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東方学園の怪談話  作者: アブナ
束の間の休息
79/82

束の間の休息

今月はしっかり14日に投稿できたぞ!!









「いやーそれにしてもフランは弾演強いなー。どこでそんな鍛えてきてるの?」


「ふふん、伊達に戦闘狂じゃないのさ」


「あんまり自慢になってないような気もするけど……」


「ね、今度は私とやろうよ!弾演じゃなく、本気で!」


「本気の弾幕ごっこってこと?いいよ、こいしとは本気でやりあったことなかったものね」


「やったぜ!楽しみにしてるよ」
















「──はーっ…」


(また、夢か)


こいしは、地霊殿の自室にて目を覚ました。

フランからの襲撃を受けたその後、各々休息を取ることになったのだ。


こいしは真っ先に地霊殿へ直行。さとりの様子が気になったからだ。

しかし燐が先に到着し、看病に入っていた。

途中から小悪魔も看病に参加し、その際『こいしさんも休まれてください』と言われたので、自室にて仮眠を取ることにしたのだ。


そうして、今の夢を見た。




「……お姉ちゃん」


さとりがあんな目にあったのは、彼女フランの所為である。

それはわかっているが、やはり気になってしまう。

こいし自身が一度、彼女に救われているのもあるのかもしれないが……それだけじゃない。


「……何か、隠してる。絶対に」


仮にもし本気で敵対しているのだとしたら、フランの行動は色々と不可解なのだ。

そもそも何故、あの場ですぐにさとりを殺さなかったのか。

そして、自分達を殺そうとしなかったのか。


もちろん、地底の妖怪の複数人はやられてしまっていた。

その中には、ヤマメやキスメ達もいた。

もちろん、パルスィも。


しかしこいしは彼女達と特に関わりが深いわけでもないので、そのことを知らない。


幸いその三人は前線には出ていなかったので、死ぬことはなかった。

しかし──所謂『再起不能』という状態だろう。


「んーっ…!」


その場で軽く伸びをして、ベッドから起き上がる。

さとりの部屋へと向かおうとしているのだ。

帽子をかぶり、いざドアを開け部屋を出ようとしたその瞬間。





「戻ったわ!さとり、出てきなさい!何があったか説明してもらうわよ!」






霊夢の大声が、地霊殿に響き渡った。







こいしは部屋から出て、一階のエントランスを見下ろす。

そこには、戦場で戦っていた者達が集まっていた。


霊夢はさとりを呼んでいるようだったが、現在さとりはあの状態。

そして燐は看病をしていて、手を離さない状況だ。

ならば──



「おかえり、霊夢。その話は私からさせてもらうよ」











地霊殿の一室にて。

人が二人は入れるほどの大きなベッドに、所々に傷跡が残るさとりが寝かされている。

そのベッドの隣には心配そうにさとりの左手を握るこいしと、ベッドから少し離れた位置にいる霊夢、そしてその正面に聖と小悪魔、藍と燐が並んで立っていた。



「──つまり……


さとりはしばらく目を覚ますことはないと……」


「はい」


あれから霊夢達は地底に戻り、凄惨な姿の地底を見て何があったのかと慌てて地霊殿まで戻ってきた。


フランの襲撃にあったことを伝えると、霊夢達は『話が違う』と言ってレミリアの方を見つめる。


ただそれは責め立てるというような目ではなく、純粋な疑問の目だ。

レミリア自身もそうなっていたので、一旦状況を落ち着けるために今は各々が地霊殿に割り振られた居室で休息中だ。


そんな中霊夢は、さとりの状況を一目見ようとさとりの部屋を訪れた。

そして、現在の状況に至る。


「妹様の魔法です。怪我自体も酷いものでしたが、それ以上に魔法で意識の覚醒を妨げられています。とても強力な魔法で、解除どころか弱めることすらままなりません」


「私でも、この魔法はわかりませんでした。おそらく、西洋の方の、それも古き時代の魔法だと思われます」


さとりの手を握るこいしの手の力が、ほんの少し強くなっているように見えた。

霊夢は別の話題を出そうと考え、その隣にいる二人に話しかける。


「藍と燐は、軽傷で済んだのね」


「ああ……ダメージこそ無かったが吹き飛ばされてしまったおかげで不覚を取った。申し訳ない」


「あたいもちょっと油断してたかもな〜……気付いたら周りのみんなが吹き飛んでて、あたいもいつのまにか吹き飛ばされてて……ただやっぱりそんなにダメージは無かった。他のみんなも手痛いダメージを貰ってたってわけじゃないっぽいんだけど」


運が良かったのかな?と首を傾げる燐。

その時横から、小悪魔が話に割り込むように入ってくる。


「霊夢さん、もう一つ報告しなければならないことがあります」


「ん?」





「イザベルさんが、攫われました」





驚きのあまり、思わず目を見開いた。

それは『まさかあいつが』という驚きと、それを小悪魔が報告してきたことの二つへの驚きだった。


「そう……こんな言い方はしたくないけど、あいつは貴重な戦力だったから……少し辛いわね」


その時ふと、気が付いた。


「……攫われた?って言ったわよね?」


「はい」


イザベルが攫われた理由がわからなかった。

攫うのならば、小悪魔の方だとばかり思っていた。

小悪魔は、狂乱状態を解除することができる。おまけに狂乱状態の原因である狂の瘴気を無効化する魔法まで扱える。攫う理由としては充分すぎるくらいだ。


イザベルはそれをサポートしていただけで、イザベル自身にその力はない。無効化魔法は魔力の消費が激しいので、イザベルが魔力を提供していただけのこと。


何故、イザベルだったのか。

それが霊夢にはわからなかった。






「イザベルさんは……私を庇って、攫われてしまいました」


小悪魔の口から、そう言われるまでは。





「───そう、なのね」


それならば納得がいく。

イザベルはああ見えて、とても心優しい奴だ。

態度こそでかいが、人を思いやる気持ちは人一倍強いし、何をすることが最適かをしっかりと考えてから言動を行う。


少し見習いたいくらいには、イザベルは人の感情を良く理解できている。


「気にすることはないわ、小悪魔。イザベルの判断は正しかった。貴女が攫われてしまったら、私達は打つ手が無くなっていたから」


「はい、わかっています」


励ますつもりで言ったが、小悪魔の返事は予想外のものだった。

ふと、小悪魔の方を見る。


「イザベルさんは、私達を信じてくれた。その信頼には応えなければいけません」


以前のような、自信の無い表情や言動は何処にも無かった。

覚悟に満ちた、とても強く逞しい顔付きをしていた。





「ふふっ……イザベルは凄いわね。あんたをそこまで突き動かすなんて」


「イザベルさんは言っていました。


……私に足りないものは、自信。それさえあれば、何者にも劣らない、と」


少し悲しげな顔をするが、すぐに自信に満ちた表情へと変わる。


「狂気に関しては、私に任せてください!」


「……あんた、本当に変わったわ。パチュリーのとこにいた時とは大違い。もちろん、良い意味でね」


(パチュリーが見れば、さぞ喜んだんでしょうね……)


「さて、それじゃあ……一先ずは休憩といきましょうか。みんなも疲れただろうしね」


霊夢が近くにある椅子に腰掛けた。

ちらりとこいしの方を見ると、こいしは霊夢の方を見つめていた。


「……どうかした?こいし」


「霊夢、何かあった?」


思わず、体をビクつかせてしまった。

図星である。


「……話して、欲しいな」


「鋭いわね、こいし。流石はさとり妖怪。


……単刀直入に言うと、伸介がやられたわ」






少しの間、静寂が訪れた。

その場にいたもの達の全員が、驚きの表情を見せていた。


「やられた、って……え?」


漸く口を開いたのは、小悪魔。

心なしか、言葉が震えている。


「殺されたわ。……敵にね」


「……嘘……」


両手で口元を隠し、驚きの表情を浮かべている。

館の者達が、如何に伸介に厚い信頼を寄せていたのかが伺えるようだった。


「でも、そんな……あのお方に限って、そんなこと………!」


「レミリアを助けるために囮になったのよ。敵の大将二人を相手に、一人残って戦ったの。


おかげでレミリアは無事に戻ってこれた。……妹を、守ったのよ」


そこまで言った後、霊夢は目を伏せて黙り込んでしまった。




「……さとりさんの看病は、私が付きます。なので皆さんはもう休まれてください」


白蓮がそう言った。

皆の視線が一斉に白蓮の方へ集まる。


「じゃああたいも手伝うよ。戦いの時になったらあたいに任せて尼僧さんは前線に出てほしいな」


「わかりました、ありがとうございます」


「そういうわけだから、こいし様。……ゆっくり、休んでください」


そう言われるや否や、こいしはさとりの手を放し、頷いた。


「無理はしないでね、お燐。白蓮さんも」


立ち上がりながらそう言うと、足早に部屋を出ていく。

霊夢はその後ろ姿を、悲しげな表情で見つめていた。


(……あの子には悪いことをした。私がここを本拠地に選んでしまったばかりに……)


こいしがドアノブに手を掛けたその時、彼女は霊夢の方へと振り向いた。


「霊夢」


「ん?」


「貴女のせいじゃないんだから、あんまり自分を責めないでね」


あまりに驚き、素っ頓狂な顔をしてしまう。

俗に言う、『鳩が豆鉄砲を食う』と言った感じだ。

こいしはそのまま、ドアを開けて出ていった。


霊夢は口を開けたまま呆けていた。


「……え?あの子眼ぇ開けてた?」


眼とはサードアイのこと。

こいしは悟り妖怪だが、昔色々あって眼を閉じているのである。

故に心を読まれるようなことはありえないはずなのだが……


「こいし様って、昔からあんな感じなんだよ。人の感情を顔色ひとつで把握しちゃうんだ。まるで心を読まれてるみたいって感じることが良くあったな〜………過去の経験から、なのかね」


燐が苦笑いをしながらそう言った。

なるほど、と納得した。彼女もおそらく、昔は心を読むことができただろう。

それ故に、"こういう表情をしているときはこんな感情を抱いているんだ"というのがよくわかるのだ。


「……なんだか怖いわね、あの子。何考えてるか全く読めないところがまさしく『無意識』って感じ」


「私のお寺に居候していた時期がありましたが……その時もあんな感じでしたね。ふらっと何処かへ消えたと思ったらすぐにまた現れて……」


「『空想上の人格保持者』、ね。強ち間違いでも無いのかも……ふふっ」















地霊殿の中庭にて。

妖夢が、刀の鍛錬に励んでいた。


「…スゥー……」


深呼吸をして、一度肩の力を抜く。

ゆっくりと、左腰に差した刀の鞘に左手を置いた。


柄に右手を添え、足を軽く開き少しだけ身を屈める。




その時、妖夢の頭上から弾幕が飛んでくる。ちなみにこれは自分で放ったもの。 大きさをバラバラにして、弾幕が自由落下してくるタイミングをずらしているのだ。

妖夢の体に今に弾幕が当たる、その刹那。





「──フッ」





短い息遣いと共に素早く刀を抜き、弾幕の全てを切り裂いた。



「……ふむ」



それを確認した後、妖夢はゆっくりと刀を鞘へ納めた。


(斬ることこそできたものの……こんなスピードでは"悪魔フランドール"には到底敵わない)


「もっと早く、鋭く……」


再び妖夢が頭上に向けて弾幕を放とうとした、その時。




「……?」


パチパチ、と、どこからか拍手の音がする。

その音はまるで自身の周りを覆うように広がり、何処から聞こえているのか把握することが出来なかった。


「見事な刀さばきだね、妖夢さん」


突然、背後から声が聞こえる。

思わず刀に手を置きながら振り向く。


「待って待って!私だよ」


こいしが慌てた様子で両手を振っている。


「……何だ…こいしさんでしたか」


刀から手を放し、軽く溜息をつく。


「全く、不気味なことしないでくださいよ」


「いや〜ごめんごめん。邪魔するのも申し訳なかったからさ?」


「だからと言ってわざわざそんな風に登場する必要は……まあ、良いですが。


ところで、何か用でしょうか?」


まだこいしとそこまで深く関わったわけではないので、若干愛想笑いとなってしまっていることを気にしつつ、妖夢は軽く笑顔を作った。

それとは裏腹に、こいしの表情は笑顔ではあるものの少し真剣なものに変わっていた。


「ねえ、妖夢さん」


「はい」


ふざけた話ではないことを悟った妖夢は、笑顔をやめた。


そして、こいしから発せられた意外な言葉に驚いた。


「刀の稽古をつけて欲しいんだ」










場所は変わり、地霊殿二階の一室。

綺麗に整頓されたその部屋に、レミリアは一人椅子に座り、物思いに耽っていた。


ふと、右手の人差し指にはめた指輪を見つめる。

義兄が残したこの形見とも呼べる銀色の指輪………この中には、伸介の能力の一部が刻み込まれている。

魔力を注げば時空間移動ができ、義兄の能力の一端を味わうことができるのだ。


しかし、レミリアは気付いていた。

その効力が発揮できるのは一時だけ。

時が経てばこの指輪は役目を終え、元の何の変哲も無い指輪へと戻ってしまうだろう。


回数にして『約10回』。それ以上の使用は不可能だと思われる。


それともう一つ……気付いたことがある。


「…………あいつ、これに能力注がなかったら逃げれたんじゃないの………」



それは、この指輪には他の妨害を受け付けない作用があることである。



つまるところ、伸介の能力は結界等の影響を受けないのだ。

伸介が操るのは『時空間そのもの』。たとえその空間に結界が混じっていようともそれごと『作り変え』て『捻じ曲げて』しまえば、結界の干渉を受けることは決して無い。


思えば、伸介が現れたのは突然だった。

能力を使わずに来たとするならば、妹や母がそれに気付かないはずもない。


義兄は、この事を敵に勘付かれない為、敢えてあの場では能力が使えないと嘘をついたのだ。

時空間移動を、使い易くするために。


そして最後に自分が犠牲になることで……相手に時空間移動への警戒心を、ほぼ完全に無くさせたのだ。


(………あの時………)



−『オレの能力の半分を封じ込めた』


(小声で言ってたのは、そういうことだったのね)


と、その時。

コンコン、とノックする音がなり、レミリアは我にかえる。


「お嬢様、お茶をお持ちしましたよ」


声の主は、美鈴であった。


「あら、気が効くわね美鈴。入りなさい」


「失礼しますね」


ティーセットのスイーツが乗ったワゴンを押しながら、美鈴が入ってきた。

入ってきたのだが………


「……あんた、それどうしたのよ」


「いやー、その。先の戦いで私の服結構派手に破れちゃいまして。代わりの服がないかと思って探してたんですけど………そのー、サイズが合うのが……この服しか無くて……はははっ……」


美鈴は、メイド服を着ていた。

普段頭に被っていた帽子はカチューシャに変わり、髪は短めにカットされている。

まるで、かつてのメイド長達(イザベルや咲夜)を見ているようだった。


「……そういえばあんた、一時期メイド業もしてたわね。咲夜が来るまではメイド長みたいなものじゃなかったかしら」


「そんな時もありましたね〜。ただ私おっちょこちょいなんで、あんまりメイドには向いてなかったと思います」


「どうかな、あの頃のあんたは結構生真面目なイメージがあったけれど」


「え!?この私が生真面目……!?」


「ふっ……!何であんたが一番驚いてんのよ!」


思わず、笑いが溢れてしまった。

それにつられるように、美鈴も笑顔を浮かべる。


「しかし久しぶりに見たわねー美鈴のメイド姿。髪型まで変えちゃって、案外ノリノリじゃないの」


「いや〜流石に前ほど長く伸ばしてるとお茶とか入れるときに邪魔になるかなーと思って。いっそのことばっさり切っちゃおう!という感じで妖夢さんにお願いしました」


「妖夢!?あの娘散髪できんの!?」


「できるみたいなんですよ〜!凄くお上手で驚きました」


髪を右手で弄りながら、ワゴンを押してレミリアの座る机の隣まで運んだ。


「はえ〜…あの娘何でもできるわね……ちょっとした敗北感すら感じるわ……」


「まあお嬢様は主人ですからねー、それ相応の仕事をしっかりとこなしてくれているわけですし。それに育った環境が違うんですから、それぞれ得意不得意があって当然だと思いますよ?」


「まあ……それもそうか。とりあえずお茶ありがと。ここに紅茶はあまりなさそうだけど、どうだった?」


「案外置いてありましたよ。お嬢様が好きなアッサムの茶葉も置いてありましたし、ダージリンのもありました。ちなみにこれはアッサムの紅茶です。

もしかしたら、さとりさんも紅茶好きなのかもしれませんね」


ティーセットとスイーツの乗った皿を机に並べながら答える。

その手際の良さは、イザベルや咲夜達に引けをとってはいなかった。


「あんた、なかなか手際がいいじゃない?会話も上手だし結構メイド向いてると思うけどね」


「あははっ、有難いお言葉。ですが、私よりも咲夜さんやイザベルさんの方が手際もいいし愛想もいいと思いますよ?私の場合は単に馴れ馴れしいだけというかですね」


それだけ言うと、美鈴はレミリアの隣に置いてあった椅子を反対側に持っていき、座った。


「んー、私はそのフレンドリーな感じが好きなんだけどな。嫌な奴は嫌なのか」


「考え方によっては『主人たる自分になんて馴れ馴れしい態度を取るんだ』とか思う人もいるみたいですよ?」


「かーっ、堅苦しい奴だな!自分の家族を見下すとかマジで無いと思うわ」


「あははっ、みんながみんなお嬢様みたいな人とは限らないのでしょうね〜」


「まーそれはそうかもね〜、その点で言えば私は良い主人と言えるのかな」


自慢気に口元をニヤつかせて美鈴を見つめる。


「ぷはっ、自分で言っちゃう辺り、さすがはお嬢様です!」


「おぉっと、なんだか半分は皮肉っぽく聞こえたが?」


「め、滅相も無い!」


「ははっ、冗談よ冗談。じゃ、食べましょ」


そう言ってフォークを美鈴に差し出した。

予想外な展開に、美鈴はきょとんとしている。


「ん、食べないの?」


「い、いや……お嬢様が召し上がってください。そのために持ってきたわけですし」


「あら、私一人でこれを?少し多すぎるような気もするわ」


「……あっ……」


美鈴は驚いたような表情を浮かべたのち、少し落ち込むように表情を曇らせた。


「………」






「えい」


「ぐむっ!?」


レミリアが美鈴の口に無理矢理一口サイズにカットされたショートケーキを詰め込んだ。


突然のことに驚き、思わずケーキを半分ほど噛まずに飲み込んでしまう。

レミリアがフォークを引っ込め、ニヤニヤと笑いながら見つめている。


「……」


「どう?」


「……とっても、甘くて美味しいです」


「へえ、それじゃあ私も食べてみよ」


そう言って、レミリアもショートケーキを口へと運ぶ。


「……ん、ほんと。これ良いクリーム使ってるわね……好みだわ。生地の中に苺を入れてるのもまた上手くマッチングしてて美味しい。

やるじゃない、美鈴。これならきっと"あの娘"も喜んでくれるわよ」


「……!」


「でも、まだ少しだけインパクトが足りないかな。あの娘が満足するかと言われれば、それは否。……さて美鈴、これは良い機会と言えるかもよ」


「え?」


レミリアがフォークを美鈴の顔に向ける。


「これから数日に一度、私にケーキを作りなさい。その度に私が採点してあげる。

私は誰よりもあの娘(フラン)のことを知ってるからね。あの娘が好きな味も当然知っている。


完璧な味付けになるまで、私が色んなアドバイスをしてあげるわ。ま、貴女のやる気があれば、だけど………どう?」


美鈴は、自分が『二人分』のスイーツを作って持ってきてしまったこと、そしてその『理由』を見抜かれたことに驚いた。


突然、闘志が湧いてきた。

美鈴は意気揚々と声を上げる。


「やらせてください!」


「よっしゃ、任せとけ!」


ニカッと笑って、レミリアは右手の拳を美鈴に差し出す。


「これからみっちり鍛えてやろう!」


「お願いいたします!」


美鈴はその、小さくも偉大な拳に、自身の左手の拳を当てた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「王女様、よくぞお戻りになられました。お部屋にも暖かい紅茶を用意しております」


「ん、了解。ありがとうね」


袴・振袖の上に、肩にフリル付きのエプロンをつけた、所謂和装メイドのような格好をしている、フランよりも少しだけ身長の高い少女……召使いの鈴蘭の言葉にそっけなく応えると、フランは足早に自分の部屋へと向かっていく。


「……王女様、どうかなされましたか?酷く不機嫌なご様子ですが……」


普段よりもそっけない対応であったことと、こちらに目を合わせようとしない態度から、鈴蘭はフランが機嫌を悪くしていることを察した。


「おや、わかる?まだ態度に出ちゃうみたいだな」


そう言われるや否や、フランはちらりと鈴蘭の方へ視線を向けた。

特に不機嫌そうな顔はしていないし、何なら笑っている。

しかしその笑みは、裏にある感情を隠しきれていなかった。


「とは言っても、大したことじゃあないよ。あんまり気にしないでね」


「とは言われましても、私は貴女の召使いであります故」


心配そうな眼差しを向ける鈴蘭。

鈴蘭は真剣に心配してくれているらしいことを察したフランは、その思いを無下にするわけにもいくまいと、 軽くはにかんだ笑顔を浮かべた。


「心配してくれてありがとう。でも本当に気にしなくていい事なんだ……そうだ、紅茶飲み終わったらおかわりをお願いしに行っても良いかしら?」


「…もちろんでございます。お待ちしておりますね」


「ん、ありがと!それじゃあね」


そこまで言うと、フランは目配せをして踵を返し、部屋の方へと向かっていった。





──しかし、目的地は自室では無い。








コツ、コツ、コツ、コツ……



地下へと続く薄暗い階段を下っていく。

壁の両側には蝋燭が立て掛けられており、城の内部とは打って変わって、不気味な雰囲気を醸し出している。


今フランは、紅魔の城の地下牢へと向かっている。そこにいる"ある人物"と話しに行くために。


しばらく下っていくと、一つの鉄の扉が現れる。

それは固く閉ざされており、扉の奥からは物音一つ聞こえてはこない。

フランは右ポケットに手を突っ込み、その扉の鍵であろうものを取り出した。


(配下の連中を二人寄越して、『見張っていろ』と言ったけど……


さて、どうなってるかな)


ガチャ


ギギギギギギィ……


床に引き摺られ、鈍い音を立てながら扉が開く。

その中にいた人物は───


「……あーあ……


これまた随分、酷くやられたね……」







全身に傷を負った、イザベルだった。


イザベルは今、牢屋の中に左手を魔力と力を抑える鎖で繋がれた状態である。

切り傷や青じみ、さらには火傷まで見られる。

服は所々を破かれており、その華奢な身体が露わとなっている。

あらゆるところに血が流れたであろう跡が見受けられ、イザベルが受けた暴行の凄まじさを物語っていた。


「生きてるんだろうね、これ」


フランが牢屋の柵の手前まで歩いていく。

すると……


「……残念ながら……死んでいますよ……」


イザベルが酷く弱々しい声でそう言った。


「はっ、生きてんじゃん。良かったよ」


「さて……どこまでが本心、かな」


「生きてたのが嬉しいのは本当よ?」


「くくっ、どうだか……ッ…ゲホッ」


イザベルが口から"白い液体"を吐き出した。

だが……見るからにそれは唾液では無い。


「……!!」


フランは思わず目を見開く。

牢屋の扉の鍵を開け、牢屋の中へと入っていった。

早足でイザベルの手前まで歩み寄り、その場で屈む。


その行動に驚いたのか、イザベルは少しだけ顔を上げ、フランの方を見つめた。

それと同時に、力無く投げ出されていた両足を閉じる。


「……イザベル、足開いて」


「そのような趣味があったとは、意外…ッ、ゴホッ」


また、白い液体を吐き出す。

そのことで確信したフランは、イザベルの右足を優しく掴むと少しずらして足を開かせた。


「……あいつら……()()()()


陰部からも、その白い液体が見受けられた。

つまるところ、これは……。


「ケホッ、ァ……あー……何故今くるかな、フラン様……」


液体を吐き終えたのか、不敵な笑みを浮かべるイザベル。

酷い有様となってしまってはいるが、態度は変わっていないようだった。


「……申し訳、ありません。貴女の体でこのような……」


「そんなことはどうでもいい。ねえ、イザベル。あの二人組さ……何回ここに来た?」


「……さあ……私は記憶力が無いですからね……分かりかねます」


「何回来た?」


今度は少し強めの語調で言った。

一度フランの方を見つめた後、観念したのかこう口にした。






「……まあ……両手では数え切れないでしょうね……」







「……そう」


そういうと、フランはイザベルに治療魔法を掛ける。


「……おや?良いのですか?せっかく部下がここまで弱らせたのに……」


「イザベル、何で傷を再生させないの?魔力を放出させることはできないだろうけど、体の中の魔力は自由に動かせるはずだけど」


「傷物に興味を示す者は余程の物好き以外いないでしょう?」


自嘲するように、笑いながらそう言った。

先のイザベルの話を聞くに、少なくとも10回以上は連中に犯されてしまっているであろう。

普通ならば、泣き言を漏らしてしまってもいい状況。

しかし……その目の内には朦々と、叛逆の炎が燃えていた。


「ついでに"汚物"も身体から消しといたから。……今後は私が会いに来てあげるよ、イザベル」


「それは大変喜ばしい……しかし意外ですね、私は貴女の敵ですよ?」


「イザベルはイザベルだからね」


そういうとフランは立ち上がる。

イザベルの治療が完了したのだ。

ただ……完全に治癒したというわけではないようだ。


「完全には直さないよ。()()()が来た時に困るしね…………もしまたあいつらが来た時は、この蝙蝠に言って」


フランの体の影から、一匹の蝙蝠が現れた。

頭にはミニサイズのフランの帽子を被っている。

それはイザベルの足元に降り、そのままくつろぎ始める。


「おや……可愛らしい。ペットですか?」


「いいや、"私の一部"。その子が聞いた言葉や行ったことは全部私に伝わるから、そういうつもりで居てよ」


『ちなみに私も喋れるよ。フォーオブアカインドの応用みたいなものだからさ。退屈な時は話しかけてね』


蝙蝠がフランの声を発した。


「えっ…!」


イザベルが驚いたように蝙蝠の方を見つめる。

いや……どちらかというと悶えている。


「……あの、この子飼っていいですか?」


「ダメ」


「デスヨネ」


「ふふっ……それじゃあ、またね。……閉じ込めておいて言う台詞じゃないけど、ゆっくり休んでね」


「では、お言葉に甘えて……」


そういうと、イザベルは壁にもたれかかり、眠りについてしまった。

余程疲労していたのだろう。


「……」








「ふぅ、バルコニーの片付け終了……王女様のご様子を見に……」


『鈴蘭』


「!」


突然、懐から帽子を被った蝙蝠が顔を出し、鈴蘭に話しかけた。

鈴蘭はフランの蝙蝠を一匹貰っており、それが話しかけたのだ。


『これからちょっと出掛けてくるね。その間、イザベルを捕らえてる牢屋への入り口見張っといてくれない?』


「はい、かしこまりました。お気をつけて」


鈴蘭は何を問うわけでもなく、二つ返事で了承した。


『ありがとね』


それだけ伝えると、蝙蝠は目を瞑り懐の中へとモゾモゾと戻っていった。


「……」(王女様は……えらくあの捕虜のことを気になさっている節がある。話によるとかつての仲間だとか何とか……


……羨ましいな、王女様に大事にされているというのは)


そこまで考えて、鈴蘭ははっと我に帰る。


「いけないいけない、早く見張りに行かないと……」


そういうと鈴蘭は足早に地下牢の方へと向かっていった。












「……先に連中を始末してもいいんだけど、まずはアレの回収に行かないといけないな。()()()()もう着いたかな?」


フランはフードを深く被り、優雅に空を飛行している。

それなりに飛ばしているようだった。


「さーて、()()()()()()に進んでいるのか役者がアドリブを入れたのか……」


不敵な笑みを浮かべ、向かっていくその先は───迷いの竹林であった。










ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……


永遠に続くかのような竹林を、ただひたすらにまっすぐ歩く。


フランは、『とある物』の回収の為に、ある地点に向かっていた。それは………"妹紅と慧音"が激闘を繰り広げたあの場所だ。


ある程度進むと、焼け落ちた竹や乱暴に折られた竹、地面が抉れた後や砕けた岩など、まるで嵐が過ぎ去った後の森のような戦闘の跡が現れだす。

フランは特にそれを見やるわけでもなく、表情を変えずただただまっすぐに進んでいった。







ザッ、ザッ……


フランが歩みを止める。

目的地に到達したようだ。


「……!」


思わず目を見開くフラン。

フランがその目に見た光景は───





妹紅と慧音が地面に倒れ伏している、()()()()()


背を向けて立つ、少女が一人。








「よお、王女様」


徐に慧音の手から不死ノ太刀を取ると、それをフランに振りかざす。


「こいつはもらっていくぜ」


不敵な笑みを浮かべ、目を赤く光らせている。

その招かれざる客の名は……


「……へえ……貴女、同化されてたのかと思ってたけど。


やっぱりただでは終わらないのね、()()()ってのは」




幻想郷唯一のお尋ね者───鬼人 正邪。






「ただ、()()()()()()ってのは少し傲りが過ぎるんじゃない?


目の前にいるのが誰なのか、よく確認して欲しいんだけど」


フランが一歩ずつ正邪と距離を詰めていく。

正邪はそれに動揺することなく、ひたすらフランを睨み続けていた。


「そりゃああの王女様なんだ、そう簡単に逃げられるとは思ってないさ。


だが……傲っているのは案外そっちかもしれないぜ」


「…?」


正邪が人差し指と親指を立て、くるりと手首を捻る。

その刹那。




ガキィンッ


「──へえ。


横に落ちてた竹と位置を入れ替えたのか……面白いね」


「初見でこれを見切るとは、やっぱり吸血鬼ってのは化け物だな」


正邪が突然フランの右側に出現し、不死ノ太刀で攻撃を仕掛けてきた。

フランはそれをレーヴァテインで防いでいる。


「しかし……どうやって同化から免れたのかな?あの紅い光は建物や物陰さえも貫くはずなんだけど」


「別に私は同化していないわけではないさ」


「……?」


「自分でもさっき言ってたろ?私が何なのか」


フランの視界から正邪の姿が消える。

しかし、フランはしっかりと正邪の位置を把握していた。


「なるほど、天邪鬼……叛逆せずには居られないのね」


そう言いながら、空中を一閃した。

その軌道上の竹が、数百メートル離れたところまで切断される。

正邪はそれを上に飛び上がって躱していた。


「飛んだな」


フランが正邪に向けて左手の人差し指を翳す。


「!!」


ドッ


瞬間、フランの指先から太めの光線が放たれた。

正邪は身を翻して何とか避けている。


「くっ、やっぱり強いな……」


正邪が着地と同時に踵を返し駆けていこうとするが……


「おっ」


既にフランは正邪の目の前に回り込んでいた。

正邪の喉元にレーヴァテインを押し当てている。


「命が惜しくば、その刀を返しなよ」


「……だから言ったんだ」


「?」





「───"傲りが過ぎる"ってな」





「!?」


正邪の姿が消えると同時に、周りが薄暗くなる。

上を見上げると、先程切断された夥しい数の竹が、フランを覆うように落下してきていた。

しかもその竹のほぼ全てに、フランのレーヴァテインによって炎上している状態だった。

流石の吸血鬼でもこれをまともに受ければ助からない。


「ちっ…!」


レーヴァテインで薙ぎ払う。

しかし、竹の数は全く減らず、炎ばかりが大きくなっていく。

今度は連続でレーヴァテインを振るうがそれでも状況は変わらなかった。


「くそっ…!」







正邪はフランから数十メートル離れた位置に姿を現していた。

そのまま竹林の外へと駆け出していく。


「さよならだ、王女様」


不死ノ太刀を鞘に収め、全速力で駆けていく。

どうやら同化による影響で、身体能力や魔力量等が跳ね上がっているようだ。


「さてまずは……叛逆軍でも作るかな」


正邪が勝利を確信したように笑みを浮かべた、その時だった。






「…は?」


目の前に何か、炎を纏った大きな塊が降ってくる。


「なっ───」


それは、全身に火炎魔法を纏わせていたフランだった。

炎の中から正邪に向けてレーヴァテインを振るってくる。


「ッ!!」


正邪は間一髪でそれを躱す。再び能力を発動させ、遠くに落ちていた竹と位置を入れ替える。


「くそっ、あんの化け物がっ……あ?」


正邪が地面に足をつけた瞬間、その地面に違和感を覚える。


「なんだ───」





「残念」


不敵な笑みを浮かべたフランが、その右手を握りしめる。


「ゲームオーバー♪」





カッ





ドオオオオオオオオオオオンッ!!


正邪のいた場所の地面が光り、大爆発を起こした。

どうやら地面に地雷のようなものを仕掛けていたようだ。それをフランの能力で爆破させたのだ。





しばらくすると爆煙が晴れ、爆心地が見えてきた。


「貴女のその能力、かなり強力だね。


でも強力故にインターバルもそれなりに長いってことだ」


そこには、全身焼け傷だらけの正邪が立っていた。

服もボロボロになってしまっている。


「グハッ…ッはぁ!」


「惜しかったね……なかなか面白い立ち回りだったと思うよ」


フランがレーヴァテインを正邪に向けて翳す。

正邪は息を荒げながらも、フランを睨み続けていた。


「けど……残念ながらここまでだね」


フランがレーヴァテインを振るおうとした、その瞬間だった。







「"ひっくり返れ(ターンオーバー)"」






「……!?」


正邪のその言葉と同時に、フランが体勢を崩した。


「…………?」


フランは、呆然とした様子で地面を見つめている。

正邪はというと、まるで先程までの負傷が無かったかのように体を起こし、首を回している。


「ふーっ、危なかったよ……でも全て予定通りだ。あんたが私を追い詰めることも、油断して目の前まで来ることも全部な」


「……!!」


「『何をした?』って顔だな。……何をしたと思う?」


正邪が不死ノ太刀を鞘から引き抜いた。

そのままゆっくりとフランに近づいていく。


「"ひっくり返した"のさ……『私とお前』の体の状態をね。


今私は、大ダメージを負っていた。あんたの攻撃を食らってね。それに対しあんたは、ノーダメージだったよな?それをひっくり返したのさ。


つまり、あんたの体は今大ダメージを負っているのと同じ……だから体が重くて全身に痛みを感じたわけだ」


それだけ言うと、フランに向けて不死ノ太刀を翳す。

フランが起き上がろうとするが、体に力が入らないのか、また膝をついてしまった。


「…ッ…!」


「ま、それなりに魔力を使うしかなりインターバルも長いから、一勝負一回のとっておきなんだけどさ。


……残念だったな、王女様?勝ちを確信していただろうに」


嘲笑うようにそういうと、不死ノ太刀を大きく振り上げる。


「今度こそさよならだな」


それを、フランに向けて振り下ろした。






ズッ




不死ノ太刀が、フランの左肩を捉えた。


「…!!」


−こいつ……軌道をずらしたのか。


正邪はフランの頭を狙っていたようだったが、フランが魔力を放出し、軌道を少しずらしたのだ。

正邪は即座に不死ノ太刀をフランの肩から引き抜こうとするが……


ガッ


「ッ!?」


フランが不死ノ太刀を掴み、それを止めた。


「ちっ…!」


−仕方ないか……ここは一度撤退を……


正邪が不死ノ太刀を放し、フランから距離を取ろうとする。






ドッ






「……ッ、え……」


正邪の胸元に、背後から黒い刀のようなものが突き刺さる。


「禁忌……」


フランがそう言いながら不敵な笑みを浮かべた。

すると……正面にいたはずのフランが蝙蝠となって消える。


「なっ……!」


「『フォーオブアカインド』」


背後からフランがレーヴァテインを突き刺していた。

先程まで正邪と戦っていたのは分身だったようだ。


「分身とは言えなかなかいい勝負をしてたんじゃない?見てて面白かったよ」


「ぐっ…くっ……!!」


正邪が前に走り、レーヴァテインを体から引き抜いた。

しかし既に体力は限界、立っているのがやっとだった。


「く、そっ……!!」


「私を相手によく頑張った、とは言っておくよ」


フランがゆっくりと正邪へ迫っていく。

少しずつ後退りしていく正邪。


「……ちっ…!」(せめて不死ノ太刀だけでも……)


正邪が一瞬だけ不死ノ太刀を見やる。

再びフランの方へ視線を戻した時、そこには既にフランはいなかった。


「え───」







刹那、腹部に激しい痛みが襲ってくる。

フランからの攻撃を受けたのだ。


「……ちっく、しょぉ……っ!」


フランは正邪の背後に現れていた。

どうにかフランの方へと振り向くが……


「お疲れ様」


フランが、正邪の額を右手の人差し指で突いた。

その時を最後に、正邪の意識は途絶えてしまった……











「──さて、不死ノ太刀の回収は終わった。


帰ってあいつらの始末をしないとね」


フランは踵を返し、歌を口ずさみながら竹林の外へと歩いていった。


返り血を浴びたその姿は、まさしく悪魔そのものだった──。








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