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東方学園の怪談話  作者: アブナ
学園の日常
50/82

美しい薔薇には棘がある 前

お久しぶりの更新です。

やっぱ更新は定期的にした方がPVとか伸びるのかな…?





理解者が欲しい。

自分の全てを理解し、受け入れてくれて……それを分かり合える誰かが欲しい。


初めてそう思ったのは、いつだっただろうか?




「…何を、やっているの…?こいし」


──ああ、そうだ。あの時だ。


「…お姉ちゃん?」


私を見るお姉ちゃんの顔は、恐怖に染まっていて。


「…何をやっているの…!?」


声は、どうしようもなく震えていて。


「…コレクションを作ってる?」


その一言を聞いた途端……お姉ちゃんの頬に一筋の涙が流れていた。


そう、あの時だ。

お姉ちゃんのあの反応を見た時、思ったんだ。

自分の全てを否定されたような気がした。

そして同時に、自分が他とは少し違うことも理解した。


「…それが何なのか、わかっているの…?」


お姉ちゃんこの世の終わりのような表情でそう言った。

私はこの時既に悟っていた。




「それは……人の死体よ……?」




──自分は、狂っているのだと。











「おい!こいし!」


聞き覚えのある大声で名を呼ばれ、意識が覚醒する。


「ふぇ?」


「何が『ふぇ?』だ!居眠りなんてして…前回テストの点が良かったからと言って寝ていいわけないだろう!」


と、慧音先生が怒鳴っている。

声色は怒っているが表情は割と柔らかい。

そこまで怒ってはいないようだ。

後ろのフランがくすくすと笑っているのが聞こえた。


「すみませーん。気を付けまーす」


「そんな気の抜けた言い方で言われても…!…まあ、いいか。気を付けろよー!」


そう言ってまた授業を再開する。

慧音先生はあー見えて案外甘い。

特に自分のクラスの生徒に対しての愛着が凄いから、大抵のことは笑って見過ごしてくれる。

授業や号令に関しては、何かと厳しいのだが。


「…フラン、気付いてたんなら起こしてくれてもいいんじゃない?」


と、ここで先程くすくすと笑っていた親友に話しかける。


「いやーつい。ふふっ」


そう言ってイタズラに笑うフラン。

もしやフランが慧音先生にチクったのか…?

普段この位置からなら居眠りしても気付かれなかったから何も言われなかったし……。


「フラン、チクった?」


「まっさかぁ。問題の時に手を挙げただけだよ〜?」


「うっわ、確信犯じゃん。後で覚えといてよ」


「ひどーい、そんなつもりじゃないのにぃ〜」


「ほ〜う…?どの口がそんなことを言うのかなぁ〜?」


「せんせー!こいしが喋ってまーす!」


「なっ…!汝ィ!我を嵌めたな!?」


教室中が笑いに包まれる。

これが私達のクラスの日常だ。

笑いの絶えない、とても明るく楽しいクラスである。

私はそんな日常が好きだ。






「それじゃあ、また明日ね、こいし」


「うん、また明日!じゃあね〜」


フランに手を振って、足早にその場から立ち去る。

今日は少し()()()()()()()()なので、寄り道をして帰ろう。

ああ、楽しみだ。普段我慢している分、その時に発散する気持ちは大きい。

どうやってやろうか?少しずつ仕上げていくのもいいが、一気にやってしまって、その事実に気付いて、歪むのを見るのもまたいい。

しかしやはりじっくりとやるのが一番だ。

あの心地良い音色と景色が堪らない。

そうと決まれば、早く見つけなければ。




今宵の玩具はどれにしよう?






「…なんか今日のこいし変じゃなかった?」


フランがふとそう呟いた。

伸介も同意するように頷く。


「元気がない、というか空元気というかな」


「うん、そんな感じ。…ちょっと後をつけて見てもいいかな」


「ああ、でも悪いけどオレは帰る。宿題がやべえ」


「まーたサボってたの?予定立ててやれって前にも言ったのに」


「いやいや、今回はたまたまよ?最近はきちっとやってっから心配すんなって」


「とか言いつつ毎回ギリギリまで残してるくせに〜」


「おぉっと聞こえんなぁ。てか早く追わないと見失うぞ」


「それはそうだね。じゃ、宿題頑張って」


「はいよ。…一応、気を付けろよ」


「…うん」


そう言ってフランは伸介と別れる。

早足でこいしを追っていった。

……しかし。


「…あれ?


さっきまでそこにいたのに……」


こいしの姿は既に、()()()()()









「綺麗な薔薇には棘があるって言葉、知ってる?」


「どんなに綺麗な外見を持っていても、その中は危険がいっぱいかもしれないんだ」


「それを知らずに不用意に触れそうとするものには、棘が刺さっちゃうんだよね」


目の前にいる黒づくめの少女は、とても楽しそうにこちらを見つめている。

フードを被っていて顔は口元しか見えないが、とても可愛らしい声で少女だとすぐにわかった。


「…君は誰だい?」


僕は不思議に思い、言葉を返した。

その子は相変わらずにっこりと笑っている。

あまりに曇りのない笑顔だったので、僕はとても不気味に思った。


「要するに、お兄さんはその不用意な人って事だよ」


その言葉と同時に。

少女は目にも留まらぬ速さで僕の首を掴み、そのまま地面に叩きつけられたかと思うと、両足の足首辺りに鋭い痛みがやってくる。

何が起きたのか分からず、一瞬困惑する。


そして、少しして気付いた。

僕は足を、切り落とされていた。


「う、うわぁあああぁああぁああああ!!?」


あまりの痛みと恐怖に絶叫をあげてしまう。

助けを呼ぼうと、叫んだ。しかし……。


「だ、誰か!誰か助けっ…」


周りをよく見渡してみると、そこは森の奥深く。

何故こんな場所に僕は来ていたんだろう?

町に物を買いに行こうとしていたはずなのに。


「無駄だよ、貴女はもう助からない」


少女がまたにっこりと笑ってそう言った。

こういうのを、狂っていると言うのだろうか。

少女から、普通の人や妖怪からは感じられない"何か"を感じた。


「…ッ…!!」


命乞いをしても無駄だとすぐにわかった。

この子は何か恨み事があって僕を襲っているのではないし、頼まれて襲っているわけでもない。

純粋に楽しんでいるんだ。人を殺すという事を。


「貴女はどんな歌を聴かせてくれるのかしら?楽しみだわ」


意気揚々と右手に持ってナイフを僕に向けて突き刺そうとする。

──ああ、もうだめだ。死んだ。

そう、諦めた、その時だった。


「そこまでにしておこうか」


「!!」


背後から誰かの声が聞こえてくる。

声が聞こえたと同時に、黒づくめの少女は体をびくりと震わせた。

どうやら、完全に想定外だったらしい。


「…?」


僕は訳が分からず、一先ず声が聞こえた方を見た。

そこに立っていたのは、サイドテールに結んだ金髪の髪に紅い服を身につけた、奇妙な羽を持つ美しい少女が立っていた。


「…貴女、誰?」


金髪の少女が黒づくめの少女に問いかける。

黒づくめの少女は金髪の少女の方を振り返る事なく、問いに答える。


「…さあ、誰だろうね」


黒づくめの少女が先程までとは別人のような声でそう答える。


「…とにかく、その人から退きなよ」


「嫌だって言ったら?」


その言葉の直後、黒づくめの少女が金髪の少女に押し飛ばされていた。

僕の目の前にいた黒づくめの少女は大木に叩きつけられ、苦しそうに息を吐いた。


「かはっ」


「…乱暴になってごめんね。でもこんな事をする子にはそれくらいがちょうどいいよ」


金髪の少女はとても凛々しい表情でそういうと、僕の足首辺りに手を翳す。

すると、少女の手が光り出した。


「痛かったよね……とりあえず痛みは無くしてあげる。後で足もくっつけるよ」


「え…?」


言っている意味がよく分からなかったが、足に感じていた酷い激痛が治った。

一体何をしたのだろう?


「い、今のは?」


「細かいことは気にしないで。悪いけど、もう少し待っててもらえるかな?」


優しい声色でそういうと、金髪の少女は僕の前に立って身構える。

その時、黒づくめの少女が、悲しそうにこちらを見つめていたのが目にとまる。


「…仕方ないよね」



黒づくめの少女がそう呟くと同時に、凄い速さで森の外の方へと向かっていった。

僕には正直見えなかったが、金髪の少女が目で追っていたのでそれで分かった。


「…行っちゃった。でもよかった、これで貴女を治せるよ」


少女がこちらを振り返る。

聞いていると、とても安心する声だった。

自然と心が安らいでいる。


「あ、ありがとう……君は凄いな。一体何者なんだい?」


「私の事なんて気にしなくていいよ。それより足を治さないと……あった!」


僕の切り落とされた足を、宙に浮かせてこちらまで持ってくる。

足が浮いてくるなんてなんとも不気味な話だが、それよりも。


「す、凄いな…!今のは一体なんだい?君は魔法使いなのか…?それに、君のような少女が切り落とされた足なんか見たら普通は…!」


「ふふっ、こう見えて私、吸血鬼なのよ?でも安心して、貴女を殺すつもりなんてないし血も吸わないわ」


「きゅ、吸血鬼!?…そ、その背中の羽は装飾じゃなかったのか…」


「そ!だから魔法も使えちゃうってわけよ〜」


明るい笑顔を浮かべ、自慢気にそういう少女は、とても可愛らしかった。




その後、足は切り落とされた事がなかったかのように見事に完治した。


「よし、これでおしまい!一応あんまし無理に足は動かさないでね?」


「ああ、本当にありがとう。君は本当に凄いな」


「えへへ〜、褒めても何も出ないけど、ありがと!」


とても可愛らしい声でそう言った。

…せめて、名を聞いておきたい。

いつかお礼をしなければ。


「君、名前はなんていうんだ?」


「名前?…んー、知らなくていいと思うけど」


「いつかこのお礼をさせて欲しいんだ。だから頼むよ」


「んー…ま、いっか!私の名前はフランドール。


フランドール・スカーレットだよ。長いから、フランって呼んでね!」


スカーレット…その名は聞いた事がある。


「ってことは君は…紅魔館の当主かい!?」


「うぅん、その妹。へえ、お姉様って結構有名なんだ」


「い、妹!?凄いな…わざわざこんなところにまで何を?」


「いやーたまたま友達を追っかけてたらこの場面に出くわしたって感じ。ほんとびっくりしたよ、生きててよかったねー、お兄さん」


「う、うん、全くもってその通りだ…ほんと運が良かった」


「それじゃあ…森の外まで送ってってあげよっか。危ないかもしれないしね」


「それは助かるけど…なんだか申し訳ないな…」


「いいのいいの!気にしないで。私がやりたくてやってるんだから」


「そ、そうか。ありがとう」


「あ、そういえば貴方の名前聞いてない。私が教えたんだから、そっちも教えてよ!」


「おっと、そうだったな。


僕の名前はクローム。クローム・アルマリクだ。町でしがない花屋をやっているんだ。よろしく!」


結局あの後、森で黒づくめの少女が襲ってくることはなかった。


フランさんとは、町の少し前くらいで別れた。

命の恩人だ、いつかお礼をしなければ……。







「あの黒い服の子、誰だったんだろ」


フランはクロームと別れた後、先の出来事について思い返していた。


(何処かで、見た事がある気がする……)


「…こいしは大丈夫かな」


あの少女に親友が襲われていないか、と心配する。

事のついでに、地底に寄って行こうかと思っていた矢先に……。


「あれー?フランじゃん。何でここにいるの?」


「!」


声のする方を振り返ると、こいしがいた。


「こいし!よかった、無事みたいね」


「無事?無事って何が?」


「あっ…うぅん、何でも!ちょっと今日のこいし元気なかったから、何かあったのかなーって…」


「あぁ…言いにくいんだけど、体調悪くてね…あんまし悟られないように頑張ってたんだけど」


「そうだったの!?無理はしないでね?」


「うん。ありがと!それじゃあ早く休む為にも、早く家に帰らないとね!」


「その通り!早く帰りなさい!」


「すみませんでした!先生!」


「あ、そういうノリに派生するのね?」


「あははっ!それじゃあね〜」


「うん、じゃあねー!」


こいしが急ぎ足で去っていく。

フランは、こいしに何事もなかったようで安心した。


「よかった、こいしは襲われてなかったんだね。……あれ?


そういえばこいしは、森の近くで何をしてたんだろ?」






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