反撃開始!
更新ペースが安定しませんな…
お許しくだされ!
ガキィンッ!!
「ちっ…!」
「いい動きをするじゃない」
神子と天子が互いの得物を激しく打ち合い、競り合っている。
「おぉっ!」
「!」
神子が力を込め、天子を押していく。
これに対し、天子は剣を弾いて後退した。
後退する際、空中で剣を一閃し、神子に向けて斬撃を飛ばした。
「むんっ!」
神子はその斬撃を弾き飛ばす。
一見互角に見えるが、天子が余裕の表情に対し神子の顔には少しの疲労が見えた。
「とんだ化け物だな、全く……!こう見えて結構頑張ってるんだが」
「あら、その割にはよく喋れるじゃない?それはまだどこか余裕がある証拠よ」
天子がゆっくりと神子の方へ歩いていく。
「剣技においては私に引けを取っていないし、その時々の判断も良い。攻めは中々だったわ。……さて……
──守りはどうかしら?」
ドッ
「!!」
その一言を言った瞬間、天子が凄まじいスピードで神子に向かって斬りかかる。
「くっ!!」
神子はそれをギリギリで防ぐ。
しかし、天子の力が強く、抑えきれずにそのまま押し飛ばされてしまう。
「くそっ…!」(速い上に……重い!剣で受けるべきではないか。
……奴は何処に?)
神子が体勢を立て直し天子の方を見た時には、既に天子の姿は消えていた。
「こっちよ」
「!!」
背後から声が聞こえ、咄嗟に天子の方へ振り返る。
それと同時に、剣も振るった。
ガッ
「なっ──」
剣を左手で掴み止められた。
そして、右手に持つ剣を神子に向けて振るう。
ガキィンッ!
「!」
それを白蓮が魔人経巻を用いて防いだ。
「せいっ!」
さらに右手の拳で反撃をするが、天子は剣でそれを防いだ。
ガキィンッ!
「……ほう、拳で金属音。貴女、肉体強化系の魔法を得意とするようね」
「流石、理解が早いですね…!」(今ですよ!)
「!」
その時、白蓮の背後から神子が現れ、天子に向けて剣を振るう。
(もらった!)
「ふん」
ガキィンッ!
「うわっ!」
「!?」
天子が白蓮の右手を神子の方に弾いた。
神子は剣でそれを防いだ。しかし……
ドガァッ
「うぐっ!!」
バキッ
「ごっふッ…!?」
白蓮が天子の右足で蹴り飛ばされた。
さらに神子も強烈な左足の蹴りで蹴飛ばす。
「神子!!」
白蓮はすぐに体勢を立て直し、吹き飛ばされる神子を受け止める。
「ぐっ…アッ……カハッ」
「……肋骨が数本折られてる……!?今の一発だけで……!」(肺に突き刺さって呼吸が……早く治療しないと危ない……!)
「なるほど、守りも中々。攻めに転じるスピードも早い。
──だが踏み込みがまだ浅い」
天子が再び、ゆっくりと二人の方へと歩いていく。
「……はっ、はッ…!何と、情けない姿……我ながら、無様ッ……アッ、ガッ…」
「喋らないで、今治すわ」
「…!」
白蓮が神子の胸元に手を置くと、薄緑色の光が発生する。
すると、神子の傷がみるみる塞がっていき、数秒後には完治した。
「……ほう、治療魔法もお手の物か。万能なものね。そしてそちらは私に引けを取らない剣術を有している……余興にしては上出来だ」
「……!」(まだ全く本気を出してないわね……
話によると、霊夢はこれを相手に互角以上に渡り合っていたらしいけど……)
「……全く、いつのまにそんなに強くなってしまったのかしら……あの子……!」
その白蓮の呟きに、天子は軽く反応を示した。
「……あの子、というのは誰のことかしら?」
「貴女が知る必要はありませんよ」
「あら、その言い方からして、その人は貴女にとって大事な人なのね。私に狙われて欲しくないらしい」
「…!」
「まあ……ここで庇ったところで無駄だけどね。貴女達はここで終わるんだから」
考えていたことを見透かされ、驚きを隠せなかった。
それと同時に、自分が今対峙している者が如何に強大な力を有した存在かを再度認識した。
(やはり、天人を侮ってはいけなかった。私達が手を組んでもこんなに劣勢を強いられるなんて想像もしていなかった……)
「……助かったよ、ありがとう」
「…!?」
神子が体を起こす。そして、そのまま立ち上がり、一歩前へ踏み出した。
白蓮は、神子の行動ではなく素直に礼を言ったことの方に驚いた。
「ここで終わる、か。もう勝った気でいるんだな」
この時、天子は神子の雰囲気が変わったことに気付いた。
「……ええ、力の差は歴然だからね。言っておくけど、私は見逃すなんて緩いことをする気はないわよ」
「当然だ。そんなことをされては私達のメンツが丸潰れだからな」
「ならそのメンツを守るためにも、私に勝たないとね」
天子が余裕綽々で言った。
「ふん、その余裕な態度、気に入らないな。今に見ていろ──」
「さっきのようにはいかない、ですよね?」
白蓮が神子の隣に並び立つ。
「……ああ、その通りだ」
「……」(目つきが変わったわね……それに、"中身"の方も)
「右腕が飛びましたねぇ……レミリアさん?」
「……」
レミリアは、飛ばされた右腕が落ちていくのをまじまじと見つめていた。
「見えませんでしたか?私の動き」
文が煽るように言う。
レミリアはちらりと文の方へ視線を向ける。
「さっきはあんなに自慢気に『吸血鬼の動体視力を舐めるな』と宣っていたのに……ふふっ。
見えなかったんですか?私の動き……ふふふっ…」
「……どう思う?」
「……は?」
「見えてなかったか見えてたか……どっちだと思う?」
レミリアから返ってきた返事があまりにも予想外だったため、思わず呆気にとられる。
「……今、何と?」
「だから、私が今の攻撃が見えてたか見えてなかったか、どっちだと思うかって」
「……何を言っているのやら、貴女は攻撃に当たっているのですよ?それに、受ける直前に驚きの声を上げて置きながらよくそんな事が言えますね」
レミリアは、文の言葉に少しの動揺も見せなかった。
ただ不敵な笑みを浮かべ、文を見つめ続けている。
「はったりにしたって、もう少しまともなはったりがあったと思いますが?」
(何だ……?まさか本当に……?)
「ふん……あんた、狂乱状態になったせいで洞察力が落ちたんじゃないの?本来のあんたならこんな質問なんかすぐに答えられたはずだが」
「……生意気ですね、たかが五百歳のガキが……」
「おや?口調が荒くなってるな……らしくない」
「すぐにその減らず口を閉ざしてあげましょう……あまり天狗を舐めないでくださいよ。
ここから先はもう、貴女に反撃の隙も与えません。せいぜい覚悟しておくんですね」
「いいや……」
「交代だ」
白蓮と神子がそれぞれの得物を構える。
「今度はこちらが攻める番だ」
レミリアが右手を再生させ、グングニルを出現させる。
「……面白い」
天子が緋想の剣を構える。
「ならばその五体、塵へと変えてやろう」
文は紅葉のような扇子をレミリアに向けて翳した。
「……幻想郷に何が起こってるんだ」
妹紅は、迷いの竹林の中で終わらない夜と紅い月について考えていた。
妹紅は、狂気の影響を受けてはいない様子だった。
(ここならおそらく何の被害も受けることはないだろうけど……生徒達や慧音が心配だな。
それにさっきの嫌な感じのする声……これも気になる。
あいつは自分を『スカーレット』と名乗っていた。フランやレミリアと同じ姓だ)
「何か関係があるに違いないんだろうな……あの紅く染まった月が証明してる」
(とりあえず、一度竹林を出るか……慧音の様子を見に行──)
妹紅が竹林から出ようと、出口の方を振り向いた。
その時、妹紅の目に映ったのは……。
「やあ、妹紅。変わりないか?」
「……先生」
屈託の無い笑顔を浮かべた慧音が、そこに立っていた。
「元気そうで何よりだ。いつものところにいないものだから心配していたよ」
「ああ……少し、考え事をね」
「考え事?珍しいな、妹紅が考え事なんて」
「そういう日もあるのさ。……それより、先生」
「ん?」
「……何か、あった?」
妹紅は、依然として笑顔を崩さない慧音に言い知れぬ不気味さを感じた。
普段ならそうは思わないのだろうが、状況が状況であるが故に、今の慧音の様子に少し違和感を感じた。
「ん?何でだ?」
「……いや、別に何もないならそれでいいんだけどさ」
「そうか、心配してくれてありがとう。それより、永遠亭に案内してくれないか?」
「永遠亭に?」
「ああ、妹紅も気付いてると思うけど、今幻想郷に異変が起こってる。その解決の為に、あそこの人達の力を借りたいんだ」
今度は、真剣な表情になって言う。
しかしそれでも、言い知れぬ違和感は消えない。
「……確かに、様子が変だとは思ったな」
「そうだろう?だから、早くしないと」
「そういえば、何で霊夢の方に行かなかったんだ?」
「学園からならここの方が近いし、霊夢ならきっともう解決の為に動いてると思って」
「なるほどね」
「そういうことだから、案内を頼む。一刻の猶予もないんだ、急いでくれ」
「ああ、案内しよう。
──ただし、案内するのはその殺気を消してくれればね」
慧音はその言葉に驚いた。
思わず、目を見開いている。
「会った時から、ずっと違和感を感じてたんだ。だから、少し先生の観察をさせてもらったよ」
「……」
「表情は笑ってるけど、"体の動き"が笑ってない。何かを堪えてるような、そんな感じだった。
だから最初に聞いたんだ。『何かあった?』ってさ」
慧音が俯く。
妹紅は、そんな慧音の様子も構い無しに話を進める。
「やっぱ何かあったんでしょ?明らかに普通じゃないし。
……なあ、先生。私に隠し事をするのかい?いつから私は先生にとって"遠ざけるべき存在"になっちゃったんだ?」
「……」
「……なあ、先生。前にも言ったろ?
あんたはみんなに好かれてるし、大事にされてるんだ。だから、何かあったら自分で抱え込むんじゃなく、誰かに相談しろ。
……例えば、私とかに……ってさ」
妹紅が何を言っても、慧音は俯いたまま口を開かない。
「何があったのか、教えてくれないか?私にできることがあれば、やれる限りのことは何でもするつもりだから」
「……なら……しろ……」
「……?」
慧音が小さな声で何か言った。
妹紅はそれが聞き取れなかった。
「なら、さっさと永遠亭に案内しろって言ったんだ!!」
突然、慧音が大声で叫んだ。
妹紅は突然のことにとても驚き、思わず体をびくりと震わせた。
「出来ることなら何でもするんだろう?なら早く永遠亭に連れて行ってくれ……そうすれば、私の望みは叶うんだ」
今までの慧音からは想像もできないような悍ましい笑みを浮かべて、妹紅を睨みつけてくる。
「……なあ、先生。私はさ、あんたの力になりたいと思ってたんだ……あんたに会って、仲良くなった時からずーっと、ずっとね。
だからこそ、残念だよ。私を頼ってくれないのは」
「頼っているさ。だからこそこうして顔を出してるんだから」
「だったら……私は先生を止めなきゃならない。先生の選んだその道は間違ってるんだから」
その言葉を聞いた直後、慧音の悍ましい笑みが消え、代わりに壁のような無表情が表へ出る。
「私の邪魔をするってわけだな……妹紅」
「やっと一瞬の躊躇いもなく呼び捨てにしてくれたね。嬉しいよ……こんな状況じゃなきゃ、もっと嬉しかったんだが。
……今ならあいつの気持ちもわかるな……友達から殺意を向けられるのがこんなにも辛いとは」
(でも、確かに止めなきゃいけないって感じるな。……あんたの気持ちも理解できるよ、『ギルガメス』)
「……そのあいつってのが誰のことでどんな気持ちかは知らないが……私の邪魔をするっていうなら、容赦をするつもりはないぞ」
慧音の帽子が地面に落ちる。
青かった髪と服装が緑色へと変色し、頭から一対の角が生えてくる。
「さあ……久しぶりにお互い本気でやろうか!!」
慧音が狂気的な笑みを浮かべ、臨戦態勢を取った。
「ああ、受けて立つとも。あんたの中にあるその強い憎しみを、全て私にぶつけてきな!!」
妹紅も右手をポケットから出し、炎を放出させる。
「行くぞ、慧音!」
「来い、妹紅!!」
一方その頃、地底では……。
「……な、何だよ……これ……?
何で、こんなに死体が転がってんだよ……!?」
地底の街外れにある空き地に、大量の妖怪達の死体が横たわっていた。
その数は優に百を超え、そこら中に切り飛ばされたであろう腕や足が散らばっている。
たまたまここを通りかかった一人の男の妖怪が、それを見て唖然としているところである。
「い、一体何が……!?」
(敵が侵入したのか……!?だとしたら、もう既に街の中に紛れてる可能性があるのか!!)
「くそっ!!早くこの事を伝えない」ドスッ
「……と…?
……ッアッ……?」
何かが刺さった感覚がすると同時に、腹部を凄まじい激痛が襲った。
だが、何故か叫びをあげることができなかった。
辛うじて、自分の側にいる黒いローブを着た少女を見つめる。
「残念ながら
貴女はもう、誰にも会えない」
ズボッ
少女が、男から黒い剣を引き抜いた。
「貴女の道は、ここで終わりよ」
「……どう、なってる……!?」
次にその場所は訪れたのは人間の男だった。
死体が散らばっているこの状況を目にして、男は一瞬パニックになる。
しかし、自分の少し手前で倒れていた男が、僅かにだが体を動かしたことにより平常心を取り戻す。
「大丈夫か!?一体ここで何があったんだ!?」
男は微かに口を開け、何かを喋り始めた。
「……あ、あか……紅い、瞳の……お、幼い……少女……」
「…紅い、瞳……少女…!?」
「……あ……く、ま…だ……」
ザッ ザッ ザッ ザッ
黄金色の髪に、紅い瞳。
背には特殊な翼がある。
鼻歌交じりに歩む少女は、地底を眺めて不気味に笑う。
「紅い……悪魔が……攻めてきた……!!」
久しぶりに挿絵を描いてみました。
こういう展開にする時は挿絵で描いた方が衝撃が強いかなと思って…笑
自分の画力不足を痛感します。はい
 




