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東方学園の怪談話  作者: アブナ
狂宴の刻
71/82

神出鬼没、紅悪魔 壱

あけましておめでとうございます!

年末年始は忙しくて更新がなかなかできませんでした泣





「こちら魔理沙、言われたことは全部済ませたぜ。これからどうすればいい?」


『ご苦労様、後はそっちの味方演じるのに戻っていいよ。まだバレてないだろうからね』


「りょーかい。今後も敵側の情報をそっちに回せばいいんだな?」


『そういうこと。頼りにしてるよ』


「おうよ。それじゃ」


魔理沙は魔法による通信を切ると、目の前に倒れた青年に手を翳す。


「まだまだそんなもんじゃないだろ。……もっと働けよ」














「陽が堕ちて、月が紅く染まる。それは永きに渡るうたげの合図。


真なる敵が現れて……第一幕『酔狂乱舞』は終幕へ」


地底の街の片隅にある、小さな一本道。

そこを通るのは、不敵な笑みを浮かべる黄金色の頭髪の少女。


「続きましては第二幕──


紅の警告(レッド・アラート)』にございます」


そんな彼女の行き先は───。


「さて、最初の演目は


『陰気なさとりの消失』


どうぞ、お楽しみください」


───現在の幻想郷側の中枢、地霊殿。









「お燐、そこの植木どかしといて。おそらくここが幻想郷側の軍事拠点になると思うから、空間は広くしておきたいの」


「りょーかいしました!」


「お姉ちゃん、私は?」


「貴女は……そうね、ここに泊まる人が出てくることも考えて、空き部屋の掃除をお願いできる?」


「お任せあれ!」


「結構な数あるから、私と手分けしてやりましょう」


現在地霊殿には、さとり、こいし、燐の三人が居る。

この防衛戦が終わった後、霊夢達が地霊殿になだれ込んで来ると考え、地霊殿全体の整理をしているのだ。


「しっかし掃除なんて久しぶりだね。どういう風の吹きまわし?お姉ちゃん」


「え?なんか言い方辛辣じゃない?」


「気の所為っしょ」


「あ、あらそう?……せっかくの大勢の来客だもの、せめて綺麗な状態でお出迎えをしたくてね……」


さとりは、少し嬉しそうに笑顔を浮かべてそう言った。


「……確かに、こんなに大勢地霊殿に来るのはもしかしたら初めてかもね」


「そうでしょう?そうなると普段使うところしか使えない状態だと、みんなが入りきるかわからないから……普段使わない場所も有意義に使っていこうと思って。……こいし?」


こいしがさとりの顔を見ながら、いつも以上ににこにこしている。


「ふふっ、こんなに張り切ってるお姉ちゃん久しぶりに見たから少し嬉しくって。早く綺麗にしないとね!」













「じゃ、二階の部屋は私がやっとくから。お姉ちゃんは別のところをお願いねー」


「わかったわ、お願いね」


「本日二度目のお任せあれー♪」


本棚の整理を片手間にウインクをして明るく笑う。

そんなこいしの様子に癒されながら、さとりは二階を後にした。


「さてと、後はどこがあったかな……」


階段を下りながら、次はどこの掃除をしようかと思い当たる場所を探す。

そうしてふと気付いた。もう既にほとんどの部屋が終わっているのである。

ともすれば、自分の仕事はもはや無いのでは?と。


「まさか一番楽してるの私なのでは…?……あ、そうだ!」


(外の庭の整備でもしよう)


最終的にはこう思い当たり、庭の方へと走り始める。










「……とは言ったものの


庭なんて日頃から整理してるしなぁ」


結局やることがなく、辛うじて生えている雑草をちょこちょこ抜いているだけである。


「うーむ……やはり一番楽をしているのは私……


……ん?」


さとりが途方に暮れていたその時。

一人の金髪の少女が、建物の間からこちらを見つめているのが見えた。


「……何かしら、あの子?」


(何だか怯えてるようにも見えるわね……)


その少女は白いワンピースを着ていて、髪は少し癖のあるロング。

身長はさとりより少し低かった。

周りの様子を伺っているかのようにキョロキョロとしている。


「……ねえ、君!」


呼びかけると少女はびくりと体を震わせて驚く。


「……!!」


ひどく怯えた表情でこちらを見つめてくる。

その様子が何だかとても可愛らしかった。


その時、さとりの悪い癖が出てしまう。


「あらあら……」(可愛らしいわね……多分迷ってここまで来ちゃったんだろうな。


ちょっとからかってやろう)


そう、この悟り妖怪は昔から人をからかうのが好きなのである。

心を読んでそのまま口にし、相手に嫌がらせをする。

実の妹にすらそのイタズラの対象にしてしまうほどの重度のイタズラ好き。


「どうしてこんなところに?」


「え、えと……その」(道に迷ってここまで……あれ?この人なんだか優しそう?)


「ああ、迷ってここまで来ちゃったのね。誰かと一緒に居た?」


「え?えっと…」(何で?わたし迷ってきたって言ってないのに?)


「『何でわかったのか』?私は悟り妖怪だからね、貴女の心を読めるのよ」


「えっ…え!?」(よ、妖怪!?こんなに優しそうなのに!?それに心を読めるって……)


「ふふ、ありがとう。優しそうだなんて初めて思われたわ。でも、残念。


私は妖怪だからね、優しそうに見えても全然そんなことはないわよ?」


と、声のトーンを落として少し悪い顔をする。


「えっ…!」(わたしなんだか危ないところに来ちゃったのかな…?)


「ええ、とっても危ないところよ。貴女みたいな可愛い女の子を食べちゃう怖〜い妖怪がたくさんいる場所に来ちゃったのよ……」


「ひぇっ…!」(も、もしかして…お母さんが言ってた地霊殿ってところ!?悟り妖怪がいるから近付くなって……)


「大正解、ここは地霊殿よ。貴女は人間?それとも妖怪?」


「ひぃっ…!?」(う、うそっ……わたしそんなに歩いてないよ!?)


「運が悪かったわね、ちょうど近いところにいたんでしょうね」


(この子、聡明な子ね。この歳なのに思考が早い)


さとりが感心した、その時。


「…わ、わたし……」


「ん?」


「お母さんとはぐれて、道に迷ってここまで来ました。妖怪です。や、優しそうな人がいるのが見えたから、道を聞くために話しかけようかなと思って見てました」


「……」


少女は真剣な眼差しでさとりを見つめながら言った。

その時、少女の心には……。


(自分の口で伝えないと)


「……へえ、そうなのね。だから地霊殿に……」


少し、嬉しかった。

普通の妖怪や人間なら、気味悪がってすぐに逃げ出してしまう。

しかし、この妖怪の少女は違った。

悟り妖怪である自分に真摯に向き合い、ちゃんと話そうとしてくれたのだ。


「お母さんとはどの辺りではぐれたかわかる?」(この子をからかうのはやめておこう。この子に対して無礼だ)


「え、えと……ごめんなさい。わかりません」


「そっか。じゃあ、街の方まで私が連れて行くわ」


「え?い、いいんですか?」


「もちろん。迷った子供を見過ごすわけにはいかないもの。ついてきて」


そう言ってさとりは歩き始める。

少女はその後をついていく。


「……やっぱり、優しい人でした」


「え?」


「やっぱり、貴女は優しい妖怪さんでした」


満面の笑顔で少女はそう言った。


「……ありがとう」


(何だか、照れくさいわね)


面と向かって言われると、少し恥ずかしかった。


「あれ、照れてます?」


「えっ!?」


考えていたことがバレて驚いた。


「な、何で……」


「ふふっ、そっぽ向いちゃったから。恥ずかしがってるのかなーって!」


さとりは心を読まれることがどんな感じなのかを少し理解した。


(確かにこれは嫌ね……)







「ところで、貴女は何の妖怪なの?」


「……えーと」


少女が顎に手を当て、少し考える仕草をする。


「わかりません」


「え?」


「お母さんとそんな話をしたことがなくて」


「……あ、貴女今何歳?」


「5歳です!」


「ッええぇぇッ!!」


あまりにも予想外だった。

こういう姿の妖怪は年相応の見た目であることは少ない。だからてっきりこの少女もそれなりの歳なのだと。


(マジもんの幼女やんけ。え?私こんな純粋な子にイタズラしようとしたの?バカなの?)


さとりは先程の自身の行動を後悔した。


「そ、そんなにびっくりしますか?」


「ええそりゃあもう……ごめんね、さっきはあんなことしちゃって……」


「え?あんなことって?」


「クゥッ…!!純粋や……純粋すぎる……」


「??」


少し歩くと、現在の住宅地が広がる街が見えてきた。

先程まで通ってきた家には誰も住んでいない。

理由は地霊殿に近いからである。


「そろそろ人気ひとけのある場所に出てくるわね」


「何で周りの家には誰も住んでないんですか?」


「地霊殿が近くにあるかららしいわよ。みんな悟り妖怪とはあんまり話したくないのよ」


「ど、どうして?」


「心を読まれるからね。いい気分はしないでしょ、誰でも」


さとりはそこでハッとする。

ここに来てこんな話をしてどうするのだ。せっかく少女は真摯に向き合ってくれたのに。


「ご、ごめんね急にこんな話して……私は別に地底の人たちが嫌いなんじゃ……」


その時、少女の顔を見て驚いた。


「……どうして、そんなに暗い顔してるの…?」


少女は、とても落ち込んだような表情をして俯いていた。


「……ごめんなさい、こっちにきてくれませんか?」


「え?」


少女が指を指すのは、人気のある街とは違う方向の路地裏のような狭い通路。


「で、でも街はこっちよ?」


「お願いします」


「……」


少女の真剣な眼差しに気圧され、さとりは止む無くついていくことにした。








「……あれ?お姉ちゃんさっき庭の方に行ってたはずなんだけどな」


こいしが二階の掃除を終え、地霊殿の庭の方にまで来ていた。


「どこ行っちゃったんだろ。……ん?」


こいしは、街の方へ続く道に、何かが落ちているのを見つける。


「……これ、って……」








「ごめんなさい、わがままに付き合わせてしまって……」


「ううん、気にしないわ。ところで、どうしてこんなところに?」


さとりは少女の意図が掴めずにいた。

心を読もうとしたが、それは真摯に向き合ってくれた少女への裏切りのようにも思えてしまい、やめた。


「……そういえば、お名前を聞いていませんでしたよね」


「え?……そうね」


「なんていうんですか?私、知りたいです」


少女の雰囲気が、先程までとは変わっているような気がした。

あどけない少女の様子から、何処か大人びた雰囲気へと変化しているように感じたのだ。


「さとり……古明地さとりよ。それが私の名前」


「さとり、さん」


「ええ、さとり。悟り妖怪らしい名前でしょ?」


「はい、そのまんまですね。ふふっ」


「貴女の名前は?良かったら教えてくれないかしら」


「私の名前、ですか?さとりさんは心を読めるからわかるんじゃ……」


「貴女とは口でお話がしたいの。貴女が最初に、そうしてくれたように」


そういうと、少女は少しだけ嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「ユーロです。苗字は…」


「ああ、名前だけでいいわ」


「え、どうしてですか?」


「いいからいいから。で、ユーロはどうしてこんなところまで来たの?何か理由があるんじゃないの?」


「……さとりさんの気持ちが、何となくわかるというか」


「え?」


「街の人たちに嫌われてるんですよね……?」


「…!」


(先程の話を聞いただけで、悟り妖怪が嫌われていることをすぐに理解できたのか)


いいや、違う。

おそらく親や周りの妖怪達に言われてきたのだろう。悟り妖怪には近付くな、関わらない方がいい、と。


「いつも言われてたんです。悟り妖怪は危ないとか、関わっちゃダメ、とか。


私、疑問に思ってたんです。実際に会ったわけでもないのに、どうしてそんなことがわかるのかって……


でも、さとりさんと会ってみてわかりました」


「…?」


「さとりさんはとっても優しい人だって。みんなが言うような怖い人じゃないんだって」


驚いたというより、感動した。

まだ世界の残酷さを知らない、幼い少女だからこそこのような広い視野が持てるのだろう。


(この子のような子が、純粋に育ってくれればいいのにな。


でも、もうこの子が純粋に育つには、この世界は汚れすぎてしまっている)


「……さとりさん、姉妹がいますよね?」


「えっ!?」


急に言われて驚いた。

何故その事を知っているのか。


「た、確かにいるけど……どうしてそれを?」


「さとりさんと同じような格好をした人を見たことがあるんです。緑色の髪で、黒い帽子を被った人……


私、その人に一度助けられたんです。道に迷ってる時に、あの人は私に道を教えてくれました。だから、その人の話を聞きたくて」


間違いなくこいしのことだ。

確かにこいしは地底や幻想郷のそこら中を徘徊しているため、見かけても不思議ではないが……まさか人助けをしていたとは。


「……その子は私の妹でね。こいしっていうの」


「へえ……妹さんなんですね」


「ええ。とっても明るい子でね……純粋で明るい子なの。ユーロみたいにね」


「そ、そんな。私は全然明るくないし純粋でも……」


「あら、謙虚なのね。……でも、そんな純粋な子だったからこそ、嫌われることに耐えられなくてね。


ある日、このサードアイを閉じてしまったの。自らの意思でね」


胸元にあるサードアイを撫でながら、さとりは当時のことを思い出していた。




『お姉ちゃん……どうして私たちはこんなに嫌われるの?どうしてこんな能力を持ってるの?』


『辛いよ……悲しいよ……私は好きで心を読んでるわけじゃないのに……私はただみんなと仲良くなりたいだけなのに……』


『どうして?どうしてみんなあんな"目"で私を見つめるの?どうしてそんなに怖がるの?』


『教えてよお姉ちゃん……どうして……どうして……』




「……とても、辛そうだった。あんなに悲しそうに泣くこいしは初めて見たわ。いつも笑顔で楽しそうにしていたから、私は気付いてあげられなかったの。


あの子が抱えていた心の闇を。あの子の中の深い深い悲しみを」





『あ、お姉ちゃーん!見て見てー!』


『私思い付いたんだ!みんなに嫌われなくなる方法!』


『"これ"潰しちゃえばよかったんだよ!こんないらないものを残してるから、みんなに嫌われるんだよ!』


『これでみんなに嫌われなくて済むよ!さあ、お姉ちゃんも一緒に……』


『……お姉ちゃん?どうしてそんなに泣いてるの?』


『泣かないでよー。私まで悲しくなっちゃうよー』







「……それが原因で、こいしは感情を失った。そして、私の前から姿も消した。正確には、『認識できなくなった』。あの子が"無意識"に私達から意識を外させていたから。


でも心が無いこいしには、それがどういう行為なのかわからなかった。だから何も思わなかったの。いつしかこいしは、まるで最初からいなかった『空想』の中の人物になってしまった」






『お姉ちゃーん』


『お姉ちゃんってばー!聞こえてるでしょー?』


『んーおっかしいな。こんなに耳元で叫んでるのになー』


『ま、いっか!ちょっと出掛けてくるねー!』


『あ!やっと気付いた!何処へって?どこでもいいじゃん!じゃーね!』






「私はどうにかこいしの感情を取り戻そうと必死に努力したわ。こいしが姿を現した時は一緒に本を読んだり話をしたり……色んなことをした。


でも、何をやってもこいしの感情が戻ることはなかった。その行為を喜ぶわけでも鬱陶しがるわけでもなく、表情も全く動くことはなかった」


「けど、ある日……」







『ねえ、お姉ちゃん』


『この前はびっくりさせてごめんね。人の死体なんか持って来ちゃって。びっくりしたよね』


『私ね、考えてたの。どうしたらお姉ちゃんは喜んでくれるかなって。いっぱいいっぱい考えて、けど思い付かなくて』


『だからね、私のできることがしたいなと思って。その、地上のお花、取ってきたの。お姉ちゃん見たがってたのを思い出したから』


『受け取ってくれるかな………お、お姉ちゃん?どうしたの?何でそんなに泣いてるの?』


『え……嬉しい…?で、でもお姉ちゃん泣いてるよ?』


『そうなんだ。"嬉し泣き"って、言うんだね』


『ごめんね、お姉ちゃん。今まで本当に、ごめん』


『たくさん迷惑かけてきたけど、これからはお姉ちゃんやみんなの役に立てるように頑張るから』


『私も、一緒にいられて、こうやって話せて"嬉しい"。大好きだよ、お姉ちゃん』







「ある日、突然こいしの感情が戻ったの。もう二度と、こいしの感情は戻らないと思って絶望していた、そんな時にね」


さとりは涙を流していた。

あの時のことは今でも鮮明に覚えている。

あの時の表情豊かなこいしは、可愛らしかったし、愛おしかった。


「そしてその時に誓ったの。もう二度とこいしには悲しい思いをさせないって。もう二度と、あんな思いをしたくないし、させたくなかったから。


……長くなっちゃったわね。ごめんなさっ……うわっ!?」


ユーロが目尻に涙を浮かべてさとりを見つめていた。


「うぅ〜」


「ど、どうしたの!?」


「ひっく……と、とても良いお話で……つ、つい、涙が……」


「あ、あはは……ありがとう」(感受性豊かなのは、子供らしくて可愛いわね)


「そ、それで!今こいしさんは幸せなんですか!?」


ユーロが真剣な表情でさとりに聞いた。


「……ええ、それはもうとびっきりに。東方学園って知ってる?最近できた人妖共学の学校なんだけど……そこに通うようになってから毎日笑顔を絶やしていないわ。


ウチに友達を招いてくることもあるし、一緒に海に行ったりもしたし……毎日がとても楽しそうよ。それはもう、羨ましいくらいに」


「……へえ……」


「……特に、『フランドール・スカーレット』って子がね。こいしととても仲が良いの。こいしはウチに帰ってきたら第一に話すのがその子のことでね」


−『でさー、今日はフランが宿題見せてくれなかったんだ!"たまには自分でやりなさい"ってさ!さすがは優等生って感じ!』


−『今日フランに弾演で勝ったんだ!嬉しかったなー!これで21勝20敗で私の勝ち越しだよ!』


−『今日、フラン休んでたんだ。……何か、あったのかな』


思い返せば、こいしは必ず最初にフランの話をしていた気がする。


「私もその子は好きでね。とっても優しくて、可愛くて、純粋でね。それに礼儀正しくて。


一目見て思ったの。『この子と一緒ならこいしはきっと大丈夫だ』って」


フランがついているのなら、こいしが再び闇を抱えてしまうことは絶対にない。

そう、確信できたのだ。


「あの子のおかげでこいしは幸せを得ることができた……感謝してもしきれないわ。

今どこで何をしているのかしら。……無事だといいんだけど」


さとりは、フランが敵に回っていることを知らない。

伸介からは、『敵の魔法が地底にだけ届いていないから、ここが要になる』としか伝えられていないのだ。



ふと、隣を見ると。

ユーロが、口元に笑みを浮かべて俯いていた。


「そう……今は幸せなのね」


「……え…」


ユーロが先程までとは別人のような声で言った。

さとりは、この声に聞き覚えがあった。


「あの子は私と同じで……抱えやすいタイプだったから。ほっとけなかったのよね」


ユーロから黒い靄のようなものが発生し始める。

やがてそれは渦巻いていき、ユーロの体を包み込んだ。


「…その声……まさか──」


渦巻いていた靄が消えた。

そして、ユーロだった誰かの姿が見えてくる。

黄金色の髪に、奇妙な羽。

黒いローブの下に、紅い服を着ている少女。

そう────






「話せてよかったよ、さとり。



これからもどうか、こいしを大切にしてあげてね」







「フラン……さん……?」






「──お姉ちゃん!!」


「!?」


二人が話していた家の屋根の上からこいしが現れ、さとりを抱きかかえて飛び去っていこうとする。

しかし……


「もう遅い」


カッ





「さようなら、親友こいし





「くっ──!」


「えっ──」


(フランさんの、心の中……


これは一体……どうなって──)






次の瞬間。

凄まじい光と共に、フランの手から紅いエネルギー波が放たれた。









フランスのユーロの前の単位を知っていますか?

『フラン』って言うんですって(ドヤ顔)

まあ詳しく言うとフランという単位は現在も使われてはいるのですが。

ユーロの名前の由来はそこからです笑

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