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第九話「剣鬼のパーティー」

 バラックさんがギルドに戻ると、彼は職員と冒険者を集めた。それから自分の敗北と、闇属性を持つ俺を加入させる事に決めたと伝えた。職員達はギルドマスターを倒す程の冒険者なら多額の契約金を払い、他のギルドで活動しない様に専属の契約を結んだ方が良いと提案した。


「レベル五十五のマスターを圧倒する若き冒険者。彼の存在は瞬く間にヴェルナーに轟くでしょう。彼を他のギルドに取られてはいけませんから、ここは契約金を出すべきです。期間を決めて専属でクエストを受けて貰えば、競合のギルドよりも遥かに多くの魔物を討伐出来る事は間違いありません」

「馬鹿な! 十五歳の新米に契約金? しかも闇属性を持っているんだぞ? 加入させる事自体が間違っているのでは?」

「加入祝いに一万ゴールド支払う事は既に決まっていますが、私も契約の件は賛成です。彼はまだまだ強くなるでしょう。競合が専属の契約を提案してくる前に、我がギルドで確保すべき人材ではないかと思います」


 職員達の間でも意見が別れているのか、暫く待つと、やっと意見が纏まった様だ。


「クラウス・ベルンシュタイン様。専属の契約を結んで頂きたいのですが」

「それは構いませんが、契約を結ぶとどうなるんですか?」

「まずは契約金をお支払する事が可能です。半年間、アーセナルで魔物討伐のクエストを受けて頂けるなら、五万ゴールドお支払致します。契約期間中はアーセナル以外でのギルド活動は禁止。月に一度はギルドが決めた討伐クエストを受けて頂く事が条件です」

「討伐クエストの内容はギルド側が決める事になるんですね?」

「はい。契約を結んでいる専属の冒険者様には、他のギルドメンバーよりも高難易度のクエストを受けて頂く事になります。時には命を落とす可能性がある魔物とも戦闘を行って貰う事になります」

「死ぬか生きるかは実力次第という事ですね」

「そういう事になります」

「分かりました。契約をお願いします」


 俺は契約を結ぶために、レベルの確認を行う事になった。レベルとは魔力の強さを数値化したもの。ギルドに加入する際にはレベルを計るのが一般的だ。ギルドのカウンターには石版が置かれており、どうやらここに魔力を注げば強さや属性等を計る事が出来るのだとか。


 俺は石版に両手をかざし、精神を集中させて火の魔力を集めた。全ての魔力を放出する勢いで石版に魔力を込めると、爆発的な炎が発生した。炎は一瞬で石版に吸収されると、石版の上には小さな銀色のカードが現れた。どうやらこれがギルドメンバーとしての身分を証明するギルドカードらしい。


「これは……!」


 バラックさんが狼狽すると、俺はギルドカードを覗き込んだ。


『LV.40 剣鬼 クラウス・ベルンシュタイン』

 属性…【闇】【火】

 装備…ロングソード 牙の首飾り

 魔法…ファイア ファイアボール

 効果…悪魔化(自己再生・魔力強奪) エルザの祈り(魔法耐性)


 効果の項目に悪魔化と表示されている。幻獣のデーモン、すなわち悪魔の血を飲んで俺は悪魔になっていたのか。攻撃を受けても瞬時に傷が癒える自己再生、それから敵を切り裂いた瞬間、魔力が回復する魔力強奪。これはやはり悪魔の力だったのだ。それからエルザの祈りと表示されている。彼女が俺に魔法でも掛けてくれたのだろうか。


「ベルンシュタイン様。悪魔化とは……?」

「俺もよく分かりませんが、以前幻獣のデーモンと戦った時に得た力だと思います」

「え……? なんですって? 幻獣クラスのデーモンと戦った?」

「はい。デーモンに村を襲撃されたんです。その時、俺は無我夢中でデーモンに噛みつきました。きっとデーモンの血を飲む事によって俺自身が悪魔化したんだと思います」

「これは驚異的な新人が誕生しましたね、バラックさん。まさかデーモンと勝負して生き延びた人間が居るとは!」

「うむ。自己再生に魔力強奪か。まさに高位の悪魔であるデーモンの特性だ。クラウスがデーモンと相見えた時、体内に闇の魔力を秘めていたに違いない。魔物と同属性を持ちながら敵の生き血を飲む事によって、デーモンの特性を開花させた」

「え? 俺が闇の魔力を秘めていたとはどういう事ですか?」

「全て推測だが、クラウスは戦闘時に強い憎悪の感情を抱いた。一的に闇属性を発生させたのだろう。その状態でデーモンの血を飲んだ。闇属性同士が強く結び合い、デーモン特性がクラウスの体内で開花した。通常ならデーモンの様な強力な幻獣の血を飲めば、たちまち体は虫歯れるだろう。強い闇の魔力を秘める悪魔の血。闇属性を持たない人間にすれば、それは毒でしかない」


 俺は一時的に闇属性を発生させていたのか。確かに俺は憎悪の感情を抱きながらデーモンに喰らいついた。魔力の性質がデーモンと一致していたから、デーモンは俺を殺さずに見逃したのだろうか? 確かデーモンは『いつか俺を殺しに来い』と言っていたな……。


「それでは、こちらの契約書にサインをお願いします」

「はい」


 俺は半年間の契約を結ぶために、契約書にサインをした。契約は更新する事が可能だが、ヴィルヘルムさんは拠点を王都アドリオンに移したいと考えているから、今の時点では半年間のみ、アーセナルで活動する事に決めた。


「それではこちらが契約金の五万ゴールドと、加入祝いの一万ゴールドです。初めてのクエストは一ヶ月以内に受けて頂く事になります。基本的に単独でクエストを受けるよりも、パーティーでクエストを受けた方が生存率が上がりますので、実力が近いメンバーを集めてクエストに臨んで下さい」

「メンバーはアーセナル内で探した方が良いですか?」

「はい。アーセナルの登録者でお願いします」

「分かりました。それでは近日中にクエストを受ける事にします」

「ベルンシュタイン様の活躍を期待しております」


 職員達は一斉に頭を下げると、バラックさんは微笑んだ。ギルド内でメンバーを募集してパーティーを拡大した方が、より安全にクエストを受けられるという訳だ。それにしても、生存率が上がるとは。まるで死亡率が高いクエストを受ける事が確定している様だ。


 それから俺達は魔物の素材の買い取りを行っているカウンターで魔石と牙の首飾りを買い取って貰った。買取価格は全部で七万ゴールドだった。やはり地道に素材を集め続けたからか、まとまったお金を手に入れる事が出来た。


「まずはメンバーを探しながら装備を整えようか」

「そうですね。ところで、メンバーってどうやって探したら良いんですか?」

「ギルド内に張り紙でもしておけば加入希望者が来る筈だ。その中から強い者だけを選べば良い」

「でも、俺はあまり仲間を増やしたくないんですが……」

「どうしてだ?」

「統率が取れなくなる気がするので、少数精鋭で魔物討伐を行いたいんです。それに、守るべき仲間が増えたらヴィルヘルムさんの負担も増えるんじゃないかと思います」

「うむ。今の俺の力では、守れてもあと一人。仲間を増やしすぎても防御しなければならない対象が増えるから、クラウスを守る事に集中出来なくなる」

「そうですね。それではまず、一人だけ増やしましょう」

「そうしようか」


 俺達は仲間を募集するにあたって条件を付けた。あまりにも実力が離れていたら、戦闘中に仲間を守る事が難しくなるので、レベルは二十以上。火、水、氷以外の魔法の使い手。前衛は俺が受け持つから、後方から魔法攻撃を仕掛けられる魔術師を募集する事にした。


 戦闘時には俺が敵の群れに切り込み、ヴィルヘルムさんは離れた場所から氷の防御魔法で俺を守る。そしてもう一人の魔術師が攻撃魔法で俺を援護する。まるでかつてのヴィルヘルムさんのパーティーの様だ。連携が強くなれば更に前衛職を増やすのも良いだろう。ただ、今の段階ではヴィルヘルムさん自身の力も完璧に把握出来ていないので、あと一人だけ増やすのが妥当だと思う。


 羊皮紙に魔術師求むと書き、ギルドの掲示板に貼ると、瞬く間にギルドメンバーが羊皮紙の前に集まった。この調子ならすぐに新しい仲間を増やす事が出来そうだ。


「まだ夜まで時間があるんだ。装備を整えに行こう」

「そうですね。新しい防具が欲しいです」

「そういえば、ブラックウルフとの戦闘時にはどんな防具を装備していたんだ?」

「普段着ですよ。剣以外の装備が無かったので」

「クラウスなら防具なしでもブラックウルフを狩れるという訳か。普通の冒険者なら全身に防具を纏い、討伐隊を組んで森に入るのだが」

「俺には防具を買うお金も、仲間も居ませんでしたから……」

「そうだったな。だが、今は俺が居るだろう?」

「はい!」


 ヴィルヘルムさんが俺の肩に手を置くと、彼の澄んだ魔力が体内に流れてきた。まるで氷に触れている様な、涼し気な魔力が体に充満した。何と美しい魔力なのだろうか。俺が求めていた仲間はヴィルヘルムさんだったのだ。頼れる先輩の冒険者で、魔法職でありながら、仲間を守るためにゴブリンロードの前に立つ勇気を持っている。まるで俺がデーモンと遭遇した時の様だ。


「まずは防具だ。クラウスは自己再生の力で怪我を癒す事が出来るだろうが、基本的には敵の攻撃を直撃しない事。怪我が治るからといって油断して敵の攻撃を受ければ、その攻撃が命取りになる可能性もある」

「そうですね。防具が必要だとは思っていました。森では何度もブラックウルフの爪で切り裂かれましたから。その度に激痛に悶え、何度も死を意識しました」

「壮絶な体験をしてきたんだな。だがもう安心しろ。俺が守りきってやる」

「はい! 今はヴィルヘルムさんが居ますから、安心して敵と戦えます」

「ああ! 俺も強力な剣を手に入れたから、これからは徹底的に魔物を狩る! 俺達は剣と盾だ。二人で力を合わせて幻獣に復讐しよう!」

「はい、ヴィルヘルムさん!」


 俺とヴィルヘルムさんは固い握手を交わし、武具屋を探すために歩き始めた……。

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