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東方学園の怪談話  作者: アブナ
絶望の未来篇
39/82

作戦会議



「……」


「……」


「……」


……。


「…だーっもう!!誰か喋りなさいよ!!」


あまりの気まずさに霊夢が叫んだ。

私達は今隠れ家で作戦会議的なものの途中。

しかし会話が進まずにこの現状。

でもそれは自分の意見をまとめていたからであって話すことがなかったわけではない。

私は思わず


「うるっさいわね!今どうやってあの二人を倒すか考えてんのよ!!」


と、悪態をついてしまった。


「そんなもん力尽くよ!うだうだ考えたって仕方がないわ!」


「そんな簡単にいくわけないでしょ!?」


「異変解決の時はいつもそうやってきたんですぅー!巫女の勘がそう言ってるんですぅー!」


「じゃあかましゃあ!!霊夢もレミィもお黙りっ!!」


パチェが鬼の形相で叫んだ。


「アッサーセン」


「ウィッス」


パチェのあまりの迫力にたじろぐ。

こいつこんなに迫力あったっけ…?


「おい紫もやし、そういやお前の魔術解析はどうしたよ?イザベルの呪いは解けそうか?」


「…申し訳ないけど、無理そう」


「だよなぁ〜…オレもそう思う。何でこんな呪いかけていきやがったかなぁあいつ」


「仕方ないよ起こっちゃったもんは。てかそれより、お腹空かない?みすちーんとこの焼き鳥もらってこようかな」


「…!?」


フラン達の戯けた雰囲気に驚いた。

まるで危機感を感じていない。

仮にも自分の命が危ないというのにだ。


「…ちょ、ちょっと?そんなんで大丈夫なの?」


「そんなんって何が?」


「状況が状況でしょ!?そんなふざけてる場合じゃ…!」


「まーまーレミリア、焦ったってしゃーない」


こいしはのんびりとソファーに寝そべって帽子をくるくると左手の人差し指で回している。


「なっ…!で、でも!」


「焦ったって何も変わんないよ〜。レミリアだってそれはわかってるんじゃない?」


「え…!?」


「まあ、気持ちはわかるよー」


と言いつつ、こいしはさらにダラダラとしだす。

片手にお菓子を持っているのだ。


「あ、あんたねぇ…!」


「食べる?」


「いらんわ!!」


「えー」


何にしたってあまりにもゆるすぎだ!

何としてでも倒さないといけない相手だと言うのに、こんなに緩くていいのか!?


「…もう!真面目にやってよね…」


「しかしこういう場面なら真っ先にふざけてそうなお前がここまで真剣だとはな。そんなにクロの奴、強かったのか?」


「…ええ、本当に、本当に強かった。正直、勝てる自信なんてこれっぽっちもないわ」


「お前にそこまで言わしめるほどなんだ、本当に強いんだろうな」


伸介はそういうと、フランを見やる。

フランはその視線に気付いて、ん?という感じに首を傾げた。


「どうかした?」


「フラン、お前あいつに勝てる自信ある?」


「…さあ、どうかな。クロの強さを目の当たりにしたわけじゃないから…わからない」


「そっか、まあそうだよな」


伸介が考えるそぶりを見せる。

漸く真面目に考え出したのか。

と、その時。


「私はあるわよ」


「!」


霊夢がはっきりとそういった。


「あいつなら私が倒せるわ」


「ちょ、ちょっと!あんた一回やられたじゃない!」


「はあ?あんな初見殺し、やられたうちに入らないわよ。手の内がわかってるんだったらこっちのもん。まあ私に任せておきなさい」


「…!」


たしかに、あの時は予測できるはずもない攻撃で霊夢はやられてしまった。

考えてみれば、クロは真っ当な倒し方で霊夢を倒したわけではない。

…しかしだ。


「一つだけ言っておくと、向こうの世界の霊夢はクロにやられていたわ。こっちの世界の貴女が勝てるかどうかは…」


「それは向こうの世界でも同じでしょう。私に勝てないのなら、初見殺しで一気に終わらせればいいのよ。同じ手を使ったに違いない。


そして紫や幽香は破壊の力を使っての不意打ち。あたかも自分の力で倒したかのように見せ、自分がとんでもなく強いものに見せているだけ。そうは考えられない?」


「…!」


「…まあ、あくまで予想だけど。これが本当とは限らないし」


「その線にかけてみるのも有りなんじゃない?」


こいしが呑気に言った。


「ええ、そのつもりよ。アイツは私に任せなさい」


「…わかったわ。ならこいしと私でイザベルを仕留める、という事ね」


「ええ、そういうこと。あんたたちならあんな奴に負けないでしょう?」


「ええ、もちろん」


こいしも頷いている。


「よし、なら決まり。あともう一つ確認。クロの奴に二重結界は一瞬でも効いてた?」


「ううん、一瞬で破ってた」


「そう……割と頑丈なはずなんだけど……」


霊夢が微妙に落ち込んでいる。


「落ち込んでたって仕方ないでしょ。…どうする?今すぐに行くのは得策じゃないとは思うけど、時間もないし…」


「二日!」


「!」


「二日ちょうだい!そしたら確実に勝てるようになるから!」


霊夢が自信たっぷりの声で言った。


「…ま、霊夢がそう言うならそれでいいんじゃね?」


「そうだね、そうしよう。パチュリーもそれでいい?」


「ええ、問題なく。…私もその間に何か役に立つ魔道書でも探してくるわ」


「助かるわ。でも無理はしないでね、パチェ」


「ええ、わかってるわ」


その時、フランと咲夜が耳打ちで何か話しているのを見た。

そして、咲夜の手には何かの袋が持たされている。


「…?」


「では、お嬢様。一度紅魔館に戻られてはいかがでしょう?館の者たちも心配しているはずです」


「え、ええ、そうね」


気にはなったが、別に悪巧みというわけでもないだろうし、追求はしなかった。

それより、フラン達も二日前から紅魔館には帰っていないはずだ。


「フラン達も一緒にどう?」


「…いや、私達はここでいいよ」


「ああ、オレもここでいい」


「そ、そう?わかったわ。気が向いたらまた戻ってきてね」


二人の返事が意外だったのでつい驚いた。

何かしら考えがあるのだろうか?


「うん。…こいしはどうする?」


「私も一回家に戻るよ。二日後にここに来ればいいんだよね?」


「うん。じゃあ、解散ってことで。また二日後にね」


そういうと、みんながそれぞれ動き始め、解散となった。







扉を開けると、妖精メイド達が一斉に私のところへ駆けてきた。

「ご無事で何より」だとか「何があったのですか」だとか、ありきたりな質問を投げかけてくる。まあ当然だろう。

私はそれに対し、「ちょっと夜遊びにね」とだけ答えた。


「咲夜、今日は私は部屋に戻って寝るわ」


「かしこまりました。では、眠る前に爽やかな味の飲み物でもお持ちいたしましょうか。容器は私が片付けますので」


「それはとても嬉しい申し出だけど、いいわ。でも、そうね。一度紅茶を飲んでから眠ることにするわ。咲夜、よかったら一緒にどう?」


「はい、是非ご一緒させてください」


「ありがとう、じゃあ、部屋で待ってるわね。ゆっくりでいいわよ」


「はい!では、また後ほど!」


咲夜が珍しく能力を使わず歩いて去っていく。

ゆっくりでいいと言ったからだろう。

さて、私は部屋に戻るとしよう。









「……」


私の家…即ち地霊殿。

久しぶりに帰ってきたような気がするが、実は一日も経っていない。

早朝から学校をルーミア達と抜け出してきたから、先生達も休みだと思って何も言わなかったのだろう。

ドアを開けて、地霊殿に入る。


「ただいま」


いつも通り無意識に能力を発動させて帰ってきていることに気付いて、能力を解いた。

最近無意識に慣れてきたのか、前ほどのらりくらりとすることは無くなった。


「あ、こいし様お帰りなさい。今日は遅かったですね?」


たまたま通ったお燐が話しかけてきた。

もう夜の十一時を回っている。

しかし私は妖怪であり、元々はもっと遅く帰ってくるのが当たり前だったから心配はされない。


「うん、ちょっと紅魔館に遊びに行ってた」


「そうでしたかー。あ、さとり様がいつものお部屋に晩御飯を用意していましたよ。食べてきてはいかがでしょう?」


「ほんと!?やった、食べてくる!」


小走りでその部屋に行く。

お燐はその様子を見て手を振りながら「いってらっしゃ〜い」と言って見送っている。

お燐の方から会話を終わらせられるような話題を持ってきてくれて助かった。


部屋のドアを開けて中に入ると、机の上にサラダが盛り付けてある唐揚げ、焼き魚に味噌汁、大盛りの白米が並べられている。

そして、その隣にはお姉ちゃんが座っていた。


「あら、こいし。お帰り、遅かったわね?」


「ただいまー。うん、ちょっと紅魔館に遊びに行ってたんだー」


「あらそうなの。それじゃあ、食べましょうか」


その後も何事もなく晩御飯を食べ終え、部屋に戻った。


「……」


ふと、思い出した。

あの廃校での出来事を……メイジのことを。


自己嫌悪のあまり、誤った道へ進んでしまった、自分自身の姿。


「…あいつが使ってた、あの技」


I am the bone of my sword.


「……体は、剣で出来ている」


私が歩んだ道は、あいつとは違う。


「間違えないよ、決して」









愛しの博麗神社へと戻ってきた。

全く酷い目にあった。まさかあんな初見殺しがあるなんて。

だが次はそうはいかない。手の内がわかっているのなら、恐れるものは何もない。

必ず私が奴を倒す。


「その為には、私も強くならないとね」


フランのため、なんて綺麗事を述べてはいるが。

私がクロを倒したいのは、単純にムカつくからだ。

あの時のあいつの勝ち誇った顔……よく覚えている。


「今に見てなさいよ…!」











こいしは地霊殿へ、霊夢は博麗神社へ戻り、それぞれ修行のようなものを始めていた。霊夢が社の中で座禅を組んでいる様子を見届けた後、オレとフランは隠れ家へ戻ってきた。


「みんなそれぞれ修行に励んでたね」


フランがソファーに腰掛けながらオレにそう言った。

珍しく紅茶を飲もうとしない。

言っていなかったがフランは大の紅茶好きだ。

事あるごとに紅茶を飲もうとする。


「そうだな」


適当な相槌を打ちつつ、とりあえずオレは椅子の方に腰掛ける。


「しかし、お前は何もしないのか?普段なら率先して修行するタイプだと思ってたが」


「もちろんするよ、修行。ねえ、伸介」


フランが笑顔でこちらを見つめている。

何だか知らんがフランはオレに何か期待してるのか?


「…何?」


「伸介は、紅悪魔スカーレット・デビルへの覚醒方法を知ってる?」


「…知らないことはないが…それがどうかしたのか?」


「口に出して言ってみてよ」


フランの質問の意味がわからなかったが、とりあえず言われた通りにすることにする。


「"一定以上の魔力量と、素質を持つ吸血鬼が、肉親の血を吸う"。だろ?」


「そう。つまりあいつは、私の体でお姉様を殺した後、血を吸ったってことだろうね」


なるほど、それで紅悪魔に。

それをまるで自身のみの力で解放したみたいな言い方をしたのか。

…待てよ、ということは。


「…フラン、お前…まさか」


「さあ、どうだろうね?」


含みのある言い方をして不敵に笑う。

こいつマジになれるんじゃないだろうな。

つーか肉親の血なんていつ…?


「もう一つ言うと、血はいつ吸っていても、"一度吸った"っていう事実があれば覚醒の条件はクリアしてるんだ。あとは一定の魔力さえ手に入れば覚醒できる」


「…へえ…」


やっぱなれるな、こいつ。


「それはそうと、私が今日咲夜に耳打ちしてたのは見てた?」


「?ああ、見てたぞ。あれ、何してたんだ?」


「…まあ、時期にわかるよ。お楽しみに」


「おい、自分から話振っといて」


「ははは、ごめんごめん。…それで話を戻すんだけどさ」


そうだ、今は修行の話をしていたのだ。


「おう」


「できるならでいいんだけどさ」


立ち上がり、真剣な眼差しで、こちらを見つめてくる。


「こっちの部屋に結界を張ってくれる?」


「結界?」


「そ、結界」


フランの言うこっちの部屋というのは、レミリアが眠ってた部屋。ベッドルームの割にそこそこ広い。

だがそんなとこに結界を張ってどうするのだろうか。


「まあ、できるけど。そんなことしてどうするんだ?」


とりあえず了承はしたものの、いまいち何がしたいのかわからん。


「いいからいいから。できるんだよね?」


「ああ、まあ」


「無理とかはしてないよね?」


「?してねえぞ」


「そっか、ならお願い」


そういうとフランはその部屋に入っていく。


「…本当に何するつもりだ?」


「修行だよ」


「…ま、好きにするといいぜ」


「ふふっ、さすが!物分かりがいいね」


「まーね。それじゃあ、張るぞ。中に入りな」


「はいはーい!」


フランが意気揚々と部屋に入っていった。


「それじゃあね、伸介。たまーに出てくるけど、結界は解かなくていいからね」


「ああ、壊してでてこい。入る時また張り直す」


「助かるよ。それじゃ!」


フランが部屋に入っていった。

とりあえず結界を張り、ティーカップに紅茶を入れて飲んだ。


「…まあ、あいつのことだし大丈夫か」


さて、オレは寝るとしよう。







そして、時は過ぎ。


いよいよ、その時がやってくる。




「…よぉ、みんな二日ぶり」


全員が隠れ家に揃っている。

パチュリーは魔道書を手に持っている。


「ええ、そうね。さあ、いよいよ作戦開始といきましょう」


「二日間の修行の成果、見せてやるわ!」


「これ、回復魔法の仕掛けられた魔道書よ。回数は三回まで。考えて使うのよ」


パチュリーは手に持っている本をこいしに渡した。

こいしはその本を受け取ると、レミリアにそれを渡した。


「うん、ありがと。じゃ、レミリア、霊夢。早速だけど行こうか?」


「ええ!」


三人が並びだした。

伸介の時空干渉の範囲を最小限に抑えるためである。


「三人とも、大丈夫だとは思うけど、気を付けてね」


「うん、わかってる。油断だけはしないよ」


「それじゃ、飛ばすぞ。…それと、もしもの事があったら、この時計に魔力を込めるんだ。帰還用のとは別で、通信機みたいなものだから」


そう言ってレミリアに小さな時計を渡す。


「わかったわ」


「それじゃあ……頑張ってこい」


三人のいる空間が歪み始める。


「……」


−今度こそ…必ずクロを倒す…!


三人の姿が消える。

向こうの世界へと飛ばされたのだ。






「…また奴等が来たようだな」


「ああ、懲りずによく来るものだ」


「ふふっ、我らに敵うはずもないのになぁ」


「さて、我らの養分を歓迎してやるとするか。今回は油断はしすぎるなよ?」


「ああ、もちろん」


未来での第二回戦が今、始まる。





今作はもうラストは考えてあるので

あとはそれにどう上手いこと繋がるかってだけです笑

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