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東方学園の怪談話  作者: アブナ
絶望の未来篇
44/82

人の明日

いよいよクライマックスです…!

今回は少し擬音が多いです笑

それぐらい激しい戦闘なんだなと思っていただければ笑






左手の感覚がない。

それに続くように全身の感覚が薄れていく。

自身を保っていた何かが、体の外に投げ出されたような気がする。

力の全てを使い切った。

けれど奴には届かなかった。

情けない。

勝つと約束したのに。

情けない。

情けない。


──またか。しかもこんな時に。

どうしてこんなことを今思い出しているんだろう。




「ね、フラン。この戦いが終わったら何がしたい?」


「え?何で急に?」


「まーいいじゃない!あ、そうだ。色んな人を誘ってパーティーなんてどうかしら?私達の平和な未来を祝ってさ!」


「…何でそんなテンション高いの……でも、そうだね。それは楽しそう」


「やっぱり何か楽しみを作っておいた方が戦いのやる気も起きるじゃない?」


「まあ、それは確かに」


「よし!そうと決まれば決定ね!みんなに言っておかないと」


「まだ気が早いんじゃない?浮かれすぎてもダメだと思うけど」


「それぐらいが丁度いいのよ!」


「…ったく、相変わらず能天気なんだから……ふふっ」




結局パーティー、開けなかったなぁ……。

フランと久しぶりに、楽しくふざけ合えると思ったんだけどなぁ。

私が死んじゃったら、意味ないわよね。

あーあー、失敗したわ。

……でもまあ


あの子の為に死ねるのなら……少しは、嬉しいかしらね。

……任せる形になって、申し訳ないけど。

あの子なら、きっと──








衝突の煙が晴れた。


「……」


クロは、肘の少し上辺りまで右手を消しとばされていた。


「まさかここまでとはな、流石はレミリアだ。


……だが……オレの勝ちだな」


レミリアの腹部に、大穴が空いていた。

仰向けになって倒れている。

全く動く気配はなかった。


「今の攻撃は再生ができないようだな。いくら魔力を送っても何ともならん」


ちらりと右手を方を見て、そう呟いた。


「利き腕を失ったが…今の攻撃のおかげでさらにパワーアップしてしまったぞ。くくくっ」


クロのパワーが、さっきよりもさらに大きく上がっていた。


「これでオレに勝てるものはいなくなったわけだ。…さて、奴の血を頂くか。生き血で無いのが惜しいがな」


クロが笑みを浮かべる。そして、レミリアの方へ歩き始める。

こいしがレミリアの前に立ちはだかった。


「…そこを退いてもらおうか?こいし」


「悪いね、少し付き合ってもらうよ」


「イザベルはどうした。お前と戦っていたはずだが」


「…すぐにわかるよ」


「…何?」


直後。


バリッ


「!!」


ドオオオオオオンッ!


クロが立っていた場所に雷が落ちてくる。

クロはそれを素早く移動して躱している。


「っと……!今のは、魔法か。…お前達の中に魔法を使えたものはいないはずだが」


「真打登場って奴だよ」


こいしがいた空間が歪み、こいしの姿が消える。

そして、その直後。


「…!」


沢山の蝙蝠がレミリアの前に集まっていく。

その蝙蝠の中から現れたのは──




「……フランドール……スカーレット……」


「終わりにしよう……イザベル」




少し離れたところに、こいし、パチュリー、咲夜、霊夢、伸介の五人が現れた。


「……」


二人が睨み合っている。

()()()と、全く同じだった。

違うのは、イザベルの容姿と表情、そしてお互いの強さと場所。


「…漸くお出ましか、フラン様」


「また会ったね、クロ。…いや、イザベルって言った方がいいかな。もう一人だし」


「ああ、イザベルの方がいい。…なるほど、貴女の破壊の力でイザベルは消されたのだな…くくっ」


「いや、少し違うかな。…破壊の力でも完全には破壊しきれないみたい」


「ほう?極限まで高まった吸血鬼の力とは素晴らしいな。しかし、だとすると、霊夢か?貴女が破壊の力でイザベルを瀕死にして、霊夢に浄化でもしてもらったか」


「大当たり。やっぱり頭がいいね」


「お褒めにあずかり光栄だ」


「でも、貴女には破壊の力は通用しない。そして、私にも」


「そう、その通りだ。正々堂々勝負するしかないのさ」


「随分嬉しそうだね、イザベル」


「オレはこの体で本気の貴女と戦いたかった…それが今実現しようとしている」


「片手無いみたいだけど、お姉様にやられたの?」


「ああ、そうだ。だが気にすることはないぞ」


「……」


フランが振り返り、全身ズタボロのレミリアを見つめる。

レミリアの前で屈み、体に手を置いた。

魔法で全ての傷を治癒した。

しかし、レミリアが目を覚ますことはない。


フランがレミリアの右手を握る。

すると……。


「…!」


何か、レミリアの右手から自身の体に流れ込んでくるような感覚がした。

魔力だ。レミリアは死に際に、手に魔力を残していたようだ。

おそらくレミリアは、フランがこの場に来ている事に気が付いていたのだろう。だからこうして魔力を残しておいたのだ。


「…ありがとう、お姉様


あいつは必ず、私が倒す」


フランがゆっくりと立ち上がり、またクロの方へと歩き始める。


「……残念ながら、レミリアは既に死んでいるぞ」


「わかってるよ」


フランが帽子を取り、魔法で伸介のいる場所に転移させた。


「…くくっ、漸くだ…待ち侘びたぞ…!さあ、貴女の全力を見せてみろ!」


「言われなくても見せてあげるよ」


瞬間。


「…なっ──」


ドッ!


フランがクロの目の前に移動し、衝撃波でクロを吹き飛ばしていた。

クロが気付いた時には、既に吹き飛ばされていたのだ。

すぐに体勢を立て直す。


「ッ…!」


−何だ今のスピードは…しかも威力も高い…!


ドンッ!!


「!!」


フランが高速で移動し、クロの少し手前に着地した。


「ハアァ…!!」


フランから、紅色のオーラが発生している。

雷雲が発生し、雷が鳴り響く。

フランを中心に激しい風が巻き起こる。


「…!!」


「はっ!!」


フランに紅色の雷が降り注ぐ。


フランの姿が、変わっていた。

髪が逆立ち、全身から紅いオーラが放出され続けている。

そう、紅悪魔だった。


「さあ、決着をつけようか」


「…ふ、ふふふふっ……


はは!ははははははっ!素晴らしい!素晴らしいじゃないか!流石はフラン様だ!」


クロが心底楽しそうに笑っている。


「はははっ…!…ふーっ……」


クロが深呼吸をして、レーヴァテインを構える。


「この戦いの勝者が世界の運命を定める、か。なるほど、実に我等の戦いの場に相応しい。

東洋の文化では、戦う前にお互いの姓名を告げることは、相手を認めたという意味合いがあるそうだ」


クロが一度目を瞑る。

そして、真剣な表情になる。


「誇り高きエレヴァルト一族最後の生き残り、イザベル・エレヴァルト!


我が一族の悲願の為、そして己自身の理想の為!


その命、頂戴する!!」


フランがレーヴァテインを右手に出現させる。


「紅魔館主人の妹、フランドール・スカーレットが全力を以て応えよう!


我が最愛の家族の為、そして己を慕う者達の為!


汝をここで葬らん!!」


その言葉を聞くと、クロは嬉しそうに笑みを浮かべた。


ダッ


「「おおおおおおおおお!!」」


ガキィンッ!!


二人が同時に突撃していき、二つのレーヴァテインがぶつかり合う。


クロが凄まじいスピードで連続で斬りかかる。

フランはそれを全て防御している。


フランがクロの攻撃を避け、薙ぎ払いで反撃する。

クロはそれを屈んで躱し、切り上げで反撃する。

フランはそれをレーヴァテインで防ぎ、クロの剣を弾いて反撃する。


クロは少しだけ後退してそれを避けた。

突きでフランを攻撃する。

フランはクロの剣を弾いてそれを躱す。

クロは弾かれた勢いを利用して回転斬りを放った。


二人は、凄まじいスピードで、凄まじい攻防を繰り広げている。


ガキィンッ ガキィンッ!!ガキィンッ


「…速い……」


−速すぎて、目で追えない…!


二人のあまりの素早さに、パチュリーと咲夜は唖然としていた。

霊夢とこいしと伸介は真剣な表情で見つめている。


ガキィンッ!!


「隻腕だと思って甘くみるな!この程度の修羅場、飽きる程くぐっている!!」


クロの太刀筋を見切り、フランは飛んで後退した。


射撃ショット!!」


クロがそう叫ぶと、クロの前に四つの小さな魔法陣が展開され、そこから紅い魔法弾が発射された。


「はっ!」


フランは高く飛び上がり、街の建物の壁にレーヴァテインを刺して張り付いた。

紅い魔法弾がフランの張り付いた建物に当たる。


「…!逃がすか…!!」


崩れて倒れていく建物の上をクロが走って登っていく。

フランはレーヴァテインを抜き、迎撃態勢を取った。


ズバッ


「ッ…!!」


クロが超高速で切り抜けた。

フランはそれに反応できず少し切り傷を負ってしまう。

クロがすぐに振り返る。


「ハァッ!」


フランが建物に剣を突き刺す。

建物が崩壊し、クロはその下に落ちていった。

瓦礫を剣で薙ぎ払う。


「…ッ!?」


ヒュンッ


「おおっ!!」


ガキィンッ!!


「ぐっ…くっ…!!」


フランが急降下してきて、両手で斬りかかる。

クロは何とか抑える事が出来た。

すぐにフランの攻撃を弾く。フランは勢いを利用して空中で回転斬りを放つが、クロはそれを宙返りで避け、空中で剣を手放して手で着地する。

その逆立ちした状態のまま右足で蹴り飛ばす。


すぐに体勢を立て直し、地面に落ちた剣を右足で蹴り上げて掴む。

そしてフランに突撃していく。


「せいッ!!」


「なッ!?」


フランは吹き飛ばされながら衝撃波を放ち、クロを吹き飛ばした。

街の建物に打ち付けられる。


「チィッ…!ハァッ!!」


すぐに体勢を立て直し、また魔法陣を展開させて五発の魔法弾を放った。


フランはクロに向かっていきながら魔法弾を叩き落としている。


「イヤァッ!!」


フランがレーヴァテインに魔力を送り、クロに向けて振るう。

振るった場所が爆発した。

クロはそれをフランの反対側に勢いよく飛んで避けていた。


「嘘…!いくら片腕だけとは言え、レミィでも倒せなかった上に、さっきレミィの攻撃を受けてさらにパワーアップしたクロと互角…!?」


「クロの奴が利き腕じゃないのもあるだろうが、それでもあの動きは大したもんだな。ありゃあもはや幻想郷の鬼の領域だぞ」


「…それだけじゃない」


こいしが言う。


「え?」


「レミリアは願ったんだ。フランに自身の思いを…欠片を受け取って欲しいと。


レミリアは死んでなんかいなかった。…今もフランと一緒に、戦ってくれてるんだ」


フランとクロの激戦は尚続いている。しかし、確かにレミリアの魔力をフランの中から感じるのだ。


その言葉を聞いた咲夜の目尻に、涙が込み上げてきた。

そして、フランとレミリアの姿が、重なって見えた──。


「…〜ッ!!


頑張ってください、お嬢様ぁぁぁぁ!!!」


その叫びに呼応するように、フランが魔力を爆発させる。


「オオオオオオオ!!!」


クロは魔法陣を大量に展開し、剣の形をした魔法弾を大量に飛ばす。



フランは剣でそれを弾きつつ、クロに突撃していく。

前方を覆う程の大量の魔法弾を、フランは一瞬で全て斬り伏せた。

超高速で移動して爆発を切り抜け、その場でジャンプし、勢いよく着地して地面を叩き割る。その衝撃で地面から飛び出た大岩が残る魔法弾を防御した。

その大岩をクロに向かって蹴り飛ばす。

フランはこれを一瞬の内にやってのけてしまった。


これもまたほんの一瞬の出来事。

クロが剣を斜め前方の魔法陣向かってに投げ、懐から銀のナイフを数本取り出し、飛んできた岩をジャンプで避け、宙返りしながらナイフを一本だけ岩に向けて投げる。

さらにバラバラに展開した魔法陣に向けて残りのナイフを全て投げ飛ばす。魔法陣はそのナイフを弾く。

ナイフが当たった魔法陣からナイフ型の魔法弾が発射され、それがフランに向かっていく。

クロは弾いたナイフをフランに突撃しつつ回収し、走りながらフランに向けて投げている。

ナイフと魔法弾が突き刺さった岩が爆発し、その爆風を利用して超高速で地面を滑るようにクロが接近する。


あまりの二人のスピードに、その場にいた全員が驚いた。


フランは飛んでくる魔法弾やナイフを剣で弾く。

クロがもう目の前にまで接近していた。

クロの剣が高速で飛んできて、フランはそれを剣で弾く。

先程クロが魔法陣に設置した剣が飛んできたのだ。

クロは弾かれた剣をジャンプして空中で取り、そのまま攻撃に移る。


「せいっ!!」


ガキィンッ!ガキィンッ ガキィンッ!


クロの頭上からの剣撃を全て防ぐ。

クロは回転しながらフランの背後に降り立ち、すぐにまた攻撃する。


「ふっ!!」


フランは屈んでそれを躱し、切り上げで攻撃する。


ガキィンッ


クロはそれを剣で防御する。剣を弾いて連続で斬りかかる。


「せやっ!!」


キィンッ ガキィンッ!ガキィン


ダンッ


「!!」


「おおっ!!」


フランはそれを全て防ぎ、その場で飛び上がり急降下してクロに勢いよく剣を振るう。

クロはそれを素早く右に逸れて躱し、フランの首目掛けて剣を振るう。

フランはそれを剣で防ぎ、連続でクロに斬りかかる。

クロもまたそれを防ぎ、反撃する。


辺りを縦横無尽に駆け回り激しい攻防を繰り広げる二人。

こいし達は、ただただ見つめることしかできない。


今二人は、お互いの意志を、誇りをぶつけ合っている。


かたや吸血鬼としての、レミリア・スカーレットの妹としての誇り。そしてレミリアを殺された事への怒り。


かたや自身の両親への恩義、エレヴァルト一族としての誇り。そして自身の思い描く理想。


二つの想いが、ぶつかり合っている。


この決戦の邪魔をしてはいけない。

その場にいる誰もが理解していた。

例えどんな結末になろうと、最後の最後までこの勝負は見届けなければならないと。



「おおおおおっ!!」


「はああああっ!!」


ガキィンッ


剣の交わる音が絶えず聞こえる。

二人の戦いは激しさを増していく。


「せいっ!!」


「むんっ!!」


ガキィンッ! キィンッガキィンッ


相手の振るう剣を防ぎ、反撃する。

それを二人共永遠に繰り返している。



「ふっ!」


フランの振るった剣がクロの頬を捉えた。


「ッ!!」


「やぁっ!!」


追撃してきたところを巧く躱し、剣の柄でフランの腹部を殴る。


「ぐっ…!」


「おぉっ!!」


「!?」


ガキィンッ


フランが少し後退したところに、クロが一気に突撃して斬りかかる。

フランはギリギリのところでそれを防いだ。

クロの剣を弾き、クロの腹部めがけて腕の無い左側から剣を振るう。

クロはそれを何とか防ぐ。すぐに剣を弾き、フランに向けて剣を振るった。


ガッ


「なっ…!」


フランがクロの左手を掴んだ。そして、右足で足払いをする。

クロが体勢を崩した。

そして、フランの右手に紅い稲妻のようなものが迸る。


「ハァッ!!」


ドゴォッ!!


「ガッ!!」


クロの顔を思い切り殴る。

そのままクロを殴り飛ばした。


クロが咄嗟に地面に剣を刺して勢いを弱め、すぐに体勢を立て直した。


「でやぁっ!!」


「!!」


ガキィンッ!!


フランがさらに追撃してくる。

クロは地面からすぐに剣を抜いてそれを受け止めた。


「…ッ…レミリアに、フランドール…!オレの元居た世界で既に倒したはずの主人あるじ達が最後の敵とは…!


これが"運命"という奴か!!」


ガキィンッ!


「!!」


クロがフランの剣を弾き、フランに向けて剣を振るう。


「うおぉっ!!」


「なにッ!?」


ズバッ


しかし弾かれた勢いを利用して、フランが素早く切り返した。


「ぐっ!!」


クロの右肩に浅い切り傷ができた。


「らぁっ!!」


またフランが攻撃してくる。クロは後退して避けた。

その太刀筋には冷静さはなく、怒りが見て取れた。


「怒りか!フランドール!!


姉を殺された事への怒りか!!!」


クロがフランに向かっていく。


「ああ、私はお前が許せない…!


必ず…必ず私がここで殺す!!!」


ガキィィンッ!!


二人の剣が激しくぶつかり合った。

迫合いはフランが勝ち、クロは押し飛ばされる。


「…オレの最も嫌う感情で…オレの理想の前に立ちはだかるだと…?


ふざけるな!!!」


クロが怒りを露わにしてフランを睨みつける。

二人が剣…レーヴァテインに大量の魔力を送り込む。


クロの方には、黒い稲妻と、クロが右手で使っていた刃のようなオーラをレーヴァテインが纏う。


フランの方には、紅い稲妻と、炎がレーヴァテインを纏う。そして、右手で逆手に持っている。

さらに、左手から何かが出現した。


「…あれは……!


レミリアの、武器だ」


グングニルが、フランの左手に出現していた。

二つの武器を合わせると、お互いの原形が崩れていく。

武器が合わさり、また新しい武器が生まれようとしていた。


「な、何あれ!?」


「…レミリアとフランの合体技、ってところだろうよ。

神剣レーヴァテイン神槍グングニル……この二つの神器が一つになる時、そこにまた新たな神話が始まる。

其は終末を告げるもの。其は神々の運命を告げるもの。

そう、あれこそは──」


「『ラグナロク』!!!」


薙刀のような赤紫色の武器が、フランの右手に握られていた。


「…やはり最後は姉妹の力で来るか…!!だが!!」


「例え貴女であろうとも!!」

「あんたにだけは絶対に!!」


「オレの理想ゆめの邪魔は!!」

「私達の幸せ(ゆめ)の邪魔は!!」


「「させるものかァァァァァ!!!!」」


二人が同時に突撃していく。


ドッ


「うおおおおおおおおお!!!」


「ウオオオオオオオオオ!!!」


ラグナロクとレーヴァテインがぶつかり合った瞬間、辺りは凄まじい衝撃と光に包まれる。


「うわっ!」


「ぐっ…!」


「このあまりに膨大なエネルギー同士の衝突…!まずいわよ!」


「…フラン…!


負けるなァー!!フラァーーン!!」


まるで、その声に呼応するかのように。

フランの魔力放出量が、さらに上がった。


「ああああああああああ!!」


「何ッ!?」


クロのレーヴァテインを纏っていた、刃のようなオーラが砕けた。


しかし次の瞬間──。


バキィッ


「…!!?」


フランの持つラグナロクが、折れた。

ラグナロクの放つ強大な魔力が、フランの凄まじい魔力とぶつかり合ってしまったのだ。

本来ぶつかり合うことはないのだが、今回はレミリアの魔力が混ざってしまっているのが原因なのだろう。


「…!」


クロは勝ち誇るように笑みを浮かべる。


ドッ





光が晴れ、二人の姿が見え始める。


「…あぁっ…!!」


「!!」


フランが、クロのレーヴァテインに胸部を貫かれている。


「フラン!!」


「くそっ…!」


クロは満足そうに笑みを浮かべて立っている。


「ガッ…ッ…」


「…オレの勝ちだな」


クロがレーヴァテインを抜こうとする。







その時。


ドオォッ


「…!?」


フランから魔力が大量に放出され、二人を包む。

クロは、レーヴァテインと引き抜こうとした左手首と胸ぐらを掴まれ、動けないでいた。


「…まさか…これは…!?」


クロは魔力の動きで何をしようとしているのかをすぐに理解した。


「油断、したね…!!」


「魔力による爆発波だと…!?今のお前のどこにそんな力がッ…!!」


「私の力じゃない…」


「何!?」


そういうフランの顔は、とても誇らしげだった。


「お姉様が私に託してくれた……最後の欠片だよ」


「…ッ!!」


「これで終わりだよ、イザベル。…正真正銘、最後の一手って奴だね」


「…!!オレの理想は…エレヴァルトの悲願は正しい!よく考えろ!!考え直すんだ!!


貴女なら理解できるはずだ!!人間は不要なんだ!!かつての貴女なら、オレに同調してくれたはずだ!!貴女は人間の醜さを知っている!愚かさを識っている!!

奴等は自然を…世界を穢す愚かな連中だ!!ならば、消す方がいいに決まっているだろう!?」


「確かに人間は醜い生き物だよ。我欲が強すぎるのは良くないと思う。けど……


その醜さがあるからこそ、人は美しいものに魅かれるんだ」


「…!!?」


「多くの過ちを犯して、反省して…人は美しく成長していく。私は人が作るその紋様を見てみたいと思った。その、美しい成長の物語を、もっと見たいと思ったんだ」


穏やかな表情でそういうと、フランはクロの頭に手を置いた。


「貴女のその道は間違っていたけれど……その根底にある願いはとても美しいものだったと思うよ。…少し、過激すぎたんだよ。イザベルは。


もっと色んなものを見て、学んで……人間の悪い部分だけじゃなく、良い部分も見ることが出来たなら……きっと貴女は、とても優しい人になったんだろうね」


「…フラン…様…」


「もうやり直せないかもしれないけど……こんな事を言っても、もう遅いのかもしれないけど……


人間ってのも、まだまだ捨てたもんじゃないよ」



その言葉の後すぐに、激しい光が辺りを包んだ──。


常にどこか余裕を見せていた敵が全力を出さざるを得ない状況に陥って、感情を露わにして戦ってるシーンっていいですよね


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