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第2話 不時着

 あの日に俺の人生は変わった。


変わったというべきだろうか?


いや、変わっちゃいない。


これが、俺の人生だったのだ。


これが俺の生きる世界なんだ。


あれからいろいろあった。


いろいろあって今はこの広大な海の真っ只中にいるってワケだ。


最初はいろいろ考えた。


人生がどうでもよくなる日もあった。


だが、次第に悩む暇など無くなった。

飢えが、喉の渇きが俺を救った。

生きるって事に貪欲になった。

ただ純粋に死にたくはなかった。

 飛行機は、長さが4kmほどの細長い陸地に胴体着陸を行った。

燃料が切れかかっていたのが幸いしたのか、爆発は起きなかった。

ただし、その衝撃は凄かった。

機内の座席は吹っ飛んだ。

シートベルトもなんの役にも立たなかった。

俺は、胴体着陸に備えて抱えていた寝袋が幸いした、というより運が良かった。

いくら寝袋を抱えていようとあの衝撃では助からなかっただろう。

ただ運が良かった。

 運が良かった者は生き残り、運が悪かった者は死んだ。

生き残ったのは数十人だった。

300人近く乗っていた乗客は、たった一瞬でその十分の一以下の人数に減った。


 飛行機から出た人々は、死んでれば良かったと思うような光景を目にした。

一面の泥地にたった数本の朽ちかけた木が弱々しく立っていた。

そして自分達の置かれた状況に気づくのだった。

 誰しもが怪我を負っていた。

俺も例外ではなかった。

あの時の衝撃で座席の間で押しつぶされた時に足の骨を折った。

足首のちょっと上だ。

 俺も足を引き摺りながら、生きるための努力をした。

足を固定し、飛行機内にあるものから釣り具を作り出した。

飢えをしのいだ。

ほとんどの者がもがき苦しみ生きるためになんとかしようとあがいた。

助け合う事もあった。

 飛行機から少し歩けばすぐに海だった。

濁った海だった。

泥地に波が押し寄せていた。

俺は、暑い日中は体力の消耗を避け日陰でじっとしていた。

焦ってむやみに動くものは次第に弱り死んでいった。

朝方と夕方だけ釣りをした。

魚が釣れる日は希だった。

 二日目から降り出した毎朝の雨のおかげで、飲み水の心配はしなくてすんだ。

その水だけで何日も過ごす事もあった。

そういう日々が、延々と続いた。

 2ヶ月もすると人数は8人まで減った。

栄養の不足のためと、この状況下だ。

俺の足はまだ治っていなかった。

幸い、腐り始める事はなかった。

2ヶ月も経つと海辺は徐々に砂浜になっていった。

水も澄んできた。

毎朝の雨で地面は泥のままだった。

 3ヶ月目に砂浜で貝を見つけた。

人数は5人になった。

鳥に運ばれてきたのだろうか?

その頃から次第に魚が釣れるようになっていった。

魚を食えば俺の足はみるみる治っていった。

4ヶ月目には完全に治った。

体が万全になると、生きる事に余裕が出来たような気がした。

 俺にも考えをまとめるゆとりってもんが出来た。

島には無数の鳥が舞い降りてきた、魚や貝も本当に無数に繁殖しているようだ。

ここ4ヶ月何の救助も来ない事から考えると

人の事を考える余裕のある奴はほとんどいないだろう。

そして、中国のはずのこの島から観ても四方どこも水平線しか見えない事を考えると

世界の半分以上、たぶん9割ぐらいは海の中って考えるべきだろう。

 魚や鳥を獲る奴らは消えたんだ。

コイツらがこういう異常な繁殖をするのも分かる気がする。

 1年後、島に流れ着いてくる大量の流木。ガラクタ。

時間はたっぷりとあった。

いかだのような。サイコロのような。

丸太の船。

中には人も入れる。

水に沈まぬように隙間だらけだ。

移動できる。家。船。

俺たちはそれを移住船と呼んだ。

不恰好なサイコロ状の船?箱?が5つ出来上がった。

残った5人はそれぞれが外海に希望をを求めて旅立っていった。

再会を約束して・・・・・・


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