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東方学園の怪談話  作者: アブナ
第1章 学園の怪奇
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【2日目】

またも少し短め…!


「昨日は初陣にしては上出来だったよ。まあ、何の進展もなかったけども」


「割と何もなかったけどね」


「まあ、音さえ立たなければあいつらに見つかることはそうないからね。あたしとしてはフラン、貴女のヘッドショット率に驚いてたんだが」


「何か慣れちゃって」


「順応力高すぎだよフラン…」


あの後私達は食堂へと帰還し、体を休めた。

昨日の探索でわかったことは無し。私達からすれば何もかもが目新しいものであったが、それらは全てメイジは知っているものだったという。


何故何もかもが目新しかったのかというと、学校の内部の構造が全て変わっていたのである。私からすればそこから既に可笑しな点だった。

それだけでなく、何故かそこら中に濃い魔力を含んだ霧……というよりは煙に近いものが漂っていたのだ。

一般の人間であれば、おそらく少し吸っただけで死に至る可能性さえあるほどの、濃い魔力だった。


「何であんなものが?」


「あれは自然発生さ。発生源はこの校舎」


「校舎から煙が出てるってこと?」


「そゆこと。理由は、死人アンデッド共の動力源があの霧だからだ」


メイジの話によると、本来死んで消え行くであろう魂をここに留まらせるためだと言う。

魂は残ろうと肉体は既に死んだ物……であれば腐敗は免れようのない運命である。魂が残った死体が、肉体の腐敗を感じると取る行為は何か。

それは……


「『捕食』さ。肉体が腐敗するんだ……人間の中心、即ち知性である脳まで腐っていくだろう?それで考える力がなくなって、人間の三大欲求の一つである食欲に従い、あいつらは食物を欲するようになる」


「じゃああいつらは私たちを食べるために追ってきてるの?」


「そうさな、それ以外にはないだろう」


「だったらここにある食べ物をあげれば治るんじゃ…」


「そこであの魔力の霧の出番だ」


「!」


「あの霧は腐った脳に刺激を与え、一つの命令のようなものを飛ばす。『命あるものを喰らえ。そうすれば肉体は元に戻る』…ってね」


「そ、それは本当の事なの?」


「さあ?ただこの言葉が脳に飛ばされてくるってのは本当さ」


そこで、私は疑問に思った。


「…どうやってそんな事を知ったの?」


そう言うと、メイジは一瞬動揺した。

その後、私の方を睨みつけると、ため息をついて話し始めた。


「……その昔、私にも仲間がいてね。ちょうど貴女たちと同じ、三人組だった。


二人共、私とは親友の中でね……この学校に閉じ込められる前までは、楽しく毎日を楽しんでたんだ」


そう話すメイジの目は、とても悲しげだった。

それもそうだろう。メイジはこの学校で一人でいたのだ。つまり他の二人の仲間は……。


「多分察してくれたと思うけど、私の仲間は死んだ。二人共ね。一人は閉じ込められてから一週間に、もう一人は学校が解放される日に死んだ。


最初に死んだ方は、今までにない死人と出会い、私ともう一人を逃がすために死んだ。死んだことは、後に確認したよ……死体があったからね。死人になられたら困るから、この食堂に運んで焼き払った。……その人の墓みたいなものが、この校舎の外にある。


そしてもう一人……私と共に脱出を試みて、それまでの探索でわかっていた最短ルートを辿って学校の門の前まで来たんだ。そこで、前に仲間を殺した死人が、私達二人の前に立ち塞がった。私達はそいつを二人で協力して倒した。でも、仲間が重傷を負ったんだ。私は仲間を抱えて門へとむかっていった。……でも……」


そこでメイジは俯いた。


「…大量の死人が、凄まじいスピードで迫って来ていたんだ。両サイドから、同時にね」


「…!」


「仲間は言った。『私を置いて走って門を抜けろ』ってね……でも私にはそんなことはできない。だから、全速力で走ったんだ。……でもやっぱり、あいつらの方が速かった。このままじゃ、追いつかれて殺されるとすぐにわかった。それでも私は諦めずに走った。


けど、やっぱり追いつかれた。大量の死人が、私達を囲んで襲いかかってきた。……そこで……」


メイジが顔を上げる。目尻に、涙が浮かんでいる。


「仲間がね……私を思い切り門の外へ吹き飛ばしたんだ。最後の力を振り絞ってね……」


「……」


「私はそれで、門の外に出られたんだ。仲間は私の目の前で死人達に殺された。私だけが……生きてこの学校から脱出できたんだ。


けど、現実は非情だった」


「…え」


「いたのさ、門の外にも。大量の死人がね。中には、私達で必死になって倒した奴みたいな死人も混ざっていた」


「なっ…!何で!?私達がここに来た時はそんな奴らは…!」


「ああ、いない。何せ、今の話はあの門の裏側の門の話だからね。裏門があるのは知ってるだろ?」


「…!」


「私はそこで絶望し、死を選んだ。そこに倒れ込み、全てを諦めて眠りについたよ。けど……次に目を覚ました時、私はこの食堂のベッドで寝ていたんだ」


「えっ……どういう……」


「どういう事なんだろうね……私にもわからない。夢かと思ったよ。あれは悪魔で、仲間は誰も死んじゃいないんだと思って、起き上がって周りを見渡した。でも、隣のベッドには誰もいない。…そして、今話してるこの広間にも誰もいなかった。私は、チャンスをもらったのだと思ったよ」


そういうとメイジは椅子から立ち上がった。


「その日以来私は、この学校をこんな風にしている黒幕がいると思ってる。そいつが人間であろうが妖怪であろうが幽霊であろうが神であろうが、ぶっ殺してやると決めたのさ…!」


「……」


「…私の話は終わり。さ、昼ごはん昼ごはん」


「…今日は私が作るよ。メイジは休んでて」


「…悪いね、ありがと」


メイジは、寝室代わりの部屋に入っていった。


「……あんな過去があったなんて…」


「…私達も、そうなるかもしれないんだよね…」


ぬえが弱気にそう言った。

励まそうと思ったが、言葉が思い付かなかった。否定のしようがないからだ。

しかし、そこでフランが言った。


「ならないよ。だって今回はメイジだっている。私達だけじゃないんだから。それに……


私達三人なら、どんな困難だって乗り越えられるさ!」


「……うん!そうだよね!」


「…ふふっ、がんばろうね、フラン、ぬえ!」


「うん!」


その言葉に、私まで励まされた。


−そうだ……そんな風にはさせない。私達はメイジと一緒に、この学校から誰一人欠ける事なく帰るんだ…!


明るい笑顔を浮かべるフランを見ながら、私はそう誓った。



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