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東方学園の怪談話  作者: アブナ
狂宴の刻
65/82

開戦の狼煙





グラスに酒が注がれる音が聞こえる。

今この玉座の間には、王とその娘……陛下と王女の二人のみ。

水の滴る音だけが広い玉座の間に響き渡り、辺りの静けさを物語っていた。


「──さて、これで二人きり」


「……そうですね」


フリーダがフランを無言で見つめる。


……その状態が、しばらく続いた。

フランは、フリーダの動機を待っている。

今自分から話しかけては、彼女の機嫌を損ねてしまうかもしれない。

それはあまり、フランとしても嬉しくはない。


しばらくして、漸くフリーダが口を開いた。


「……まずは、私の復活の手助けをしてくれてありがとう」


「当然です。私は陛下の娘なのですから」


またもフリーダが無言になる。

心なしか、引き攣った表情をしているように見える。

そんなフリーダが、ワイングラスをそばにあるテーブルの上に置いた。


そして──。



ガタンッ





「フラァァーーン!会いたかったーー♡」


フリーダが勢いよくフランに抱き着いた。

フランは勢いに押されないように足に力を込めていた。

ようするに、こうなる事がわかっていた。


「私も会いたかったです、陛下」


「んもぉ〜、いつまで王女スイッチ入れてるの!今の私はただの母親で、貴女はただの私の娘のフラン!普通の親子よ親子!」


子供のように頬を膨らませてフランを睨みつける。

だがそれすら楽しいようで次第に表情は笑顔に変わっていった。


「うふふふっ!また会えて嬉しいわ、フラン!しかもこれからは毎日いつでも会える!」


「うん、私も嬉しい。また元気なお母様が見れると思うとワクワクしちゃって夜も眠れなさそう」


「まあ、フランったら!私達が寝るのはお昼よ?ふふふ〜♪」


「しっかし変わらないねーお母様は。オンの時とオフの時のギャップが凄い」


「フランは随分変わったわね!こんなに立派になって……目付きもいい感じだし、なんだかかっこいいわ!」


「ありがと。女の子にかっこいいって褒め言葉はどうなのかとは思うけど、お母様からの褒め言葉なんだから素直に喜んでおくよ」


「あら、案外可愛いところはそのままね!見た目はカッコよくなったけれど、中身は可愛いフランのままだわ」


「……褒めてる?それ」


「褒めてるわよ〜!……なんだかあの人に似てきたわね。ふふっ、少し嬉しいわ」


フリーダが少しだけ表情を曇らせる。


「……お父様は、復活を望まなかった。だから仕方ないよ」


「ええ……わかってるわ。これは私が勝手に始めたこと、レオンの手は借りるわけにはいかないもの。


……ごめんね、フラン」


突然の謝罪に少しだけ戸惑う。

しかし、すぐに言葉の真意を察したようで、フリーダを優しく抱きしめた。

これまた突然だったため、フリーダが戸惑う。


「フ、フラン……?」


「お母様が謝る必要はないし、罪意識を持つ必要もない。

これは私が勝手に始めたこと。お母様についていきたいと思ったのは私の意思だよ」


「……貴女なら、そういうと思ったわ。


だからこそ、ごめんね……『貴女』を選んでしまって……本当に、ごめん」


次第に、フリーダの目に涙が浮かび始めた。

フランは涙を拭うことも言葉を挟むこともせず、ひたすらフリーダを抱きしめ続けた。





「……ごめんなさいね、せっかくの再会なのに」


「落ち着いた?」


「ええ……」


「そっか。じゃあ、久しぶりのティータイムと行こう」


フランがフリーダから離れ、玉座の隣にあるテーブルに乗せられたワインの入ったグラスを手に取る。


「……まあ、今回のお茶は少し刺激が強いけどね」


ウインクをしてそういうと、玉座の隣に立ちフリーダを手招きする。


「さ、こちらへどうぞ。プリンセス」


その様子を見たフリーダは、次第に表情が明るくなっていく。

フランとレオールの姿を重ねているのだろうか、恍惚な表情になってしまっている。

はっ、となって表情を変えたが、フリーダは一瞬でもそんな感情が出てきたことに驚いた。


「熱いお誘いだわ。どこでそんなの覚えたのよ」


「別にどこでもいいじゃん。さ、復活のお祝いをしよう。


今宵はきっと、楽しい夜になるはずさ」


そう言って微笑みを浮かべるフラン。

フリーダは気付けば、心に安らぎを感じ始めていた。


(ああ──本当に立派になった。こんなにも強く、逞しく育ってくれた。何と喜ばしい……あなた、見てる?


私達の子供は、こんなにも美しく成長したわ)


フリーダがフランの前まで歩いていき、抱きつこうとする。

フランも抵抗することなく、なされるがままにしている。

フリーダの体が、今にフランの体に密着しそうになったその瞬間──。


コンコンッ


「ッ!?」


玉座の間の扉がノックされ、そのノック音が玉座の間中に大きく響いた。

フリーダはそれにびくりと身を震わせ、大袈裟に驚いていた。


「陛下、報告が」


扉の向こうからは鈴仙の声が。

フリーダが咳払いをすると、先程までとは別人のような声のトーンで


「……入れ」


と言った。

その言葉と同時に扉が開かれ、鈴仙が中へと入ってくる。

フリーダは玉座に、フランはその隣に置いてあるテーブルの上に座っている。


(オンオフの切り替え早すぎ……笑っちゃいそう)


フランはフリーダのさっきの様子を見ていただけに、笑いが溢れそうになっていた。

何とか笑いをこらえているものの、少し顔が引き攣っているかもしれない。


「…!フランドール王女もご一緒でしたか」


「ええ、今は陛下とささやかな酒宴を催してたところ」


「これは失礼を……」


「気にする必要はない。それより報告とは?」


「はっ、陛下の指示通り、配下の者どもを全て集めてきました。……というより、自ら集まってきた、という方が正しいのですが」


「ほう、早いな。流石は我々の同志、と言ったところか」


「今は城の外の広間にて待機させています。ここまで呼びましょうか」


「いや、私が広間の方へ行こう。これより始まるパレードは大規模なものだからな、呼び出されるより私が直接出向いた方が士気も高まろう」


フリーダが玉座から立ち上がる。

そして、入口の扉に向かって優雅に歩き始めた。

その後ろをフランがついていく。


「鈴仙、先に広間に出向き私が来ると事前に伝えておけ。それから、咲夜にバルコニーに来るように伝えろ」


「はっ、仰る通りに」


鈴仙が足早に去っていく。

玉座の間を出て行ったのを確認すると、フリーダが溜息を一つ吐いた。


「びっくりした……ほんとびっくりした…!」


「お母様気が抜けまくってたね」


「そうはっきりと言われると少し恥ずかしいわね……次からはもう少し気をつけるわ」


そういうと、フリーダは気の抜けた表情を真剣な表情へと変えた。


「──さあ、行こうか?フラン」


「はい」













「──で、何故かそのお母様が今幻想郷に現れたのよ」


「……余計に謎が深まったような気もするぜ」


「……確かに」


現在地は、博麗神社。その社の縁側。

霊夢達一行は、レミリアからフリーダについての説明を受けていた。


「まあとりあえず、相手はレミリアとフランの母親だってことね」


「そういうことよ」


「……なあ、一ついいか?」


魔理沙が口を挟んだ。


「何よ?」


口を開いたものの、何故か魔理沙は少し勿体ぶる。

何か言いにくいことを言おうとしているのだと、レミリアはすぐ理解できた。


「別に何を言われても気にしないわ。ほら、早く言いなさいよ」


「お、おう。お前がそういうなら……


何で……お前は向こう側にいないんだ?」


思わず、レミリアは目を見開く。

予想外の質問だったのは確かだが、レミリアが驚いたのはそれだけではない。

レミリアは首にかけている、紅い宝石のペンダントを見つめる。


(──確かに、何故なんだろう。


フランは呼ばれたのに、私は呼ばれなかった。まして、『同士』とすら呼ばれなかった)


ならば、フリーダにとって自分とは一体何なのだろう?

フランと、何が違うのだろう?

様々な疑念が次々に生まれてくる。

しかし、先程魔理沙に言った言葉を思い出し、何とかその疑念を一旦振り払う。


「さあね。……何か理由があるとは思うけど、まだわからないわ」


「そ、そっか……そうだよな」


「それだけ?他に何か言いたいこととかは?」


レミリアが少し食い気味に聞いた。


「い、いや。それくらいだぜ」


魔理沙はその勢いに気圧され、少したじろぎながらそう答えた。


「そ。……なら、今後について話しましょう。お母様は幻想郷を支配すると言っていた、なら私達の敵でしょう」



レミリアが真剣な表情でそういうと、霊夢の方を見た。

小悪魔や美鈴が心配そうに見つめているが、レミリアはお構い無しに話を進める。


「……強がりすぎよ、あんた」


「……は?」


霊夢が突然そう言った。

あまりに予想外な言葉だったため、レミリアは素っ頓狂な声を出す。


「誰が見てもわかるくらいには、あんたは強がってるわ。少しは正直になりなさいよ」


「はっ…!誰が強がってるって?見当違いも甚だしいわね」


「あんた、今後もそんな感じでやってくつもりなの?……今までずっと、そうやって自分を追い込んでいったの?」


「なっ……」


霊夢が悲しそうな表情と声でそう言った。


「あんたは自分が思ってるほど強くないのよ。……こんな歳下の小娘にそれがバレるくらいには、脆くて弱い奴なのよ。


それをどうにか克服しようと必死に頑張ってきたんでしょうけど……やっぱりあんたは変わらなかった。

だから、今度はそれを隠そうとしたのよね」


レミリアは言葉を返せなかった。

そう、確かに霊夢の言う通りだ。

自分はそんなに強い者ではない。少しでも傷付けば、すぐに脆く崩れてしまう。

だから、それを壁で覆い隠そうとした。

『自分』という脆い核を、『気持ち』という壁で守ろうとした。

そうすれば、誰にも心配をかけることはない。

自分がどれだけ傷付いても、それは『自分』には届かない。

壁はすぐに修復できるのだから、どれだけ傷付いたって問題ない。


「……私の生き方にケチつけようっての?いい身分になったものね」


「……あんたが私たちをどう思ってるかなんて、わからないけどさ。もう少し、自分の気持ちに正直になりなさいよ。


誰も苦しみをあんた一人に背負わせたくなんかないのよ。自分が苦しいと思ったのなら、それをぶつけるたくさんの『仲間』がいるじゃない」


「──…」


しかし、それでは。

他のみんなに迷惑をかけることになる。

仲間達に……家族に弱みを見せてしまうことになる。

それはダメだ。主人である自分がしっかりしていなくてどうするというのだ。

一つの世界を任された奴が、そんなことで頭を悩ませることすら愚かしい。

仲間の苦しみも自分の苦しみも、全て背負うべきなのではないのか。


反論をしようと、レミリアは口を開こうとした。

しかし、霊夢がそれを許さなかった。


「あんただって『仲間』が苦しんでたら、自分も苦しくなるでしょ?みんな同じなのよ。あんただけじゃないの。


だから、そんなに背負いこもうとしないでよ。あんたは一人じゃない。誰かに頼ってもいいんだから」


(誰かを頼る?

私が……主人が、そんなことをして許されるというの?


私はあの時……イザベルにやられた時、誓ったんだ。もう、私の家族や仲間を傷付けさせはしないって。自分の手で守り抜くんだって。

フランも、伸介も、咲夜も、パチェも、小悪魔も、美鈴も……紅魔館のみんなは、私が守り抜くんだって。

たとえそれが、どれだけ自分を追い込むことになろうとも。

みんなを守れるのなら、それでいい。


そう、決めたはずだ。



──誰かを頼るなんて、無責任なことは──)


「誰かを頼ることを無責任だと思うのは」


突然、空から声が聞こえる。

とても、聞き覚えのある声だった。

声のする方を見ると、そこには……


「貴女の、独り善がりですよ。レミリア様」


イザベルだ。

イザベルが、戻ってきたのだ。


「イ、イザベル…!無事だったのね」


「ええ、何とか。……それよりも。


貴女はどうして、そのような生き方になったのです?」


イザベルの問いに、当然とでも言うかのようにレミリアは答える。


「もう誰も傷付かないようにするためよ。私にはその義務がある。


一つの世界を任された奴が、そう易々と弱みを見せていい筈が──」「それが独り善がりだと言うのだ」


イザベルが少し強めの口調で言った。


「大して強くもない小娘が、周りの皆の苦しみを全て背負うだと?


笑わせるな。そんな大役はお前では到底務まらん。身の程を弁えるんだな」


「な、何ですって……!」


「自分一人もろくに守れない奴が、他の誰かを守れると思っているのか?」


その言葉により、レミリアの中の何かが切れた。


「……あんたに何がわかるってのよ……


一度は私達を滅ぼしかけたような奴に、今の私の何がわかるってのよ!!」


目尻に涙を浮かべて怒鳴る。

イザベルは、その様子を見て驚くわけでもなく、ただただレミリアを見つめ続けた。

周りの皆も同様だった。今のレミリアを助けられるのは、おそらくイザベルだけだろうと思ったからだ。


「もう目の前で大切な人を誰も失いたくないから……誰も傷付いて欲しくないから!私はこの生き方をしてるのよ!!


務まる務まらないの話じゃないのよ!!みんなを守る為には、私はこうでなきゃいけないの!!」


「……その在り方を責めているのではない。身に余る義務をどうにか果たそうとする努力を責める理由は何処にもない。


私が言っているのは、お前の『やり方』の方だ」


「……は…?」


言っている意味がわからず、レミリアは困惑する。


「さっきも言ったな。お前は決して強い者ではないんだ。少しでも亀裂が入れば軽く突くだけで脆く崩れ落ちてしまう。

そんな脆い『自分』を守る為にお前は『殻』に篭り、自分だけの世界に閉じ込められてしまっている。


お前は主人としての義務を果たす為に篭ったつもりなのだろうが、逆効果だ。自分の世界に閉じこもり、周りから"逃げる"ような主人には誰もついて行こうとは思わない」


「逃げる、ですって……!?


知った風な口を利かないで!私がいつ逃げたって!?」


「常にだ、レミリア。仲間を頼って失敗した時のこと"だけ"を考えて、『失うくらいなら頼らなければいい』などという幼稚な考えを正そうとしないその姿勢は、常に現実から逃避している。


自分一人でどうにかできるわけがない問題を一人で抱え込み、終いには失敗して他の皆に結局迷惑をかける。そんなことが幾度となくあったな?何故頼ろうとしなかった。それで失敗して仲間を失うのが怖かったのか?」


「……それ、は……」


「自覚があるはずだ。お前は一人では生きていけない。……そもそも、普段のお前はそこまで思い詰めちゃいない。人並みに誰かを頼り、人並みに助け合っているはずだ。


だからこそ私達はお前についていくし、お前を守りたいと思うのさ」


イザベルの言葉に、小悪魔と美鈴が頷いた。


「お前は普段通りにやればいい。強がる必要なんてない。フラン様の前にいる時や館の住民達と馬鹿をやってるお前の姿が、みんなは好きなんだ」


「……普段、通りに……」


考えてみれば、確かに。

いつも咲夜やイザベル、他の住人達に掃除や家事を任せていたり。

美鈴に門番を任せていたり。

パチュリーに頼み事をしたり。

伸介にお使いを任せていたり。

フランに、遊び相手を頼んでいたり……


その度に笑顔で請け負ってくれる、館のみんなの姿を、私は知っている。


「……フリーダのことで、色々と気になっているのはよくわかる。だが、一度落ち着け。


一度、自分の気持ちに正直になってみろ。その調子でこのまま突き進もうとするのなら、お前はただの足手まといだからな」


レミリアの、俯いていた顔を上がる。

目尻に浮かんだ涙が頬を伝っていった。

そして、とても弱々しい声で言った。


「……不安だったの……咲夜が居なくなって……フランも居なくなって……お母様が敵で……私は向こう側には呼ばれなくて……


私って、必要と、されてるのかなぁ、って……ちゃんと、みんなの仲間で、居られてるのかなぁって……不安、で……!」


嗚咽混じりに言うと、レミリアはその場に座り込む。


「私……もしかしたら邪魔者なんじゃないのかって……そうならないように、どうにか役に立とうって、必死で……!」


イザベルがレミリアの前まで歩いていく。

そして、左手で優しく頭を撫でた。


「……私、みんなの役に立ててる…?必要と、されてる……?」


「さあ……役に立てているかどうかは分かりかねます。しかし、これだけははっきりと言える。


貴女は、私達のかけがえのない『仲間』です。貴女の居場所は、ここで間違いありません」


──ああ、そうか。

私は居場所を求めていたのか。

いいや、違う。

イザベルがそう言ったのは、道に迷う私を導くためだ。

終わりのない迷路の出口を、イザベルが作ってくれたんだ。


ここが、私のゴール。

紅魔館……いいや、幻想郷。

美しい、楽園のような世界。





その時、レミリアの中で何かの殻が破れる音がした。

今まで包み隠してきた自分を、自分でさえこじ開けられなかった殻を、イザベルは破ったのだ。


「……ありがとう、イザベル」


レミリアは、イザベルを見上げた。

イザベルは、とても穏やかな笑顔を浮かべてこう言った。


「お帰りなさい、我が主人よ」







「……迷惑をかけたわね。もう大丈夫よ」


「ほんとよ、あんたいつからあんなやり方で生きてたの?」


「数えだすとキリがないわ。私を何歳だと思ってんの?」


「うっわ、壮絶……よかったわね、優しい従者がいて……」


「優しい?面白い冗談ね」


「レミリア。我が刃の錆としてくれようか」


「おい!口調強くなってるぞお前!」


「気の所為っしょ!」


イザベルとレミリアがじゃれ合い始めた。

美鈴と小悪魔は、それを見て『ああ、いつものお嬢様だ』と安心した。


「やっぱり、こういうことやってる方がお嬢様らしいですよね」


「ふふっ…確かに」


「ま、とにかくだ!これからどうするよ。レミリアの言う通りどうやって倒すかとか考えた方がいいぜ」


「そうね……実際敵の能力は恐ろしいわ。意識を侵食して人を狂わせるなんて。それに今尚傷一つついてはいけないなんて……」


「今の幻想郷の被害状況がどれくらいなのかも把握しておきたいしな。……どうする?一回幻想郷中を見て回ってみるか」


「やめておきなさい」


突然、神社の鳥居の方から声が聞こえてきた。

そこには──


「……ゆ、幽香……?」


傷だらけの幽香が立っていた。


「ああ、よかった。あんたらは無事だったのね」


「だ、大丈夫なの!?あんたほどの奴が一体誰に……!」


「平気よ、これくらいは何ともないわ。今から手短に説明するから、少し落ち着きなさい」


幽香は、先程までに起こった事柄を全て話した。

その場にいた誰もが、フランの行動に驚いていた。


「ほ、本当に、フランがそんなことを?」


「ええ……嘘をつく理由はないわ」


「……フラン様はやはり、敵側からしても重要人物だったというわけか」


「そうなるわね……ところであんた、何でそんなにフランと似てるのよ」


治療中のイザベルに、幽香が尋ねた。


「まあ、色々とです。話すと長いのでまた今度でお願いします」


「ああそう……」



「フランの言ってた『パレード』ってのが何なのか気になるな」


「確かに。今は何が起こってもおかしくない状況だし、警戒しておかないとね」


「一先ず、今生き残ってる幻想郷側の連中を何処かに集めないと。このままじゃどんどんあいつらに呑まれるわよ」


「だな。かといって、広い空間で全く被害が出てない場所なんて何処にもないだろうし……どうしたもんか」


魔理沙達が思慮に耽ってしばらくの沈黙が続く。

誰も打開策を考え付かないのだろう。長い間、誰一人として何か提案をすることはなかった。

そんな時。


「打って付けの場所があるよ」


幼い少女のような声が、突然社の中から聞こえてきた。


「全く被害が出ていなくて、広くて、人が住む環境も整ってる。そんな最高な場所がね」


声のする方を振り返ると、そこには。


「……いつから居たのよ。こいし」


こいしが、いつのまにかちょこんと座っていた。


「レミリアが泣き止んだところくらいから」


「ちょい。言葉に出されると恥ずかしいからよして」


「oh,sorry. とりあえず、地底は今のところ何も被害は受けてないし安全だよ。みんなそこに集まってる」


「は、発音めっちゃネイティブ。さてはあんたフランに教わったわね?」


「その通り。まーそんなことはどうでもいいよ」


「集まってるって?幻想郷側のみんなが?」


「そう。伸介の呼びかけでね」


伸介の名が出たことに、レミリアは驚いた。


「伸介ですって!?」


「そう、伸介。色んなところに呼びかけてたみたいだよ。今のところ結構な数の人達が来てる。


命蓮寺の人達とか、紫さんとか妖夢さんとか早苗さんとか……挙げだしたらキリがないかな。とにかくたくさんの人達が来てる。永遠亭の人は誰も来てないけどね」


「…!」


「学園の生徒のみんなや先生方は、妹紅先生と慧音先生を除いてみんな来てるよ。……二人の安否が心配だけど……それは今は確かめようがないから」


「……だ、そうだ。どうするよ?霊夢」


「そんなの決まってるでしょ」


霊夢が立ち上がり、正面を向いて言う。


「これからしばらくは地底を私達の拠点とするわ。悔しいけど、地上は既にあいつらの手中にあると言ってもいいからね」


「りょーかい!そうと決まれば早速行こうぜ。なるだけ飛ばしてな!」


魔理沙が箒に跨ろうとした瞬間。


「はぁーい!みんなの便利屋紫ちゃんでーす☆」


紫がスキマから突然現れた。

魔理沙は思わずずっこけている。


「お前なぁ……もうちょい出てくるタイミングあったろ……」


「えぇ、ベストタイミングでしょ今の!


というわけで、みんな入って入って〜!話ならレミリアが諭される前から聞いてたから!」


「ババアてめえ!忘れろ今すぐ!」


「よぉし、レミリアはここに置いていこう!さあみんな早く!」


「あ、ごめん!言いすぎた!謝るから入れて!」



レミリア達はスキマに入っていく。

地底の状況を聞いて、霊夢は少しだけ希望を見出し始めていた。

博麗神社の社を見つめて、少し微笑みを浮かべる。


「──必ず、戻ってくるから」


そう言って、霊夢はスキマに入っていった。













「招集に応じてくれた諸君。感謝しよう」


フリーダがバルコニーから広間に向けて演説を行っている。フリーダの右斜め後ろにはフランが立っていて、左斜め後ろには咲夜が立っている。

広間には大勢の人妖が集まっていて、皆がフリーダの方を見つめていた。


「最早、口上は必要あるまい。ここにいる皆が皆、全て私の同志であるが故に」


広間にいる殆どのものが、その言葉に頷いた。


「これより我等は新たなる世界を創造すべく、この偽りの楽園を支配する。


抵抗する者は薙ぎ払い、容赦なく踏み潰せ!我が支配を受け入れぬ不埒な輩に我等の力を知らしめよ!」


フリーダが声を張り上げる。


「この日、この時より、この世界に新章が始まる!全てを奪い、全てを救い、かつてない理想の世界へと作り変える!


我等の力を指し示し──新たな歴史の始まりを告げようぞ!!」


『ウオオオオオオオオオオオオオオ!!』


フリーダが右手の拳を挙げ、力強く叫んだ。

広間にいる人妖の全てが歓声をあげる。

フリーダが振り返り、場内に戻っていく。

そこに、咲夜が遠慮がちに声を掛けた。


「陛下、軍の指揮は……」


「フラン、お前に任せる」


「お任せを」


「咲夜、お前はフランのサポートに当たれ。鈴仙には前線に出るように伝えろ」


「はっ」


「さあ、開戦の狼煙を上げろ!


──今宵は長い夜になりそうだ」








「さて、それじゃあ準備しようか、咲夜」


「はい。…妹様、指揮とかできます?」


「正直苦手。出来なくはないけど」


「ですよね……やったことないでしょうし、チェスとかはお上手ですけどそれとこれとは別でしょうし」


咲夜とフランが、広間へと続く道を歩いていく。

その道中で、幻想郷を陥とすための作戦会議をしているのだ。


「そうなのよ。チェスと同じ要領でやろうとすると絶対負けると思う。


ただ、何でお母様が私に指揮を任せたかは大体想像が付く」


「?」


フランが口元を少し歪めて笑みを浮かべる。


「私が相手にいる方が、幻想郷側のみんながやりづらくなると思ったんだろうね」


「……なるほど」


妙に納得がいき、複数回頷く。

咲夜は、陛下も人が悪い、と小声で言った。


「ほんとね。……ところで、部隊とか編成した方がいいのかな」


「必要ないとは思いますがね。幻想郷側に戦える戦力はそんなに多くは残っていないでしょうし、適当に攻めればすぐに陥落するかと」


「どうかな……私はそうは思わない。何せ、これまで数多の異変を解決してきた奴が残ってるんだからね」


「……確かに」


「二部隊に分けよう。先陣を切る一陣と、後から援護をする二陣。一陣の方になるだけ強い人達を入れておこうか」


「でしたら、天狗達は一陣に致しましょう。それから、妖怪はほとんどを二陣の方に組み込み、残る少数と人間を一陣の兵としましょう」


「そうだね。じゃあ、一陣の統率は鈴仙にお願いしようか。二陣は咲夜にお願いしてもいい?」


「了解です。では、妹様は全体の指揮をお願いします」


「OK、決まりだね」


「では、何処から攻めましょうか。永遠亭はこちら側ですから攻める必要はありません」


咲夜が顎に手を当てて一考していると……。


「そんなの決まってる」


「え?」


「地底からだよ。むしろ他の場所を攻める必要はない」


「な、何故でしょう?」


「こんな状況なのに、幻想郷側がバラバラになっているはずがないからね。必ず何処かに集合してる。


そしてその場所として最も有力な場所は地底。あそこは広いし、お母様の『同化』も進んでいない。

大勢が集まるなら、あそこ以外は有り得ないだろうね」


咲夜は、フランの言葉に感心した。

これが、軍師未経験の者が口にする事だろうか、と。

既に、ベテランの風格が漂っている。


「さすがです、王女。では地底に全部隊を」


「うん、それで行こう。……それと──」










「っひゃーー!ほんっとにほぼ全員が来てるんだな!」


「矢坂も手際がいいわね……今まで姿を見せなかったのはそういうことか」


「ところで当の本人はどうしたの?」


「今は地底にはいない。どこに行ってるかも知らないけど、地底の入り口を伸介の能力で別の空間に繋がるつもりなんだって。その空間を何処にするかを幻想郷中を回って決めてるんだと思う」


「なるほどね」


霊夢達が地底に来ると、地上から避難してきたであろう人々や妖怪達が大勢いた。


普段は荒々しい態度であることが殆どな地底の妖怪達も、状況が状況であるため今はとても落ち着いている。

勇儀や萃香の声かけのおかげもあるが。


「無事でしたね、霊夢。良かったです」


「げっ、聖」


「『げっ』とは何ですか『げっ』とは!せっかく最近は親睦を深めてきていたと思っていたのに……」


「だってあんたお節介が多いんだもの……」


「何をー!私は貴女の事を思って言っているというのに!」


「わかったから!とりあえず現状確認させて!」


霊夢と白蓮がイチャつき始めた。


「おい!誰よ今いちゃついてるとか言った奴!」


「そうです!私達は神社の尼僧と巫女!そのような淫らな関係では有りません!」


ほら見ろ、あれが実態だぜ。


「魔理沙だな!!」


げっ!


「お覚悟!!」


「よせ!早まるな!そうだ!お前に世界の半分をやろう!」


「魔王みたいなこと言うなコソ泥風情が!」


夫婦漫才が始まったところで、レミリアがこいしに確認を取る。


「永遠亭と慧音先生と林の案内人以外は来てるのよね?」


「うん、そのはず。紫さんにも確認してもらったから」


「なら、あいつらは?彼岸の連中」


「……来てないと思う。あと、ヘカーティア?あの変なTシャツ着てる人も」


「あいつは幻想郷の住人ではないから大丈夫よ。来てくれるんなら来て欲しいけどね」


「だーれが変なTシャツヤローですって?」


「誰もそこまでは言っていないってwhy!?」


「ワオ、native!」


「悪ノリしないの、ピース」


「はーい」


白い文字で『Welcome Hell』と描かれた黒いオフショルダーのTシャツに濃い色の緑・赤・青の三色カラーの、チェックが入ったミニスカートを着た赤髪セミロングの生足の少女、ヘカーティアと


金髪ロングヘアーで、目の色は赤がかった紫色。

玉が三つ付いた紫色に水玉の帽子を被り、首元にひだ襟の付いた、青地に白い星マークと赤白のストライプの服と、全体的にピエロを思わせる衣装を着ている少女、クラウンピースがレミリア達の後ろにいた。


「あっさりと登場するねぇ」


「貴女には言われたくないと思うわ、こいし」


「えー」


「で、でも何でここに?」


「まー、色々とよ。幻想郷は私としても失いたくないっていうか?色々と面白いとこだからさ」


「あたいはご主人様の付き添いー!」


と、そこに早苗が姿を現した。


「あっ!変T!」


「おう、また会ったわね不届き者」


「話は聞いたことあるけどやっぱり変なTシャツって言われるの気にしてるんだねー」


こいしが無情にもそう言った。

ヘカーティアは微妙な表情を浮かべている。


「……いや、ほんと。ごめんなさいね、ヘカーティア」


「いいのよん。気にしてないわ、ええ」


「ご主人様顔怖ーい」


「そ、それはさておき。貴女がこっちに来てくれたのは本当に心強いわ。純孤は来ていないの?」


「ええ、ドレミーにも声すらかけてないし、その二人の援護は期待しない方がいいわよ。


……それからもう一つ、悲報なんだけど」


ヘカーティアのその言葉に、じゃれ合っていた霊夢や魔理沙達もそちらに顔を向けた。


「今回、私はあまり役に立てそうにないわ」


「……へ?」


あまりに予想外の言葉に、その場にいた誰もが驚いた。


「な、何でよ!?」


「いやーちょっと、地獄の方がまずい事になってるのよね……狂気の侵食があっちにまで及んでて、地獄が文字通り地獄絵図になってて……映姫ちゃんだけだと大変そうなのよ〜」


「……つまり、そっちに行かないといけないってこと?」


「そゆこと。ごめんなさいね、なるべく早く片付けてすぐに援護に戻るからさ!というわけで、それじゃ!」


「Bye bye!」


ヘカーティアとクラウンピースがその場から消えた。

その場にいた全員が唖然としていた。


「……え、何?期待させるだけさせて帰ったってこと?あの変T」


「ぶふっ」


こいしまで変T呼びになっていた。

先程までヘカーティア達が居た場所を指差しながら微笑みを浮かべてそう言うこいしを見て、魔理沙は少し吹き出した。


「正直、勝ったと思ったわ……」


「Me too…」


「おいこいし、本当やめろお前!笑わせにかかってるだろ!」


「やめろと言われると余計にやりたくなりますなぁ!」


またも数人がじゃれ合い始めたが、そんな中……


「あの変T、実力だけはマジで凄いからちょっと期待したのですがね……」


「早苗、あんたあんまり言わない方がいいわよ、マジで」


「大丈夫っすよあの人優しいですから」


「よーし、これは一度シバかれた方がいいわね。今度ヘカーティアに言っとくわ」


「あ、冗談ですレミリアさん。やめてください本気でやばいんで」


「とにかく、やっぱり自分達の力でどうにかするしかないってことね……」


明らかに落胆する者も、しばしば。

しかし、そんな中でも。


「まあ、元々あの人の力を借りなくても問題なかったろ」


「その通り、そんなに落ち込む事はないさ」


「要するに、私達が負けなければいいわけでしょう?」


勇儀や萃香、幽香や白蓮達が自信に満ちた表情で言った。

それに後押しされたのか、霊夢の表情も明るくなっていく。


「……そうね、あんな連中に負けるなんてありえないわ」


「ふん、調子出て来たじゃないか」


「いつもの霊夢ならもっと強い口調で言うけどね」


「別にいつも口調が強いわけじゃないっつの」


「ふふふっ……さあ、反撃と行きましょうか!」


「ええ……これまで散々やられた分、しっかりとお返ししなきゃね」


先程までの絶望的な状況から一変し、暗雲立ち込める幻想郷に一筋の光が見え始めていた。


「私達が一丸となれば、相手がどんな奴であろうと負けるはずがない。


団結した幻想郷の力……あいつらに見せてやろうじゃない」


ここからが本当の、幻想郷の反撃だ。












「王女!全部隊、準備が整いました!」


「いつでも出撃できます!」


凄まじい数の人妖達が、フリーダの城の門の前に集まっている。

門の上からその様子を見下ろすフランと咲夜。

下から一人の兵士がフラン達に向けてそう叫んだ。


「了解。……咲夜、狼煙」


「はっ」


咲夜が右手に持つ松明を、門の下に組まれている薪に向けて投げ入れた。

炎がすぐに回り、黒煙を上げ始める。

そして、フランが声を張り上げて下にいる人妖達に言う。


「時は来た!今宵我等は、新たな時代の息吹をこの星に宿す!

容赦はいらない、我等の道を阻むものは──


薙ぎ払い、叩き潰せ!!」


『ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!』




「──さあ、始めようか」











「お、煙が上がってる!」


「ご丁寧に狼煙なんか上げてくれちゃって……」


「これから攻撃しに行きます、ってか?」


「舐められたものね。勝てると思い込んじゃってるのかしら?」


「あの人達は知らないのでしょうね、団結した時の幻想郷わたしたちの力を」


「全くだ。奴らが思ってる以上に、こちらの力は強大だというのに」


「あいつらもこれからそれを思い知る事でしょう!」


「そうね、思い知らせてやりましょう」


地底の入り口の少し手前の高台に、霊夢、魔理沙、早苗、幽香、勇儀、萃香、レミリア、幽々子、紫、白蓮、神子、華扇、空の十三人が陣取っている。




「──"ここからが本番だ"ってね」






伸介は、紅魔館の時計台の上から狼煙が上がる様子を見ていた。


「いよいよ、か」


数分前の出来事を思い返していた。

フランと、話してきたことを……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「考え直す気はないのか、フラン」


「何を」


「……この世界を支配するって考えをだ」


「無い。と言いたいけど、それを決めるのは私じゃないからね……強くは言えないな」


「……お前は、それでいいのか」


「いいよ。……どうして私にそんなことを聞くの?伸介」


フランは笑みを浮かべてそう言う。

伸介は真剣な眼差しを向けたまま、何も答えなかった。


「答える気はないか。別に構わないよ、大方の予想はつくからね……


……そんなに私が心配?お兄ちゃん」


伸介はまたも何も答えない。


「……ありがとうね、伸介。でも、もう決めたことだから。


私は私の道を行く。伸介は、お姉様のそばに居てあげて」


「それは本当に、お前の意思なのか」


そこで漸く、伸介が口を開いた。


「何が言いたいの?」


「それは本当に、お前がそうしたいと思ったからそうしたのかって事だ」


「それ以外にあると思う?」


「お前は、優しい奴だから。……フリーダの為に、その身を犠牲にすることだって厭わないだろ」


今度はフランが伸介を見つめたまま、黙り込む。


「なあ、フラン。前にも言っただろ?


お前はもう、自由なんだ。幸せになっていいんだ。誰かの迷惑なんて……考える必要なんかない。


もし本当に辛いことがあったんなら、オレのとこに来いって」


フランは尚も、何も答えない。


「オレはよく知ってるぞ。お前がどれだけ幻想郷ここが好きなのか。どれだけ仲間みんなが好きなのかをな。


……自分に素直になれよ。全部、一人で背負い込むな。オレを……家族を……仲間を頼っていいんだ」


俯いていたフランが顔を上げる。

その表情は、先程と変わってはいなかった。

笑みを浮かべて、伸介を見据えている。

そして、前に歩き始めた。


「言ったでしょ」


フランが伸介の横を通り過ぎていく。


「これは私の意思だって」


(──)


「フラン!!」


伸介が振り返ると、そこには既にフランの姿はなかった。


「……くそ……


もっと自分を大事にしろよ……馬鹿野郎……!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……」


(いざって時には、オレも行かねえとな)


「さーて、空間イジるのも終わったし、援護に行くかねぇ……」










「さあ、来るわよ!みんな構えなさい!」


「ふひひっ、久しぶりに思う存分暴れられる……!!」


「勇儀、顔、顔。完全に悪役のそれだから」


「まあでも、確かに」


「思う存分、戦えそうよね」


「わかってるとは思うけど、全員生きて帰るわよ。小悪魔とイザベルの魔法で狂気の侵攻は防げるから、傷だらけになったって構わないわ」


「はっ、どんなことがあろうと絶対生きて帰ってこいってか。いいねえ、そういう泥臭いのは嫌いじゃない」


「とにかく、敵を倒せばいい。そういうことでしょ?」


「その通り」


「さあ、みんな!あいつらを──」








「腕がなるな…!王女に俺たちの力を示すチャンスだ!」


「あまり出しゃばらないでくださいよ。前線は私達天狗が請け負いますからね」


「けっ、わかってるっての」


「…!王女様が手を挙げたわ、進軍の合図かも」


「総員、前進!!奴等を──」








幻想郷の全てを賭けた戦いの幕が……。




「返り討ちにするわよ!!」

「思う存分に蹂躙せよ!!」




今、切って落とされた。





今回は少しボリューミーになった気がします

毎回これくらい書ければなぁ〜

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