【3日目・中】
お久しぶりです
こんな時間に更新です笑
今回、スカーレット姉妹の過去だとかも捏造してのオリキャラとかが登場したりします。
ご了承ください
「人がどのように死のうが何の意味も価値もない」
「生き様、死に様が残す意味?世迷言を……死に意味があるというの?…死に意味なんて何もない。死んだらそこまで、一つの命の意味は終わる」
「死んだ者の意志を引き継ぐという言葉ほど馬鹿げた言葉はないよ。くだらない戯言だね」
「そもそも、人の人生そのものにすら何の意味もない。たとえどのような偉大な人物であろうと、皆平等に死んでいく」
「どう足掻こうがいずれ誰もが死んでいく。命に価値はない。生に意味はない。偉業など存在しない。全てが無駄なんだ」
「最初から死に向かって行くだけの生き物が繁栄を謳うとは笑わせる」
「繁栄を謳歌するのなら、死を克服してからにしろと言う」
これは、夢なのだろうか。
私のーーー古明地こいしの目の前にいるのは、私の良き友達、フランドール・スカーレットだ。
目の前にいるフランは、一寸違わず私のよく知るフランそのものだった。
吸い込まれそうな深紅の瞳、輝く黄金色の髪、美しい七色の翼。
何一つ、違いはない。フランそのものなのだ。
フランは私に話す。人間の…生命の”死”についてを。
フランはとても、悲しげに笑っていた。
「だからどうか貴女にも……私と同じーーーー」
最後の言葉は、明るい光と共に消えた。
「ーーいし。…こいし!」
私を呼ぶ声で目が覚める。
呼んだのはどうやら、フランのようだ。
「…!よかった…大丈夫?私が見える!?」
とても心配そうな表情で私の顔を見ている。
何があったのかわからない。私の身に何かあったのか…?
とりあえず体は動くので、大丈夫である事を示すために体を起こす。
「……うん…何も問題は…」
しかし起き上がろうとした時、頭とお腹に激痛が走る。
思わず唸り声をあげてまた倒れてしまった。
「まだ動かないで!今治してあげるから…!ごめん、私のせいでこんな…!」
「…治、す……?私の、せい…?何が…」
「…そっか。やっぱり、覚えてないよね」
フランがとても暗い表情になる。
何がフランをそうさせるのか、私にはわからない。
「落ち着いて聞いてね、こいし。これから言う事は全部本当の事だから」
お腹の方に感じていた痛みが引き、心地よい感覚を感じた。
おそらくフランの治癒魔術なのだろう。
「こいしはどこまで覚えてる?」
「…ギルガメスが聖を滅多刺しにして…フランが治癒魔術を掛けながら食堂に帰ってたところまで……東棟に入ったところまでは覚えてる……」
「そっか…それじゃあそこから話すよ」
よく見ると、フランの右肩から血が流れ出ていた。
「えっ…フラン!肩…血が……!」
「……本当だ…傷口が開いちゃったかな」
「傷口…?な、何があったの?フランは大丈夫なの?」
「私の心配はしなくていいから、それより大人しくしてて。傷、痛むんでしょ?」
「でもフラン…!」
「いいから、私の話を聞いて!」
フランが少し大きな声で言った。
言われた通り、大人しく話を聞くことにした。
「…あの後私達は、食堂のある東棟までは難なく辿り着けたよね。けど、その後が問題だった」
「?」
「突然東棟の四階が倒壊したの。私達は三階を走ってた……つまり、天井が急に崩れてきたってわけ。
その上、この学校は五階建てだから、五階の瓦礫も一緒に落ちてきたんだ。こいしはその瓦礫に飲み込まれてしまったの。頭とお腹がいたいのはきっとそのせい。むしろそれだけで済んだのは幸運だよ」
「……!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「もう少しで食堂に着く!もう少し頑張ってよみんな!」
「おう!」
ドオオオオオオオンッ
「!?」
「天井がっ…!?」
「走れぇ!!ここにいたら瓦礫に潰される!!」
「!!フラン!危ない!」
「えっ…」
「うぐっ…!」
「フラン!!肩が…!」
「…ッこのくらい何とも…!」
「上だぁあぁ!!」
「フラン!早くその場から離れっ…!」
「え!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それで、私を押し飛ばしてくれたんだ……こいしがね。…ごめんなさい、私のせいでこんな傷を負わせてしまって…」
「…気にしないで。私が勝手にした事だよ」
「でも、死ぬかもしれなかったんだよ!?」
「私はフランを助けたかったからそうした。それで死ぬんだったら……意味のある死、だよ」
その言葉は、フランの表情を大きく変えた。
「馬鹿な事を言わないで!意味のある死なんかないよ!生きてないと意味なんてない…!」
「…フラン…」
「ご、ごめん、怒鳴っちゃって…!…ありがとうね、こいし」
「……うん。…それで、フラン。聖さんは…」
「……」
言葉を濁らせ、首を左右に振る。
その意味はすぐ理解できた。
「瓦礫に、飲まれて……そのまま見つからなかった……」
「……そっか」
腹の方に感じていた痛みはもう全くなくなっていた。
フランは今度は私の額に手を置いて、治癒魔術をかけ始める。
「……他のみんなは?」
「無事。怪我人はいるけど、他のみんなは全然元気だよ」
「そっか……」
フランは微笑みを浮かべて私を見ている。
私が目覚めた時、フランは若干泣きそうな顔になっていた。
−『心の底から心配してくれる人がいるのが羨ましい』
−『だったらもう羨ましがる必要もないね』
−『!』
−『私がいるんだから』
……なるほど…慧音先生が必死だったのも頷ける。
フランが行方不明になんてなったら……私も必死になって探すだろう。
「…さ、さとり、呼んでこようか?治癒魔術ももう終わるし」
フランは私がフランの顔を見つめているのに気付いて、オロオロとしている
「ううん、このままでいい。…ねえ、フランはさ」
「うん?」
「”生き物の死”って、どんな風に考えてる?」
「…どうして唐突にそんなこと?」
「夢を見たの」
フランに夢の話をした。
これはあくまで私の見た限りではだが、夢の話を聞いてフランは動揺はしていなかった。
『自分がそんな事を言っていたのか』というような動揺もなければ、『私の考えてる事が夢の現れたのが信じられない』というような動揺も、何もなかった。
「……夢の私が、そう言ったの?」
「うん」
「……私ね、昔はもっと危なっかしい奴だったんだ」
俯いていたフランが、顔を上げて話し始める。
「自身の能力もコントロールできてなかったし、自分で言うのもなんだけど、こんなに人に対して優しくなかった。もっと冷酷で、人を殺す事を何とも思ってなかった」
「そ、そうなんだ。今のフランからはそんな想像できないけど」
「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいな。それを聞いても、友達でいてくれる?」
「もちろん」
「…ありがと、こいし」
そういうとフランは、私の額から手を放した。
「治療、終わったよ。もう大丈夫だと思う」
「…あ、ほんと。凄いね、フランって何でもできるじゃん」
「何でもはできないよ。それじゃあ行こうか!みんなも待ってるだろうし!」
「うん!」
フランが手を差し伸べてくれる。
私はその手を掴んで起き上がった。
「おーいフランー。っと、こいしは大丈夫そうだな」
伸介が右手をポケットに突っ込んでゆっくりと歩いてきている。
「伸介!迎えにきてくれたの?」
「いや何、無傷なのがオレだけだったからな。こいし、傷は大丈夫か?」
「う、うん。…ところで、ちょっと気になってた事があるんだ」
以前からずっと疑問だった事がある。
「何だ?」
「伸介は人間だよね?」
「…!」
「……」
フランが驚いたような顔をし、伸介は気怠そうな表情から少し真剣な顔になった。
「…こいし、伸介は人間だよ。逆にそれ以外に見える?」
「見えないけど…強さだとか能力だとか、フランの過去を知っていたりだとか……時折人間とは思えない時があるの」
「そ、それは伸介が…!」
「いいさフラン。ここらで話しとこう」
「で、でも伸介…!」
「気遣ってくれるのは嬉しいが、別に悲壮的な話でもないだろ?大丈夫だよ」
そういうとフランは、とても悲しそうな表情のまま俯いた。
「…?」
「あー、コホン。えーっとだな……オレはこいしの言う通り人間だよ。でもちょいと特殊でね」
「特殊?」
「そう。まー何だ、所謂雑種って奴だ」
「…雑種…?」
「ああ。オレは吸血鬼と人間の間に生まれたハーフだって事だ」
衝撃の事実だった。
伸介は人間であり、吸血鬼でもあったのだ。
しかし、外見は完全に人間のそれだ。何処に吸血鬼の要素が…?
「吸血鬼の要素か?そうだなぁ……まあ例えば、オレも羽は持ってる。でもしまっておけるんだ。出したい時だけ出せるんだよ」
「…どうして吸血鬼と人間が……!そんなの何の得もないんじゃ…」「こいし!!」
フランが大声を出して私の声を遮った。
「…聞きたいか?」
「もういいよ伸介!話さなくていい事だってある!」
「ああ、そうだなフラン。だけどこれは話さなきゃいけない事だ」
「…伸介…!」
「…そんなに、深刻な話なら…話さなくてもいいよ」
「いや、問題ないさ。フランは優しいからな、オレのトラウマを呼び起こしたくないんだろうよ」
「…トラウマ?」
「フラン、ありがとうな。やっぱお前、優しいよ」
「…だって…!」
「…ったく…過去の辛さで言えばお前だって負けてねえってのに」
伸介がフランの頭に左手を乗せて、こう言った。
「オレなら大丈夫だ。心配しなくていい」
「…うん…」
フランは、また俯いてしまった。
「…悪いな、フランは優しい奴だからさ」
「うん、よく知ってる」
「ははっ、それもそうだ。こいしは友達だもんな。さて、本題に入ろうかね」
伸介が私の顔を見つめて、話し始めた。
「まず、どうしてオレが吸血鬼と人間の間に生まれたのか……簡単に言ったら、そうだな……種族を超えた愛、だな」
「…種族を超えた、愛」
「ああ、人間と吸血鬼のハーフなんだ。吸血鬼の要素も人間の要素も受け継いじまう。育てる際には母乳もいるし血を摂取する必要もある。そんな手間がかかる子供を何でわざわざ作ったのか……
オレの父親は、とある吸血鬼の一族の下っ端中の下っ端だった。強さはなかなかのものだったが……まあ、扱いはひどかったな。同族のくせに奴隷のように扱われてた。そんな惨めな男に寄ってくる吸血鬼の女が何処にいる?
知ってると思うが、純血の吸血鬼はみんなプライドが高くてね。常に自分中心、何が何でもトップになりたがる。……が、オレの父親は違った。吸血鬼にしては妙に穏やかな性格だったのさ。そうさな……レミリアやフランもそのタイプだな。
まあ、他の吸血鬼の連中と比べるとなよっとしてんだよ。それが他の連中は気に入らなかったんだろうなぁ……オレの父親をいいように使い始めたんだ。例えば、食料を狩ってこい!だとかな」
そこまで話すと伸介は椅子に腰かけた。
今更だが、ここは食堂の中の寝室だったようだ。
「そうやってパシリに使われていくうちに、力はどんどん強くなっていったよ。もしかしたらその一族の長よりも強いんじゃないか、ってほどに。
ある日、いつものように人間を狩りに行った時の事だ。オレの父親は、いつも通りやれば大丈夫だ、と高を括っていた。だがその街はオレの父親という吸血鬼による襲撃を何度も受けた事のある街だ、吸血鬼対策は万全。今度来たら確実に仕留めようと、大軍を引っ張って来やがった。いくらオレの父親と言えど、大軍を相手に勝てるほど強くはなかった。
その場は何とか逃げ延びたが、銃弾や弓矢の雨、先回りされての銀製ナイフの投擲……色々とあって、身体中傷だらけ。もはやこれまでと、諦めていたそんな時だ。
一人の女が、オレの父親に話しかけてきた。
女は言う。『どうしてそんなに傷だらけなのか』と。
オレの父親は言う。『気にするな。ただ崖から転げ落ちただけだ』と。…わかる?オレの父親は、この場面で女を狩ろうとしなかったんだ。それは何故か?
逃げ延びた場所は、路地裏だったからさ」
そう言われて、意味がわからなかった。
路地裏だからなんだと言うのか?
「わかんない?…その街は、たった一人の吸血鬼のために大軍を寄越したり、たった一人の吸血鬼のために数日で大量の武器を生産させられるほどの豊かな街だった。それなのに、路地裏で絨毯を敷いて、一人でひっそりと暮らしている女が話しかけてきたんだ。オレの父親は優しくてね……そんな奴を攻撃するわけにはいかないと、自らの命よりもその女の命を優先したわけだ。他の吸血鬼にとっちゃ笑い話にもなりゃしない。呆れて物も言えないだろうよ。
女はすぐに気がついていた。この男は吸血鬼だと。崖から転げ落ちたというのが嘘だという事も。もしここでオレの父親が『近づいてきてくれ』だとか『起き上がらせて欲しい』とか言った場合は、そのまま見捨てるつもりだっただろう。でもオレの父親はそうは言わなかった。だから女はオレの父親を助けた。軍隊から匿い、自らの血を吸わせて、傷を癒させた。オレの父親は、これまでにない程嬉しい気持ちになったそうだよ」
伸介はとても嬉しそうに話していた。
「…これまた凄い偶然だよな。その女は、日本から来た女だったんだ。名前は矢坂愛莉。ここまで言えばわかるだろうが……」
「…伸介の、お母さんになる人って事?」
「正解。オレの母親は矢坂愛莉ってんだ。その日からオレの父親……ケアル・シンスは一族の隠れ里には帰らなかった。母親の絨毯のところに住むようになったのさ。…母親も、人種差別によって迫害された身でな。だから路地裏なんかに住んでた。父親はきっと、自分と似た境遇だったからこそ、余計に魅かれたんだろうな。愛莉に。
生活は日に日に安定していった。今までは母親の一人で何とか食料、水等を確保していたから厳しかったが、夜になればそこからは父親の時間だ。誰にも見つからないように盗みを働いたらしいよ。
それからまたしばらくして、その路地裏の場所はもはや一つの家のようになっていたんだ。誰も寄り付かないから、やりたい放題だった。建物の窓もないし、水道管も通ってない。ただ単純に建物に挟まれた、少し横幅の広い路地裏だったからな。人二人分ほどの小さな小屋を建てて、そこに絨毯を引いて、盗んだランタンを天井から吊るして、電気はないが氷を冷蔵庫の各所に入れて代用していた。外の空気を遮断するわけだから、氷を入れとけば代用になるからな。水は少し離れたところにある水道管を繋げて、窓はガラスがわりに網戸を盗んで張っていた。便所は各々公衆の物を使ってたけど、何でも揃ってたよ。
至福の時間だったそうだ。路地裏だから太陽の光が差し込む心配も少ないし、昼から夕方までは愛する者と一緒にいられるわけだからな。お互いの不幸な出来事を自慢話のように話し、盗んできた新聞を二人で読んだり、時に夜に散歩に出たり……今までで一番、幸福な時間だったらしい。
でも、そんな幸せは、そんなに長くは続かなかった。まあ、結構長い事続いてた方だとは思うけどな。
それはある日の事。実はその時点で、オレはいたんだ。生後二年かそれくらいの時かな。
吸血鬼の連中が、オレの父親を探しにきやがった」
「…!」
「まー自分で言うのはかなりあれだが、オレって割とイケメンじゃん?割と。割とな?だから両親共に美形だったのよ。まあ人間に近い姿の吸血鬼は大体美形なんだけども。んで、吸血鬼どもはいい女に目がないわけ。吸血鬼の一人がたまたま、夜の街で散歩してたオレの両親を見かけたらしくてなぁ。
そっからはまあ、色々とあったよ。で、最終的に捕まった」
「……」
「その後の仕打ちは…まあ、なかなかのもんだったぞ。母親は毎日のように血を大量に吸われ、その度にまた輸血だ。血液型の違う血を無理矢理入れていった。吸血鬼だから、割と魔術面もなかなかの技術を持ってたんだ。だから、どんな血液型でもそれを取りに入れ、自身の血に変えるような体に魔術でされた。オレの母親は血を吸われるだけの餌になっちまったのさ。
しかし父親の方は何もされなかった。まあ当然だよな、今まで我欲の一つもなかった男だ。どうこうしたところで何か得るわけでもなし。むしろ、愛する妻が苦しい目にあっているのに何も出来ない悲しみに暮れるところを見て楽しもうとしていた。
が、計算は狂った。いや、最初から間違ってた。
オレの父親は、オレの母親のためなら何でもする男だ。誰よりも愛し、誰よりも救いたいと思う者達……つまりオレと母親のためなら、自身がどうなっても構わない。そういう、気高い男だった。
オレの父親は暴れた。母親を逃がすために、命の終える、その瞬間まで暴れ続けた。愛する妻と息子のために、吸血鬼としてではなく『人』として戦った。あの時の父さんは……かっこよかったよ。同格であるはずの吸血鬼をバッタバッタと薙ぎ倒して、一瞬で母さんを解放した。その後、オレと母さんだけを逃してくれた。
……父さんはおそらく殺されたんだろう。オレにだったなそれくらいはわかる。母さんは、やっぱり無理な事ばかり吸血鬼どもにやらされていたからそう長くはなかった。オレが4歳の時点で、死んじまったよ。それでも長生きした方だ。……さっきまで話した話は、父親が吸血鬼の里で暴れる前にオレにしてくれた話だ。
その日から、オレは父親や母親のように自身の愛する者のために命を懸けられる『人』になりたいと思った。吸血鬼じゃなくてな。
…ま、現実は非情でね。オレの引取先は吸血鬼の一族だったよ。一族というよりは、ある館の主人が吸血鬼だった、ってだけか。今はそこに引き入れてくれて感謝してるがな」
「ある館の…主人?」
「そう、その主人の名はレオール・スカーレット。レミリアとフランの父親だよ」
大量にオリキャラをぶっ込んで行くスタイル




