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東方学園の怪談話  作者: アブナ
絶望の未来篇
47/82

平和の代償

少し更新が遅くなってしまいました。

そして今回かなり短めです。すまない……





イザベルとの戦いは、私達の勝利で幕を閉じた。

平和を勝ち取ったのだ。

これからはもう、あんな戦いが起こることもないだろう。


だがその平和の代償は、あまりに大きすぎたのだった──






「フラン…!しっかりして…!」


「こいし……私はもうダメみたい……」


「何言ってるの!まだ諦めちゃダメだよ!」


「私のことはいい……貴女だけでも……せめて……」


「フラーーーン!!」






「……いや、やれよ?」


「「えぇー」」


慧音先生が苦笑いでそう言った。

やはりこの手の攻撃はダメか。

私とフランは今、私達がイザベルと戦っていて学校を休んでいた間にあったというテストをやらされている。

だがしかし、当然勉強などしていないので何もわからん。


「くっそー…私達のあの激戦は何のために…」


「あのな、休んでたお前達が悪いんだからな?」


「こっちにもそれなりに事情があったんですー!ここはひとつ賭け事をして勝った方の条件を飲む、というのはどうだい?」


「こいし、それはやめておいた方がいいと私は心から思う」


「私の能力を忘れたのか?こいし」


この人の能力、さりげなくやばくない?


「放課後だから、あと少しで夜になってしまうなぁ…困ったなぁ」


「わかりました!わかりましたから!」


観念してやるしかないのかぁ…くそぅ





「お疲れ。それじゃあ、少し待っていてくれ。褒美のジュースやお菓子でも持ってきてやろう」


「おー流石けーね先生!わかってる!」


「全く、こういう時だけは調子がいいな、こいしは」


そう言って教室を出て行った。


「あーやっと終わった……たった4日休んだだけなのに、タイミングが悪いなぁ」


フランがそうぼやきながら机に顔を伏せる。


「ほんとねー。しっかしフラン、やるもんだねぇ。勉強もしっかりしてたんだ」


「いや?別にしてないよ。ただ授業でやってた内容だし、わかっただけ」


「えっ」


「…こいし、授業はちゃんと聞いてね?」


「…いやー…!だって慧音先生の授業難しいしぃ?」


「気持ちはわかるけど……だから私に答え聞いてきたのね。慧音先生にバレないように教えるの大変なんだからさ」


「いやーサーセン。助かりましたわ。私の机の中に自分の蝙蝠を入れるとか画期的なアイデアすぎて」


「魔法使って文字を空中に書いて教える。音も立てないようにしないといけなかったからほんと大変だったよ…」


「いやーごめんね、ほんと助かった」


「まあいいんだけどね。こいしには色々助けられたし」


「お互い様って事で!」


その時、教室のドアがノックされた。


「?ノックなんて珍しい。誰だろ?」


「はーい」


教室のドアが開けられる。そこにはイザベルが立っていた。


「どうも」


「あ、イザベル。どったの?」


「いえ、フラン様たちがここで居残りをしていると聞きまして。気休めにお茶でもいかがでしょうか」


「おーそりゃ助かる。流石、気が利いてるね」


「ありがとうございます。…こいしさんも、どうですか?」


「…なんだか慣れないなぁ…!別に敬語じゃなくてもいいよ」


「しかし敬語をなくしてしまうと口調がきつくなってしまいます故。無意識に煽ってたりしたら後々怖いし」


イザベルが少しニヤケながらそう言った。

ちなみにイザベルとは仲が悪いとかそんなのは無い。

フランが生かしたいと思ったのなら、私はそれを受け入れる。

そこで邪険にしてしまっては、フランも悲しむだろうし。

だから今感じている苛立ちは、友達とかに対しての、そういう安い苛立ちだ。


「分かって言ってるでしょ。イザベル」


「馬鹿な」


イザベルもイザベルで、楽しそうに私と接してくれる。

おそらくイザベルも周りとの交流を深めたいと思っているのだろう。

それがフランの望みであるとわかっている。

流石と言うべきか、イザベルは私よりもずっとずっとフランの事を理解しているような気がする。


「掃除は?」


「終わらせました。後は帰り支度を済ませるだけです。もし良ければ、一緒に帰りませんか?」


「そうだね、そうしよう。イザベル、今日の晩御飯何?」


「咲夜が知っているはずです。今日の当番は咲夜ですので」


「ああ、そうなの。じゃあ帰ってからのお楽しみか」


「そういう事です。…しかし、居残ってテストとは中々の苦行。ほんとお疲れ様です」


「いや誰のせいだと思ってんの。というか、わかって言ってるっしょ?」


「えぇー?ほんとにござるかぁー?」


「うっわ、確信犯だこいつ!はははっ」


二人はとても楽しげに会話をしている。

少し、羨ましかった。

レミリアやイザベル、それに紅魔館の住人。フランにはこんなにも多くの理解者がいる。

全てを理解して、それを受け入れてくれる人々がたくさんいるのだ。

その事が少し、羨ましかった。


しかしそんなことを考えても仕方がない。

フラン達にはフラン達の生活があったわけだし、私とはまた境遇が違うのだから、違うところがあって当然だ。


「二人は仲良いんだねぇ〜。なんだか伸介が居るみたい」


「まあ、伸介、お姉様についで古い付き合いだからね。昔から仲は良かったから」


「それはそうと、こいしはどうしてお茶を飲まないのです?冷めてしまいますよ」


そう言われて気付いた。イザベルは私の分のお茶も淹れてくれていたようだ。


「わっごめん。ッッアッツイ!!」


慌てて飲もうとしたため、お茶が少し溢れて手にかかってしまった。


「ぶふっ!」


フランがお茶を吹いた。


「ちょっ」


それがイザベルにかかった。


「な、何してんの…!」


「い、いや、その……お、お茶を飲もうと、思いまして…!」


今の一連の流れがとにかく面白かった。笑いを耐えているから顔が引きつっているかもしれない。

一番の被害者、イザベルは、服がお茶まみれになっている。


「…あーその、ごめんね?イザベル」


「…フラン様、帰ったら覚えといてくださいね」


「いやごめんて。謝るから!ほんと許して!」


私のせいにしてこない辺り、流石はフランだと思う。

私は落ち着いてゆっくりとお茶を飲んだ。


「いや何冷静にお茶飲んでんの!?っていうか手は大丈夫?火傷とかしてない?」


「あ、うん。大丈夫」


「全く…最初から落ち着いて飲んで欲しいものですね。お茶を粗末にするなど以ての外。ねえ?フラン様?」


「あっ…は、はい。そうですよね〜、たははは……」


フランが押されている。イザベルはやはり伸介と同じ空気を感じる。

何というか、フランと対等な立場というか。

レミリアとはまた違った形で安心する関係というか。


その時、教室のドアが開けられる。


「ん?フランが二人?…ああ、イザベルか。どうしたんだこんなところで?」


「これは慧音先生。フラン様達がここで居残っていると聞き、お茶でも淹れてあげようかと思いまして」


「ああ、なるほど。ありがとうな」


「いえ、こちらこそいつもお世話になっております」


その後、少し雑談した後に学校を後にした。


「それじゃあね、こいし。また明日」


「うん、また〜。イザベルもじゃあね」


「はい、さようなら」


フランとイザベルが歩いていく。

私は気がつけば二人の背中を横目で追っていた。


「…理解者がいるって、幸せなんだな」


そう呟いた後、私は地霊殿への帰路についた。






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