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第2話ーー事件ーー

探偵部の日常、第2話です。読んでいただけると嬉しいです。

「ただいまー」

凪沙は、いつもより勢いよく家のドアを開けた。

凪沙の家は、築50年はあるような賃貸のアパートだった。家の中も、家具はほとんどない。それでも、なんとか3人で暮らしていた。

「おかえりー、おねーちゃーん」

小さな足でとたぱたと走ってきたのは、小学校3年生の凪沙の妹、未来(みらい)だ。

未来は小さい頃から気が弱く、前の小学校でもいじめられぎみだった。引っ越し先では、友達ができればいいのだが。

「おねえちゃん、ここの問題、分からないの。ねえねえ、教えて?」

「うんいいよ。ちょっと待ってて、荷物置いてくるね・・・」


ーー「ただいま」

凪沙の母が、会社から帰ってきた。

「おかえりー、おかあさーん」

「おかえり、母さん。晩ご飯作っといたよ。」

「ありがとう、凪沙。っごほっごほっ」

「だいじょうぶ?母さん。今日は早く休んだら。」

「ごめんなさいね、凪沙。そうするわ。っごほっ」

凪沙の母は、昔から気管支が弱かった。少しでもほこりなどを吸い込むと、すぐに発作が出る。だから本当は、こんなほこりっぽい家は、体質に合わないのかもしれない。

凪沙は、できれば早く働けるようになりたかった。自分は家族の中では体力がある方だと思っていたし、ここだけの話、未来は働くのに向いてなさそうだからである。

「ご飯できたよー」

「わーい、おねえちゃんのごはん!」

「いつも本当にありがとう、凪沙。」

3人で、茶の間でご飯を食べる。ご飯と言っても、おかずと味噌汁、白米だけである。それでも、いつも茶の間はにぎわっていた。

「あのね、おかあさん。学校の子が、新しい服着て来てたの。未来も、新しい服ほしい!」

「ごめんね、未来。うちは買えないの。」

「どうして?」

凪沙の母は、悲しそうに笑った。

「お金がないからよ。」

「そっか・・・じゃあ未来、大人になったら自分で作る!それでね、どんな人もたくさん買えるように、安 くするの。そうしたら、みんな新しい服着れるでしょ。」

「そうね。未来なら作れるわ。」

凪沙の母は、静かに笑った。

「がんばれ、未来。」

凪沙も、静かに笑った。


ーー次の日、凪沙は、いつもより早く登校した。意外とこの日は早く起きたので、みんながあまりいない学校に行ってみようと思ったのだ。

ーこの日、いつも通りの時間に行っていれば、知らずに済んだのかもしれない。------------


凪沙は校門をくぐり、自分のクラスに行こうと廊下を歩いていた。すると、上の方から、ドサッと何かが落ちるような音がした。鳥が落ちてきたのだろうかと思い、音がした方に恐る恐る行ってみると、

ー落ちてきたのは鳥なんかではなく、人だった。同じ学年くらいの子が、仰向けに倒れている。後頭部と腰のあたりが、おびただしい量の血で紅く染まっていた。

吐き気、めまい、恐怖。それらが一度に凪沙の身体をおそう。凪沙は立っていられなくなり、その場にへなへなと座り込んだ。

「君!どうしたんだい?」

凪沙と同じくらいか、あるいは一つ年上くらいの男の人が駆け寄ってきた。身長も高く、すらりとしていて美しかった。

「ひ、人が、う、上、か、から・・・」

凪沙は、声にならない声をあげた。ほかの人が来たという安心感で、こわばっていた身体が少しほぐれる。

「僕も教室で本を読んでいたら、人っぽいものが落ちて行ったから、まさかと思って・・・まさか、こんな ことになっていたなんて・・・」

男の人も、こわばった顔でかがみこんだ。すると、

「どうしたんですか?いったい何が・・・」

校門から、聞き覚えのある声が聞こえた。凪沙がまだかすかに震えている身体を向けると、あの探偵部の部長、桜音先輩だった。桜音先輩は、ボブを左右に揺らしながら、こちらに走ってくる。

「はあっはあっ・・・どうしたの・・・!」

桜音先輩は倒れている女の子に気付くと、大きな目をさらに見開いた。

「わっ私、先生呼んでくるわ、ちょっと待ってて。」

廊下の方に走っていく桜音先輩を見届けながら、凪沙は今初めて知った事に対する恐怖と不安を噛みしめながら、その場に倒れた。

ー続くー


ここまで読んでくれて、ありがとうございました。次は事件の解決編を書くつもりですので、そちらもよろしくお願いします。

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