第3話 再会
目を開けた。
少し眠ってしまったらしい。
太陽はほとんど頭上近くまで上がっている。
お昼だろう。
やはり物音は水と風の音だけだ。
屋根から降りて、さっきの糸を手繰り寄せ始める。
手のひらほどの魚、イカなどが次々と上がってくる。
その中のいくつかを生で食べる。
焼いて食べる事も出来たが生で食べる事によりビタミンを摂取した。
その他の収穫はいつものように日干しにした。
こうして保存した食料は自分で食べる事はまずない。
俺の場合、この食料で取引をする。
今のこの世界では通貨はなんの意味も成さなくなった。
こうした食料や生活用品、情報などが通貨の変わりって事だ。
こういう大掛かりな仕掛けを使った時は、後の仕掛けの手入が大切だ。
丁寧に針の一個一個、糸の一本一本を手入れして箱に戻す。
最初は日本を目指して旅立ったつもりだった。
西から風が吹けば家に帆を張り、東へ向かった。
日本なんて海の底だってことは分かっていた。
それでも俺は東へ東へ向かった。
今は自分がいったい何処にいるのかさっぱり分かっちゃいない。
日本の上かもしれない、アメリカの上かもしれない、太平洋のど真ん中って事もある。
実際はそんな事、分かるハズもなかった。
今までの航海中、天候の変化はあっても、気候が変わるって事はなかった。
この分だと世界中何処へ行っても同じ気候だと思う。
海の水は、年々澄んできている。
今では水深100mぐらいまでなら見える。
奇麗な海だ。
人口が少なくなり、むしろ水中の生物は急速に増加していってるのではなのだろうか?
聞こえる波の音、風の音に耳を傾ける。
かすかなエンジン音が聞こえた。
目を凝らす。
遠くを見渡す。
海の上にはキラキラと輝く無数の波があるのみだ。
「・・・・・・ぉーぃ」
耳の幻聴か?
「・・・・・・・・ぉーぃ」
確かに聞こえる。上の方からだ。空か?
「おーい!!ミツル~!!」
聞き覚えのある声だ。
おれは空を見上げた。
古い馴染みに会うのは何年ぶりだろうか?
あの島で過ごした数ヶ月間、発狂寸前だった自己を
互いに支えあった数ヶ月間。
もうだめだろうとなんども挫けそうになった。
互いに励ましあった。
想像を絶する恐怖。飢え。狂気。
それを共に乗り越えた仲間。
いつしか家族のような感情さえ生まれたあの極限状態。
本庄 武。
そんな仲間の中で俺と、最も歳の近く、最も気の合う仲間だ。
「ミツル。探したぜ。」
轟音を立てて、水上艇が水面に降り立ってきた。
「この移住船、5年前に流木をかき集めて作ったものよりかなりしっかりしたなぁ。」
タケシは相変わらずのようだ。
外見は少しがっちりし、そして、アゴの髭が男としての成長をあらわしている。
「タケシ。それだけじゃないぜ、様々な点でかなり住みやすくなっているはずだ。」
自分では意識していないのだが、耳から聞こえてくる自分の声はうれしさのあまり、声が上ずってしまっている。
「さぁ、こっちに来て、ゆっくり話しをしようぜ。古い馴染みに会うのは久しぶりだ。」
本当に嬉しくてたまらない。
「ま、待ってくれ。ミツルそれどころじゃないんだ。」