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東方学園の怪談話  作者: アブナ
第1章 学園の怪奇
16/82

【6日目】

あらすじにも書いた通り、ちょっと投稿ペース遅くなります!

更新楽しみにしている方が居てくれているのなら、大変申し訳ないです(>人<;)




「ーー存外、しぶとく生き残るものだ」


ギルガメスが学園の屋上から、こいし達が滞在している場所を眺めている。


「大人しく死んでいれば、苦しまずに楽になれたものを……ま、それはそれで拍子抜けだが」


パチンッと指を鳴らすと、二つの影が高速でそこへと向かっていった。


「さあて、これからだぞ。愉しいのは」


口を釣り上げてニヤリと笑いながら、ギルガメスはそう言った。











「……」


ぬえは今、洗面所で顔を洗っている。

目の前の鏡に映る自身の顔を見て、ふっと鼻で笑った。


「ひっでえ顔……」


−こんなところ、フランやこいしに見られたら笑われちゃうな……


「しっかりしないと…!」


聖が死んだ。

その事実は、ぬえの心を大きく傷付けていた。

今まで慕っていた人間が、目の前にいながら何もできずに死んでしまった。

その事がショックで、自分が不甲斐なくて、ぬえの気は滅入ってしまっていた。


「私を庇ってくれた聖のためにも、絶対生きてここから出るんだ…!」


洗面所を後にし、ぬえは食堂の窓際にまで椅子を持って行き、それに座った。


「外の様子は相変わらず。…何も、変わっていない」


−…気のせい、だよなぁ。聖っぽい気配を感じたなんて


「ぬえ〜、そろそろ探索の時間だよ〜」


「あ、うん!わかった!今行くよフラン!」


−…くよくよはしていられない


今、自分のできる事をやる事が大事だ。

そう言い聞かせ、ぬえは探索の準備に取り掛かった。





「それじゃあ今日は、学校に新たな拠点を置くのに良さそうな場所を探すと言う事で、戦闘は免れないから、気を引き締めて行くぞ!」


『了解!』


「っしゃあ!じゃあ行くぞ!」


メイジが扉を開こうと、ドアノブに手をかけた。


その時だった。



バリィィーーーンッ!!


ガラスが割れる音と同時に、足音で背後に何者かが降り立ったのがわかる。その気配は邪悪そのものだった。

その場にいる全員の体が、振り返るのを必死に拒む。

振り返ってはならない、振り返ってしまうと殺される、とでも言うかのように、体が固まってしまうのだ。


「…誰だ!!」


そんな中、こいしとフランが振り返った。


「…えっ…あな、たは……」


次の瞬間



ドッ


「…え」


フランの首が、撥ねられていた。


ゴトッと言う音と共に、こいしの足元にフランの顔が転がってくる。


「…いっ…


いやぁああぁああぁああ!!!」


その時、誰かに肩を叩かれる。


「落ち着いて!」


「えっ…フラン…!?」


フランが肩を叩いていた。


「大丈夫、怖くないよ…みんないるから!」


どうやら、振り返った際のあまりの恐怖に幻覚を見せられていたらしい。

フランは至って冷静であった。

他の全員も振り返っている。


「…まずいな、今の音で死人アンデッド共が気付いたみたい。幸い近くにいなかったからよかったけど、あと数分後に来る」


「じゃあ数人で抑えないと。…でもその前に」


「…フラン…!」


「わかってる。…貴女は……


白蓮さん、だよね」


禍々しい黒いオーラを全身から放っている。

髪は黒く染まり、目は赤く光っていた。


「また会いましたねえ、みなさん」


白蓮は怪しい笑みを浮かべてゆっくりとフラン達の方へと歩み寄る。


「…それ以上近付かないで…!」


フランがナイフを構えて言った。


「ご心配ならさずに…こんな姿ですが私は私ですよ?」


「…違う…!違う!貴女は白蓮さんじゃない…白蓮さんはそんな邪悪な気配は感じさせないはず!」


「誰が何と言おうがこれは事実です。


私は聖 白蓮よ。貴女達のよく知る、ね」


口を大きく釣り上げて笑う。

その顔は、普段白蓮が見せる優しさを微塵も感じさせぬ、邪悪に満ちた笑みだった。


「違う!!」


ぬえが大声で言う。


「お前が聖なわけがない!!聖は…聖は…もっと…!」


「可愛いぬえ……姿が変わっただけでそこまで言うのですね……私は悲しいわ……


やはり所詮、その程度の存在というわけね」


「…えっ…」


「…貴女は今までの白蓮さんじゃない。何故なら今の貴女は、私達を”見ていない”から」


「……ええ、そうねえ。私は今や憎しみの化身となったわ。


私は数々の妖怪を、人間を救ってきました。ですがそれで報われた事は一度もありません。


助けた人間は私欲に駆られその身を滅ぼした。助けた妖怪は私欲に巻き込まれ人間を憎みながら滅びた。


そんな、実にくだらない数多の命を救った。しかし、救われなかった側…即ち敵側の者達はどうなるのでしょう?


くだらない欲望に飲まれ、愛も慈悲も救いもない、醜く愚かしい人間のために、何かしらの変革を求める者達は悪と見做され、挙げ句の果てに真の悪に踏みにじられる、なんて事はもはや自然の摂理となった。

このようなくだらぬ世を救って、何になると言うのです?」


「一度世界はやり直さねばならない。このような絶望しか先にない世界など、残すに能わない。


私は、世界を終わらせ新たな世界の救世主となるのです」


フランは、そう語る白蓮を見て思った。


−…何もない……


白蓮の中に、憎悪を向けるべき理由が、向ける相手がいない。

ただ『生きとし生けるものを殺す』という漠然なものだけだった。

口では憎しみを語ってはいる。しかしそれに憎しみはなく、”それらしい理由”を作るために与えられたキーワードに過ぎない。

白蓮の中には、何もないのだ。

人を憎む理由も、世界に絶望する理由も、生命を根絶やしにする理由も、何も。


白蓮の奥に眠る、何かの物体。そこに憎悪が溜まっている。

ならば、白蓮に埋め込まれている何かを取り出せば、元どおりに戻るのではないか。

フランはそう推測した。


「…白蓮さんはきっと、何かに操られてる。白蓮さんの体内から謎の魔力を感じるから」


「なら、それを取り除けば聖は解放されるのか!?」


「うん、おそらくね。…ねえ、ぬえ」


「わかってる。これは命蓮寺の問題だ。だから私がやる」


「そうじゃない。ぬえ、白蓮さんは私に任せてもらえないかな」


「え?」


「何となく、わかるんだ。白蓮さんのきもちが。自分の意思ではどうにもならない何かに侵される気持ちって。


だからここは私に任せて。きっと元の白蓮さんに戻してみせるから」


ぬえは聖を見つめた後に、意を決した表情でフランを見た。


「…お願い。本当は私も手伝いたいけど……周りの死人共を蹴ちらさないと」


「うん、後ろは任せたよ」


ぬえが後ろに振り返る。


「みんな!行くよ!ここはフランに任せよう!」


「無理はしないでよ、フラン!」


「……姉としてはちょっと納得いかないけど…!」


レミリアとこいしがドアを開けて出ていった。


「おい、フラン!」


「!」


伸介がフランに言った。


「…無理はすんなよ」


「…うん、わかってる」


伸介が出ていく。


「メイジ、そっちは任せたよ。私もすぐに追いつくから」


「ああ、任せておいて」


ぬえとメイジも、続いて出ていった。


「……さあ、準備完了だよ」


「漸くですか。待たせますねぇ」


「白蓮さんに何があったかは知らないけど……ここで止めてみせる」


「…ふー…まるで聖人のような事を……貴女がああなるとは思えませんね」


「…え?」


「おっと、失言でしたかね……さて、では……始めましょうか」






「数が多すぎる…!これじゃああと五分も保たないぞ!」


「ここの階は最上階だから敵の襲撃に気付きやすいけど、逃げ場がないのは失敗だったな…!」


その時、ぬえが左側の廊下の奥へと走っていく。


「なっ!?ぬえ!何してんの!?」


「私が左側の連中を片付ける!メイジ達は右側に集中して!」


「一人で!?そんなに危険だ!あたしも…!」


行こうとするメイジをレミリアが止める。


「待ちなさい。ぬえは考え無しに行動するような子ではないわ。おそらく何か策があっての行動のはず」


「だったら何!?」


「ここはあの子に任せましょう。そうして貰わないと厳しいのも事実だわ」


「……わかったよ…!でも少し落ち着いたらすぐに行くからな!」


「ええ、わかったわ」







ぬえは、下の階に降りて、階段の前で敵を待ち構えていた。


「さて、いつでも来い」


−……。


−『ぬえ!危ない!!』


「…あの時、私がしっかりしていれば、あんな事にはならなかっただろう」


その時、下の階から大量の死人が階段を駆け上がってきていた。


「ヴオオオオオオオオオ!!」


「来たな」


ぬえの体から黒い靄のようなものが発生する。


「…フラン達に隠してるから、やりにくかったんだよね。それができるならもっと早く言えって怒られそうだったから」


黒い靄が、ぬえの体を覆う。


「せいぜい私を楽しませてくれよ、雑兵共」



『変化解除』



「平安の大妖怪、鵺様に遊んで貰えるんだ。光栄に思うがいい」


ぬえの背中から、赤色と青色の羽のようなものが生えてくる。

手に持つ薙刀は、三叉の槍へと変化していた。


狂気の笑みを浮かべ、槍に魔力を送り込む。


「蛇の毒、怪鳥の唄、虎の爪。あやかし遊び尚も止まらず。


平安時代の恐怖の象徴、その身を以て味わうがい!」


槍を床に突き刺す。

すると、死人達の周りの床から、真っ黒な蛇は虎、鳥や猿などの動物が現れる。

その動物達は、死人の体を引き裂き、喰らう。

時折、死人が得物で動物を攻撃するが、動物達は鋼鉄のように硬く、弾かれてしまっていた。

さらに、黒い柱のようなものも生え、それは死人達の体を貫いた。


まさに地獄絵図。平安時代の大妖怪、その実態がこれだ。


「…つまんないな、これじゃあちっとも面白くない。せっかく大妖怪がちょっと本気を出してあげたのに」


−ま、でもこれで時間は稼げるかな……。


「ほう?怯えるだけの屑かと思っていたが……なかなかやるではないか」


「!?」


突然、声がした。

死人が死に絶えていく中、ただ一人、ぬえの攻撃を寄せ付けない存在がいた。


「だが貴様はここで死ぬ運命だ。そう張り切る必要はない」


「…お前は…!


ギルガメス…!」


「…ふむ、その呼ばれ方は些か気に入らんが、まあ仕方あるまい」


ギルガメスが、ぬえの発生させた黒い靄を全て掻き消していた。己の魔力のみで。


「…お前こそ、張り切る必要はないはずだが?聖を洗脳したのはお前だろう」


「ご名答」


ぬえはそう言って笑うギルガメスに怒りを感じずにはいられなかった。


「何故わざわざ洗脳した…!」


「随分といかっているじゃないか。そんなにあの聖人が大事だったのか?」


「質問に答えろ!!」


瞬間、黒い靄が複数の虎の姿になり、ギルガメスを囲む。


「…なるほど、少しでも気に入らぬ行動を取れば殺す、と。ははっ、妖怪らしくなってきたじゃあないか」


「何故聖を洗脳した!!」


「理由を問うまでもあるまい?ただ戦局を優位に進めるには、強力な駒が必要だろう」


「…駒、だと?」


「そう、駒だ。例えるなら……そうさな。


将棋で言う、捨て駒か?」


ギルガメスは嘲笑するように笑みを浮かべる。

そこで、ぬえの怒りは爆発した。


「いいだろう、お前の言う通りここで死ぬ運命で構わない。だが……!


お前も道連れにさせてもらうぞ!!」


ぬえから凄まじい大きさの黒いオーラのようなものが発生する。


「ふむ、中々いい魔力だ。此れならば、オレも愉しめるか」


「そうやって言っていられるのも今の内だ!!」


周りの黒い虎が一斉にギルガメスに襲いかかる。


「…ふん」


ギルガメスが不敵な笑みを浮かべる。

と同時に、黒いローブのポケットに入れていた右手をあげる。




「…!?」


次の瞬間には、虎は一掃されていた。

先ほど、死人達の持つ日本刀やナイフでさえ弾いていた黒い虎は、一瞬にして消しとばされていた。


「何を、した…!?」


「いやぁ何、我の武器を展開させただけの事よ。まあ見えにくいゆえ、仕方ないか。


では二撃目だ。次は見逃すなよ」


パチンッ


ギルガメスが指を鳴らす。

すると、ギルガメスの背後に金色の波紋のようなものが現れる。


「…なっ…!?」


その波紋の中から、大量の剣や槍、斧や鎌などが出てくる。


「説明は聞いたはずだが?メイジには見せている攻撃だからな。

我には、あらゆる武具を収納した武器庫のようなものがあってな。そこと空間を繋げ、いつでも武具を自由に取り出す事が出来る。

それを射出させるもよし、手に取り振るうもよし。攻撃方法は変幻自在だ。ただ、取り出す事の出来る武具はこの我が把握している武具のみ。我がその武具を忘れていたりすると、取り出す事はできん。

…それに、まだ少し体が馴染んでいないのでな。手に取り振るう事はしないが……いずれそれを出来る時も来るだろう」


「…!!」ゴクッ


−話で聞いたとはいえ……この光景を見て驚くなという方が無理な話だ…!


「…さて、ネタバラシは終わった。これで貴様を生かして帰すわけにはいかなくなったわけだが……」


「!!」


「上手く躱せよ。…なぁーに、運が良ければ手足を串刺す程度であろう」


ギルガメスが挙げた手を振り下ろす。

すると、背後の無数の武器が、まるで王に命じられた兵士のように一斉にぬえに向かって飛んでいく。


「ぐっ!?」


ぬえは手に持つ槍と黒い靄で武器を弾くが、数が多すぎて全ては弾けず、何発か被弾していた。


「ぐっ……うぅっ…!!ぐぁっ……あぁ、ああああああ!!」





「ハァッ……ハァッ……ゼェッ……ハァッ……」


ぬえは、全身切り傷だらけだった。

さらに、左足の脛の辺りに短剣が一本刺さっている。

右肩に剣が一本、右腕の二の腕にさらに一本。

計三本、体に突き刺さっている。


「…味気ないものだな、大妖怪?それとも、まだ本気ではなかったか」


「黙、れ……お前、なんかに、私、は……負けない……」


ぬえが、突き刺さっている剣を一本ずつ抜いていく。

すると、忽ち傷口は塞がっていき、最終的には完治していた。


「ああ、そうか。今の貴様には再生があるのだな。失念していた。


であれば、再生不可の武器を取り出すまでの事。さあ、ここからが本番だぞ」


「…くっ…!」


−負けて、たまるか…!



「…ふん、来るがいい大妖怪。


お伽話の討伐談、ここに再現するとしようか!」


再び指を鳴らし、武器を大量に出現させる。


大妖怪ぬえ支配者ギルガメスの壮絶なる戦いが今、始まろうとしていた。





流れるようにパロディを挿入していく奴←

大丈夫大丈夫、名前までパクってるわけじゃないんだから。

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