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東方学園の怪談話  作者: アブナ
狂宴の刻
59/82

破滅の侵撃


「けーね先生!テストの範囲狭めてくれよ!」


「ダメだよ!一回決めたんだからもうあれで決まりだ!」


「アイス奢るから!」


「物で釣るな馬鹿!」


慧音は今、自宅近くの町に居る。

そこには学校に通っている生徒が数人在住しており、訪れる度に町の人々には親しく声を掛けられるのだ。


「あ、先生!私先生が作った難題解いてみたんですけど、見てくれませんか!」


「お、偉いな。でも見るのは次の授業の時だ。それまでにしっかり見直しをするようにな」


「はい!」




「先生、いつも子供がお世話になっております」


「いえ、こちらこそ。いい子達ばかりですから」


「ふふ、先生の教育あってのことですよ。あ、そうだ。この前面白そうな本を見つけたのですが……」


ここは慧音がよく訪れる本屋。

小説や絵本、歴史書から伝記物まであり、慧音はいつもここで色んな本を見て回る。

気に入った本は買って帰り、自宅で読書に耽るのである。



「へい!いらっしゃい!っと、これはこれは、先生ではありませんか!」


「急に畏る必要はないですよ…ははっ」


「やあ先生、今日は学校は休みかい?」


「はい、なので町に顔を出そうかと思って」


ここは行きつけの焼き鳥屋だ。

屋台形式なので、行く度に常連客と話ができる。

新たな出会いも、この焼き鳥屋ではたくさんあった。



「しかし随分好かれたもんだね、先生?」


「な、何だよ、悪いか?」


「べーつに?ふふっ」


妹紅がニヤニヤしながらそう言う。

何だか慧音も可笑しくなって笑ってしまった。


「やっぱ慧音には笑顔が似合う」


「え?」


「慧音、あんたはみんなに好かれてるし、大事にされてるんだ。だから、何かあったら自分で抱え込まんじゃなく、誰かに相談するんだよ?


そう、例えば私とかに!」


一寸の照れもなくそう言ってのけた妹紅に、逆に慧音は照れてしまった。


「あ、ああ……ありがとう、妹紅」


「はは、何照れてんのさ。可愛いなー先生は」


「う、うるさーい!」


慧音は、この町が好きだった。

住人が皆元気がよく、皆一人一人が懸命に生きている、

いつも活気に溢れ、自分を受け入れてくれる、この暖かい場所が好きだった。

きっとこれから、楽しい毎日が待っているのだろう。

そう思うと、とても清々しい気分だった。







「……ん…?」


強い揺れを感じて、慧音は目を覚ました。


「なんだぁ…?…夢か」


先程までの楽しかった光景は、どうやら夢だったらしい。

少し残念に思いながら、伸びをしてベッドから起き上がる。

時計の針は11時を回っていた。


「……なんだか変だな。私は一日中眠っていたのか?」


辺りが暗いことに違和感を覚える。

自分が寝過ごした。そうとも一瞬考えたが、そこまで寝過ごすことがあるだろうか?

確かに昨日は少しばかり夜更かしをした。

学校の書類や課題を作っていたからだ。

かと言って、一日中寝過ごすほどの夜更かしだとは思えない。


「うーん……少し外を見て回ってみるか」


今日は学校は休み。

やるべきことも昨日の夜のうちに終わらせてある。

どうせやることもないので、慧音は外の様子を見に行くことにした。


「…そうだ、こんな時こそ町に行こう」


少し浮ついた気分で、慧音は自宅を出発した。







「おーい、誰かいないかー?」


近くの町に来てみたが、道行く人は誰一人としていない。

それどころ、町中静まり返っていて、人の気配が全くしないのだ。


「…何だ?今日は何処かで祭りでもやってるのか?」


(いやいや、そんな感じの雰囲気じゃないだろ、これは)


どこか平和じみた考え方が頭をよぎるが、雰囲気がそうではないと訴えている。

慧音は、少し辺りを警戒し始めた。


「……何だ?何でこんなところに血が……」


町を見て回っていると、血の跡のようなものを発見した。

それも、まるで体を切りつけられ、血が噴き出したかのような、大量の血の跡だ。


「……少しペースを上げるか」


早々に巡回を済ませようと、早足で歩いた。

その時だった。


ドオオオオオオンッ!!


「!?」


凄まじい轟音と共に、地響きが起こる。


「な、何だ!?博麗神社の方からだったぞ…!」


(本当に何なんだ……突然の轟音、静まり返った町、血の跡……どう考えても普通じゃない……!)




辺りを一通り見て回り、慧音は冷静に状況を確認するために一旦自宅の前まで戻ってきた。


「やっぱり夜になってる……寝過ごしただけなのか?」


(いや……だとしたらこの違和感はなんだ……?近くの町にも人の気配はしなかったし……それにさっきの轟音と血の跡は……)


「……嫌な予感がする」


その時。


ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


慧音は、何かがゆっくりと歩いてくる音を聞いた。

嫌な予感がしていたこともあり、即座に近くの茂みに身を隠す。


(人か……?にしても、何故こんなところに……)


足音は徐々に大きくなっていく。

慧音は息を殺して、音の主が現れるのを待っていた。


「ウウウ……」


「……!?」


足音と共に、呻き声が聞こえてくる。

ここで慧音は、何かの異変に気が付いた。


(……何だ?赤い光が……二つ……?それに何かぶら下げて──)


しばらくすると、漸く音の主の姿が見え始めた。

目は赤く光っており、身長は高く見える。

大人の男性のようだった。

音の主の姿を見た時、慧音は驚愕した。

何故ならそれは──


「ウウ……アァァ……」


「──!?」


体中血まみれで、右手に人の首を持っていたからだ。

左手には鉈のようなものを持っており、その鉈にもまた大量の血が付いている。


男に見つかるまいとして、慧音はじっとしている。

男の姿が見えなくなったところで、辺りの様子を確認し、慧音は音を立てないように急いで自宅へと入る。

そして、扉に鍵をかける。

窓も閉め、外へ音が漏れないように徹底した。


「何だったんだ……今の男は……!」


慧音は底知れぬ恐怖に襲われていた。

自分があの男にやられることを危惧しているのではない。

男が向かっていた方向は近くの町だ。



血の跡、人の首、人の気配がしない町。

辿り着く答えは──。





『皆殺し』





バンッ!!


勢いよく入口の扉を開け、全速力で男の後を追う。

早とちりかもしれない。だがあの男を放っておくのはダメだ。慧音のあらゆる細胞が、そう叫んでいた。


「くそ…頼む!みんな無事でいてくれ……!」


町に辿り着くまでに、あの男と遭遇することはなかった。

しかし、先の生首から垂れたであろう血の跡はしっかりとこの町まで点々と続いていた。

つまりは、この町にあの男は居るということだ。


「……どこにいった……!急いで探さないと」


慧音はなるべく音を立てず、物陰に隠れながら町を捜索する。


異様な雰囲気だった。人の気配がしないとはいえど、ここまで不気味な雰囲気の町は初めてだった。


「どうして誰も人がいない……?」


普段なら、町に入るだけで色んな人から声をかけてもらえた。

慧音はその事がたまらなく嬉しくて、町に入る度に気分は良くなった。


生徒やその両親、行きつけの店の店員、道行く人々。

様々な人と話すことは、慧音にとってとても充実した時間だった。


だが、今日の町は違った。

話しかけられるどころか、人が誰一人としていない。


「……少し、寂しいな」


この町に来て、こんなにも孤独感を味わったことはなかった。

それだけに、慧音はだんだん心細くなってしまう。


「……ダメだ、雰囲気に負けるな。しっかりしないと」


頬を軽く叩き、慧音は再び考察し始める。


(町に人がいないことと、この夜になっている現象は何か関係がありそうだ)


いつもは活気に溢れていたこの町も、今やこれだけ不気味な空気に飲まれている。

つまり、やはりこの夜になっている現象は異常事態なのだ。


(だとすれば、あの男もこの異常事態と何か関係が…?)




ザッ




「!!」


その時、不意に足音が聞こえた。

息を潜め、身を屈める。

慧音は今、家と家の間に身を潜めている。

たまたま近くの家に隠れられそうな場所を発見したので、そこで色々と考察をしていたところだった。


足音は先程聞こえた一回のみしかならず、しばらくの間、緊迫した静寂だけがただただ過ぎていった。


足音が聞こえたということは、近くに奴がいるということ。動こうにも迂闊に動けなかった。


「…!」


慧音は、自分の身が震えていることに気がつく。

久しく感じた。

これは、『恐怖』だ。


得体の知れない何かに襲われているという『恐怖』が、慧音から冷静さを奪っていく。


(……どうする)


慧音は家の壁に沿って歩き、顔をほんの少しだけ覗かせ、周りを見渡してみる。


一目で見た限りは、男のいる様子はない。


「……行くか」


慧音は先程と同じように、なるべく音を立てずに物陰に隠れながら動く。


そうして町を捜索しているうちに、あることに気が付いた。

血の跡が、ある所を境に消えているのだ。


(向こうも私の存在に気が付いたということなのか……?)


「…しかし、町に人がいなくてよかった」


あんな奴が町に入り込んでいるなんて知ったら、恐怖で震え上がってしまうかもしれない。


「!……あれは……」


ふと、目に留まった。

行きつけの焼き鳥屋だ。




『へい!らっしゃい!って、先生!またあんたかい!』


『まるで私が嫌だと言うような言い方ですね?』


『ははは、そりゃあ嫌さぁ!あんた見た目に似合わずめっちゃ食ってくじゃねえか!その上凄く美味そうに食うもんだから金を取るのが申し訳ねえんだ!』


『それは申し訳ない。ですが商売繁盛ということでお許しを。ふふっ』





『ご馳走様でした』


『いやー今日も食ったな。よし、せっかくだ!今回は奢りにしといてやるよ!』


『え、いいのですか?』


『おうよ!ただし条件付きだ!次に店に来てくれた時、今日食った量の二割増しの分を平らげてもらう。それができなきゃ、今日の分+その日食った分の代金をいただいてくぜ!』


『なるほど…いいでしょう!その挑戦受けて立ちますよ!』


『ははっ、いいねえ!じゃ、絶対来いよ!約束破ったりしたら利子付けてやっからな!』


『ご安心を、私は約束は守りますからね。では、また来ます!』


『ははっ、待ってっからなー!』




「…ふふっ、商売だというのにお金を取るのが嫌だなんて」


店主との会話を思い出し、少し気分が落ち着いた。

だが、目を凝らして見てみると、異変に気付く。


「……あの暖簾のれん、あんなに赤かったか?」


自身のその言葉で、考えついてしまった。

考えたくもなかった可能性を。


「……いや…まさか、そんな……」


恐る恐る、屋台へと近付いていく。

足取りは、重かった。

慧音の体が、自然とその屋台へ近付くことを拒否していた。


「……」


赤く染まった暖簾の前で、立ち止まる。

慧音は、暖簾をくぐって屋台の中へと入っていった。





そこで、慧音が目にしたのは──。





『へい!らっしゃい!今日は何がいい?』





「……何ですか……


約束を破ったのは……貴方の方じゃないですか……!」




店主の、変わり果てた姿だった。






「……」


全身のあらゆるところから血が吹き出しており、心臓部分には鉈で突き刺されたであろう跡が残っている。

とても苦しそうな表情を浮かべている店主だったものを見て、慧音の心は酷く傷つけられてしまった。


「……ッ……うぅ…」


ついに、堪えていた涙が溢れてしまった。

すぐに手で涙を拭い、店主の目をそっと閉じる。


「今まで、ありがとうございました。……今度、お代を置いておきます」


そう言い残し、慧音は屋台を出た。


この出来事からだった。



「……許せない……


必ず見つけ出して、殺してやる」



慧音の心に、『闇』が芽生え始めたのは。





「……どこに、いるんだ」


それからしばらく、ずっと町を散策し続けていたが、男の姿はどこにも無かった。

居ると思わせる雰囲気すら感じることはなかった。


「もう町から出たのか…?」


背後を振り返って、また目に留まった。


「……ここは…」


慧音がよく訪れていた、本屋だ。


「……」


慧音は気分を落ち着けようと思い、本屋に入っていった。

当然ながら中は静寂に包まれていた。

ここもやはり人の気配は全く感じない。

しかし、何故か店の奥の方、レジの辺りだけは電気がついていた。




『先生!またいらしたのですね。最近入荷した本があります。是非読んでいってください!』




店員との会話を思い出す。

思えば彼女も、とても本が好きだった。

自分の読んだオススメの本を熱心に勧めてくる姿はとても可愛らしかったし、輝いていた。


「……ここには、どこも血の跡はないな。いつもと同じ、静かで整った本屋だ」


少し、安心した。 焼き鳥屋の店主に続き、彼女までやられていたらと考えるとゾッとした。


「……そうだ、この本」


慧音が手に取ったのは、彼女が勧めてくれた本。

『愛』という、一文字だけのシンプルなタイトルだった。


如何にも彼女が好みそうな本だと思った。

彼女には、密かに想いを寄せる一人の男がいた。

その男性もまた本が好きで、よくこの店に通っていたのだ。

名前こそ知らなかったが、顔はよく覚えている。

確か、そこそこの美形だった。

それに、彼は性格も優しかった。

慧音に対しても親しく接していたし、彼女の仕事の手伝いも時折していた。


「……二人とも、無事だといいんだが」


少し気分が落ち着いて、冷静さを取り戻してきた。






その時だった。


「オオオ!!」


「!?」


背後から先の男が現れ、慧音の首に向けて鉈を振るってくる。


「うわっ!」


慧音は咄嗟に身を屈める。

すぐに男と距離を取った。


店内で電気がついていたのはレジの方だけ。

故に男の姿を発見できなかったのだ。


「くそっ…!いつのまに……!」


男の方を振り返るが、既にそこに姿はなかった。

暗闇に身を隠したのだろう。


「……それなりに、賢いようだな」


(唸り声をあげているからと言って頭が悪いわけじゃない。そりゃあそうだ)


認識を改めて、慧音は精神を研ぎ澄ます。

どんな小さな物音にでもすぐに反応できるように身構えた。


(…レジの方で構えるのは自殺行為だ。明るい場所だからとそこに移動しても、相手に居場所を教えているだけだ。

それに、レジの周りは真っ暗だ。どこから攻めてくるかわからないし、反撃をするのも難しい。なら、こっちも暗闇に身を隠すべきだ。相手も私の姿は見えていないはず)


今慧音は、本棚と本棚の隙間に身を隠している。

周りの様子を伺いながら、敵の動きを待っている。


ガッ


「!!」


「ウオォ!!」


斜め前方の本棚の裏から、男が現れた。


「くっ…!」


横に転がって攻撃を回避する。

すぐに体勢を立て直し、敵の姿を確認しようとする。

しかし、暗闇にまた身を隠したようで、既にそこに姿はなかった。


「早いな…!」


(思ったより強敵なのかもしれない)


慧音は再び隠れ、敵の動きを待つ。


「……さあ、来い。次はさっきのようには行かないぞ」



…………。


少しの静寂が訪れる。


そして──。


ガッ


「ウオォ!!」


「来たな!」


今度は慧音の右側から現れた。

慧音の頭に向けて鉈を振るってくる。


「甘い!」


「!?」


慧音は鉈を白刃どりで受け止め、さらに男に向けて右足で蹴りを入れた。


「オオッ…!」


「よしっ…!」(このまま鉈を…!)


「ガァッ!!」


「ぐっ!?」


そのまま鉈を奪おうとしたが、男は慧音の右手を引っ掻いた。

慧音は思わず鉈を離してしまう。


「しまっ…!」


追撃が来ると身構えたが、そうはならなかった。


「……へえ、慎重だな…!」


男はまた身を隠したらしい。

先程引っ掻かれた右手からは、血が滲んでいた。

一先ずまた身を隠す。


(しかし、この調子でいけば勝てるな……焦らず、冷静に行こう)


その時だった。


「……?」


(何だ…?何かある?)


慧音は、レジの机の上に何かが立てられているのを見た。

本棚に視界を阻まれ、立てられているものが何なのかは確認できない。


「…仕方ない、レジの近くまで行こう」


(明らかに罠だろうけど……襲ってくるのなら好都合だ。近接での戦闘なら私に分がある)


慧音は意を決し、なるべく音を立てないようにレジの方へと近付く。


(よし、これだけ近付けば見えるだろう。まずは周りの確認だ)


慧音が周りの様子を確認している。


その時。





ポタッ……





「…!?」


何かの液体が、滴る音がした。

とてつもなく、嫌な予感がした。

周りを伺う事など忘れ、レジの方を凝視する。





「……嘘、だろ……そんな……」




レジに立てられていたのは、本屋の店員の生首だった。





慧音はその光景に絶望し、隠れることなど頭から抜けてしまっていた。


よろよろと立ち上がり、レジの方へと歩いていく。


「どうして、君まで……」


生首となってしまった彼女の頭を、優しく撫でる。

まだ、切断面から血が流れ出ている。

殺されて間もない、ということなのだろう。


「どうして、この子が……町のみんなが、殺されなければならないんだ?どうして、幸せを奪われなければならないんだ……?


どうして、こんなことになったんだ……」


慧音が、俯く。


それを好機と見てか、男は慧音の背後に悠然と現れた。

先程まであげていた呻き声はあげず、音もなく近付いていた。


慧音の真後ろにまで到達する。

それでも慧音は、全く動かない。悲しみに暮れているのだろうか。



男が右手に持つ鉈を振り上げる。

そして、思い切り慧音の首に向けて、その鉈を振るった。







グシャッ…







肉を抉るような鈍い音が、静かな本屋に鳴り響いた。

鮮血が吹き出し、重いものが地面へと落ちる音がした。










──落ちたものは、鉈が握られている右手だった。







「グッ……ギィヤアアアッ!!!」


男の右手が、慧音によって切り落とされていたのだ。


「何故、殺した?」


慧音は普段の姿ではなく、白沢化していた。

今日は、満月ではないというのに。


「いいや、理由なんてどうでもいいな。殺したことに変わりはない」


慧音は右足で、男の左足を思い切り蹴った。

男の左足は、膝上辺りから下を吹き飛ばされてしまった。

肉が千切れる音とともに、男はその場に倒れる。


「ギャアアァアアア!!!」


悲鳴をあげるが、それでも慧音は止まらない。

今度は男に馬乗り状態となり、腹を両手を使って裂いた。


ブチィッ


「アッガッ!!!」


ブチィッ


内臓を一つずつ取り出していく。

一つ取られるごとに男は短い悲鳴をあげる。

左手で対抗してこようとしたが、それを右手でへし折り、そのまま捥ぎ取る。

男は悲鳴をあげることすらできず、ただただ恐怖に顔を歪めていた。


ドゴッ


「死ね……死ね……死ね…死ね、死ね、死ね、死ね!死ね!死ね!!死ねぇ!!!」


今度は顔を殴り始めた。

何度も、何度も何度も何度も、殴り続けた。





男の目から光が消えるのに、そう時間はかからなかった。

もうとっくに死んでいるというのに、慧音はまだ殴り続けていた。



グチャッ



慧音の拳が地面についたところで、慧音は殴るのをやめた。


「……ハァッ…!ハァッ…!ハァッ……」


立ち上がり、男から離れる。

途端に、涙が溢れ出てくる。


手で拭おうとするが、血まみれの手を見て、やめた。


「…うっ……うぅぅっ……!


どうして…君が……」


殺す前に、しっかりと見た男の顔。


男の正体は、本屋の店員が想いを寄せていた男性だったのだ。


「……どうして…どうしてこんな……!


うわぁあぁああぁぁぁぁ……!!」


泣き崩れてしまった。

その場に崩れ落ち、大声を出して泣いてしまう。


その時。




コツ、コツ、コツ、コツ……





「残念なお知らせです」





「……!?」




「町のみんな……心配してたんでしょ?


…もう、無事じゃないってさ」




背後から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

振り返ると、そこには──。




「……フラ、ン…?」





笑みを浮かべた、フランドール ・スカーレットがそこにいた。



内容が重くなってまいりましたな。

そしてタイトルとも関係なくなってきましたな。

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