5:元勇者様の凸
※両性具有表現、すっぽんぽん表現あります。
色気ナッシン
井口紗枝は、なりそこないにされた元勇者である。
召喚時、付与されるはずの祝福スキルをクラスメイトに盗まれた。
さらにその挙げ句、召喚陣の狂いにより身体にも恐ろしい異変が生じており、そのせいでさらにクラスメイトに疎んじられ。そのせいで、さらに過酷な生活を送った。
そんな紗枝は、湖のそばの原っぱの上で目を覚ました。
「う…」
身体が熱い。
しかし、まるで風呂上がりのような心地よさと脱力感、そして日焼けをしたときのような肌のヒリヒリ感がある。
今までとは、違う。
確か、秋野くんと話しているときに呪いが出て、湖で鎮めようとして…。
そこからの記憶はない。
とりあえず、鎮まったようなのでなにか服を着なければ。そう思って、ようやくピントのあった視界であたりを見渡す。
「あ、秋野くん!?」
自分が助けた青年が、隣に倒れている。
一体なぜ!
「しっかりして!ねぇ!」
服も着ず、良太のそばにかがんで、頬を軽く叩き、身体を揺する。
怪我はないようだが…一体、自分が記憶を失っている間になにがあったのか。
「"癒しを"」
とりあえず、低級で威力も最低クラスではあるが、治癒魔法をかける。
効くかどうかはわからないが、かけないよりはマシだ。
「う」
「秋野くん!」
「い、ぐちさ」
ぼーっとした顔で良太がこちらを捉えてすぐ。
「身体は大丈夫!?」
「えっ!?」
若者は吠え、がばりと上半身を起こして紗枝の肩を掴んだ。
「呪いとか先に言いなよ!」
「え、な、なんで!?」
召喚陣の狂いについては話したが、呪いのことは一言も言っていない。なのになぜ、良太は紗江の呪いを知っているのか。
あまりにも衝撃的すぎる事態に、紗江は驚いて目を白黒させる。
「おれが鎮めた!」
「えええ!?」
「だいたいなんだよあれ!あんな陰湿、な…」
火を噴くようにまくしたてる良太の言葉が急に尻すぼみになり、止まった。
そしてくるりと紗江に背中を向ける。
わけがわからない。
「あ、あの?」
「スイマセン、服着テクダサイ」
「…あ」
紗江は、全裸であった。
数多の傷はさておき、日本平均より少し大きめのふっくらした白い乳房は露わだし、なにより。
召喚陣の狂いによる、下半身に生えてしまった、こちらは平均よりも小さい男性器。
この2つが月に照らされて、紗枝に妖しさと神秘性を与えていた。
…というのはもちろんだが、うっかり見てしまった良太にはダメージが大きかったらしく、マントのフードが脱げているため首筋や耳が真っ赤になっているのが見えた。
だから紗江は、服を探して着ずに思わず聞いてしまった。
「あ、あの」
「なんですか」
「気持ち悪く、ないの?」
「は?」
「あ、ごめんなさい、そうよね気持ち悪」
「アホかあんたはーーーーッ!!!」
「えっ!?」
くるりと顔が真っ赤になった良太が紗江を振り返って、顔をずいと近づけてきた。
「おっぱいだぞ!何回も見たいし触ってみたいよ!井口さんの傷あるけどきれーだし!つか母さん以外の初めて見たわバーカバーカ!」
「え」
「まさかチンコ生えてるとは思わなかったけど、それはそれでなんか神様っぽいっておれは思った!スゴイの自覚して!そして服着ろ!ください!」
言いあげて、またもふいっと紗江の反対側に良太は身体を向けた。
なんだか、あまりにも衝撃的なことを言われすぎて頭がふわふわする。
恥ずかしいより、嬉しいというか、なんだか救われたような感情が湧いてきて。
「うん…服…着るね」
勝手に落ちる涙をぬぐいながら、紗枝は服を着たのだった。