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東方学園の怪談話  作者: アブナ
第1章 学園の怪奇
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【3日目・後】

またもこんな時間に更新です。

今回ちょっといつもより鬱いかもしれない笑



「フラン達の……父親?」


「…ま、こっからの話はオレの出生とあまり関係がないからまた今度な。とりあえずみんなのところに戻るぞ」


そう言って伸介は立ち上がる。フランは何も言わず、伸介を心配そうな目で見つめている。


「…ごめん、悪い事を聞いた」


「いーよいーよ、気にすんな。さっきも言ったけど別にそんなに悲惨な話でもないんだ」


「…思ったけど、みんなのところって?みんなここにいるんじゃ……」


「よくよく考えてみろ、この棟に起きた事を」


「…そっか、崩れたんだ。じゃあみんなはどこに?行く宛なんかあるの?」


「おうさ。メイジも用意周到だよ。別の秘密基地的な場所があるらしいぜ」


こことほとんど変わらないような場所が他にもある、と伸介は言うが、ここは本当に便利だった。

こんな場所を他にも用意しているなんて、用意周到にも程がある。


「とりあえず、そこに行こうか。こいし、立てる?」


「うん、ありがとうフラン」


フランが差し伸べてくれた手を掴んで起き上がる。

…伸介に混み合った過去があって、フランとは古くからの友人、家族のような関係だった事は驚いた。

でも、これ以上深く触れたらいけない気がしたので、これ以上は何も考えない事にした。


「そんじゃ、行きますか!」













「……?」


意識はある。しかし体は動かない。

ここはどこだろう?ぬえを庇って以降の記憶がない……

私の身に何が起きたのだろう?


「…私は、一体…?」


「お目覚めか?随分早いな。さすがは大魔法使いと呼ばれるだけの事はある」


「あ、貴女は…ギルガメス!?」


黒いローブを羽織った少女が、少し前方にある椅子に腰掛け座っていた。不敵な笑みを浮かべて、こちらを見つめている。

フードを被っているため顔はよく見えないが、こちらを見ている事だけはわかった。


「くっ…!…ん!?」


「やめておけ、今お前は拘束されているのさ。オレによってな」


「なっ…!」


手足を見ると、何かの鎖のようなもので縛り付けられていた。


「ふむ……貴様はなかなかいい器だな」


「…私を、どうするつもり?」


「なぁに、苦しむ事はない。貴様のような聖人ならば、より面白い事になるという意味での言葉だ」


「質問に答えてください」


「粋がるな雑種。元より貴様の質問に答えてやる気などない」


そういうとギルガメスは立ち上がり、ローブのポケットに手を突っ込んでこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。


「貴女の目的は何…!?」


「質問に答えてやる気はないと言っただろう。…まあ、せつかくだ。語っておいてやる……」


目の前で立ち止まり、ギルガメスは話し始める。


「実はこの肉体は元々我の物ではなくてなぁ。元の体は、とある妖怪に使い物にならなくされてしまってな」


やれやれ、と首を左右に振って、ギルガメスは心底面倒そうに話を続ける。


「ので、そいつの仲間の体を奪ってやった。その事を奴は知っている」


「……その口ぶり、まだ其の者は生きているのね?」


「ああ、生きているとも。今は…メイジと名乗っている女だ」


「え…」


「ふん…これが、奴が我に対して憎悪を剥き出しにしていた理由わけだ。ま、当然よな……この体は奴の友の物だからな」


そういう事だったのか。

通りでだ、口調が女らしくないと思っていた。


「…外道め…!」


「くっ、フハハハハハハ!さすが、聖人は心も美しいものよ!」


ギルガメスが高笑いをあげ、私の顎の辺りに左手を絡ませる。

ギルガメスの体は、宙に浮いていた。


「さて、我の目的だったな?奴らには、この学園の支配者がいる、などと言ったが……あれは偽りの言葉だ。真実、この学園の支配者はこの我だ」


「…でしょうね…!わかっていましたよ」


「ふん、減らず口を……ま、そんな事はどうだっていい事だ。我の真の目的は、この体を馴染ませる事だ。


この学園にいるもの全員の魔力を全て吸い取って、なぁ」



「何、ですって…!?」


「驚く事でもあるまい?ここは元より地獄だ。その地獄を終わらせるという意味では、むしろ善い行いかと思うのだが。


それに考えても見ろ、ここに入ってしまった以上は我の支配下にあるのだからどうされようが何も言えん。ここでは我が全てであり、我がルールなのだからな」


ギルガメスは愉快そうな表情で話している。


「…貴女に…人の心はないのですか!!」


「何を激昂する……貴様の知った事ではないだろう?」


「何を…!私の仲間がまだ学園にいます!!ここが何処かは知りませんが、このような鎖のみで私を縛れると思わない事です!!」


全身に力を込める。鎖を引きちぎろうと、必死にもがく。


「はっ、好きにせよ……そうさな、ならば一つ機会チャンスをくれてやる。今から我は五分間、貴様を眺めているとする」


そういうとギルガメスは、玉座のような椅子のもとにまで戻り、腰掛けた。


「さ、今が好機だぞ?存分にもがいてみせよ」


「…後悔することになりますよ」


ふっ、と鼻で笑った後、私は全身にありったけの魔力を送り、力を込めた。











「…ん?」


「ーーーはあっ……はっ…あ…」


「……ああ、まだやっていたのか……


滑稽だぞ。今の貴様の姿」


駄目だった。如何なる方法を試しても、どれも全く意味をなさなかった。

鎖を千切るどころか、軋む事さえなかった。


「我とした事がうたた寝とはな…ま、別に急を要する訳でも無し、問題はないか」


ギルガメスが立ち上がり、私の方へと歩み寄ってくる。


「さて、五分と言わず半刻はあったはずだな」


「…ぐっ…!」


「…さて、貴様に一つ質問だ。何故俺が貴様に目的を話したか、理解できるか?」


「…私を逃がす気はない、と言うことでしょう…!」


「半分正解だ。が、現実はもっと”残酷”なものだぞ?」


「…!?」


金色の波紋のようなものから何かが出てきて、ギルガメスはそれを掴む。


「これはとある化け物の心臓……簡単に言えば、何かに埋め込んで使う精神汚染のための魔道具だ。…さて、これをどうすると思う?」


ギルガメスは不敵に笑う。

私はこれから起こる事柄を理解し、背筋が凍った。

このままではまずい、と全身のあらゆる組織が、細胞がそう叫んでいる。


「っこの…!こんな鎖…今すぐにでも!!」


「無駄だと言ったろう、たわけめ。


この我に捕まってしまった時点で、貴様に”救い”などありはしなかったのさ。聖人よ」


ドッ


「ゔっ…!?」


腹にギルガメスの左手が刺さる。

同時に、凄まじい熱と禍々しい魔力を感じた。

体の隅々までその魔力に侵されていく感覚と、想像を絶する苦痛が襲ってきた。


「あああァァアアあアアぁああアアアアあぁ!!!痛い!!痛いぃい!!助けて!!助けてぇ!!!」


「哀れよなぁ……多くの妖怪、人間に救いをもたらした聖人が誰からも救われぬとは。


かつての貴様もそうだったな。多くの妖怪を救いながらも、人間に追い詰められた末にその妖怪どもにさえ見捨てられ、そのまま封印された哀れな聖人、聖白蓮」


痛みが思考を停止させる。

何かが流れ込んでくる。


「誰も彼もを救い、全てに裏切られた悲劇の聖人……くく、まるでフランスのジャンヌ・ダルクだな」


嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ痛い痛い痛い痛い痛い痛い苦しい苦しい苦しい苦しい


「いやぁあアアァアァアア!!」


どうして私がこんな目に合わなくてはならない?

どうして誰も私を助けてくれない?

私は多くの妖怪を、人間を助けてきた。愛してきた。

確かに私は見返りは求めなかった。みんなが幸せならそれでよかった。

でもこんなの、あんまりじゃないか。

多くを救ってきた私自身に、何にも救いがないなんて、そんなの……


こんなにも愛しているのに。

こんなにも想っているのに。


どうして、どうして……








どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして




ーーそうか、そういうことか。

やっと、わかった。


私は間違っていたんだ。

妖怪も、人も、神も、何もかも



「いい機会だ、奴らに教えてやれ。


愛と憎悪は紙一重だという事をな」




ーー平等に、死を与えなくては救われないんだ。








◯ateのオルタ化、こんな感じなのかなーと思いながら書いてました。

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