟いている数が少ないのと、他のSNSアプリで彼女に連絡しても返事が無かったのだ。
最初こそエンジョイしているせいでスマホを見てない、そう思っていたが、それが二日三日と続けば話は別である。
「あいつ、何してんだ……あっ、呟いてる!!」
布団に包まりながらスマホを触っていた所、タイミング良く奈津美が呟いていた。
「『ふーっ、レーシング観戦に熱中し過ぎて携帯触って無かったわ~っ』って何だよそりゃ……もう三日だぞ?」
と、奈津美に対して少し憤りを感じているともう一つのSNSアプリで彼女からメッセージが届いた。 昨日彼女にお土産の候補をメッセージで送った返事らしく、内容は『返信遅くなってごめん!! りょーかいですカタカナ』というものだった。
「はっ、何だよ”カタカナ”って。どんだけ慌てて打ったらそうなるんだよ」
またドジな所がまた出てしまっている、俺はいつしか憤りを忘れて笑ってしまっていた。
「……明日だな、奈津美が返って来るの」
お土産と、彼女の帰りを楽しみにその日はもう寝る事にした。
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『もうすぐ帰国準備だ……最後はターコイズ並みの夜景っ♪』
「普通ダイヤモンドじゃね……?」
奈津美が帰ってくる日の夜、俺は家でそわそわしていた。迎えに行っても良かったのだが、何でもナトラさんと途中まで電車で帰って来る予定だとかで、家で待つ以外の選択肢が無かった。
「時間的にはとっくに日本に戻って来てるだろうし……そろそろ帰って来てもおかしくないと思うんだけど」
短針は”11”を指していて、奈津美が終電に乗れるかが心配になって来る。帰ってくる頃には疲れ切っているだろうと思い、彼女がハマっていたハト麦ジュースは既に冷蔵庫にスタンバイしてある。
と、そんな時だった。玄関先からインターホンが鳴り響いた。
「な、奈津美か!?」
慌てて玄関まで駆けて行き、鍵を外して扉を押し開く。だけど、そこに立っていたのは奈津美、ではなく、ましてやナトラさんでもなかった。
「宅配便です、サイン頂いても良いですか?」
「えっ、あ、はい……」
ダンボール箱を抱えた男性だった。というより、宅配業者だった。よくよく考えれば、奈津美ならインターホンを鳴らさずに鍵で入って来れた。
予想外の人物に肩透かしを食らった俺は、渡されたボールペンでサインを書いてダンボールを受け取り、顔が熱いのを感じながら逃げ帰る様に家に戻った。
「誰からだろ……」
荷物が配送される当てなど全く浮かばず、俺は首を傾げながら宛先を確認した。
「……え、アメリカ? って事はもしかして、奈津美の荷物かお土産か?」
有り得そうな話に少し安堵した俺は机からハサミを持ち出し、ガムテープを切っていく。もし荷物ならアイツの事だから、「疲れたから洗濯物お願い~」と言って来るに違いない。まぁでも、これぐらいはやってあげよう。
「……え?」
だけど、俺の視界に映ったのは、オレンジ一色で揃えられた百合の花束と、一枚のポストカード。
”ゴメン”
書かれていたのはその一言だけで、他には何もなかった。
「……何だこれ、気持ち悪っ!?」
慌ててダンボールの蓋を閉じ、ハサミで開かない様にしている間に取りに行ったガムテープでもう一度密閉し直す。こうでもしないと、何か嫌な不安がこみ上げて来そうだった。
「はぁ、はぁ……見なかった事にしよう」
顔から吹き出ていた冷や汗を袖で拭いながら、俺はそのダンボールをベランダに放り出した。あんな訳の分からない物を、二度と見たくない。
リズムの狂いそうになる心音を無理にでも抑えると、奈津美の帰りを待つことに意識を向ける事で忘れる事にしよう、そう考えた。
結局、冷蔵庫からハト麦ジュースが減る事は無かった。
はい~、読んで見て分かったでしょ?
ホラーなんだよね、恋愛じゃなくて(^-^;
スパイスを感じる為に作者からヒント。
名前とか結構大事なのと、花と言えばあの言葉だよね~。
それを踏まえた上でもう一度見て貰えると面白いかも?
面白いと思ったら感想、評価とか下さいな(^-^)