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東方学園の怪談話  作者: アブナ
第1章 学園の怪奇
15/82

【4・5日目】

またまたこんな時間に更新だよ




閉じ込められてから四日目の日は、新たな拠点の紹介と部屋割りなどをしていたので丸一日潰れた。

疲れていることもあり、その後はすぐに眠ってしまったのだ。


「あ、メイジ。おはよー」


「おはよ、フラン。よく眠れた?」


私が声を掛けると、メイジはこちらに振り返って笑顔で言葉を返してきた。

…一瞬、既視感を覚えた。メイジの今の仕草を、私は見た事がある気がした。

今までメイジのそのような仕草は見た事はない。なら何故、既視感を覚えたのだろう。

疑問に思ったが、今は気にしないことにした。


「うん、多分」


「はっきりしないなぁ…ふふっ、フランらしい」


「そ、そうかな?…それより、早起きなんだねメイジは」


「…いやね、前はもっと遅く起きてたんだ。でも、ちょっとした理由で早起きするようになった」


メイジは私の方を見ながらそう言った。


「へえ…それはどうして?」


「お、聞いちゃう?そうだなぁ……んー…」


メイジが顎に右手を持っていって、考えるそぶりを見せる。


「あ、答えたくないなら全然いいよ?」


「いやいや、別にそういうわけじゃない。ただ言い方を考えないとなぁ……


……そうだね、私には好きな人がいたの。とっても優しくて友達思いな人だった」


…私?メイジって、一人称は”あたし”じゃなかっただろうか…

それよりも、友達思いな人”だった”……って事はつまり、メイジの好きな人というのは、もう……。


「…ごめん」


「え、ま、待って!フランが謝らなくていいのに…!全く…相変わらず優しいんだから」


「…え」


「…話の続き。その人が早起きでね、いつも私を起こしにきてくれてたの……さすがにずっと起こしてもらうのは迷惑だと思って、早起きするようになったってだけの話だよ」


「そっか……あ、そういえば朝ご飯は?今日当番誰だっけ」


メイジは気丈に振舞っているが、このままこの話をしているともっと空気が重くなりそうだと思い、話を逸らした。


「ああ…それなら今日はあたしだよ。任せておいて」


「あ、そうなんだ!ありがとうね。私こいし起こしてくるよ」


「おー、いってらっしゃい」


そう言って私が行こうとすると……。


「フラン」


メイジに呼び止められた。


「ん?」


「話してくれてありがとう。嬉しかったよ」


メイジは笑顔でそう言った。


「…うん!」


私も笑顔でそう返した。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


誰かに呼ばれている気がする。

心なしか体も揺れている気がする。こっちは凄く優しくだけど。


…む、私は今寝ているのか。それで誰かが起こしてくれている、と。

なら起きなきゃいけない。私は昔からよく寝るタイプだったから、もしかしたら寝坊しちゃってるのかもしれない。

ああ、でも私は悲しい。こんなにも、こんなにも眠くて眠くて仕方がない。

今私を起こしてくれている人よ、私は構うな。私1人の犠牲で済むのならそれは………ん?この声よく聞いたら…

「こいし、起きて!朝ご飯なくなっちゃうよ!」


フランだ!!


「それは一大事だ!!」


勢いよく起き上がる。フランの顔が見える。

あれ、ちょっと驚いてる?


「…脅かさないでよ…」


「…な、何かすみません」


「…ふふっ、おはよ、こいし」


フランが笑顔で私にそう言う。


「おはよう、フラン!」


私も笑顔でそう返した。


「たくさん寝るのは健康的でいいけど、寝すぎるのは健康的じゃないよ?」


「大丈夫だよ、寝る子は育つって言うじゃん。それにいつもフランが起こしに来てくれるしね」


「全くもう…相変わらずマイペースね。ま、こいしらしいけど!」


フランが立ち上がる。


「さ、朝ご飯食べに行こう。今頃みんな待ってるよ」


「え、私そんな寝てたの?」


「本当はもっと前に起こしに来たんだけど…あんまりに気持ちよさそうにしてたからさ。少し待ってたの」


「え、待っててくれたの!?」


「まあね!結局起きなかったから起こしちゃった。怒らないでよ?」


「いやいや、むしろフランは怒っていいよ!ごめんね」


「?どうして私が怒るの?」


「…くぅっ…心優しすぎる…!」


これは胸が痛むぞぅ…!

よし、決めた!今度から早起きをする努力をしよう!いつまでもフランに迷惑はかけられない!

それに早く起きればフランともたくさん話せる。


「フラン、私これから早起きする努力するよ…!」


「そ、そう?それはいい事だと思うけど無理に早く起きる必要はないからね?」


「うん、そこは無理しないようにする。もし寝坊しちゃった時はまたお世話になるね…」


「任せといて!」


フランは笑顔でそう言う。

……本来こんな感情は、女の子同士で抱いてはいけないのだろう。

けど……私は……。


「…こいし、どうしてそんな辛そうな顔を?具合でも悪いの?」


「あっ、う、ううん!何でもないよ!早く食べに行こう!」


「う、うん?わかった」









食堂代わりの部屋に続くドアを開け、中へと入る。

すると……


「お、来た来た。遅いよ二人共!待ってたんだからね」


「ぬえ、フランはこいしを起こしに行ってただけだからね?こいし、おはよう。もう少し早く起きようね。フランに迷惑がかかるぞ」


「え、そうなのメイジ?」


「浅はかねえぬえ?フランはとても早起きなのよ?二人共おはよう」


「な、何…!フランの姉ちゃんが言うんだったら間違いないか…」


「おはよう、こいし。フランさんも」


「よっ、こいしにフラン」


ぬえ、お姉ちゃん、レミリア、メイジ、伸介の五人が挨拶をしてきた。


「みんなおはよ、遅くなってごめんね」


「おはようみんな!寝坊助でごめんよ」


「さ、みんな揃ったし食べようか。いただきます」


『いただきまーす!』


その後、朝食中に色んな話をした。

出来る限りこの学園とは無関係の話題で。

そして今は、朝食を食べ終えて、全員が食器を片付け終わり、私、フラン、メイジの三人で食器を洗っている最中である。


「悪いね二人共、手伝ってもらっちゃって」


「気にしないで。一人じゃ大変だろうし」


「そうそう、フランの言う通り!」


私は昔から洗い物だけは出来ていた。お姉ちゃんの手伝いでよくやったものだ。


「…こうして見ると、メイジとこいしって似てない?」


「そう?」


「メイジは銀髪だけど、髪の毛のウェーブのかかり方が同じだし、顔立ちも少し似てると思うよ。目の色も同じだし」


言われてみると確かに、と思った。

メイジも私と同じ緑色の目をしているし、髪型も何となく似ている。


「ま、世の中には物凄い数の人間や妖怪がいるんだ。誰かに似る事もあるでしょうよ」


「…そうだね」


フランは何かに気付いたように一瞬驚いた顔をした。

私はその気付いた何かがわからなかったが、これ以上は深く掘り下げるべきではないと思ったので何も言わなかった。


「ところでフランはさ、こいしの事どう思ってんの?」


「…?」


何を、言ってるの?メイジ?


「どう思ってるって…つまり?」


「そんなの決まってんじゃん。恋愛的に、だよ」


「ぶふっ!!」


少し向こうで優雅に紅茶を飲んでいたレミリアがそれを吐き出した。


「…れ、恋愛的に、って…私達女の子同士よ?」


うっ…フランの言う通りである。

むしろ私がおかしいのだ。


「…私は昔は女の子を好きになったよ」


「え」


「本当に大切な人だったから、もっと私を知ってほしいと、見てほしいと思ったの。あの人の優しさに触れて、誰よりも私の事を知って欲しくなった。だから、私はその女の子を好きになった。


本当に好きになっちゃったら、恋愛に性別なんて関係ないんだと思うよ」


私はメイジの言葉を聞いて驚いた。

メイジが同性愛者だった事を驚いたのではない。

同じだったんだ。メイジの言った事と、私の考えている恋愛像が。

本当に大切な人だから、誰よりも私の事を知って欲しかった。だから私は、フランの事が大好きになった。


「私の恋は結局、結ばれる事はなかったけれど……フランやこいしにならまだチャンスはあると思うんだ。だからちょっと知りたくてね」


「…それを、こいしの前で聞くのは無粋だと私は思うな」


「…それもそうだ。悪かったよ」


「私は別に気にしないよ、フラン。むしろちょっと気になるかも」


「…やめよ、この話は…」


フランが顔を逸らす。頬は赤く染まっている。

…みゃ、脈あり、なのかな…?





それからしばらくして、情報交換をするために先ほど食事を摂った場所に集まっている。


「まず、この学園についてだね。この学園は……」


メイジがこの学園で起きている事について大雑把に説明した。

死人アンデッドの存在、月一で解放されてその時のみが脱出する事ができる、等々……。


「以上が現状わかってるこの学園の全て。そんじゃそっちはどういった経緯でここに入ったかを聞かせてもらおうか」


「私達はフラン達がいなくなったのに気付いて、もしかするとここなんじゃないか、と思ってこの学園に入った。そしたら、いつの間にか辺りは閉鎖されて薄暗い学園に覆われてたものだから驚いたわ」


レミリアが言うには、校門をくぐる時何かしらの違和感はあったという。


「そういえば咲夜は?お姉様が来たのなら、てっきり付いてきてるのかと」


「咲夜には万が一のことも考えて紅魔館に戻ってもらったわ。主人とその妹が不在、おまけにメイド長まで不在となっては、紅魔館も色々と危ないでしょうし」


「そっか。それは少し、安心したな」


フランもやはり、家族の事が心配のようだった。

…ん?って事は地霊殿は…?


「…お、お姉ちゃん?」


「…言わないで……言わないで……」


両手で顔を隠し、しくしくとすすり泣きながらお姉ちゃんはそう言った。

つまるところ、無計画である。


「主人不在とかマジィ〜?ありえないんですけどぉ〜」


「やめてあげてメイジ!!お姉ちゃんが!!」


「Cruelty!!」


さとりが机に頭を打ち付ける。


「ああ!お姉ちゃん!!」


「あははは!やっぱり面白いなぁさとりさんは!」


ケラケラと面白そうにメイジは笑っている。


「…あの、楽しく話してるところで水を差すようで悪いんだけどさ」


「ん?」


ぬえが言った。


「あのギルガメスとか言う女は……何者なの?」


そう言った瞬間、メイジの顔から笑顔が消える。

周りも、真剣な表情でメイジの方を見つめた。


「…まあ、奴についても話してるおかないとね…」


「あいつがしてた攻撃、背後から無数の剣や槍が飛んできてた。あれは一体?」


「あれは奴が持っている武器の全てを収納してある蔵……ようするに武器庫に空間を繋げて、自分の意思でその武具を射出したり回収したりできる空間系の魔法だよ」


空間を繋げる……そんな魔法もあるのか。


「さらに、奴の蔵にはありとあらゆる兵器が収められているんだ。三国志の英雄が持つ槍、剣だとか、アーサー王の聖剣だとか、とにかく何でも有りなんだ。


だからこそ厄介なんだ。奴はまだ体が馴染んでいないから、その武器一つ一つを使用してはこないけど、いずれはそれをしてくるだろう」


「…?体が馴染んでいない、っていうのは?」


「…奴は、この学園に突然現れた謎の男。容姿が女だったのは、あれは奴の本来の体じゃないからだ」


「本来の体じゃない…?」


「奴の体は、私の親友の体なんだ。最後の最後で、脱出する事のできなかった、私の親友のね」


その言葉で、メイジの話を思い出した。

校門の前まで辿り着いたが、最後に普通ではない死人アンデッドが立ちはだかってきた、と。


「じゃあ…メイジの言っていた今までの死人とは違う死人っていうのは…」


「そう、あいつの事。私と親友で何とか倒したけど、親友は瀕死の重体だったからね……奴のせいで、私の親友は死んだ。その上、親友の体さえも奪われたんだ」


メイジは怒りに満ちた表情でそう言った。


「私は奴を許さない。奴は必ず私が倒す…!」


「……メイジ…」




「まー、とりあえず?今日は休憩の日って事だからさ。寝るなり遊ぶなり何なり、好きにしていいよ」


「ありがたい。久しぶりの休みだよ」


「ほんとだよ…はぁ」


「お疲れ様、フラン。私が来たからにはもう安心だからね」


「うん…頼りにしてるよ」


「それじゃ、解散!…と言っても、この空間ともう二部屋くらいしかないけど」


「ま、無いより全然マシさ」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



みんながそれぞれ別々の事をし始める中、部屋から動こうとしないメイジ。


「…メイジは何かしないの?」


「そういうフランこそ。レミリアと話してこなくていいの?」


「私はいいの。お姉様はさとりとこいし、それから伸介と話してるから」


「そっか……ねえ、フラン、せっかくだからちょっと話そうよ。どんな他愛のないことでもいいからさ」


「…うん、いいよ。じゃあ、メイジは何の食べ物が…ーー」


その後は、本当に他愛のない話で盛り上がった。

…ひと時の平和を、私は満喫したのだった。


明日からまた、地獄の日々が始まる。

けれど、私達は負けない。何としてでも全員生き残って元の幻想郷に帰るんだ。


今回は色んなものを張りましたよ笑

そろそろ気付く人は気付くだろうか…?

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