よーぐると
「現在、道路の混雑状況を参照、及び最適なルートを検索しています。
……完了しました。目的地『豚小屋技術研究所』へのナビゲートを開始します。
既に遅刻であると思いますが、安全な運転を心掛けることを推奨しま…、」
「違う。今日は29日だ。先に墓参りを済ませる。
Righteous Absolu……RAN豚、お前はポンコツなのか?
月命日は墓参りを済ませてから出勤すると、毎月説明が要るのか?」
――おいおい、開発したのは君じゃないか。
サイドミラーに目を向けると、スーツとバッグをぶら下げた喪服姿の男が映っている。
……同期、悪友、色々な呼び方はあるが、現在の肩書きとしては上司であり所長である。
「生産しているのはボクらかもしれない。でも開発したのは君じゃないか。
親が子供にポンコツなんて言って、捻くれたらどうするつもりなんだい?」
「これはこれは所長様、本日はどのようなご用件でしょうか?
どなたかお亡くなりにでも?必要でしたらお送りいたしましょうか?」
「止してくれよ。ボクは、君が拒否したからこの椅子に座っているだけだよ。
……少しね、たまには彼女に顔を見せに行こうと思ってね。今日も行くんだよね?
ついでに乗せて行ってくれるかな?ほら、ちゃんと牛乳とカルーアのボトルもあるんだ。」
この地域では、お墓参りの際に故人が好きだったお酒などを墓石に掛ける風習がある。
この馬鹿は、まさか墓石にカルーアミルクを掛けてべとべとにするつもりなのだろうか?
「大丈夫だよ。これからきっと雨が降るからね。暫くは降り続けると思うし、
全て洗い流してくれるよ。その前にバレても怒られるのはボクじゃないからね。」
「お前という奴は……それにしても雨なんて降るのか?どう見ても雲すら無い快晴だが、
秋の天気は変わりやすいのか?……とりあえず乗れよ。あまり遅れると所長に怒られる。」
「その理屈だと、ボクはボクも怒らなければいけないのかい?
ボクは変わり者と揶揄されているけど、ボクがボクを怒っている姿なんて見られたら、
ボクを正真正銘の変わり者になってしまう。それは少し困ってしまうよ。」
「そういうモノの言い方が原因だ。」