Pert 1 「つまんね」
午後特融の優しいまどろみの中で静かに眠る。
「おい、狩音!寝るんじゃない!授業中だぞ!」
静かな教室に男性特有の野太い怒鳴り声が響く。
心地良い眠りを邪魔された狩音と呼ばれた青年は、ゆったりとした動作で起き上がり、
「でけぇ声で怒鳴んじゃねぇよ、授業中だぞ。」
と、ダルそうなトーンで煽る。
「なんだと貴様!ふざけるな!貴様は『救世主』になる資格は無い!出て行け!」
煽られた教員は何も考えずに煽りにノってくる。
狩音は「アホだな~」と心の中で教員の事を断定すると共に、この教員から学べることは何もないと確定した。
それなら、もう何も怖くない。と、
自分自身の全身全霊をもってこの教員を叩きのめそうと決心した。
「おっ、そうだな」
と、一言言って荷物をまとめ立ち上がり、出口へ向かって歩いて行く。
出口へ向かう途中、様々な声が聞こえる。
「アイツほんとヤベーよな」
「頭おかしい」
「顔はカッコいいのに、性格がねぇ」
いつもの事なので狩音はさして気にしない。
むしろ、獅子の美しさに嫉妬する負け犬の遠吠えと思い、その声に狩音は悦びさえ覚えていた。
そして、出口に着いた狩音は去り際に
「あっ、そうだせんせー」
と、思い出したようなフリをして
「あの浮気相手のリサさんだけどね、その手では有名な結婚詐欺師だから気を付けてねー」
と、とびきり凶悪な顔で柔らかくアドバイスをした。
「な、なんで、それを、、、け、結婚詐欺師?え?」
自分の中で一番ヤバい秘密を暴露され、混乱する教員。
対して狩音は、教員が予想以上の良いリアクションをしてくれて楽しそうに嗤う。
一拍置いて教室が騒めきだす。
「え?浮気ってマジ?」
「うっわ引くわー」
「これは狩音ナイス」
狩音は、教員の評価が自分と同じレベルまで下がったのを見て満足し、教室を立ち去る。
そして、再度眠るために屋上へと向かう。
屋上に着いた狩音は横になり、美しく雄大に広がる蒼い空を見上げ
「つまんね」
と短く呟き、深い眠りについた。