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銃と魔法と臆病な賞金首  作者: 雪方麻耶
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旅は道連れと言うけれど

 リムは、光来の返答を待たずして続けた。口調に熱を帯びていた。


「最初は、見たこともないアイテムを手にしているのを見て、あなたに近づいたわ。でも、話を聞いて、なにか大きなヒントを掴んだようなような気がする。さっき、あなたが重要な存在になるかもって言ったのは、そういう意味よ」

「いや、ちょっと、ちょっと待ってくれ」


 光来は、掌をリムに向けて制した。


「俺は、自分の身になにが起きたのかすら分かってないんだ。なんで、いきなりこんな世界に来てしまったのか。だから、強引に関連付けられても困るよ」

「でも、なんの理由もなしに異世界から飛ばされてくるなんて、あり得ないでしょ? 絶対、なにかの因果関係があるはずなのよ。例えば、グニーエがどこかで古代魔法の実験を続けていて、その影響で引っ張られてしまったとか」

「なんで、それが俺なんだよ」

「だから、細かいことなんて分からないわよ」

「リム、君には悪いけど、俺はグニーエなんて奴とは無関係だし、その古代魔法とやらも信憑性が薄いと思う。やっぱり、バナースタが逃げた瞬間を見逃したってだけの話だよ」

「違う。だとしたら、現場に残されてた魔法陣の謎が残る」

「それは、あれだ。グニーエは研究を続けていたんだろ? きっと、研究の過程で焼き付けられたもので、ずっと前からあっただけの話だよ」

「違う違う。ワタシはずっとグニーエを追い続けているのよ。それに関する事柄に敏感になっているわ。そのワタシの勘が囁くのよ。あなたがグニーエに通じる存在だって」

「滅茶苦茶だ」

「いいえ、もう決めたわ。キーラ。あなた、ワタシと一緒に来なさい。二人で行動を共にすれば、ワタシはグニーエにたどり着けるし、あなたも元の世界に帰れる方法が分かるかも」


 光来は、内心、困ったことになったと思った。リムは少し冷静さを失っている。いくらなんんでも強引過ぎる。自分の都合のいいように、事実を捻じ曲げて受け入れてしまっている。ここまで入れ込んで、やっぱりなんの関係もなかったなんてことになったら、大きなトラブルに発展しそうな予感がした。


「いや、やっぱり駄目だ。君とはここで別れる」


 光来の台詞に、リムは一転して冷めた視線を送った。


「ふーん。じゃあ、これからどうするつもり?」

「どうするって……。そりゃ、元いた世界に帰れる方法を見つけて……」

「それって一人でできる? この世界のことをなにも知らないあなたが。知らない言葉だってたくさんあるだろうし、習慣だって違う。大体、魔法すら知らないんじゃお話しにもならない。今日みたいにトラブルに巻き込まれて、どこかで野垂れ死ぬのがオチね」


 光来は反論しようとしたが、言葉が出てこなかった。ずいぶんとひどいことを言われている気がするが、リムの言うことはもっともだった。自分一人ではなにをどう調べればいいのかすら分からない。うろうろと路頭を彷徨い、なんの情報も得られないまま時が過ぎ、こっちの世界で一生を送る羽目になりかねない。


「言っておくけど、ワタシは方々で噂を拾いながら旅を続けてきたの。いきなり違う世界から迷い込んだ人の話なんて、聞いたことがない」


 追い打ちを掛けるようなことを言う。


「いや、しかし……」

「ワタシと一緒にいれば、少なくとも野垂れ死ぬ心配はなくなる。それに、さっきも言ったけど、あなたが帰る方法とグニーエの行方には、なにかしらの関係がある。たどる道は同じなのよ。一人より二人のほうがいいわ。絶対」


 リムは光来が発言するのを遮るように続け、絶対という部分に力を込めて力説した。強引ではあるが、その言い分はまったくの的外れではないような気がしてきた。元々、力技で押されるのに弱い性格なのだ。

 興奮しているのか、リムは身をかがめて顔を近づけている。それだけでも照れてしまうのに、胸の谷間が飛び込んできた。光来は目のやり場に困ってしまい、視線が定まらなかった。


「なに、そわそわしてるの?」


 光来は挙動不審を指摘され、ますます落ち着きがなくなってしまった。こんな状況でなにを考えているんだと自分を叱責したくなる。


「分かった。分かったよ。一緒に行こう」


 光来は、つい吐き出すように言ってしまった。しかし、その判断は間違っていないと思った。今の説得には頷ける部分が確かにある。

 光来の返事に、リムはにっと笑った。暗い過去を話した後とは思えない、素直に素敵だなと思ってしまう笑顔だった。この笑顔を取り戻すのに、どれほどの歳月が必要だったのか。


「決まりね。これからはパートナーよ」


 手を差し出された。握手ということか。そういった習慣はこっちも同じなんだなと思いながら、光来はリムの手を握った。リムの手を握るのは、これで二回目だ。女の子らしい華奢な手だったが、どこか硬いというか、自分では耐えられないような苦労してきたんだなと思ってしまう感触だった。

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