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東方学園の怪談話  作者: アブナ
狂宴の刻
62/82

悪い虫にはご注意を

申し訳ないのですが、この作品にはつい最近のキャラは登場しません……

何分あまり最近のはプレイできてない故、変に登場させると設定がおかしくなりそうで。





「──なるほど、妹様はそのように。確かにその方が効率もいいか」


咲夜が、何処かの洞窟で鈴仙と話している。


「ええ。そのおかげであともう少し……もう少しで復活に十分なエネルギーが溜まる」


「しかしよく幻想郷中に結界を張れましたね。貴女の魔力も相当きついのでは?」


「結界は私の魔力だけで張っているわけではありませんから」


「へえ……永遠亭の人達?」


「ええ、まあ」


「協力的なのですね。意外です」


「あのお方の為ですから。師匠もそう言えばすぐに協力してくれました」


「流石です。では、私もエネルギー集めに戻りましょう。溜まり次第すぐに復活の儀式を始めてください」


「了解です」


咲夜が洞窟から出ていった。

鈴仙は、洞窟の奥の方へと目を向ける。


「──もうすぐです、我等が女帝」


その一言に反応するかのように、暗闇の中で何かが蠢いた。










───場面は変わり……


ここは、博麗神社は地下空間。


「へぇー、なんだか幻想郷で面白いことがおこってるね」


「ご主人様、ちょっと興味ありそうな感じですね」


「ありまくりよ、だって地獄あそこ退屈なんだもの」


「えぇー?そうですか?あたいはそうは思わないけどなぁ」


「まあまあ、せっかくの機会だし遊びに行きましょう!それにせっかくこんなにいい場所なのに、このままじゃ幻想郷ここが崩壊しちゃうかもしれないし」


「えー?ここって全てを受け入れるんだからどんなのが来ても大丈夫なんじゃ?」


「限界があるんだと思うわ。特に今回のは異例中の異例。何せ幻想郷の方針そのものを変え兼ねない」


「方針そのものを変える?よくわかんないです」


「まあ簡単に言えば今の幻想郷が一人の女に飲み込まれそうなのよ。だからそれ止めに行きたいってわけ」


「なるほどー。でもご主人様が出ちゃったらその面白いこと一瞬で終わっちゃいません?」


「…む、それは確かに。でも幻想郷のためよ、ここは我慢する!」


「Great! さっすがご主人様、優しい〜!」


「それにしても、私がいるにも関わらずよく幻想郷を侵略する気になったもんだわ。その度胸だけは褒めてあげないとね」













最初から、違和感を感じていた。

まずもって、わざわざ守矢神社に来るのがわからない。

もし本当に急いでいたのなら、妖怪なら殆どの者が博麗神社を思い出すだろう。

しかも、リグルに関してはほぼ面識がないのだ。

そんな中で、わざわざこちらに来る理由がわからない。


疑心暗鬼になりながらも、早苗は『彼女は自分を頼ってくれた』と自分に言い聞かせた。


だが、違和感はそれだけに留まらなかった。


守矢神社とは反対方向にあるはずの『太陽の花畑』に、ものの数分で辿り着いたのだ。

明らかに距離がおかしい。

それを、逃げてきた本人は『気のせいだ』という。

さらに──


「早苗さん!早く!こっちです!」


「は、はい!」


(やっぱり妙だ……確かに花畑ではあるけど……


虫が、多いような……)


遠目で見た時は気にならなかったが、いざ花畑に入ってみると、明らかに虫の数が多い。

それが先程から感じる違和感の正体と繋がるのかどうかは置いておくとして、リグルの能力を思い出す。


『虫を操る程度の能力』


それがリグルの能力だ。


「……」


──質問してもいいのだろうか。

今この場で、虫の多さに"気付いている"ことを、隣を並走している少女に打ち明けていいのだろうか。

早苗の心には、リグルを少なからずとも疑い始めていた。


それに、このまま進んで行っても何も起こらない。

まして、もしリグルが自分を陥れようとしているのなら、この先に罠があるのは間違いない。


(……どっちにしたって、聞くしかない。このままだと、何もできない)


早苗は意を決し、リグルに自身の中の疑念を尋ねた。


「あの、リグルさん」


リグルの方を振り返った時、早苗は驚愕した。

そこに居たのはリグルではなく──





「ハい?ドウしましタ早苗さン?」





リグルの姿を象った、大量の虫だったのだ。


「ひっ…!?」


思わず後ずさる。

その行動にリグルだったものは驚き、自身の手足を見回し始めた。


「アちャぁ……持続しキレなカったか……」


ところどころ声がおかしくなっている。声を出す器官の再現が限界を迎えたのだろう。

人の型を崩しても尚喋り続ける虫達に、早苗は恐怖を隠せなかった。


「……リグルさん、貴女はやっぱり私を嵌めようとしていたんですか?」


「やッぱり、トいうコとは気付いテいたンですネ。流石は早苗さンだ」


リグルだったものがバラバラになり、早苗の周りを漂い始めた。


『ですが、もう遅いですよ。ここまで来てしまった以上、もう逃げる事はできません』


四方八方からリグルの声が聞こえてくる。

虫達がリグルの声を出しているのだ。

近くにいる、ということなのだろうか?


「この程度の虫の数なら、私の力で吹き飛ばせますけどね!」


自信たっぷりの声と表情で、早苗が幣を構える。


『……この程度、とは、どこまでのことでしょうね』


「え?」


瞬間。


周りに美しく咲き誇っていた向日葵達が、一斉に崩れ始める。

いいや、正確には『拡散』し始めた。


「……うっ……


嘘でしょ……?」




『さて、早苗さん。この程度の虫は貴女の能力で吹き飛ばせるんでしたよね?』




早苗が降り立った場所は、太陽の花畑ではなく──


大量の虫達が象った、偽りの花畑だった。


『さあ!この数の虫を前にして、先程と同じ発言ができますか!?』


「くっ…!」


(能力を使いたくても、詠唱する暇がっ……!)


どうこの状況を切り抜けるか考えていたその時、右側から大量の虫が迫ってくる。


「うわぁ、気持ち悪っ!」


つい本音が出てしまった。

ちなみに虫は弾幕を飛ばして消しとばした。


「い、いけないいけない……私はお淑やかな巫女、霊夢さんとは違う……」


(あれ?なんだか私今凄く失礼なこと言った気がするな……ま、いっか!)


気を取り直して幣を構える。

辺りの虫の数は全く減ってはいなかった。


「まあ、当然そうですよね。今の程度で怯えて逃げるのなら、最初から私をここまで誘ってこないでしょうし。


──ならば!」


早苗が周囲に停滞する弾幕を何重にも張り巡らせている。

虫達はそれを止めることも消すこともできないため、ただひたすらにその行為を見つめ続けていた。


「これだけ張れば、虫一匹も入り込めないでしょう。


──いざ」


早苗が何かぶつぶつと唱え始める。


『何をする気なのかは知りませんが、その程度でこの虫の数全てを防ぎきれると思わないことです』


その声を引き金に、無数の虫が一箇所に収束していく。

それがまるで槍のような形を成し、早苗の周りを取り囲んだ。


『見えているかどうかは知りませんが、これを全て防ぎきれますか?』


その槍の数は計り知れず、さらにまだ増え続けていた。

ゆうに何千を超えるその数に、普通ならば唖然とするだろう。


だが、早苗は尚も詠唱し続けている。

その様子にリグルは腹を立てたのか、声を荒げて槍を一斉発射させようとする。


『何をするつもりかは知りませんが、無駄なんですよ!さあ、覚悟してください!今からその無数の槍を貴女は撃ち込みます!防ぎきることは不可能です!


これで貴女とはさよなら──「大奇跡!!」


早苗は、詠唱を終えていた。

目をカッと見開き、前を見据えている。

そして、一つの言葉を告げようとしている。



これから起こる、その奇跡の名は──。





「──『八坂の神風』!!」





ドオオオオオオオオオオオンッ


轟音と共に、凄まじい豪風と弾幕の嵐が巻き起こる。

周りに漂っていた虫で作られた槍は悉く消し飛ばされていく。


しばらくして、風は収まり、弾幕も止まる。

早苗がスペルを出し終えたのだ。


「ふーっ…」


深呼吸をし、殺風景になった周りを見渡してから、満足げに頷いた。


「ふふんっ、現人神を甘く見るからですよ!虫なんかに遅れをとる私じゃありませんからね!」


(にしても……どうしてリグルさんはこんなことを?わざわざ私を狙った理由も気になるし……幽香さんが本当はどうなっているかも気になるし……)


「何にしたってこのまま花畑に向かうとしますか……周りにリグルさんの姿が見えないということは、あの虫達は遠隔操作だったようですし。


……ところで、なんだか暗くなったような?」


早苗が花畑に向かうために空を飛ぼうとした、その時だった。


「……はっ…?」


上を見上げて、絶句した。




『勝ったと、思いました?』




空を覆うほどの無数の虫が、早苗のはるか上空に集まっていた。

辺りが暗く見えたのは、虫達によって月が隠されていたからだ。


「そ、そんな……確かに虫は吹き飛ばしたはずなのに……!」


『確かに結構な数やられましたね。でも、あれくらいじゃまだまだです。そうですね……


今早苗さんが吹き飛ばした数の五十倍はいますよ?虫は』


その言葉を聞いた瞬間、早苗は嫌な汗が自身の背中を伝っていくのを感じた。


(あと何回かすれば倒せるとか、そんなレベルじゃない……


あまりにも、分が悪すぎる……)


絶望的な状況に、早苗の体が震え出した。

もし負けた時のことを、想像してしまったから。


「……嫌……それだけは絶対に嫌だ…!」


直後、空を漂っていた虫達が一斉に早苗に向かって飛んでいく。


「なっ…!?」


早苗は反射的に虫達に向けて精一杯の弾幕を飛ばし続けた。


「うわぁぁぁあああ!!」


固まって飛んでくる虫を避け、弾幕を飛ばして消しとばし、別方向から来る虫をまた避け、消しとばす。


「キャッ!引っ付かないで!」


体に張り付いた虫を手で払い、弾幕で消しとばす。


それを、何度繰り返したのだろう。

そのうち迫ってくる虫の数は増えていき、通常の弾幕だけでは抑えきれなくなっていた。


「やぁあああ!!」


スペルも何度も使い、全力で虫達を倒し続ける。

避けては撃ち、避けては撃ちの繰り返し。


「はぁっ!はっ…あっ…!ッ…!」


早苗は、これまで経験したことのない絶望に打ち震えた。

だが、無情にも虫達は休む暇なく迫ってくる。


「──負けて、たまるもんですかぁあああ!!」


それでも早苗は諦めなかった。

信仰心がある限り、自分はまだやれる。

まだ戦える。

負けを認めない限り、まだ勝負は続いているのだ。

ここで諦めるわけにはいかない。

自分には、帰りを待つ者たちがいるのだから。




──しかし……


「はあっ……はあっ……」


(──もう……駄目……)


ついに力尽き、早苗は地面に倒れ伏した。


『…よく頑張ったと、褒めてあげましょう。


本当に凄いですよ、早苗さん。さっきまで五十倍もいたのが今じゃもう三十倍だ』


その言葉に、早苗はさらに絶望の底に叩き落とされた気がした。


(あれだけやって……まだそんなにいるの……?




……駄目だ……私……


負ける……)


諦めて、早苗は目を閉じた。

意識も朦朧としてきており、体を動かすどころか、喋ることすらままならない。


『では、ここからは私のターンですね。さあて、どうやって甚振ってあげましょうか。


早苗さんはまだ未経験でしょうか?処女膜なんかはまだついていて?ふふっ、それは弄りがいがありそうです』


まるですぐそばにいるかのように聞こえる不愉快な声。


(──悔しい。でも、動けない。


こんなところで……こんな形で……こんな奴らに……


私は……初めてを奪われるのか……)





──ああ。

すみません、諏訪子様、神奈子様。


私、もう……お二人に合わせる顔がない……

神聖な場所に……穢れた女が立ち入る余地はない……

こんなことになるなら行かなければ良かった……


お二人と、もっと一緒に居たかったなぁ……









「随分弱気ね。あの時の貴女とは大違い」


ふと聞こえてきた声に、早苗は閉じていた目を開く。


「……とは言ってもこの状況。弱気になって当然か」


──何故か、その言葉にむっときた。

何故かはわからない。だが、自分を否定された気がした。

そうだ、どんな状況でも諦めたらそこで試合終了なのだ。

戦い続ける限り、まだ負けていない。


「…はっ……!私がこの程度で諦める人間に見えますか…!?」


体に鞭を打って、立ち上がろうとする。

しかし、隣にいる人物に頭を抑えられ、止められる。


「……そうではない」


──何となく、誰が隣にいるのかわかった気がした。

ちらりと横を見ると、やはり。


赤い瞳、銀髪のセミショート。

髪をハーフアップに結んでいて、片翼の少女。


「…ははっ……何で、こんなところに……」


「私がそれを語ってしまっていいの?」


口元に笑みを浮かべる、その少女の名は──。


「稀神、サグメさん……ですよね?」


少女は、小さく頷いた。


「……この場は任せても、大丈夫でしょうか」


また、小さく頷いた。

そして、そのまま立ち上がり、口元を隠すように左手を持っていく。


『誰ですか、全く。せっかく良いところだったのに』


リグルの声が、あからさまに不機嫌な声になった。

サグメの参戦は、予想外だったようだ。


「……悪趣味な者に名乗るつもりはないわ」


『へえ……名前なら今、早苗さんが言いましたけどね』


「……そうね、私の名前は稀神サグメ。月の民よ」


『あ、名乗りましたね』


サグメが頬を少し赤らめる。


「は、恥ずかしがってる場合ですかっ…!」


「──そうね」


途端に、サグメの目つきが変わった。

そして、口元にあった左手と、服のポケットに突っ込んでいた右手を広げる。


背中の翼が大きくはためき、風がサグメを中心に巻き起こり始めた。


『?何を……』


早苗は、この構えを知っている。

以前、このスペルを直に見たことがあるからだ。



彼女の背中の翼は、何故片翼なのか。

それは、このスペルが物語っているのかもしれない。

少なくとも早苗は、そう思った。


これより放たれるスペルの名は──。






「──『片翼の白鷺』」





カッ


『は?』





一瞬のことだった。


サグメが広げていた手を内側に持っていくと同時に放たれた翼のような弾幕は、瞬く間に大量の虫達を消しとばしていった。



光が収まり、辺りの景色が見え始めた。

早苗は、何とか上空を見上げる。


「す、凄い……」


あれだけ大量にいた虫達が、今はもう一匹も見当たらない。

今の一瞬で全て、消しとばされてしまったのだ。


(ああ……ははっ、凄いな……


本当に、事態が『逆転』した……)


サグメの後ろ姿に若干惚けつつ、自分の身が助かったことを安心していると。


「……」


「!……」


サグメが早苗の方を振り返り、早苗を見つめる。

……しばらくその状態が続いた。


「……な、何でしょう?」


パチンッとサグメが指を鳴らす。

すると、突然サグメの手にスケッチブックのようなものが出現する。

そして、何かを書き始めた。


「…?」


少しすると、サグメがスケッチブックをこちらに向けた。

そこには


《私が真実を口にすると運命が逆転してしまう能力があるのは知ってるね》


早苗は頷いた。

そして納得した。


「そういう風にしないといけないなんて、苦労しますね……」


《まあ、もう慣れたわ

ただ慣れたとは言えめんどくさいのであんまり画数の多い漢字は使いたくない。ちょっとへんな文章になるかもしれないけどゆるせ》


早苗が再び頷いた。


《私があなたを助けたのには理由がある》


「…?」


《今、幻想郷で何が起きている?》


「…それが、私にもわからないんです。どうしてこんな事態になっているのか……」


《それはつまり、あなたはこの異変に関与していないということね?》


「はい。どちらかと言えば巻き込まれた側かと……」


《そう、ありがとう。ところでもう一つ聞きたい》


「はい?」


《八意様は、この事態を把握しておられるの?》


「も、申し訳ないのですが、わかりません」


《そう。わかったわ、ありがとう》


そこまで書くと、サグメはスケッチブックを消した。


「た、大変ですね……」


「……気にしないで、いつものことだから。それより、色々話してくれてありがとう。


私は少しやることができた。そろそろ行くわ」


サグメが早苗に手をかざすと、早苗が光に覆われる。

次の瞬間、体のだるさが全て消え、自由に動かせるようになっていた。


「わっ…凄い!回復した!魔法みたいですね!今の何ですか!?」


サグメがまたスケッチブックを出して


《悪いけどあんまり時間がないから、話すのはまた今度にしましょう》


と書き連ねた。


「あっ…す、すいません」


《また会えるといいわね》


それだけ書くと、スケッチブックを消し、最後に早苗に向けて微笑みを浮かべ、飛び去っていった。


「助けてくれてありがとうございましたー!」


その後ろ姿を見送った早苗は、一先ず博麗神社に向かうことにした。


「何だか良くない予感がします。霊夢さんに当たってみましょう」


一刻も早く霊夢と合流しなくては。

早苗は、博麗神社への道を急ぐのだった。








「くそっ!!何だあいつ…!!月人か!?邪魔しやがって……!!」


リグルが花畑の向日葵と向日葵の間で悪態をついている。

普段の彼女からは想像もできないような、憎しみに満ちた表情だった。


「次見つけたら絶対に殺してやる……!」


リグルが向日葵畑から、大通りに出る。

そして、正面を向いた時。


「……え?」


そこに居た人物に、驚いた。

会うのは初めてだ。だが、彼女もまた『同志』。

それも、その中でもかなり重要な人物に当たるだろう。

それ故に、その存在自体は知っていた。

何故こんなところにいるのだろうか。そして、何のためにここに来たのだろうか。



──それを思考するに十分な時間は、リグルには与えられなかった


「はじめまして。


──そして、さようなら」



次の瞬間。

視界が真っ赤に染まり、頭部と腹部に強烈な痛みを感じた。


「なっ……」


最後に見えた光景は──


こちらを見て不気味に嗤う、奇妙な羽を持つ金髪の少女の姿だった。









紺珠伝までのキャラは登場します。

その辺はわかりますので。

ちなみに紺珠伝の中だとサグメ様が好きです。

二次創作発祥だけど筆談サグメ様って可愛いよね。

うちのサグメ様は原作よりちょこっと口数が多くて地上の人たちにもフレンドリーです。

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