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東方学園の怪談話  作者: アブナ
絶望の未来篇
40/82

未来激戦

お久しぶりです。

この頃忙しくて更新ができませんでした笑





「クロとイザベルはどこに?」


「こっちに向かってきてるわ。何もせずともやってくる」


「…二人とも、わかってるわね?イザベルは任せるわ」


「ええ。…封印はきっと解かれているだろうしね」


「霊夢も負けないでよ。あれだけ自信たっぷりに言ったんだから」


「ええ、もちろんよ」


程なくしてクロとイザベルが現れた。

今は街の建物の上からこちらを見下ろしている。


「懲りない連中だな。またやられに来たのか?」


嘲笑うようにクロが言う。


「黙れ!今度は前のようにはいかないぞ!」


「その台詞を聞くのはこれで二度目ですね、お嬢様。では、それを証明してもらいましょうか?」


「…その前に一つ」


こいしがクロの方を見ながら言う。


「クロの正体を教えて」


「…私の正体?まさか、分からないはずはないだろう」


クロは薄ら笑いを浮かべながら言う。


「…イザベルかと思ってたけど、あんたの横にはイザベルがいるからね。別人ということになるわ。

となると、誰が正体かはわからない。別に正体を教えることは不利になる事ではないし、いいでしょう?」


イザベルがクロの方を横目で見る。

クロは相変わらず笑みを浮かべている。


「…どうする?」


「私は構わないが、お前はどうだ」


「…いいでしょう。話してあげなさい」


「ふふっ、よかろう」


クロが左胸に自身の右手を当てる。


「イザベルが横にいるから、私の正体は別人であると、そう言っていたな。


だがお前たちは見たはずだ。時間を超え、お前たちの世界にやってきた私をな」


「…!!まさか…!」


「え!?」


こいしが何かに気付いたのか、とても驚いた表情をする。


「古明地こいしは勘付いたようだな。そうだな…簡単に言うなら……


パラレルワールド……可能性の時間軸……即ちあるかもしれなかった『もしもの世界』から自分を連れてきたのさ」


「じゃあ…別の世界の、自分を…!?」


「そういう事だ。…さて、事の経緯を話すなら何処からがいいかな」


クロがイザベルの方を向く。


「そうですね……では、貴女がフランドールの体を乗っ取り復活した辺りからでどうでしょう?」


「ふふっ、そうだな。そこから話すとしようか」


「…その言い振りから、やっぱりあんたはイザベルなのね」


「そうだと言っているだろう。『自分を連れてきた』と言ったはずだ。さて…


あれは、今から一年程前の話だ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その時は既に、極鎖には私の魔力が充分に満ち、いつでもフランドールの体を乗っ取る事が出来る状態となっていた。


私は絶好のチャンスを待ち続けた。周りに自身の障害となり得る者を一人でも多く消せるチャンスを。


そして、その時は来た。



「っかーー負けたーー!フランゲーム上手すぎ!」


「ふふん、伊達に引き篭もってないもんねー!」


「ここまで虚しい自慢も初めて聞いたかも……はは」


フランドールが紅魔館の自室で封獣ぬえ、古明地こいしと共に遊んでいる時だ。

二人とも、フランドール絡みとなれば必ず駆けつけてくる邪魔者どもだった。

そして、何より古明地こいし。

こいつは無意識の能力でいつのまにか近くにいる可能性もある。事実、勝手にフランドールの部屋に入って来ていたことがあるからだ。

何故私がそれを知っているかというと、極鎖に魔力が満ちた時点で、イザベルの意識が覚醒するからだ。


「さーて、次は何する?スマ◯ラ?◯リカー?」


「趣旨を変えてホラゲーでもする?」


「あ、いいかも!」


「よーし、それじゃあ私オススメのホラゲーを出してあげよう!」


フランドールが動こうとする。

───今だ。


「…うっ…!?」


胸を押さえ、その場に蹲る。


−えっ…何、これ、急に…


フランドールの心情が私にも伝わってくる。


−まさか…これって…!?…どうして、今…!?魔力の高まりは止まっていたから、しばらくは大丈夫だと思ったのに…!!


成る程、油断していたのはそういう事か。

しかし残念、魔力の高まりが止まったのは限界点まで達したからだ。


−!?まさか…この声は…!


そう、私ですよフラン様。随分お久しぶりですね。

突然ですが、この体を貰い受けます。


−そんな…全く抗えない!?


当然でしょう。一体何年魔力を貯め続けたと思っているのです?


「…フラン?どうかしたの?」


「…?」


ぬえとこいしが怪訝な目で見ている。

心配したのか、両サイドに座っている。

フランドールが必死になって声を出そうとするが、私は魔力でそれを押さえつけた。


−逃げて!!お願い、二人共……どうして!?声が出せない…!


さようなら、フランドール・スカーレット。貴女は本当に素晴らしいお方だった。


−嫌…!!嫌ぁあぁあああ!!


フランドールの体は難なく乗っ取る事ができた。

フランドールの意識は完全に消え去った。


もう、"フランドール・スカーレット"という存在はどこにも居ない。

……いいや。


私が…オレがフランドールだ。


「…ごめん、急に胸が苦しくなって…」


「…?」


こいしはどうやら、雰囲気が変わっているのに気付いている様子だ。

もう少しふざけてやろうと思ったが、やめた方が良さそうだ。


「大丈夫?レミリアか咲夜さんか伸介か…まあ誰でもいっか。誰か呼んでこようか?」


「いいや」


瞬間。

何という力だろうか。

こんなにも簡単に、体を貫く事ができる。


「…え?」


「…なっ…!?」


やはりこいしは警戒していたようだな。

フランドールが呪いを掛けられていたのにも薄々気付いていたのだろう。

両手を交差させて防いでいたが、それをも突き破って心臓へ一直線だ。


「その必要はない」


二人の心臓を掴んだまま手を引っこ抜き、その心臓を握り潰す。

ああ、なんと清々しい。

これほどまでの力を手に入れられる日が来るなんて。


「…フラ、ン…?うぉえっ」


ぬえが口から大量の血を吐いて倒れた。


「…お前、フランに、何を…!ごふっ」


こいしも、同様に倒れる。


「……くくくく…!!」


抑えろ、抑えろ。

まだ高笑いを上げる時ではない。


「…いよいよだ。この日この時より、この世界は理想の世界へと姿を変える。


くく、くくくくくっ…!」



その後は、破壊の力を試すついでにこいしとぬえの死体を片付け、夜になるまで待った。


途中、現在のメイド長である咲夜が様子を見にきたが、もう二人は帰ったと誤魔化した。


そしていよいよ、夜になった。

私は伸介を不意打ちで殺し、伸介の能力を呪術で一つの指輪に封じ込めた。

これほど便利な能力を活用しない手はない。


後は目一杯暴れまわった。

至高の時間だった。

徐々に体も馴染み、フランドールの力も引き出せるようになってきた。

まだ完璧ではないが、私の呪術や魔法と組み合わせればきっととんでもない魔法や呪術を使えるはずだ。


咲夜はレミリアのせいで逃してしまったが、紅魔館は壊滅した。


もうここに用はない。

あとは破壊の力を使って厄介な連中を消していくだけだ。


事は予想以上に上手くいった。

まさかあの八雲紫さえ仕留められるとは思わなかったのだ。

鬼の連中も排除できたし、私が思う厄介な連中はほとんど消せた。

唯一襲っていないところが迷いの竹林だ。

こちらはおそらく私では攻略は不可能だろう。

破壊の力があれば、あるいは……。

しかし上手く行くかもわからない。

そこで私は、味方を呼び込むことにした。


伸介の指輪を使い、"イザベルがフランドールと出会わない時空"へと渡ったのだ。






「ご主人様、お茶をお持ちしました」


イザベルが呼び掛けるが、中から反応はない。

不思議に思ったイザベルが、ドアノブに手を掛け、ドアを開いた。


「ご主人様?…!?」


そこには、邪悪な笑みを浮かべた金髪の少女が、右手に刃のようなオーラを纏わせて立っていた。

手前にはレオールが倒れている。

頭と胸部を深く抉られているのがわかった。


「…ごっ…!


ご主人様…!」


イザベルが倒れているレオールの手前まで走っていく。

しかし、少女がいるためにそこで立ち止まる。

ここからでもわかった。

レオールは、完全に死んでいる。


「お前も…こうしたかったんだろう?」


「…!!」


−どうしてそれを──。


イザベルは、吸血鬼の力を手に入れるためにいずれはレオールを暗殺するつもりだった。

しかし、吸血鬼相手となると一筋縄ではいかない。

そこで、色々と策を練っていた矢先にだ。


目の前の少女が手首を少し切り、血を垂らさせた。

そして、ティーカップにその血を注ぐと、イザベルへと差し出す。


「これで、お前も吸血鬼だ…」


「…!」


イザベルは状況が飲み込めず、困惑していた。

咄嗟に出てきた疑問を相手に投げかける。


「…誰だ…お前は……?」


少女は相変わらず笑みを浮かべたまま。

少女と言っても、自分より少し低いほどだが。


「私はお前だ」


「…?お前は、私…?」


意味が分からず、さらに困惑する。


「別の世界から理想を求めてやってきた。…我が一族の無念を晴らすために」


その言葉を聞いて確信した。


−こいつは、間違いなく自分だ。


「お前が必要なんだ…」


少女が手を差し伸べる。


「そうか…成功したのだな…」


「ああ、その通りだ」


イザベルは迷いなく血を飲み干した。

そして、ティーカップを机に起き、差し伸べられた手を握る。

二人は、とても邪悪な笑みを浮かべていた。


「「共に正義を」」


二人が抱き合った。

お互いの理想を確かめ合うように、これから始まる理想の世界を確信するかのように。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「──かくして私は、フランドールの血を飲んで吸血鬼となった……」


「そして、わざと殺さずに捕らえていた人間の血を我らで全て飲み干した」


「…!」


「それにより吸血鬼としての力を極限まで高めることができたのさ」


レミリア達は、その説明を聞いて驚きと怒りを隠せなかった。


「実に素晴らしい叫びだったぞ?あの時のフランドールの絶叫は……おっと、姉も知らない妹の姿を知ってしまったな…くくくっ」


「…貴様ら…!!」


霊夢が宙に浮いて二人の正面まで移動する。


「話は終わり。クロ、あんたの相手はこの私よ」


「…なんだ、てっきりレミリアがこちらに来ると思ったんだがな。私に手も足もでらずにやられたのを忘れたか?」


笑みを浮かべ、クロがそう言った。

完全に霊夢のことを舐めきっている。


「あんたこそ、初見殺しで私を倒して安心しきった顔をしてたのを忘れたのかしら?そうでもしないと倒せないものね」


霊夢も笑みを浮かべて言い返す。

その言葉にクロは表情を変えることはなかった。

変わらず怪しい笑みを浮かべている。


「…オレを倒したいだろう?幻想郷をこんなにされてしまってはお前も黙っていられないだろうなぁ」


「はん、私があんたを倒したいのは単にムカつくからよ!正直幻想郷云々よりそっちの方が重要だわ!」


「博麗の巫女らしからぬ事を…くくっ、まあ、貴様らしいと言えば貴様らしい。


さあ、始めようか…!」


ドオオオオンッ!!


クロが紅悪魔に変身した。


「ええ!」


ドンッ!


霊夢も白いオーラを発生させる。

二人が突撃していき、クロの刃と霊夢のお祓い棒がぶつかり合う。


「!」


霊夢がクロの刃を弾き、お祓い棒でクロを攻撃する。

クロはそれを左手で掴んで止める。しかし霊夢の力が強く、後ろに後退していく。


「…!」


−こいつ、この短い間でここまで力を上げるとは…!


「オラァ!」


霊夢が左手でクロに殴りかかる。

クロは刃でそれを弾き、右足で腹部を蹴って霊夢を蹴り飛ばした。


「ぐっ!」


「伊達に最強と謳われているわけではないということか。


ふん、面白い…!さあ、オレを倒してみせろ!」


「ふん、いつまでそうやって余裕でいられるかしらね!」


その様子を見ていたイザベルが、レミリア達の方へと降り立った。


「…では、私は貴女達の相手というわけですね」


「そういうことね。…こいし、一旦下がりなさい。私が行くわ」


「はいよ」


こいしが無意識能力でその場から消えた。


「二人では掛かって来ないのですね」


「あんたなんか一人で充分よ」


「さて、それはどうでしょうね?もう封印術は聞きませんよ」


「ええ、でしょうね」


「…?」


レミリアの不敵な笑みに、イザベルは妙な感覚を覚える。


「何を考えている?」


「いいものを見せてあげるわ」


「?」


レミリアから紅いオーラが発生する。

それはどんどん大きさを増していく。

そこでイザベルは気が付いた。


「…まさか…それは…!?」


「ハアアアッ!!」


ドオオオオオオンッ!!


紅い雷がレミリアに落ちる。

この光景を、イザベルはよく知っている。


「紅い悪魔、ですって?よくそんな風に名乗れたものだわ。


この私を差し置いて」






レミリアの姿が大きく変わっていた。

そう、紅悪魔に変身したのだ。

髪は逆立ち、色は少し紅みを帯びている。

しかし、真紅というわけではない。


「貴様もその姿に…!?」


「ふん、あいつがなれて私がなれないはずがないでしょう?」


「…!」


「今は腸が煮えくり返ってるからね…気をつけなさいよ」




「!レミリアの奴、あの姿…!」


「ほう、奴もなれたか」


クロはあまり驚いていなかった。

むしろ、楽しそうに笑っている。


「…あんまり驚いてないわね。予想はしてたのかしら」


「まあそんなところだ。オレがなれるのだから奴がなれないはずがない」


「へえ、意外と謙虚なのね」


「ふん、そんなことはどうでもいい。さあ、まだまだ行くぞ!」


「のぞむところ!」


クロが刃を振るう。

霊夢はそれを避け、お祓い棒で反撃する。


ガッ


「!」


クロはそれを左手で掴んで止める。

そして刃を霊夢の顔へと振るった。


「ていっ!」


「!」


霊夢はそれを目力だけで弾く。

そしてクロの腹部に右足による蹴りをいれて吹き飛ばす。


クロはすぐに体勢を立て直す。


「目から霊力を飛ばしたか。面白いことをする」


「あんた、自分の方が強いとか思ってるんでしょうけど」


「!」


霊夢が無表情で言う。


「はっきり言って、私より弱いわよ」


「…面白い」


クロが霊夢に突撃していく。

霊夢もクロに突撃していき、お互いの武器が激しくぶつかり合った。


「ふん!」


「!」


迫合いはクロの勝利。

霊夢はすぐに後退し、弾幕を放つ。

クロはその悉くを切り裂き、霊夢に突撃していく。


霊夢はお祓い棒に大量の霊力を込め、クロに振るう。

クロは刃でそれを防ぎ、お祓い棒を弾いて反撃する。

防いでは反撃、防いでは反撃の繰り返し。

二人はお互い一歩も引かず、激しい攻防が繰り広げられている。


「ぐっ…!」


少しずつ、霊夢が押され始めた。

クロの攻撃は撃てば撃つ程、重さ、鋭さ、素早さが上がっていき、抑えきれなくなってきているのだ。

徐々に反撃の隙さえ無くなってきている。


ズバッ


「ぐっ!」


頬にクロの刃を掠めた。

霊夢は堪らず後退してしまう。


「退いたな」


クロは笑みを浮かべて霊夢に向けて紅い光弾を放つ。


「おっと!」


霊夢は横に逸れてそれを躱す。

瞬間、クロが高速で霊夢に斬りかかる。


何とか反応できたが、一瞬でも遅ければ首を撥ねられていた。


「ぐっ…!」


「くくっ、これも反応してくるとは…!いいぞ、お前はオレが本気を出すに値する相手だ」


クロは楽しそうに笑みを浮かべている。


「…ふんっ、そうやって余裕ぶっていられるのも今のうちよ…!」


「それはこちらの台詞だな」


「!?」


クロが刃を一瞬引っ込める。

霊夢がクロに思い切りお祓い棒を振るう形になってしまった。クロはそれをしゃがんで避ける。

突然のことに反応できず霊夢は体勢を崩した。

その隙にクロは霊夢の腹部に右足で強烈な膝蹴りを入れた。


「ぐはっ!!」


続けて左足で霊夢を横へ蹴り飛ばす。


「受けてみろ!」


クロが回転しながら猛スピードで霊夢の目の前まで移動し、刃を霊夢に振るった。

霊夢は霊力を込めたお祓い棒を盾にするが、一瞬食い止めただけでお祓い棒ごと右肩から胸部にかけて切り裂かれた。クロの攻撃による凄まじい衝撃で、そのまま地面に叩きつけられてしまう。


「ガハァッ…!!」


血を大量に吐き出した。

肩の傷は致命傷ではないが、それでも大きなダメージだ。

それに加え、勢いよく地面に叩きつけられた。

ダメージはとても大きかった。


クロがその様子を空から嘲笑うように眺めている。


「…ふっ」


「ぐっ…!」


−こいつ、ここまで…!


想像以上の強さに霊夢は驚いた。

もしかすると、クロは自分を不意打ちで無くとも倒せたのかもしれない。


「どうした?先程までの勢いは何処へ行った」


クロが煽るように言うと、右手から紅い光弾を放つ。


「わっ…!」


咄嗟に後ろに飛び、何とか避けることができた。

しかし直後、クロが霊夢の真後ろに現れ、横腹に蹴りを入れられる。


「あがっ…!!」


「ふっ…!」


さらに追撃で肘打ちを入れられ、左手で殴り飛ばされた。


「あっ…がはっ…ぐっ…!!」


如何に霊力で補強しているとは言え、吸血鬼の力で殴られては堪らない。

息がしにくい。どうやら肋骨が折れて肺に突き刺さっているようだ。


「…ふん、本格的に死に体だな。力を出すどころかもはや呼吸すらままならないだろう」


クロがゆっくりと歩いて近付いてくる。

霊夢は、動くことが出来ずにその場で蹲っている。


「終わりだな、博麗の巫女。少しばかり楽しめたぞ」


クロの右手から紅い光が放たれる。

おそらく先の光弾を放つつもりなのだろう。

今の霊夢にそれを避ける体力は残っていない。


「…くそっ…」


ドオオオオオオンッ!


光弾は霊夢に直撃した。





「…呆気なかったな」


さて、とクロが去っていく。


「イザベルの奴の援護にでも行ってやるか。紅悪魔状態のレミリアに勝てるはずもないだろうしな…」


その時、クロは何者かの気配を感じる。


「…?」(今一瞬、何か…)


「どこに行く気よ」


霊夢の声が聞こえ、クロは立ち止まる。


「…何?」


クロが振り返ると、虹色のオーラを放つ霊夢が悠然と立っていた。


「…死に体だった筈だが」


怪訝な目で霊夢を見つめる。

その直後、霊夢がその場から消えた。


「!」


クロの背後に移動していたのだ。


ドガァッ!


「ッ!」


左足による飛び蹴りでクロに攻撃する。

クロは右腕でそれを防ぐ。


建物の方へと吹っ飛ばされていった。


「…なんだ?先程までとは力が……」


ドガァッ


「ッ!?」


クロが起き上がった直後、霊夢が真横に現れクロを殴り飛ばす。

さらに吹っ飛んで行くクロよりも早く回り込み、右足で空へ蹴り上げようとする。

クロはそれを身を翻して躱し、霊夢に刃を振るった。


ブンッ


「なにッ!?」


しかし、霊夢に刃は当たらなかった。

霊夢の体を、刃はすり抜けていったのだ。

今度こそクロは蹴りあげられる。


「…!!」


「終わりよ」


凄まじい数の札が高速でクロに飛んでいく。

クロは刃でそれを斬り伏せるが、数が多すぎて防ぎきれなかった。


ドオオオオオオンッ!!


札がクロに当たり、大爆発が起きる。


「ふぅっ…」


−夢想天生まで使う羽目になるなんてね。







「なっ…!」(博麗の巫女に押されているだと!?)


イザベルがレミリアと対峙しつつ横目でクロの様子を見つめている。


「よそ見してる場合かしらぁ!?」


「!?」


イザベルの腹部に強烈なパンチを入れ、踵落としで叩き落とす。


「…しかし、霊夢にあそこまで本気を出させるなんてクロも大したものね」


−夢想天生を使う霊夢は久しぶりに見たわ。


「けどあれで事実上の無敵。クロの攻撃は届かないわね」


イザベルが瓦礫の中からゆっくりと出てくる。


「…奴は何をした?まさかあいつが押されるとは」


「チートよ。あんなの反則って言うしかないわ」


「…何?」


「夢想天生。


あらゆる事象、物事から"宙に浮く"事で、霊夢に干渉する事が出来なくなるのよ」


「…宙に浮く、だと?」


「そう、霊夢の生まれ持った能力があるからこそ成し得る究極奥義みたいなものね。あれを遊び以外で使われたら勝ち目ないもの」


イザベルが霊夢の方を見る。

虹色のオーラが周りに漂い、先程までとは明らかに雰囲気が違うのが見て取れた。


「…何か弱点はないのか」


「あったとしても教えるわけないけど……残念なことに今の所はないわね。だからこそあいつ、最強って言われてるんだし」


「…!」


「ま、あっちはあっちでいいわ。あんたを倒す方法を思い付いたから、やってみようかしらね」


「何?」


レミリアが手にグングニルを出現させた。


「不死身と言っても吸血鬼の再生には限度があるはずよ。…あんたも吸血鬼になっていたのね」


「…ふん」


「木っ端微塵になれば、再生なんてできないわよ」


「…さて、それはどうかな」


イザベルが怪しい笑みを浮かべる。


「……」


−ギリギリで避けるつもりね……足に魔力が集束している。


イザベルは依然として立ったままだが、足に魔力を集束させている。


「…どうしたのです?撃っては来ないのですか」


「ふん、普通に撃って当たるわけないでしょ」


「おや、私は動きませんよ?」


「どうだかね!!」


瞬間、レミリアがグングニルを全力で投げる。


「!」


イザベルが驚きの表情を見せる。

突然のことなので反応できていない。


「しまっ…!!」


ドンッ!!


「よしっ!!」(当たった!)


ドオオオオオオオオオンッ!!


グングニルはイザベルに直撃した。

グングニルから大爆発が起こる。



グングニルがレミリアの手元に帰ってくる。


爆煙が晴れ、辺りが見えるようになった。

イザベルの姿は見当たらない。

どうやら、木っ端微塵に消し飛んだようだ。


「…ふん、油断しすぎね、やっぱり」


−さて、霊夢の援護に……。


その時。


コツ、コツ、コツ、コツ……


「…!?」


背後から足音が聞こえてくる。

思わずレミリアが振り返る。


「驚きましたよ。貴女が不意打ちとは」


イザベルが平然と歩いてくる。

傷一つ付いていない。


「…馬鹿な…たしかに…!」


「ええ、当たりましたよ。貴女の攻撃は」


「なっ…!」


イザベルが左手で自身の胸を叩く。


「素晴らしきは吸血鬼の再生力。例え粉微塵に吹き飛ぼうとも、再生可能なのですよ」


「…そんな馬鹿な…!ありえない!」


「言ったでしょう。吸血鬼の力を極限まで高めることができた、と。本来吸血鬼は細胞を原子レベルで再生が出来るようですよ」


「…!!」


「さて、どうします?文字通り私は不死身。封印以外で倒せるでしょうか?」


「……ふざけてるわね…全く…!」






「…あいつ、あそこまで再生力があるとは」


二人の戦闘の様子を、霊夢は遠目から見ていた。


「…さて、私もそろそろレミリアの援護に……」


瞬間、背後から紅い光弾が飛んでくる。


「ッ!!」


霊夢はそれをギリギリで躱す。


「あっぶな…!今は夢想天生解いてるから当たるのよね…」


−というか、あいつまだ…!


霊夢の前方に蝙蝠が集まっていき、そこからクロが現れた。

笑みを浮かべながら、ゆっくりと霊夢の方へ歩いてきている。


「まさか貴様にこれほどまでの力があったとは」


口元を右手の親指で拭う。


「養分にはもってこいだ」


「…ちっ…!しぶとい奴」


「さて、それはどちらの事かな?」


「どっちもよ!」


霊夢が再び夢想天生を発動させ、突撃していく。

右手に封魔針を持ち、高速でクロに振るう。


「それを発動すると回復でもするのか?」


クロはそれを軽々と避ける。


「…!」(こいつ、喋りながら…!)


「…いや、そういうわけではなさそうだな。となるとこいしの奴か?」


「!」


霊夢が一瞬動きを止めたのを見て、クロは確信した。


「なるほど、大方こいしが回復系の魔道書でも持っているのだろうな。だがそれには回数に制限があるはずだ」


クロが霊夢の攻撃を躱しながら、辺りを見渡している。


「…ふん、目に見える範囲にはいないか」


「よそ見してる場合かしら!?」


「そんなセリフを吐くのなら攻撃を当ててみせろ」


クロが霊夢の腹部に蹴りを放つ。

しかし、またすり抜けてしまった。


「…!」


「無駄よ!」


霊夢は攻撃をやめ、今度は弾幕を放つ。

無数の虹色の弾幕がクロに向かっていく。


「ふっ!」


クロがその弾幕の一つを弾き返し、霊夢に向けて飛ばす。

しかしその弾幕もすり抜けてしまった。


「…!オレが放った攻撃をすり抜ける、というわけではないのか…」


「無駄だと言ったはずよ」


クロの両サイドから弾幕が飛んでくる。

クロはバク宙でそれを避ける。

さらに弾幕が上空から飛んでくる。

クロはそれを右に走って避けている。


「さて、どうしたものかな…!」


「何をしようと無駄よ!」


すると、走っていたクロが何か閃いたのか笑みを浮かべる。

突然その場から消えた。


「!?」(どこに…!)


背後に蝙蝠が集まり、クロが現れた。

高速で霊夢に斬りかかる。


しかし刃はすり抜けて当たらなかった。


「無駄だと言ってるでしょう!」


霊夢が反撃する

その瞬間。


ズバッ


「ッ!?」


クロがすり抜けた刃を瞬時に切り返した。

その攻撃は、霊夢の右手を掠めた。


「攻撃の瞬間は実体化しなければならないだろうな」


「ぐっ…!」


霊夢は咄嗟に後ろに下がる。

しかし、クロが高速移動で瞬時にその距離を縮めた。


「なっ…!」


クロが右足で蹴りを放とうとしている。


「…!」


普通の攻撃なら当たらない。

それなら、スカした瞬間を狙って反撃をしよう。

霊夢はそう考えていた。

しかし──


ドガァッ!!


「なっ…アァ…!?」


クロの蹴りは霊夢の腹部を捉えた。

そのまま蹴り飛ばされ、地面に叩き落とされる。

叩きつけられる前に宙に浮いて回避しようとしたが……。


「…!?」(何だ!?)


上手く宙に浮かず、そのまま地面に落ちてしまった。


「ぐっ…!!そ、そんな…」


クロがゆっくりと降りてくる。


「なるほどな…貴様のそれは能力か。何かの加護の部類かと思ったが、それなら何も問題はない」


「…えっ…」


「オレの呪術で、一度でも攻撃をくらうと能力を発動できないようにした。気付かないか?」


「…あっ…」


霊夢は、自身の能力を発動できていないことに気付いた。


「だから、さっきも…」


−…やばい…!


霊夢は本格的に焦り出した。

肉弾戦は向こうが上、弾幕も避けられる、能力も封じられた。

次の策は──。


「…さて……


次の策はあるかな?」


「……ぐっ……!!」





本当はレミリアの紅悪魔の挿絵を出す予定だったのですが、あまりに酷い出来だったのでまたいつかということに…笑

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