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入学まで その5

 食事を終えて、二人は次の試験会場である運動場へ足を運んだ。すでに、かなりの人数が集まっている。待っている途中で何人かに声をかけられたが、軽くあしらっていると、試験官がやってきた。


「さっそく試験に入るけど、棄権する子はいる?」


 学力試験と違い、ちらほらと手が上がる。いかにもひ弱そうな見た目から太っていて運動が苦手そうな見た目、運動には向かない上品な服装の少女。先ほど話をしていたグルケも、棄権するうちの一人だ。カティも棄権したいと思っていたが、事前にマリスから却下されている。

 アマンダたち試験官はいくつか確認をしながら、数分後に試験を受ける子たちに向き直った。


「待たせたわね。さて、午後の武力試験は極めて単純、一人三回、一対一の模擬戦をしてもらいます」


 ざわめく中、うれしそうな顔をするマリス。カティはかなしそうな顔をしている。


「組み合わせはこちらで決めている。棄権した子と当たったら、試験官の誰かと模擬戦となるわ。勝ち負けも試験の点数に関わるけど、負けたら点数が無いってわけじゃないから安心して。試験官と当たっても、内容によって最高点は出るから不利ってわけでもないわね」


 何か質問は? と続けたのに対して、いくつか質問があがる。

 まとめると、一試合は三分間、十組ずつ行われ、二百五十名をおよそ四時間半で終わらせるとのことだ。

 武器は近接武器なら自由、ただし木製のものを学校が用意している。

 なお、面接も十名ずつの二十五組にして、五組ずつ十分、合計一時間。なかなか過密な時間割だが、夕方には解放されるだろう。


「試験官とやってみたい。色々な攻め方を覚えて、いつかディルを……」

「お嬢様、腕を磨くのは熱心ですねぇ。他はあまり興味を示さないのに」


 質疑応答も終わり、一回目の組み合わせが発表される。残念ながら、マリスは試験官と当たれなかった。カティも初めて聞く名前の相手だ。

 そして順番に試合が進み、マリスの出番になった。槍のような長物を持った相手に、無手を選択する。


「念のため確認だが、武器は持たなくて良いのか?」

「はい、中途半端な武器を持つより、身軽な方が動きやすいですので」


 試合が開始され、無茶をしませんように、とカティは祈る。一瞬で終わるかもしれないと思っていたが、マリスは若干距離を取ったまま、相手の懐に飛び込もうとしては牽制されて戻る、という動作を繰り返している。

 マリスの動きから、槍使いの少年は自分が有利だと思ったのだろう、マリスが引いた時に合わせ、大きく踏み込んで突きを放った。

 だが、マリスは待ち構えていたように突かれたと同時に斜め前に踏み出し、槍を避ける。

慌てて槍を手元に引こうとしている少年の腕に、力強く手刀を入れ、槍を落とした。

 少年は拾おうとするが、試験官から終了の合図がかかった。

 三分間は経っていないので、勝負ありと見て止めたようだ。


 他の試合も終わり、マリスは一礼してカティの元へ戻った。カティは、小さく拍手しながら、笑顔を向けた。


「さすがお嬢様、と言いたいところですが、序盤は遊んでました?」

「いや、遊んでない。あれくらいの速度相手だとどれくらいで入り込めるか調べてた。少しずつ早くしていったけど、間に合う前に攻められた」


 普段はあまり表情を変えないが、今はわずかに悔しそうな表情を浮かべている。しかし、すぐに平常時の顔に戻ると、次の試合を見始める。


「次、筆記試験を棄権した子」

「あら、本当ですね。お強いのでしょうね」


 試合が開始されるとほぼ同時に、カティの予想は現実となった。


「凄い」


 マリスはつぶやくが、カティには把握も理解もできなかった。それまで、と試験官が慌てて叫ぶ。


「一瞬で距離を詰めて、殴り倒した。あれも普通じゃない。百点取ると言い切るのも解る」

「えっと、次以降あの人と当たったら、どうしましょう?」


 泣き出しそうな表情を浮かべるカティに対し、マリスはそっけない。倒れた子は起き上がれず、保健室に連れていかれる。


「諦めるしかない。その試合だけ棄権してもいいかもね。温情措置があるかどうか知らないけど、無ければ彼は零点かもしれない。運も実力のうちって言うけどね」


 そんな話をしているうちに、カティの出番がやってきた。呼ばれて、短めの剣を持って前に出る。相手は金髪の少女で、長剣を構えている。

 開始の合図とともに、金髪の少女が攻めたてる。力任せに振っているのを落ち着いて受け流し、空いた胴体に突きを入れた。金髪の少女がよろめきカティが勝負を決めに行くが、近づかれないように大振りで牽制する。カティは避けられるとは思ったが、もしも当たると体重が軽いカティは吹き飛ばされかねない。慎重に行くと決めて、相手に体勢を立て直されたが落ち着いて勝負を再開させた。

 終始カティの優勢で時間が経過するも、とどめを決めるには至らず時間切れとなる。


「お疲れ様。十分に動けていたと思う」

「ありがとうございます、私なりにがんばった方だと思います」


 そして全試合が終了して、二戦目の組み合わせが発表された。


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